「にゃー!やっぱりわかんないよ!」
やや濃いオレンジ色の髪をした女の子がシャーペンから手を話すと同時にこちらを見上げる
「これ以上どう噛み砕けばいいのやら…」
「私も同感ね」
俺と同様、隣に座っている赤髪の女の子がお手上げといった様子でため息をついていた。
「凛ちゃん、そんなこと言わないで、もう少しだけ頑張ってみよ、ね?」
茶髪の女の子が先ほど勉強を放棄した女の子をなだめている。この光景は微笑ましいのでいつまでも眺めていたいが放っておくと勉強会が中断しかねない。仕方がないので俺は釘を指すことにした。
「凛、単位落としてもいいのか?留年するぞ」
「ふん、いいもん。退学になってもかよちんに養ってもらうもん!」
「馬鹿なこといってないですすめるわよ!」
「だいたい、なんで休みの日に勉強しなきゃいけないの!?大学生って遊ぶものでしょ!」
「誰のせいで遊べないと思ってるの!」
「まきちゃんとしゅーくんのせいだもん!!」
あー言えばこー言うとはこういうことだろう。口喧嘩とも呼べないような言い合いも拗れると面倒になる。仕方がないので手を打つことにした。
「わかったから、これ終わったらあそこのラーメン奢ってやるから続きしよう、な?」
「ちょっと、しゅう…」
「ほんと!?しゅーくん大好き!!」
さっきまで機嫌を損ねていた猫のようにツンとしていた凛が途端に目を輝かせた。活力がわいたのだろうか、シャーペンを握り目の前のノートに向かっている。
「まったく…しゅうは甘いのよ」
「あはは…でもそれがしゅうくんのいいところだと思うよ」
「花陽、あなたもよ。ついでにそこの答え間違ってるわ」
「ピャァ」
(真姫も大変だな…)
説明が遅れた。
この三人とは同級生でたまにこうやって勉強会をしている。大学は各々異なるがそれぞれの課題を持ってきては分からない所を教えあっている、否、真姫と俺がつきっきりで凛の勉強をみているといった方が正しいかもしれない。一向に自分の勉強は進まないことだけが気になるが美少女三人と同じ空間にいられるので女子率の低い大学に身を置いている俺としてはありがたい。
「…」
おっと、ふと我に帰ると何やら真姫がこちらをじっと見つめている。
「今、変なこと考えてなかった?」
「そ、ソンナコトナイヨ」
「ふーん、ならいいけど」
顔に出ていたのであろうか、気をつけねばならない。
「そういえば絵里ちゃんはいつ帰ってくるの?」
早めに助け船を出してくれた花陽に感謝しつつ質問に答えた。
「確か6時前とか言ってたかな、もうすぐだね」
「そうなの!?それじゃ絵里ちゃんも一緒に5人でラーメン食べにいくにゃ!」
「絵里が帰ってくるまでに終わればいいけど…」
「まったくだ、凛、そこの式間違ってる」
にゃぁ…とやる気だけは十分な凛がしぼんでいく姿が目に映る。真姫もやれやれといった様子で首を横にふっている。
「あ、そうそう。わかんないとこあったのよ。これわかる?」
「どこどこ??真姫ちゃんでもわかんないことあるんだね」
「あなたにきいてないわ、しゅうよ、しゅう」
「ひどーい!」
また一段と肩を落とした凛を横目に俺は隣に座ってる真姫が指差す所をみる。
「うぇ…めんどくさそうだね」
「そうなのよ、でもあなたの専攻でしょ?」
これまた鋭い所をついてくる。医学部生がここまで難しいところに手を出すことに驚きながら俺は自分のノートでその問題の解説を始める。
「多分、この式がこうなるから…」
「どの式?」
ぐい、と真姫が近くにくる。もともと隣にいるのにより近くにくるので心臓に悪い。俺の腕に自分の肩が当たってることは気にならないのだろうか。
「えっと…だからこの式を使って…」
「ふーん、なるほどね。わかってきたわ、ありがと」
理解が早すぎて時折、真姫の頭脳が羨ましくなることがあるが今はそのことよりも真姫との距離が近いことの方が気になって仕方がない。真姫は俺の書いたノートに夢中で気にしていないようだ。癖っ毛のある髪がほんの少しだけ顔にかかってくすぐったい。
(姉貴よりいい匂いするな…)
俺の顔のすぐそばにある真姫の顔に注意を奪われながらそう思った。自分の青色の目も気に入ってはいるが真姫の紫色の目は何故だか魅力的に感じてしまう。手入れの行き届いた白い肌も目の美しさを助長している。
「…何…?私の顔になんかついてる?」
あまりに見つめすぎたせいか、視線を感じた真姫が怪訝な顔で見つめてくる。
「いや、別に。特に何もないよ」
「そう?」
真姫は気が済んだようで俺から離れ再び自分のノートへと戻った。
外見には出さないようにしていたが名残惜しそうにしている俺に気づいたのだろうか。花陽が俺と真姫を優しい表情で見つめていた。
個人的に凛ちゃんはあまりにゃーにゃー言わせない方がかわいいと思います。(にゃーにゃー派の人には申し訳ないです)