やはり俺の実力至上の青春ラブコメはまちがっていない。 作:ゆっくりblue1
眩しい、目の前が光っているのを認識した俺は静かにうっすらと目を開いた。ぼんやりとしている景色が徐々に鮮明に、五感がはっきりしてくる。
それから少し、ボーっとした後、眼覚まし時間の設定がしてあるスマホを見る。時刻は『AM 6:03』と表示されていた。
「早いな・・・・」
平日でも7時くらいにしか起きれない俺には、早すぎる時間帯だ。ましてや今日は休日なので、二度寝一択だ。こんな早く起きてもヒーロータイムやプリティなキュアは放送しない。俺は、ベッドに体を倒して目を瞑ろうとする。
しかし、体を動かそうとして、腕だけが動こうとしなかった。何かに固定されたように
不気味に感じた俺はその正体を知るために左右に顔を動かした。後悔すると知らずに。
「すぅ・・・すぅ・・・」
「むにゃ・・・・すぅ・・・」
その正体を知った俺の時間は凍り付いたかのように止まった。いや、止まったかのように感じた。その理由はーーーーーーーーーーーーーー椎名と
あまりに気持ちよさそうに寝顔を晒しているので起こすのも憚られてしまう。
「・・・・ていうか、何でこうなってんの・・・?」
俺はこの状況が作られることとなったきっかけを思い馳せた。
それは数時間前の、学校の昼休みで飯を食べ終わって教室に戻った時のことである。俺が教室に入ると一之瀬が近づいてきた。
「やっほー比企谷君、ちょっと良いかな?」
相変わらずボッチの俺にも気軽に話しかけてくる一之瀬。高いコミュ力のあるハイブリットボッチ妹と違い、若干反応がキョどる俺。そこに痺れるが憧れないっ!
「な、何だ?」
「ふふっ・・・ちょっと小テストのことで相談があってね?」
そんな俺の返しを何か暖かい反応で返して話をする。なんか小さい子を見守ってる親みたいな感じ。そして、一之瀬が言っているのは2日前に受けた小テストのことだ。
星之宮先生が今回、意味深な発言をしたものだ。成績には反映されない。つまり
「全教科で、最後の3問だけが凄く難しかったんだよね。私は最初の1問は何とか解けたけど後の2問は全く。比企谷君はどうだったの?」
「俺は国語と英語は全部解いて、社会と理科は1問。数学は全く解いてない。数学に関してはもう日本語じゃなかった。何あれ?何聞いてんの?」
もうね、問題文が書いてんのか全然わかんない。正直、ちゃんとした問題として成り立ってんのかその場で聞きたかったレベル。まあ、カンニング扱いされるから無理だけど。
「国語と英語は全部解けたんだ!凄いよ、比企谷君」
一之瀬はそう言って、感心した様子で称賛してくる。そんな一之瀬の様子に何とも言えないむず痒さとほんの少しの羞恥と嬉しさが湧いてきた。
「ん、ん!・・・それで?その事がどうしたんだよ?」
閑話休題を断ち切るように咳払いをして、一之瀬に本題を言うように促す。
「あっと、ごめんね?それで本題なんだけど・・・・あの最後の問題について、比企谷君はどう考えてるのか聞きたいんだ」
そんな質問を一之瀬はしてきた。そう、どう考えてもおかしなことなのだ。小テストで現時点の実力を知りたいのに習っていないところから問題を出題するのは論外だ。そのことから、俺が立てる仮説は2つ。1つは『その問題が解ける生徒をチェックする』もう1つは『その問題の意図するものが今後のヒント』これが俺の仮説だ。ちなみに、俺は後者のほうが可能性が高いと考えている。
「俺が考えてんのは、あの問題が今後にある何かのヒントになる、って考えてるんだが」
その答えに一之瀬は首をコテン、と傾けて言う。その仕草は中学のあざとい後輩を彷彿とさせるが、一之瀬の場合は天然っぽいんだよな。城廻先輩と一色を足して2で割った感じ?
「今後のヒント・・・?う~ん・・・・あっ!」
何か閃いたのか声が漏れた一之瀬。少し、俺は気になったので聞いてみる。
「なんか思いついたのか?」
「うん。比企谷君の考えをもとにして考えて、ヒントが近いうちに出るって考えたら、この時期から一番近い中間テストに出るんじゃないかってね?」
一之瀬の思いついた考えに俺も思考する。確かに一理あるな・・・・ただ、これは仮説から基づけた仮説の中の仮説だ。そもそもヒントなのかも分からないし、仮にヒントだったとしても中間テストでは意味がないかもしれない。つまり現時点ではほぼ意味がないということだ。
「まあ、分からなくはないが、今は別に考えすぎずに留めて置いた方がいいんじゃねえか?」
焦る必要はないと言っておく。俺の考えを信じ込まれすぎても良くないからな。
「そうだね!ありがとうね、比企谷君」
焦って考えるのは禁物と思い返したのか、前に見たような眩しい笑顔を向けてくる一之瀬。心臓に悪いから止めてもらいたい、今まで出会った女性の中で一番可愛いから。思わず惚れそうになる」
「ほ、惚れ・・・!?」
一之瀬の顔が真っ赤に染め上がった。・・・・・やっべえ、また思ったことが漏れてしまったらしい。一之瀬の前でだとこんな現象が結構な頻度で起きてしまう。
「わ、悪い。また変なことを言ったな」
「う、ううん!大丈夫だよ!・・・・ちょっと嬉しいし」
ぼそっと最後のほうに呟かれた言葉は聞こえなかったが、様子を見るに本当に怒ってなさそうなので少し安心した。
俺たちのそんな様子見ていたクラスメイトは『ヒュー』と口笛で冷やかしたり、小声で『キャー』とかいってる。男子達は嫉妬の視線、女子たちは黄色い声だ。そんな中でより一層強い嫉妬の視線を感じる。ばれない程度に盗み見てみると、女子が俺を睨み付けてきていた。
確かあいつは一之瀬といつもいる奴だったな。名前は・・・・白波だったか?よく絡んでいるのを見かけて名前が聞こえてくるので無意識に覚えていた。一之瀬と白波のゆる百合は何時かの部活で見た光景と酷似している。・・・・何で思い出してんだろうな。
「と、とりあえずはこれでいいだろ。ほら、昼休みが終わる」
そう促すと一之瀬は慌てた様に準備やクラスメイトに促した。委員長ポジションは大変なようだ。
そしてその次の日、月をまたいだためptが支給される日。支給された額は『75,000pt』だった。案の定先生はこの学校のことを実力至上主義と言った。俺たちの行動次第でpt額が変動するという推察は当たっていた。そして次に、cptが発表された。Aクラスが940、俺たちBクラスが750、Cクラスが490、そしてDクラスが0ptだった。Dクラスは何がどうなったら0まで落ちたんだ?見下しているわけではなく純粋な疑問だった。
そして更に中間テストの時期が近づいていると先生が言った。どこの学校も大体は同じ時期にやるんだな。しかし、一般の高校と違うのは赤点をとってしまうと即『退学』になるということ。その知らせを聞いてHRが終わった後、早速と言わんばかりに一之瀬が教卓に立って作戦会議を始めた。
「先生から聞いたとおり、中間テストが近づいてきてるから明後日から勉強会を開きたいと思っているんだけど、皆はどうかな?」
一之瀬の人望はこの一か月の間にしっかり根付いていたようで、特に反対の意見や様子はクラスからは見られない。俺も特に何もなく賛成の意を示しておく。
「ありがとう皆。平日は帰りのHRの時間から午後の7時までで、休日は午前の部と午後の部で、9時から12時と2時から5時まで。参加は自由で強制なし。苦手な教科を教えあうって感じでどうかな?」
すらすらと作戦内容を話す一之瀬に反対の意見はついに出なかったので、この作戦で中間テストに臨むことが決まった。
そして一之瀬の話しを聞き終えて帰るための身支度をしていると、一之瀬から声をかけられた。
「比企谷君。この前のクラスの授業態度の話なんだけどね?」
「おう、それがどうしたんだ?」
「比企谷君の考えが当たっていたから何かお礼をと思って」
「いや、別に恩を着せるために話したわけじゃねえし。礼はいい」
実際にただ自分の考えを話しただけだ。お礼を貰うほどのことではない。一之瀬が判断したことだ。
「う~ん、それじゃあ申し訳ないし・・・・とりあえず一緒に帰りながら話そうよ」
なんか超自然に一緒に帰ることを選択肢に入れられてるし。これが天然アイドル系リア充女子のなせる業か!?
「い、いや、一緒に帰ったりなんかしたらほかの生徒に見つかった場合に変な噂立つんじゃねえか?」
こんな美少女と目の腐った男子が一緒に帰って恋愛方面の噂をされた暁には俺の豆腐メンタルが死ぬまである。それに、一之瀬だって迷惑を被ってしまう。そのことによって更に俺のメンタルが死ぬ。
「大丈夫なんじゃないかなあ。そこまで面白がって揶揄ってくる人はさすがにいないと思うけど・・・・」
「でもなぁ・・・・・」
それでもなお俺は断ろうとすると、一之瀬が悲しそうな表情と上目遣いで言ってくる。
「だ、駄目・・・・かな?」
そんな顔されると、めちゃくちゃ断りずらい。仕草は多分意図的にやっていないだろうから破壊力がやばい。
「・・・・わ、分かったよ」
了承すると一之瀬の表情が打って変わって明るくなった。向日葵が咲いたような感じ。
そして一之瀬は身支度を済ませ、一緒に教室を出た。教室を出た時、クラスメイトがにやにやとこっちを見てきた。特に柴田、口笛を吹くな。白波、睨まないでくれ。
クラスから居心地の悪い視線を向けられ、逃げるように寮に向かう。寮のエントランスに入ると誰かに声をかけられる。
「比企谷君、一之瀬さん」
椎名がいた。俺を見ると嬉しそうな微笑みを浮かべて近づいてきた。
「一緒に下校していたのですね」
「ああ、椎名はもう帰ってたのか」
「はい、今自動販売機で飲み物を買おうとしてまして」
「そうなんだ。・・・・・ねえ椎名さん」
一之瀬が椎名に話しかけ始める。なんか嫌な予感がしてきた。
「はい何でしょう?」
「比企谷君にちょっとお世話になったことがあってね?何かお礼したいんだけど、椎名さんが良ければ参考意見をくれないかな?」
「いいですよ。・・・・ふむ、そうですね・・・・」
一之瀬の質問に熟考し始めた椎名。すると一之瀬が俺の肩を叩く。内緒話がご所望のようで俺の耳に口を近づけて聞いてきた。近いな・・・
「ねえ、椎名さん、よく話すね?いつも口数少ないのに」
一之瀬から甘い匂いが発せられるのにドキドキしながら聞いてみると、椎名の俺へのなつき具合に疑問を持ったようだ。
「・・・ちょっと色々とな」
前に龍園と契約したことで椎名は俺との接触を妨げられなくなった。契約したことを知った椎名は俺にめっちゃなついた。この前なんか一緒にいたら『抱きしめてください・・・』なんて上目遣いで頼まれて抱きしめちゃったし。
「・・・・あっ」
椎名が何か思いついたようだ。しかしなんか俺の理性センサーが警鐘をガンガン鳴らしてるんだが。俺の理性センサーは嫌なことだとほぼ百発百中で当ててくるのだ。おかげで冷や汗だらだらである。
「では一緒に寝るというのは?」
おいいいいいぃぃぃぃーーーッ!?椎名は何という案を出しとんじゃああああ!!予想斜め上すぎんだろ!?案の定一之瀬は真っ赤に頬を染めてあたふたし始めた。
「え、ええっ!!?」
「比企谷君と一緒に寝るのは心地いいですよ」
さらなる爆弾を天然な微笑みを向けて落としてくる椎名。確かに一緒に昼寝したことはあるが、それを一之瀬に進めんなよ!!
椎名の言葉に何やら考えることがあったのか、一之瀬は少し落ち着いた後に言った。
「じゃあそれでいこう!」
「まてまてまて!そもそも俺はお礼はいいって言ってるし、椎名の意見を鵜呑みにしなくても・・・・」
ていうかそもそもこんな美少女と一緒に寝たりなんかしてみろ、間違いなく俺の理性が終わる。
「「駄目・・・なの(ですか)?」」
ダブル上目遣い+涙目。俺の理性HPが80,000のダメージを受けた。瀕死の状態になった俺は思わず。
「わ、わかった、分かったからその表情はやめてくれ」
許可を出してしまった。すると2人は嬉しそうな表情になって。
「「じゃあ(では)よろしく(お願いします)ね?」」
そう言ってきた。さりげなく椎名も一緒に寝ることになるのを俺は気付く余裕すらなかった。
本当に何でこうなった・・・・
俺はエントランスの天井を仰ぎながら心の奥でつぶやいた。しかし、そんなげっそりした感情とは裏腹に心暖かくなりながら。
おい八幡そこ変われw
ちなみに八幡のおかげでBクラスのcptが100上がってます。