やはり俺の実力至上の青春ラブコメはまちがっていない。 作:ゆっくりblue1
8/4に内容を少し変更、修正しました。
由比ヶ浜を放置して、豪華客船の廊下を歩く有栖と俺と神室に細川。俺は有栖と並んで歩きながら聞いた。
「……なぁ、有栖?由比ヶ浜の事を再起不能にしたが、葉山もやるのか?」
そう聞くと有栖は此方に顔を向けて微笑むと、首を横に振って言う。
「いえ、如何するかは八幡君に任せます。ただ、先程の様に葉山隼人が絡んでくるのであれば壊しますが」
有栖の言葉に俺は申し訳無くなった。俺の問題なのに当事者ではない有栖を巻き込んで、直接的に手を下させたのだから。神室と細川も先程の有栖の事を思い返し、苦笑いを浮かべて言う。
「さっきの坂柳は普段では見ないくらい怒ってた。あんなに激情に駆られてる坂柳は初めてだよ」
「坂柳さんってもっと余裕を出してじわじわと真綿で首を絞める感じで追い詰めそうだけど。ああやって一気に潰すのは意外だったな」
恐い……会話が物騒過ぎる。当事者だけどこの空間から無関係でいたい。細川の言葉に有栖がこう返した。
「そうですねぇ……何時もの私ならもっと泳がせてじっくり壊しますが、彼女に使う時間よりも八幡君と接する時間に使いたいので。…けれど、まだ全部壊しきった訳ではありませんよ。未だ彼女にはメインの出番があるのでね」
未だあったのね。まぁ有栖があの一度で終わらせるとは考え難いが。
しかし、結局俺の問題に有栖を巻き込んでしまった。情け無いもんだ。俺はこの学校に逃げた。正直なところ、総武中の奴が来ても復讐する気は無かった。それが葉山や由比ヶ浜であっても。復讐したくない訳ではない。俺も限界だったから。でもそれ以上に疲れていた、だから癒しを求めていた。それと同時に……
「ーーーまん君?」
そこで出会ったのが、有栖、帆波、ひよりだった。3人と接してきて、俺の中学時代のことを話した。そして受け入れられた。その時点で俺は満足だった。それ以上は求めていない。だが、思った以上に3人は俺に踏み込んできた。そして在ろう事か名前呼びまでしてきて、俺もそれを受け入れた。何時からか、俺は……
「八幡君?」
そこまで思考に沈みこんでいた俺は名前を呼ばれてハッと顔を上げると目の前には細川の顔があった。その表情は俺の事を見透かしているような気がした。そして細川はそのまま聞いてきた。
「それで、八幡君は一之瀬さんがこの試験の優待者を見つけられると思う?」
「……ん、多分、五分五分なんじゃねえか?帆波の場合は気付いても慎重だから何もしないとも思うし」
細川の言葉に先ほどまで頭にあった考えを追いやって答える。正直なところ帆波がこの抜道に気付くかと言ったらその可能性はあるが、高くもない。それに気付いたとしても優待者がDクラスの奴だからなぁ。わざわざ同盟関係に罅は入れないだろう。
そう思いながら、この試験の結果が如何なるか考える。その横で有栖とひよりがじっと俺を見つめていることに気付き、その眼が何処か真剣な表情だったので戸惑いながら聞いた。
「…ど、如何した?」
「……いえ、何でもありませんよ」
有栖とひよりは俺の問いに答える事無く、この試験の結果は如何なりますかねぇ。と呟いた。
ーーーーー
午後10時、有栖達と別れて俺は部屋に戻って、ダラダラしつつも卯グループの事が気にかかり、帆波に電話で聞いたところ、特に動きはないと言った。卯グループではAクラスやCクラスも積極的に動く姿勢は無いらしい。特にAクラスの葛城派の男子が話し合う事を放棄すると提案していた様なので暫くは動けなさそうだ。ついでに帆波に優待者の法則を聞いたところでは、検討はついているが、余り自身は無い様子だった。俺は帆波に答えは聞かないと言われた為に答えは口にしない。
そして試験の様子を聞いた俺は生徒会の件について聞く。
「それで、帆波。生徒会に入ったらしいが、堀北生徒会長がスカウトした訳じゃなくて南雲副会長にスカウトされたって聞いたが、その時に訊かれた事とかは何だったんだ?」
『うーん、志望した理由とかは訊かれたけど……そう言えば、何か他人に秘匿にしている過去の事を言葉は濁してたけど訊かれたよ』
!……これは若干マズいかもしれない。明らかに一之瀬帆波という少女を狙っているようだ。俺はその事を言ったのかと聞けば、特に何も言ってないよ。と言ったので少し安堵したが、油断は出来ない。この学校では生徒会の役職の高さに比例して生徒の情報を洗い流すことが出来る。帆波を狙っているという事はその辺を徹底的に調べているだろう。恐らく大丈夫だとは思うが、由比ヶ浜のようにぽろっと事件関係者が洩す可能性も否定は出来ない。
俺は帆波と今後の動きについて話し合って、通話を切ると、丁度着信が届いた。非通知からだった。俺は無視していると、もう一度同じアドレスから着信が来た。二回も送ってくるって何だ?と思いつつ、警戒しながら出てみると、特に通話主は何も言わず、無言でいたので悪戯電話か?と思って切ろうとすると声が聞こえてきた。少し遠くから聞こえてくる声は茶柱先生の声だった。
『…この3人で集まるのも久しぶりだな』
『最近は真島先生が時間取れなかったからねぇ。真島先生も入れて呑むのは結構久々だなぁ。坂上先生は遠慮しちゃったけど…』
茶柱先生の言葉に陽気な声が答えた。この声は星之宮先生か。この甘ったるい声からして結構酒が進んでらっしゃる。しかしまだまだ呂律ははっきりしているので酒に飲まれないタイプか。すると真島先生の声が聞こえた。
『それで、わざわざ呼び出して呑もうとするという事は何か要件があるんだろう?』
『もう、普通に呑むつもりで呼んだだけよ。でも、紗枝ちゃんもそんなピリピリした空気出さないで、ね?』
そう言いながらグラスに入った氷の音だろうか、カランと音が鳴った。そうして呑んでいるのだろうか、ふうっと言った後に茶柱先生が全く酔いの感じさせない声で言った。
『それで、知恵。お前、今回の試験で一之瀬と比企谷を辰グループから切り離して別のグループに入れて何を探ろうとしている?』
ん!?衝撃な事実が暴露されて思わず声を洩しそうになったが咄嗟に口を抑える。あの辰グループに入れられそうになってたのん?恐っ、あの空間に入れないでくれた星之宮先生GJ!すると、全く動揺も見せずに星之宮先生がけろりと事も無げに言った。
『ええ〜、だって帆波ちゃんって竜なんて怖いものより可愛い兎っぽいんだもの。比企谷君は竜なんてかっこいいものが似合う子じゃないし』
おいコラ、カッコ良くないって直球で言うなよ。声出して聞いてますアピールしちゃうよ?星之宮先生の株の上がり下がりが激しく変動している中、茶柱先生は星之宮先生の話を取り合う事なく言う。
『御託はいい。竜のグループは各クラスでのリーダーを集める決まりだった筈だ。比企谷は兎も角、一之瀬は入れなければいけないだろうが』
少し酔いが回っているのかはわからないが、茶柱先生が決定的な一言を言った。その鋭い指摘に星之宮先生は切り返した。
『そんなの私の中で厳正な調整で外しただけよ』
その言葉に茶柱先生は黙った。しかし剣呑な空気は漂わせているっぽいが。
『あんまり睨み合うな。クラス対抗にお前達には関係が無いんだからな』
真島先生が呆れたような声で仲裁に入った。声だけしかないが睨み合ってるんだろうなぁ……女の戦いって怖いし。丁度三浦と雪ノ下みたいな感じ?真島先生、ご苦労様です。と心中で真島先生の様子を案じていると星之宮先生はケラケラ笑いながら言った。
『別に私は問題無いわよ。紗枝ちゃんが一番必死なんでしょ。今だってCクラスに追いついてきてるからこの機を逃したくないんでしょ。それに真島先生だってAクラス担当だってホクホク顔だったじゃない。給料も差が出るし』
ちょっとそんな夢の無い事情を生徒に話さないで欲しい。ますます働きたくなくなったわ。それに真島先生のイメージがガラッと変わっちゃったでしょ。あんまり知らないけどね。それにしても星之宮先生の言葉には何処か茶柱先生を挑発するような言葉を言っている気がする。
『……ふ、Aクラスに上がれるなんて都合の良い事なんて考えてはいないよ。あのクラスはまだまだお前達に劣る』
自嘲気味に言うと、星之宮先生がこう返した。
『ならいいけど、紗枝ちゃんもあの時のことがあるから虎視眈々と狙ってるんだと思っちゃった』
その言葉に向こうの空気に緊張が走った気がした。やっぱり何か二人には因縁があるようだ。数瞬の間が空いたが茶柱先生は、何を馬鹿な。元から気にしていないと言って、呑み終えたのか、戻る。と言って足音を立てて遠ざかった様だった。そして星之宮先生は何処か呆れたような冷淡な声で呟いた。
『あれ、絶対に気にしてるなぁ。いい加減に吹っ切れたと思ったんだけど』
『……私にはお前が敢えて言ったような気がするが』
『やだなぁ、もう私は気にしてないわよ。もう決着が着いたことなんだから』
そう言って声を出して笑うと真島先生の溜息が聞こえてきた。
『……お前のクラスの一之瀬と比企谷と言い、
……気になることが聞こえた。細川がDクラス行きだった?俺は続きを聞くが、其処からは関係が無い話になってしばらくしてぷちりと通話が切れた。
俺はスマホを置いて考える。何故この会話を聞かせたかは解らないが、Dクラス行きだった筈の細川の事と何か関係があるのだろうか。此処で考えても結論が出ずにこの試験の二日目は終わった。
そしてそれから更に1日が過ぎた。俺の予想通り、帆波の卯グループは裏切る生徒が出ない。有栖や龍園も特に動く気はないようだった。まあ龍園はDクラスの切れ者を探っているのだろう。正直終わってしまった俺に何も関係ないのでどうでも良いが。
そんなことを思いながら朝食を食べに行き、適当な席で食べていると声が掛けられた。
「比企谷君」
「…ん、おお、雪ノ下か」
声をかけにきたのは雪ノ下だった。雪ノ下は隣、良いかしら?と聞いてきたので、前だったらわざわざ聞かなかっただろうし、殊勝になったなと思いながらどうぞ。と言うと雪ノ下はトレーに乗せた朝食を食べ始めた。そして、一度食べる手を止めて、聞いてきた。
「そう言えば比企谷君。貴方、由比ヶ浜さんと何かあった?」
そう訊かれて、一昨日の事だなと思いながら俺は聞いてみる。
「あったにはあったが、由比ヶ浜がどうかしたのか?」
すると雪ノ下は何か嫌な事でも思い出したのか、米神に手を当てて溜息を吐いて苦虫を噛み潰したような表情で話し始めた。
「ー昨日、由比ヶ浜さんが焦点の合わない顔で部屋に戻ってきて、昨日に同じ部屋割りの人に聞けば食事も取らずに寝込んでたらしいのよ。それには流石に他の人も事情を聞いたんだけど、私は悪くない。私は悪くないって言葉しか言わないから医務室に連れてかれて療養中なのだけれど…」
おぉう……え、ヤバくない?精神逝っちゃったのでは、それ。如何やら有栖の鉄槌は予想を遥かに上回るダメージを食らわされたらしい。まあ、同情するつもりは無いが、彼処まで追い詰められたら無理もない気がする。多分雪ノ下も見舞いに行ったが効果無しだったんだろうなと察して、言った。
「まぁ、でも由比ヶ浜が絡んできたのを論破して撃退しただけだから、仕方ないだろ」
俺や有栖は悪くない。絡んで来ないでって言ったのに絡んできた由比ヶ浜が悪い。それを雪ノ下も理解しているのか、他人事ね。貴方も当事者でしょう。と苦笑しながら言うが俺を咎める様子はなかった。
「八幡君!」
その時、またもや声をかけられたので視線を向けると、有栖と帆波とひよりに神室と細川、そして橋本と高校生ならぬ風貌の鬼頭が居た。えっ、何あの異色の組み合わせ。て言うか大所帯だな。後目立つからそんなデカい声で呼び掛けないでね。
そう思いながら、近付いてきた集団を見た雪ノ下は有栖達の存在が居て気不味く思ったのか。トレーを持って立ち去ろうとするので一応言っておく。
「……あー、雪ノ下?有栖達にはお前が謝罪してやり直した事も説明してるからあんま気にしなくても良いと思うぞ?」
「………そう言ってくれるのはありがたいのだけれど、正直、彼女達に対面して話すのはまだ自分の中で踏ん切りがついていないの」
そう小さく言った雪ノ下の目は未だ迷いがあるようだ。まあ由比ヶ浜の関係にも完全に縁を切ってはいないみたいだし、直ぐに混ざる事はしにくいわな。俺でもそうだし。なのでこう言った。
「……まあ、直ぐにとは言わんが喋りかけたくなったなら、彼奴らも前のこととは別にしてくれるだろうから、来ても良いと思うぞ。喧嘩になるなら仲裁役くらいにはなってやるよ……多分」
すると、雪ノ下は目を瞬かせると苦笑した。
「そこは言い切るのが普通でしょうに。……まぁ、貴方らしくもあるのだけれど。…少しは考えておくわ、また」
そう言って雪ノ下は別の席に向かった。それを見送っていると丁度集まってきた帆波達が雪ノ下を見て、俺に言った。
「雪ノ下さん、やっぱりまだ顔を合わせにくいみたいだね……」
帆波の言葉に俺は頷くと疑問に思った事があるのか、神室が聞いてきた。
「言いにくい事なら悪いんだけどさ、如何するのか決めてんの?」
神室が言いたい事は雪ノ下と俺の立ち位置がこの状態で良いのか?ということだろう。俺は静かに言った。
「……彼奴が自分自身の気持ちと関係性に踏ん切りがついたら普通に話しかけてくるだろうし、彼奴次第だ」
「結構気にかけてるのは何でなんだ?」
橋本の直球な物言いに有栖と神室がジトっと視線を向け、帆波とひよりと細川は苦笑していて、鬼頭はあまり興味無さそうだが。
「……まぁ、同情って訳じゃないつもりだが、今の彼奴に自分と重なったんだよな。進んで一人で過ごすなら別に放っておくし、それで良いんだが。前の彼奴は兎も角、特別仲の良い奴が出来た事を経験していると、それを失くした時にまた一人に戻って彼奴はそれで普通に過ごせるかって思った。まあ、要するに余計なお世話ってもんだよ。千葉の兄の性って言っても良い」
そう言うと有栖達は神妙な空気を見せ始めたので変な空気になる前に要件を聞いた。
「…んで、有栖達は何の要件でこっちに来たんだよ。面倒ごとは断るぞ。これ以上は働きたくねえ」
「面倒ごとではないですね。八幡君が必要な、楽しい楽しい時間を思い付いたんですよ」
何やら企んでいる有栖は心底楽しそうだ。……これは断っても無駄だな。俺はNoと言える日本人であるが、有栖の事だ。悉く退路を潰してくるに違いない。そう心中で溜息を吐いて、俺は残りの食事を済ませた。
ーーーーー
「……んで、何で俺は水着に着替えさせられてプールに居るんでしょうか?」
そう言うと、前には俺と同じく水着姿の有栖達と、海パンを着た橋本と鬼頭がいた。広大なプールには試験の終わった生徒達で賑わっていて、人口密度が多い多い。俺の言葉に有栖が答える。
「折角の夏休みなんですから想い出作りをしないと勿体無いでしょう?八幡君、この豪華客船に乗ってあまり娯楽を触れられる機会が無かったでは有りませんか」
その言葉に帆波とひよりが頷く。神室を見ても諦めて付き合ったら?と目線で答えが来た。細川は楽しそうにしてる。すると橋本が俺の肩に手を置いて言った。
「良いじゃねえか、比企谷。こんなレベルの女子が一緒にプールを入ろうって言ってんだ。それに応じるのが紳士の役目だろ」
その言葉に鬼頭も頷く。味方がいねえと思いつつ、有栖達の心遣いを無碍にするのもしのびないので俺は言った。
「……はぁ、あんまり振り回さないでくれ。アクティブすぎるのは元ボッチには厳しいから」
そして、俺達はプールに入った。俺は端の方でプカプカ浮いていて、その横で有栖とひよりが同じく浮輪を使って浮いてる。まあ、有栖はこの人口密度では何があるか分からないので、一人にさせると危ない。ひよりは浮いてる方がいいらしい。帆波と細川は一緒に自由に泳ぎ回っており、鬼頭は人が多い中、プールの端から端まで泳いでる。橋本は神室に水を掛けようとして頭叩かれている。何やってんだ彼奴…そんな光景を見ていると有栖が言った。
「……すみません、八幡君。結局私のお守りのために泳ぎ回れなくなってしまいましたね」
「いや、別に気にしてないぞ。逆に有栖のお陰で此処でゆっくり出来るから感謝してるぐらいだ」
有栖の謝罪に俺は何て事無いように言うと、有栖は苦笑して、八幡君らしいですねぇ。と言う。ふと、俺は気になることがあったのでひよりに視線をやって聞いた。
「そう言えばひより、龍園にAクラスとは関わり持っても良いって言われているのか?」
「はい、私には特に龍園君が持っている情報は共有されてない代わりに自由で良いと言われてますから。私としても八幡君達と一緒に居る方が有意義なので」
クラスの情報を共有させないって側から見たら異常だが、ひよりは嬉しそうにしているので別に良いだろう。そうしてボーっとしていると急に大きな波が発生して大きく揺れた。
「「きゃあッ!」」
「うおっ、大丈夫か!?」
波の揺れのせいでバランスを崩した有栖とひよりを咄嗟に抱えて、二人を庇う。誰だよこんな波を起こした奴。そう思っていると、有栖とひよりが腕の中にいて照れるように上目遣いで言った。
「その、八幡君…ありがとうございます。後、身体、大きいですね……」
「八幡君に抱き締められたのは初めてです……」
「わわわわりゅい、しゅ、しゅぐに離れる…!!」
慌てつつも怪我をさせないように離れると有栖達は名残惜しそうな顔をした。やめて!そんな顔しないで!罪悪感凄いから!それにしても直に触れた女の子の肌……柔らかかったなぁと思いつつ、今度は背後から誰かにぶつかられた。
「うおっ、何だ!?」
驚いて後ろに振り向くとそこには帆波が不貞腐れたような表情を浮かべていた。
「…いいなぁ、私も八幡君に抱き締められたいよぅ」
「ふぁっ!?」
何言ってんの!?ご乱心ですか!?そう思って帆波を見たら帆波も上目遣いになっていて思わず息を呑む。
「……八幡君、抱き締めてくれる?」
「……いやいやいや、こんな人が多い所で無理だ。勘弁してくれ…」
「……じゃあ二人っきりだったら良いの?」
「!!?」
「「一之瀬さん!?」」
予想外の一言に俺は言葉を失い、有栖とひよりが慌てる。帆波の言葉は健全な男子高校生には抗いがたい魅力があった。帆波の眼が俺の眼と交差する。その眼には溢れんばかりの艶やかな熱意が籠っているように感じられる。そして、帆波はゆっくりと言った。
「……八幡君なら、良いよ?それこそ、全部あげても……」
その言葉を言った帆波の眼の奥から熱意に見え隠れした少しの熱意とはまた違う、ドス黒い何かを感じた。思わずゾクッとした。抜群な容姿と男子の理想を詰め込んだプロポーションは欲望が湧き出て収まることを知らない。息を呑みそうになる程の綺麗なシミひとつ無い肌に手を伸ばし掛けた時、耳元でパァンッと音が爆ぜた。
「ッ!?」
「はいはい、此処は人がいるから戻って戻ってー」
音に驚いた俺は耳を抑えて音を出した主、細川を見た。細川は何処か呆れたような顔で此方を見ている。……助かった。理性が飛んでしまっていた。まさか往来のある中で理性が外されるとは思ってなかった。帆波、恐ろしい子ッ!有栖とひよりはホッとしていて、帆波は何処か残念そうにした。そして細川は俺に言った。
「今からビーチバレーやるから八幡君も参加ね」
「…え、まさかの選択権無し?」
「うん、女の子の色香に惑わされた八幡君には拒否権は無いよー」
若干棘を含んだ発言だが、事実であったので反論出来ない。そして俺の背を押してビーチバレーをやるであろう橋本の所まで細川に連れられ、有栖とひよりは俺達を見送って、泳ぎから帰った鬼頭がお守りになる様だ。帆波も参加するのか、着いてきた。その時に並んで追い越そうとした帆波が耳元で囁く。
「…次はまた、ね?」
「…ッ」
そうして追い越して橋本と神室の元に向かった帆波を少しの間茫然としていたのを同じく横にいる細川は言った。
「……本気だねぇ、アレ」
そう言って俺を引っ張って連れて行った。
その後はそれぞれがチームに別れてビーチバレーをやった。途中から有栖とひよりも近くまで鬼頭に守られながら来て、試合を観に来た。ビーチバレーしてる途中に神室や帆波、細川と密着しそうになる場面があって動悸が激しくさせられたが、皆が楽しそうにしているのを見て、俺には似合わないリア充なやり取りも…悪くは思わなかった。
そして、プールを出た俺達は制服に着替え、各々自由に過ごす事になったが、丁度昼だったので一緒に食事しようと有栖達に言われ、プールでも刺されそうな程の視線を浴びることになるのか…と遠い眼をして、勿論抵抗は無駄なので、ドナドナのBGMが頭で再生されている中で制服に着替えに行った有栖達と待ち合わせしていると、1番早くに細川が来た。橋本と鬼頭はどうしたかって?橋本がリア充限定スキルのラッキースケベを神室に発生させたので、プールの中に沈められて死んだのを鬼頭が介抱している。本当にラッキースケベってあるんだなぁと思わされた。橋本の場合、図ってやってそうだが。
そして自販機のある場所でマッカンを飲んでいると、早く着替え終わったのか、細川が1番早く合流してきた。
「あれ、まだ介抱されてるんだ金髪の人」
橋本達がいないことを疑問に思ったのかそう言う細川に頷く。事故とは言え胸をがっつり揉まれたことに割と本気でキレた神室の全力のボディーブローが綺麗に決まったからな。無理もない。
そうして細川も隣で自販機で買ったコーヒーを飲んで、先に行って良いって言われたから移動しようか。と細川が言ってきたので、店は決まっている様だ。
そうして細川と歩いていると前方から綾小路が歩いてきた。特に用もなければ仲も良くないので、眼で会釈してすれ違おうと細川の横を通った時。
「ーーーーー」
耳をすませても聞き取れない音量で細川が口を開いたのが視界の端に映った。綾小路はほんの少しだけ動きがゆっくりになったが、それも一瞬で何事もなかったように通り過ぎていった。
細川の言ったことが気にかかり、聞こうとしたが、細川の顔は最初から何もないかのような様子で普通に歩いている。これは聞いたところではぐらかされるなと思った俺は、聞こうとした事を頭の隅に追いやった。
それにしても、細川と綾小路に何か因縁でもあんのか?口の動きが少し読めた。あの時細川はこう言ったと思う。
ーーーー久しぶりだね、
そう、細川の横顔をちらっと見つつもレストランに足を運ぶのだった。
ーーーーー
そして試験の最終日となった。卯グループ以外の生徒は自由に過ごしているが、テンションの高いクラスと低いクラスに分かれている。低いのはAとDクラスの生徒だ。Aは特に葛城派の生徒だ。葛城の策が有栖と龍園によって壊されたからな。まぁ、最初に裏切ったのは俺だけど。Aクラスの策に乗っかるメリットが無かったから仕方ない仕方ない。そう目の前の現実から目を背けているがもう無理だと思った俺は言った。
「……なぁ、ひよりさん?俺は何故膝枕をされているんでしょうか?しかもわざわざ部屋まで来て」
俺を膝枕しながら、悠々自適に本を読んでいるひより。本のタイトルは有島武郎著の『或る女』だった。確か、普通に生活していた主人公が、アメリカに渡って軍事的な諜報活動をして、情愛のある生活を一度は気付くも長くは続かず、スパイ活動に浸っていく様子を書いたものだったと思うが、如何だったっけ?俺の質問にひよりは本を読み進めながら答えた。
「一度、膝枕をやってみたいと思ってましたので。耳掻きを持っていたら耳掃除もしてみたかったのですが」
そう微笑みを向けられるので、男女の距離感的にアレだが、ひよりが楽しいんだったら別に良いか。ひよりの予想外にブッとんだ天然には慣れてきたし。行き過ぎる様なら止めれば良いしな。ちなみに俺とひより、そして何故か猫のように丸まって寝ている細川以外誰も居ない。細川によって俺の使ってるベッドの大半が奪われてる。(※実は戸塚弥彦と由比ヶ浜のレストランの件でこの部屋のルームメイトが八幡達の関係にチャチャを入れないよう、気遣って部屋を出ている。八幡に嫉妬は有りつつも試験で貢献していることを帆波が説明している為にクラス全員の好感度は結構高い)
性格からして此処に来て俺を弄るであろう有栖はAクラスに今後の方針を示しているから此処に来ていないんだろう。帆波は試験なのでいない。
「…膝とか痺れるようだったら言ってくれ。すぐ退くから」
そう言うとひよりが頷いたので俺は柔らかい膝の上でボーッとしていると、だんだんと眠気が来たので、ひよりに言った。
「……悪い。眠くなってきたから退いて寝るわ」
「…いえ、このまま寝てしまわれても大丈夫ですよ」
そう本を置いて優しく撫でて、慈愛に満ち溢れた瞳を向けてくるひより。……いつの間にか女子が近くにいても眠れるようになったのは俺のリア充化が進んでいるからだろうか。やったね八幡、リア充デビューだよ!………小町が見たら驚いてショック死しそうだな。いや、俺が本物かどうか疑ってきそう。こんな想像しか出てこないあたり、リア充デビューは未だ先っぽいな。俺のボッチ度振り切れ過ぎぃ!
そんな脳内でボケつつもウトウトしてきたので、ゆっくりと瞼を閉じる。その直前に、お休みなさい。良い夢をと言われた気がした。
八幡君、起きて下さい。と言われながら揺さぶられた気がして、眼を開く。すると、上から穏やかな声が聞こえた。
「起きましたね。八幡君」
「……ぉう、悪い、ずっと膝枕させてたか。退けてくれても良かったんだぞ?」
今、後頭部から感じる柔らかさは寝る前と全く同じだったので、そう判断した。するとひよりは首を振って言った。
「いえ、そこまで負担ではなかったので大丈夫ですよ」
その言葉に、そうか。と言った俺は何時迄も膝に乗せている訳にもいかないので身体を起こす。そして首を鳴らしていると細川が居ない事に気づいた。
「細川は自分の部屋に戻ったのか?」
そう聞けば、ひよりは首を振って衝撃の言葉を言った。
「いえ、先程全グループの試験終わった時にお友達に呼び出されたようで、そちらの方に」
「…ん?試験が終わったのか?」
もう一度聞き返すとひよりは頷く。今の時間は午後4時ってことは誰か裏切ったのか。卯グループの優待者はDクラスの軽井沢なので同盟関係で帆波は裏切ってない筈なのでAクラスかCクラスか。
じゃあ後は結果を待つだけか。全部結果はIIIかIVになるだろうからptの振り分けの部分か。12グループの内Bクラスが2つ、Aクラスは5つ、Cクラスが4つ、Dクラスは1つ。優待者のクラスが偏っていればそのクラスが大ダメージだ。
そう考えていると、着信がなった。俺のスマホに有栖からのメールが届いていた。確認すると、何か卯グループの部屋でトラブルになっているらしい。それも何故かAクラスの葛城派が仲間割れになっているらしく、帆波が仲裁に入っているようだった。
仲間割れになっている理由が書かれていないってことは直接見に来いって事か?……有栖の事だ見に行かなければ何か企みそうだし、見に行くか。け、決して帆波の事が心配になった訳では無いんだからね!……うん、鳥肌立ったからもう二度とやらんことにしよう。
メールを確認して、ひよりに有栖から卯グループの部屋でトラブルになったらしいから確認して来るが、如何する?と聞けば、ひよりは一緒に行きます。と言ったので俺はひよりを伴って卯グループの部屋に向かう。
そして、卯グループの部屋に着けば野次馬が少し居て、葛城と戸塚弥彦コンビと恐らくAクラスの葛城派の内の1人が言い争っていた。帆波は葛城が来たことで離脱してその様子を見守っていた。卯グループのメンバーはCクラスの奴以外は揃っている。恐らく逃げ遅れたのだろう。そして野次馬の端には有栖と龍園も居た。俺達は有栖と合流すると、何があったか聞く。
「……んで、有栖よ。葛城派には何があった?見た所大分空気悪そうだが…」
「聞いていたら分かりますよ」
そう言ったので葛城達ーーー主に戸塚弥彦と葛城派の内の一人ーーーの言い争いに耳を傾けた。
「町田、葛城さんの指示に逆らうなんて何を考えてんだ!」
「逆らうつもりだった訳じゃねえよ!ただ、俺は坂柳派が優勢だったから優待者を当てて、葛城派に傾けようとしただけだ!」
戸塚弥彦の詰問に町田と呼ばれた奴は裏切った理由を説明する。如何やら葛城派の予想外の崩れの早さに焦ったようで、葛城派の勢力を少しでも強くしようとしたらしい。この理由に戸塚弥彦は納得仕掛けていたが、葛城は納得がいっていないのか、眉間を顰めて聞いた。
「…理由は解った。しかし、裏切るのはリスクを伴う。pptもcptも失敗してしまえばこちらが不利になる。卯グループの優待者は確信しているのだろうな?」
そう葛城が聞けば、町田は自信がないのか、一瞬だけ躊躇する様子を見せた所で、優待者の名前を出した。
「………Dクラスの、男子だ」
そう言った瞬間、嗤い声がした。
「クックック……Dクラスの男子か。良く当てに行こうとしたもんだぜ。男子は3人居るが、誰なんだよ?」
そんな煽りを声の主である龍園が野次馬の中から出てきて言った。町田はその言葉に動揺しているが、優待者の男子の方に、綾小路に指をさした。すると、その行動に更に龍園は笑みを深めて言った。
「金魚の糞野郎か……ククッ、だが残念だったなぁ。そろそろだから結果を見て知れよ」
龍園の言葉にキーンッと甲高い音がそこら中から聞こえた。如何やら学校が試験の結果を出したようで、この場にいる全員が結果を確認した。
『鼠―――裏切り者の正解により結果3とする』
『牛―――裏切り者の正解により結果3とする』
『虎―――裏切り者の正解により結果3とする』
『兎―――裏切り者の不正解により結果4とする』
『竜―――裏切り者の正解により結果3とする』
『蛇―――裏切り者の正解により結果3とする』
『馬―――裏切り者の正解により結果3とする』
『羊―――裏切り者の正解により結果3とする』
『猿―――裏切り者の正解により結果3とする』
『鳥―――裏切り者の正解により結果3とする』
『犬―――裏切り者の正解により結果3とする』
『猪―――裏切り者の正解により結果3とする』
『Aクラス……プラス50cl プラス200万pr』
『Bクラス……マイナス100cl プラス100万pr』
『Cクラス……プラス100cl プラス200万pr』
『Dクラス……マイナス50cl プラス100万pr』
となっていた。うん、こんな偏った結果あんまり無いだろうな。そしてこの結果を見て有栖は笑みを浮かべ、龍園もニヤニヤしながら葛城達を見る。町田は自分のグループの結果が違う事に狼狽えている。葛城達も同様だ。
「結果4!?……っ」
「これは…!」
「ハッ、これはこれは…残念だったなぁ。葛城の事を考えて行動した結果がこうなるなんてよ。何を根拠にして優待者を当てに行ったんだ?」
龍園の嘲笑に葛城達は悔しげに顔を顰めた。これはもう葛城派はトドメを刺されたな。Aクラスの牽引は有栖がしていく事だろう。そう考えていると、横にいたひよりが口を開く。
「全クラスの差がコレでまた動きますね…」
「…ああ、大分変わるな」
そう言うと有栖も加わって言った。
「AクラスとBクラスの差が開いて、BクラスとCクラスの差が縮まって、DクラスはCクラスとの差が開きましたね」
その有栖の言葉に頷きつつ、クラスの暫定を計算すると。
Aクラス 1024+50=1074cpt。
Bクラス 996−100=896cpt。
Cクラス 552+100=652cpt。
Dクラス 312−50=262cpt。
となる計算だ。Bクラスが−100になったか。Cクラスの差が242cpt。一気に縮められ、Aクラスとは28cptだったのが、178cptに開いた。これで、Aクラス行きが険しくなってきたな。Aクラスの指揮は有栖に移ってより強力になって纏まるだろうし、Cクラスも油断出来ない程接近してきている。Dクラスは低迷しているが、綾小路が居るから読めない。それに、軽井沢も雰囲気が少し変わったか?
Bクラス、纏まり具合では他のクラスよりも練度は高い。しかし、他のクラスよりも突出している所がない。加えて帆波は王道では強いが、裏道を探るのが苦手だ。それに、クラスメイトも帆波と神崎に依存している傾向が観える。帆波と神崎が共倒れすれば、一瞬でBクラスはガタつく。龍園は王道には少しだけ付け入る隙があるが、有栖は王道にも強いし、裏道も解る。
俺は有栖を見て、試験の結果を見て雰囲気の少し重い帆波を見た。……細川に裏道を担当してもらうか?Aクラスに上がりたいと言っていたし。だが、細川も不安要素が多い。彼奴の様子からしてクラスを裏切るのも辞さないタイプだろう。そんな奴が俺とわざわざ協力関係を築いたのも不自然だ。……はぁ、クラス間の争いとか如何でもいいのに巻き込まれているような気がする。
そう思いながらも、俺は部屋に戻る。有栖と帆波は今後の動きについてクラスの方針を固めに生徒達に言うらしく、ひよりは龍園に呼ばれたらしく、別れた。
「ヒキタニッ!」
前からそう言ってやって来た奴を見て、俺は溜息を吐いた。その声の主が葉山隼人だったからだ。眼には憎悪というかそれを通り越して殺意すら湧いている。そして興奮気味に言った。
「お前、結衣に何をした!!」
「………別に何もしてないが?」
「惚けるなッ!!」
そして俺の胸倉を掴みに掛かるが、俺は後ろに下がって距離を置いて掴ませないようにしておく。掴み損ねた葉山はその事に苛立ち、更に声を荒げた。
「結衣が引き籠って何もしなくなったのをクラスメイトに医務室に運ばれて結衣は医務室でずっと泣いてるんだぞ!お前が何かやったから結衣はああなったんだろッ!!」
……俺は絡まれただけだし、マジで何もしてないんだがな。彼奴が絡んで来たのにキレた有栖の誘導で勝手に自爆しただけ。まぁ此奴に言っても納得しないだろうし、如何でもいいか。
「……それで?お前は何をしに来た?」
「決まっているだろう!結衣と雪乃ちゃんに謝罪して、坂柳さんや椎名さん、一之瀬さんと今後一切関わらず退学しろ!」
そんなふざけた要求を突き付けてきた葉山にもう此処で仕掛けるか?と思っていると何処からか音が聞こえてきた。この音…着信音か?だが俺ではない。鳴っているのは葉山のズボンのポケットからだった。葉山は俺を睨みつつもスマホを取り出して、電話を始めた。
「もしもし……陽乃さん!?」
そう言うと、葉山は電話の相手に驚いたのか目を見開くと言った。というか今此奴陽乃さんって言ったな。俺の記憶で陽乃さんって言うとあの魔…なんかヤバいからこれ以上は考えないようにしよう。
「如何して陽乃さんが俺の番号を……………えっ?ちょ、ちょっと待ってくれ!俺は騙してなんかいない!ヒキタニが悪いんだ!!」
俺の名前出したな。それに、騙した?……ああ、中学の件か。
「ヒキタニがっ……比企谷が俺のグループのメンバーの一世一代の告白を……それに傷付いた雪乃ちゃんや…ッ、雪ノ下さんや結衣に有りの侭伝えて謝らせようと…」
言い訳の途中で顔を凄く青ざめさせてるってことはめっちゃキレられてんな。すると、また何か言われたのか、顔を土気色にさせてこの世の終わりみたいな表情で言い始めた。
「ッ!?そ、それだけはッそれだけは辞めてくれ!!」
何を言われたのかは知らないが、葉山の身体が震えている。何を言われたらあんなに成るんだ。電話に意識が行ったのかもう完全に俺を視覚に入れていない為、俺はステルスヒッキーを発動すると葉山の横を素通りした。葉山はそれに気付くことなく、陽乃さんに懇願していた。
それからは何事もなく、部屋でダラダラしてその日を過ごす。Bクラスの方針は取り敢えずはcptを積極的に取りに行くこととDクラスの同盟関係の継続(Aクラスとの秘密同盟含む)。
あの後、葉山に会うことは無かったが、ひよりが一度葉山を見かけた時には焦点が合わなくなった眼で石崎に連行されていたらしい。その姿を想像して由比ヶ浜の姿と被って何とも言えない気持ちになった。
そして雪ノ下にもたまたま会ったのでそのことを話すと、そう。と変わらない調子で言いつつも何処か嬉しそうな雰囲気を醸し出していた。葉山への好意とかはやり直す前も無かったようで、今回の件でマイナスに堕ちたようだ。ざまぁ。
そんなやりとりもあったなかで漸く船が高度育成高等学校の港に着いて、学校に戻った。マジで色々ありすぎたな。夏休みはゆっくりしたいもんだ……
しかし、この試験を受けて以降、さらに面倒な事に巻き込まれて行くことを俺は未だ知る由もなかった。