刀使ノ指令ダグオン   作:ダグライダー

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 こんばんは。
 夏が近付くと執筆意欲のモチベーションが中々上がらなくて困りものです。
 とは言えやっとこさ納得が出来たので投稿。

 カリギュラ2売り切れ……やっぱり予約しとけば良かったなぁ。
 まりえカイチョーがウィキ口さんなのか気になるぅぅぅ。
 ええ好きですよ、渕上ボイスですし。夜見も好きです。



第八十九話 炸裂!ターボライオソード!!

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 戻って来たぁ~……!うぅ良かったよぉ、良かったよぉ…。

 

 ほら泣かない。何か大変な目にあったみたいだけど無事帰って来れたんだから。

 

 ぅぅう~…ほ゛く゛と゛さ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!!

 

 ちょ、鼻水!鼻水が出てるから!?

 


 

 ━━ダグベース

 

 「はっ!何かこう乙女がしちゃいけない顔をすーちんがしてる気がする!!」

 

 〈何を言っているのだ?〉

 

 メインオーダールームでゼータが天啓の様なモノを受け口走る。

 当然ブレイブ星人はそんな不合理な言葉の意図に理解が出来ない。

 

 「や、でも京都が元にリターンして良かったよね!てっきり空間系の神隠しは建物の位相入替えしてる壁作ったゲイジュツ星人とは別の異星人の能力かと思ってたもん」

 

 〈いや、その認識は誤りでは無い。一連の犯行から引っ掛かりを感じていたのだが、例の彫刻で確信を得た。今回の主犯はアーティシャン星人であるが、神隠しの実行犯は別人だろう〉

 

 「デジマ?!」

 

 自分が何気なく洩らした言葉をブレイブ星人が断言した事にゼータはショックを受ける。

 

 〈アーティシャンに別世界の空間に干渉する力は無い。奴は精々…星一つ内の物体の位置を操作する事が限度だ。勿論それも強大な力ではあるが…〉

 過去、自身が生きていた頃の記憶から犯罪者の特徴を挙げ列ねてゆくブレイブ星人。

 

 〈私が宇宙警察機構の任務で地球を訪れる遥か以前の事だ。その当時からアーティシャンの犯行は全宇宙に有名であった〉

 

 「えと…ブレイブ星人が元居た世界の地球…サルガッソとか言う監獄の囚人が暴れてたヤツだよね?」

 

 〈そうだ。アーティシャンも本来であればサルガッソに収監されている手筈であった。が、奴は巧妙に行方を眩ませ捕縛は難を極めた〉

 

 「でもでも~エデンから来たって事はぁ、結局捕まったんでしょでしょ?」

 

 〈その様だ。生憎、その時私は地球をサルガッソの脅威から守る為に六人目任命に地球へ急行した為、逮捕されたとの情報は後から知り得たのだがな〉

 

 ブレイブ星人が当時の事情を語り終えた様で沈黙する。

 ゼータはそれを見ながら…え?当時の詳しい資料とか無いの?宇宙警察も警察なんだから逮捕資料とかあるでしょ?と思ったが、そう言えばアルファ経由で聞いたブレイブ星人が最初に地球へダグオンを任命した時の事情を思い出し、何となくだが理由を察してしまい、呆れ、糾弾しようかとも思ったが、それよりはシータ達が集めてきただろうデータをアーカイブから引き出した方が早いかと断じ、コンソールに向き直った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ブラジル・アマゾナ

 

 「……まさか、反応が近付いて来た訳が…こんな理由とはな…」

 

 熱帯の密林、その一頃に不自然に出来たクレーターに立つリュウがポツリと呟く。

 

 「宇宙人の彫刻は動く事が普通なのか?」

 「さぁ?」

 足元に散った碧玉の欠片を踏み潰しながらゼノヴィアが首を傾げ、ジャンヌは知らないとばかりに短く返事を返す。

 彼、彼女等の眼前に聳え立つは碧玉色の大理石で出来た羽根が生えた巨大な獅子。

 顔面の1部をゼノヴィアのデュランダルとヘラクレスの神器"巨人の悪戯"の強化形態である禁手と呼ばれる形態【超人による悪意の波動(ディトネイション・マイティ・コメット)】、同じくジャンヌの神器"聖剣創造"の禁手【断罪の聖龍(ステイク・ビクティム・ドラグーン)】により砕かれ、その破片が辺りに散らばったのだ。

 また3人の攻撃の余波で一帯の植物が禿げ上げた為に大地にクレーターが出来てしまったのだが、必要最小限の犠牲として割り切る事にした。

 

 「それはそれとして、動物達の方に括り付けられた彫刻も破壊しなくちゃいけません……正直面倒臭いです。…にゃあ…」

 頭髪と同じ純白の猫耳をひっきりなしに動かして周囲に散った動物達を探す小猫。

 とは言え、当人は探知と発見時の破壊に加勢するだけで、追い込むのはシャドーガード達と姫和、沙耶香の2人。

 獅子と違い、あくまでも原生生物なので、目下己の命の危機である獅子から逃れようとしているのだ。

 

 「これで…!最後……」

 

 沙耶香が木々を跳び交う霊長類の背部に付着した彫刻を破壊する。

 これで彫刻(モナド)は獅子を除き全て破壊された。

 

 「やっと片付いたか…、後はあのやたらキラキラした獅子だけだな」

 小烏丸を片手に溜め息を衝く姫和がうんざりした様子で溢す。

 当初はリュウが想定した様に彫刻を無理矢理継ぎ付けられた動物を発見したが、反応に些か誤差が見られていた事や、動物達が怯えていると感じ取ったリュウが一帯の反応値から別に何かしらの存在を感じ、獅子を発見するに至った。

 

 獅子はどうやらある一定の距離を保ちながら彫刻を背負った動物達を追い立てていたらしく、反応に差異があったのは獅子の発する空間電磁波が大きく、動物達の彫刻のソレも含め共振していたという事が後の調査で判明する。

 さておき、人間と同等以上の知性を有する彫刻獅子は未しも、現地の原生生物である野生の動物達の対応は一筋縄では行かなかった。

 何せ逃げる。前門のリュウ一行、後門の獅子であるからして、今まで一塊に逃げていたのがバラけるのだ。

 姫和と沙耶香が迅移で追跡し、或いはリュウが分身して動物達を宥めている内に彫刻を破壊と言う様な行程を繰返し、獅子の元へ辿り着いたと言う経緯である。

 

  『ドラゴンプラズマバァァァァアンン!!』

 

 等と姫和がこれまでの事を振り返っている内に、何時の間にやら再び融合合体しシャドードラゴンと化したダグシャドーのドラゴンプラズマバーンに加え、ゼノヴィアのエクスデュランダル、英雄組の再びの禁手の攻撃で獅子のモナドが砕かれていた。

 

 「おぉ!?ロボットだけじゃなくドラゴンにも変型出来るとは多芸だな!」

 大剣を肩に担ぎ上げながらシャドードラゴンの姿に愉快そうに感心するゼノヴィア。

 

 「お供の子達も人型に変型するし、リュウってダグオンの中でも特別なのかしら?」

 獅子のモナドに確実にトドメを刺す過程でシャドーガード達がアニマル形態からヒューマノイド形態に変型したのを見たジャンヌが空から威風堂々と降りてくるシャドードラゴンを見ながら溢す。

 彼女の予想は兎も角としても、素の身体能力のスペックが6人中随一である事は変わり無いので当たらずとも遠からずと言えよう。

 

 「…次に行くぞ…」

 シャドードラゴンから再び分離したリュウが皆に告げる。

 こうしてアマゾナのモナドは破壊された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━インド・シッキム州

 

 「これは……参りましたね」

 目の前で起きている惨状…と言って良いのかすら分かりかねる事象に思わず眉間を揉みたくなるウイングヨク。

 

 ニュージーランド・カンタベリーに設置されていた石造りのモナドを速攻で破壊した後、即座にオーストラリアへと渡航、これまた物言わぬ木造の彫刻の為、早々に破壊し、現在インドのモナドを破壊しに来ていたのだが…………。

 

 「ねねーっ!」

 

 「よっしゃ!そのまま追い込めねね!」

 

 「今度こそジ・エンドにしてあげマース」

 

 薫とエレンがねねに追わせているモノの前に立ち塞がる。

 それも必要に足元を注意しながら。

 

 「今度こそイケるわね!」

 「もう疲れましたぁ~…」

 「頑張ってくださーい!」

 オカ研メンバーは長船コンビから距離を取りながら彼女達にエールを送る。

 当初はリアス、ギャスパーも追跡に参加していたものの、相手との相性の悪さからリアスは早々に戦力外通告を受け、ギャスパーは疲労でヘタりこんでいる。

 アーシアは元より回復後方要員なので頭数には入って居ない。

 では何故薫とエレン、そしてねねだけが活動しているのかと言うと、現在、彼女達が追い込みたてて破壊しようとしているモノが雪兎の雪像を模した動くモナドであるからだ。

 そう雪像である。その為ヨクも不用意に攻撃出来ない。彼の攻撃では雪像のモナドは体積を大きくさせるだけであり、しかしだからとてクリスタルブーメランを使用しても本体は小さいままなので増えた体積を変り身にして逃げキリの無い鼬ごっこになる。

 同様にリアスの消滅の魔力攻撃でも似たような逃亡方法を取られた為、最早彼等は下手に刺激せぬ様に刀使達とその相方である小さな荒魂に頼るしかないのだ。

 

 「他の皆は上手くいっているでしょうか……」

 

 「トッタゾー!」 「ネネー!」 「Congratulation!!カオルー」

 

 天を仰ぐヨクの後ろで凸凹コンビが勝鬨の声を挙げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ロシア・オムスク

 

 「っぁあ!!ぺっ…、クソッ…砂が口に入ったじゃねぇか!!」

 呼吹が腕で顔をガードしながら先の見えない砂嵐に叫ぶ。

 

 「七之里呼吹、下手に動かないで下さい。アーマーシンの集中が途切れてしまいます」

 アーマーライナーに身を隠す木寅ミルヤが荒れて叫ぶ呼吹を冷静に嗜められる。

 

 「ちょっと~?ホントに見えてるのかにゃ?」

 

 「見えてんよ、オレのダグテクターは遠距離火力を確実に叩き込む為の望遠センサー諸々強化されてんダ。この程度の物理的ノイズなんザァ屁じゃネェよ」

 

 同じ様にアーマーライナーに隠れる黒歌が胡散臭そうな目でビークルの屋根に立つシンへ訊ねる。

 それに対しシンはバイザーに映る情報を精査しながら2丁のアーマーライフルを腰だめに構える。

 因みに、レオナルドはドイツのモナドの破壊に大きく貢献し、現在はアーマーライナー内にて休息を取っている。

 シンが述べた通り、彼のダグテクターは遠距離の火力による攻撃に秀でた物である。

 故に高性能な望遠機能、敵識別機能を有している、更に言えばターボカイ、ウイングヨクと情報を相互共有する事でその性能はより跳ね上がる。

 アーマーライフルにしても外見は小銃から機関銃間といった様なデザインであるが、多様な場面で様々な使い方が出来る。

 近距離ならばショットガンの様に、長距離ならば狙撃銃の様にだ。

 それに加え、胸部ブレストモーターキャノン、肩部、腕部のミサイルにより充実した火力が敵を面制圧する事が可能である。

 砂嵐は確かに強烈であるが、その発生源が標的であるなら、その場所から動かないのであれば、暴砂以外に身を守る手段が無いのであれば、モース硬度が10あろうが、アーマーシンであれば撃破出来る。

 

 「オラオラオラァッ!全火力集中斉射(オープンフルバースト)だぁっ!」

 

 ミサイルの爆風が砂嵐に道を作る。アーマーライフルの弾丸が標的に轍を入れる。

 ブレストモーターキャノンがその轍を広げ彫刻に大きな罅が入る。そして矢継ぎ早に撃ち込まれる弾丸が、弾頭が物言わぬ敵を粉々に蹂躙する。

 

 やがて空が晴れ、嵐が収まり、後に立つのは深緑の戦士と数人の少女達のみ。

 

 「シャァあ!次に行くゼ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━エジプト・サハラ砂漠

 

 熱砂が広がるサハラの上空をターボライナーが飛ぶ。

 目的はこの砂漠の何処かに存在するであろうモナドと呼ばれる彫刻を探す。

 

 そして、その彫刻は存外に早く見付かった。

 

 「成る程、アレか…確かに不釣り合いだな、この景観には」

 

 コクピットから覗く光景に得心が言ったように洩らすターボカイ。

 結芽が注意深くバランスを取りながらカイの背中越しにソレを見る。

 

 「すごーい!キラキラしてる!」

 

 少女が感嘆と好奇の声を挙げる。

 

 それも当然だろう、黄金色に輝く熱砂の上にポツンと置かれた硝子の彫刻。

 透明なその構造体は空の様に透き通っており、陽の光を反射させ眩く輝く。

 ソレを星人がどういった意図で配置したのかは知れない事であるが、何かしらリスペクトがあったのだろうその硝子の彫刻は入れ替わった構造物と同様"スフィンクス"であった

 

 「なまじ美しい分、不自然極まりないな。それとも宇宙人にすら通じる古代エジプトの建築様式を讃えるべきか?」

 

 『その様な些事に構けているな。他にらしき存在も無い、反応からしてあの細工が異星人の仕掛けた物である事は間違い無かろう』

 

 宇宙にすら通用するスフィンクスの造形に何とも言い知れぬ思いを抱いている所に並走して飛ぶライアンから叱責が跳んで来る。

 

 『あの様な物、私が早々に叩き斬って破壊してくれよう!』

 

 そのままカイからの返事も待たずに剣と化しているライアンは一直線に硝子のスフィンクス目掛け降下して行く。

 

 スフィンクスの頭部と獅子剣の切っ先が触れようかというその瞬間、黒が入り雑じった稲妻がライアンを弾き跳ばした。

 

 『何っ?!』「何だとっ!!?」

 

 弾き跳ばした稲妻の正体は人間と大差無い大きさのシルエット。

 硝子細工のスフィンクスの鼻先に立つそのシルエットにはカイ、結芽にも見覚えがあった。

 

 「あのおねーさん、一緒に来てたんだ……」

 

 「御刀を使う異星人…"怒れる"ラーシュメイラだったか…」

 

 歴史上に存在しない御刀、霊獣の名を関したソレを持つ女が凶悪な笑みを湛え上空を仰ぎ見る。

 

 「紫のヤツはかなり楽しめた。赤いヤツはそこそこだが伸びしろがある。黒いのは硬いだけで旨味が少ない、白いのは歯応えが無さそうだった、緑のヤツは黒いのと近い感じがする……後は貴様だけだ青いの!ダグオンで貴様だけはまだ味わえて無いからなァ!」

 

 御刀麒麟を向けターボカイを指名するラーシュメイラ、その行動に馬鹿馬鹿しいと切って捨てたい所だが、モナドに陣取る彼女をどうにかしなければ先に進む事すら出来ない以上、無視は出来ない。

 後ろの客車でも曹操、祐斗がラーシュメイラの姿を窓から確認し戦慄する。

 

 「あの時の女傑か、厄介だな」

 「主だった目的はカイくんみたいだね」

 

 「あんな綺麗なお姉様なのに何だかおっかない感じビンビンしてますねぇ~、智恵さんとは別ベクトルで」

 

 「由依ちゃん?」

 

 同じく窓から硝子のスフィンクスとラーシュメイラを眺めていた由依が女傑の身形を評しながら智恵を引合いに出して、当の智恵から笑顔の圧を当てられている。

 

 

 「だんまりか…別に逃げても構わんぞ?その代わりに貴様が戦う気になるまでこの星で暴れるだけだがな!!

 嘲る様に吼えるラーシュメイラ、彼女が言う通り、カイがこの場を無視し他の場所のモナドを優先したとして、ラーシュメイラはエジプトを蹂躙し、そのまま地続きに他の国々を破壊し尽くすだろう。故にこそ、だからこそ、自らの善性に従いダグオンとして活動するカイには無視が出来ない。

 

 「皆、申し訳無いが……彫刻の破壊を任せても良いか?あの女の望み通り、奴の相手は私がする」

 

 カイが砂地にターボライナーを降下させながら、コクピットのマイクを通して客車の同乗者達に自らの選択を告げる。

 

 「ふ…そうでなくては面白く無い。さぁ、私の飢えを充たしてみせろ」

 

 砂地に着地したターボライナーの扉が開く、青い人影が熱砂に再び降り立ち、そして次の瞬間にはその姿がラーシュメイラの目の前から掻き消えた。

 

 ガキンッ!と金属がぶつかる音が響く。

 

 片や御刀、片や特異な技術で作られた装甲の蹴撃、ターボカイの蹴りを悠然とした態度で受け止めるラーシュメイラ。

 バイザーの奥で鋭い眼光を飛ばすターボカイ。

 

 置き去りにされた音が今になって風と共にターボライナーに轟く。

 

 「成る程……速いな、紫のヤツとは別の意味で速い。それでいて鋭く、力も申し分無い蹴りだ」

 

 「賞賛は素直に受け取らせて貰う。だが、容赦はしない!」

 

 止められた蹴り込みを構わず押込みスフィンクスから引き剥がすカイ。

 ラーシュメイラも特に抵抗せず慣性に従い飛ぶ。

 

 「今の内ですわね」

 客車側の扉から覗いていた朱乃が中に留まっていた皆と顔を合わせ頷くと行動に移る。

 

 「この中で火力があるのは副部長──朱乃さんだけだ。今は他に敵は居ないみたいだけど、念の為…周囲を警戒しよう」

 祐斗が朱乃を中心にしたフォーメーションを展開し、攻撃の為の準備に集中する朱乃を守るようにしながら残りの面子に声を飛ばす。

 

 「けどけど…あのガラスのスフィンクスってどう考えても動きませんよね?ココに飛ばされた時に一緒に来た荒魂とアリの宇宙人はみんな倒しちゃいましたし、他に敵って居るんですかね?」

 至極当然の疑問を由依が口にする。

 

 「どうだろうね、敵は何でもアリの宇宙人なんだろう?我々の予想だにしない事が起こる可能性はゼロじゃあ無い。違うかい?」

 そんな由依の疑問に曹操はニヒルに口元を歪めながら答える。

 

 その一方で蒼い疾風と黒黄の稲妻が、音と光を置き去りにして衝突を繰り返す。

 

 「凄まじいな」

 

 「辛うじて…まだ眼で追える速度で戦っているね」

 

 「そうなんですか!?いや~あたしにはもう何が何だかサッパリですよ」

 

 「そう言えば…あのフードの娘の姿が見えないけれど……」

 

 警戒しながらもカイとラーシュメイラの戦いを傍観する曹操、祐斗、由依。

 智恵が先程から姿を見ない結芽の存在に言及した瞬間、先程ラーシュメイラに吹き飛ばされたライアンが、人間が握れるサイズの大きさのまま凄まじい勢いで戻って来る。

 

 「行くよ、おじさん!」

 『応!』

 

 ライアンがターボライナーを横切るタイミングでフードを深く被ったままの結芽が跳び出しライアンを握り、1度、着地と同時にその場で一回転をして見せる。そして直ぐ様迅移にて疾風と稲妻の戦いの渦中へと飛び込む。

 

 「嘘っ!?あの娘、あの二人の戦いに割り込むつもり!!?」

 未だ結芽の正体知らぬ智恵は彼女の無謀さに眼を見開く。

 

 

 

 「やぁぁぁああ!!」

 

 「ほう…!あの時の小娘か!」

 

 結芽の突然の強襲にも慌てる事無く、女傑は麒麟でライアンの刃を防ぎ、空いた左腕でカイの攻撃をも受け止める。

 

 「二対一で相応……と言った所か?お互い、あの時、あの街では思うようには戦えなかったからなぁ?」

 そう言う彼女の額には再び皮膚を突き破り角が伸びてきている。

 

 「どの口が…!貴様はあの時好き勝手暴れていたろう!」

 カイが駒王での戦闘の際のラーシュメイラの暴れぶりに眉を潜める。

 

 「いいや、あれでも私としては抑えていた方だ。何故ならあの時はザゴス円盤相手に戦っていた貴様らダグオンを見逃していたのだから」

 

 「何それ!それじゃ私たちだけなら簡単に倒せたって言ってるみたいじゃん!!」

 

 「そうだとも。とは言ってもお前や、もう一人の刀使、白い鎧の男辺りは残ってはいただろうが…いや、あの女神云々ほざいた女も何かしら隠し球があったか?まぁどうあれそれ以外ならば容易く再起出来ぬよう痛めつける事は可能だったとも」

 

 結芽の不平に鼻で笑いながら黒光が混じった稲妻が応える。

 そうしている間にも彼、彼女達の戦闘は尋常為らざる速さで攻防を繰り広げる。

 

 

 

 

 

 

 「行きますわ!雷光よ!!

 同時にスフィンクスのモナドの方では朱乃に動きがあった。

 魔力と光力を極限まで高め、練り上げた雷と光の攻撃をスフィンクスの頭上から叩き付ける。

 轟音と共に立ち上る砂塵──

 

 「やったか!?」

 祐斗が思わず溢す。

 

 「っ?!避けて!!」

 何かに気付いた朱乃が叫ぶ。同時に砂塵の向こう側から極大の光が彼女達に向け放たれる。

 

 「くっ…!」「ちぃっ…!」

 「わわっ!?!」「一体何が?!」

 

 朱乃の言葉に従い皆何とか躱す。果たして砂塵が晴れた向こう側にあった光景は、なんと、硝子細工で関節すら存在しない筈のスフィンクスが、ゆっくりと立ち上がる姿であった。

 そしてその体の中では幾重にも光が反射を繰り返している。

 

 「まさかとは思うが……あのスフィンクス、姫島朱乃の放った雷光を体内で分離させて雷を動力に、光を攻撃に転換させたのか?」

 曹操が所感からスフィンクスの仕組みを推測する。

 

 「これは下手な攻撃は出来ませんわね……」

 雷光を放った朱乃が冷や汗を頬に一筋浮かべながら困った笑みを浮かべる。

 

 「カイさんは……まだ無理そうね」

 智恵が目を向けた先、何も無い砂地が瞬いたかと思えば、砂が大きく撒き上がり激突音が遅れて聴こえて来る。

 

 

 

 「滾る…滾るぞ!ハハハハハハッ!魂が滾り震える!!魂ィ!魂ィィィイイイイ!!」

 カイと結芽の攻撃を捌く度にラーシュメイラの身に刻まれた刺青がうねる様に広がっていく。

 

 (結芽と二人掛かりで尚この劣勢、彼方の方(スフィンクス)も苦戦している…これ以上奴に掛かりきりになる訳には…)

 埒の明かない状況に苦い顔をするカイ、だがそれ以上思考に耽る事を敵の苛烈な攻撃は許してくれない。

 

 一方、結芽の側にもこの極限の戦闘下に思わぬ危機を迎えていた。

 

 (むぅ…何だか重い……体が思うように動いてくれない!なんで!?)

 ラーシュメイラと渡り合う為に試作型VRS装備の機能を使用し、迅移の深度をより深い段階まで負担を軽減している。

 とは言え試作品の段階では休止を挟まない連続使用の負荷にアーマーが耐えられない。なれば必然、その負担は結芽の生身の体に還って来る。

 そしてVRS装備その物も度重なる激戦での酷使に白煙を上げ始める。

 

 「惜しいなァ?貴様の才に身体と装備が着いていけて無い。惜しい…本当に惜しいなァ、しかし容赦はしない!!」

 麒麟が紫電を迸らせる。刀身を横薙ぎに力強く振るわれ、力の差で結芽が押し負け、迅移の時間流から弾き出される。

 

 「ぁうっ!」

 

 「結芽!!」

 

 愛妹が吹き飛ばされたた事で、何とか拮抗出来ていた攻防に隙間が生まれる。

 

 「笑止!仲間に気を取られるとは命取りだなァ?!」

 

 「くっ…ぬぉ!!」

 

 カイを電雷で強化した蹴りで引き離す。

 

 「弱い者、弱った者を優先して狩り取るのが戦場の常識だ!!」

 カイとの距離が拓いた僅な間で両の手で麒麟を握り、雷力を込め巨大な稲妻のエネルギーで刀身をコーティングし振り下ろす。

 それはともすれば極大のビームの様である。

 

 「させん!(瞬間加速!(アクセルブースト))」

 

 カイのダグテクターに登載された超加速機能により瞬時に加速し結芽の前に立ち庇うように身構える。

 

 「シールドスモォォォクッ!!」

 ダメ押しとばかりにシールドスモークを展開させ少しでも威力を霧散させようと足掻く。

 

 そして光が弾けた。

 

 

 「か…カイさ…「お兄ちゃん!!!?」…え…?」

 

 スフィンクス相手に逃げながらも隙を付いては御刀で斬り付けるを繰り返していた智恵がカイが光に呑まれる瞬間を目撃し、震える声が溢れ出たと同時、被せるように悲痛な悲鳴がフードの少女から飛び出した事に困惑を露にする。

 

 (今…あの娘、カイさんの事をお兄ちゃん…って呼んだの?兄妹?ならダグオンの正体はやっぱり人間……なら以前ミルヤさんが言っていた事は……)

 思わず思考に耽って立ち止まる智恵、そんな格好な獲物をスフィンクスは見逃さない。

 

 「危ない!」

 そんな智恵を救ったのは騎士の機動力を持つ木場祐斗。

 智恵は彼の腕の中に抱き抱えられている。

 「あ…ありがとう…ございます」

 

 「いえ、それより怪我はありませんか?」

 

 「私は大丈夫です…けど、カイさんは…」

 

 助け出され気遣われた事に対し返礼を返しつつ、光に呑み込まれたカイの安否を訊ねる。

 その答えは間も無く判明した。

 

 

 「ほう…連中の中では柔い方と践んでいたが、先の煙幕がダメージを最小限に抑えたか」

 

 ラーシュメイラが言う通り、ターボカイは全身装甲に亀裂が走り、黒煙を上げながらも健在であった。

 

 「ぐ…ぅぅ…そう簡単に…倒れる訳には…いかんのでな…」

 とは言え、息も絶え絶えとも取れる状態は危険域に近い。

 

 「フハハ!虫の息じゃあないかァ、ならば早々に引導を渡してやらねばなァ!それが我が魂を滾らせた者に対する返礼と言うものよ!!」

 

 言うや否や再び麒麟の刀身に紫電を迸らせる。

 

 (この…ままでは…!)

 真面に動けぬこの状況にカイは戦慄し、焦りながらも打開策を巡らせ続ける。

 

 (やだ…やだ…やだ!せっかく一緒になれたのに!前よりずっと楽しくなれたのに…このままじゃお兄ちゃんが死んじゃう!そんなのは嫌だ!!)

 最早、完全にシステムが沈黙しデッドウェイトと化したVRS装備のアーマーを引き摺りながら力を振り絞る結芽。

 

 「ぅぅぁあ…ぁぁあああああああ!!

 叫ぶ。必死に叫んで、しかし現実は非情である。

 どれ程力を込めようと、疲労と負荷で痛め付けられた身体は動いてはくれない。

 どうすればいい?どうしたらいい?と必死に叫んで考える。

 そうして唯一思い付いたのが自分が握っているモノに兄の命運を託す事であった。

 

 「助けて…おじさん…ううん、ライアン。お兄ちゃんを助けて!」

 この時ばかりは天才刀使でも無ければダグオン準隊員でもない、1人のか弱い少女の心情を吐露する。

 そして獅子剣はその願いに暫し沈黙し、獅子の瞳を赤く煌めかせる。

 

 『オオォォォォオオ!』

 咆哮と共に黄金の獅子剣は結芽の手を飛び出しカイの元へと辿り着く。

 

 「悪足掻きか?それも良いだろう!」

 紫電が黒雷となり先程の比では無い程の極光が刀身を包み光の柱の様になる。

 怒れる女傑はその柱を躊躇無く振り下ろす。

 

 『ターボカイ、私を手にするが良い』

 「…………イチかバチか、分の悪い賭けだが、やってみる価値はあるか!」

 今にも自らを押し潰さんとする光の柱を前に手にしたライアンを握り、柱を見据え振り上げる。

 一瞬、音が消える。

 

 遅れて超大な轟音が耳をつんざく様に轟く。

 

 「「カイさん!?」」「「カイくん?!」」「ターボカイ!!」

 

 「お兄ちゃぁぁぁああんんん!!

 

 由依が、智恵が、朱乃が、祐斗が、曹操が彼の名を呼び、結芽が目尻に涙を浮かべて叫ぶ。

 

 

 「ほう…!ほう!!フフ…フハハハハハ!!何だ、まだまだ楽しめるではないか!!」

 ラーシュメイラが歓喜に声を挙げる。

 その声を聞き、皆が光の柱が降りた場所を注目する。砂塵が段々と晴れ、姿が顕になる。

 

 其処に立つはターボカイ。黄金の獅子剣ライアンを手に、極光の雷の柱を彼は断ち斬った。

 これぞ、ターボライオソード疾風烈断。加速の力とあらゆるモノを斬り咲く刃が、膨大なエネルギーの塊を真っ二つに斬り伏せたのだ。

 

 「悪いが、此方も余裕が無いのでな。貴様の道楽に付き合うつもりは更々無い」

 言い、上段左半身となってライアンを構える。右手は握り手の中心部、左手は柄頭に添え、左脚を前に半歩踏み込む様に出して呼吸を整える。

 

 「それは苛立たしい…が、存外貴様は立ち上がる。そんな予感がする」

 告げ、左中、薬指の間に麒麟の刃の峰をを通し、御刀を寝かせる様な動作で右肩を押し出す様に構える。

 

 互いに睨み合い、その一時だけ時が永遠の様にも思える空気が蔓延する。

 言葉は無い、只々互いの視線が交差し合い、緊張の一瞬が漂う中で、果たして誰の汗だったのか…一滴、落ちた瞬間に動いた。

 

 2つの刃が交差し、肉が斬れ、弾け跳ぶ。2人の立ち位置が入れ替わり、止まる。

 

 ターボカイのダグテクター、その左肩のマフラーが綺麗に斬られ、落ちる。

 同時に砂の地面にはラーシュメイラの右腕が麒麟ごと落下する。

 

 「俺の勝ちだ…!」

 

 「クフ…フハハ!そうだな!この競り合いは貴様が勝ちを取った。しかし、この戦その物に決着が着いた訳ではないっ!!」

 腕を斬られたと言うのに嬉々として嗤いながら、宣言するラーシュメイラ、その言葉通り、残る左腕から電磁力場を飛ばし、砂に突き刺さった麒麟を回収する。

 

 「さぁ!命尽きるまで戦うのだ!それこそが修羅の道よ!!」

 上機嫌に謡う女傑に万事休すかとマスクの下で噛み締めるカイ。

 来ぬのならば此方から参るとばかりにラーシュメイラが踏み込もうとしたその瞬間、彼女は急に足を止め、顔を斜め上に向け眉を潜める。

 

 「はっ…?いえ、しかし…私としては此処からが………いえ…滅相もございません。我が怒りは全て貴方様の為に…」

 虚空を見つめながら何事かを呟くラーシュメイラ。やがて舌打ちを小さく打ち麒麟を自らの口内へと仕舞う。

 

 「甚だ遺憾だが、我が至宝より帰還せよとの仰せが下った。今回は見逃しておいてやる。次に会った時、きっちり成長しておいてくれよ?ああ、それと…我が腕をもぎ取った貴様に、相応の礼をしてやろう………シッ!」

 満身創痍で尚戦意を衰えさせないカイへ苛立ちと愉快さをない交ぜにした口調で語り掛けるラーシュメイラ。

 おもむろに左手を硝子細工のスフィンクスに向けたかと思うと、一条光が迸り、次の瞬間にはスフィンクスは粉々に砕け散った。

 

 「何っ!?」

 

 「さらばだダグオン。次に会った時こそ、修羅の真髄を見せてやろう」

 言い、黒黄電光は空に向かい稲妻を走らせ消える。

 完全にラーシュメイラが居なくなったのを確認し、カイは膝を着く。

 

 (見逃された…と言う事になるのか……。俺もまだまだ未熟だな)

 ライアンを杖にしながら今一度立ち上がり、結芽の元へと近付く。

 

 「無事か?」

 

 「うん…」

 

 そんなカイに試作VRS装備を着脱し、しがみつく結芽。スフィンクスに対応していたメンバー達も、心配を滲ませながら近付く。

 

 「カイくん、大丈夫かい?」

 

 「随分と手酷くやられた様だが…」

 

 祐斗と曹操が訊ねるとカイは首を僅かに動かし視線だけ向け、おもむろに告げる。

 

 「済まないが、皆、先にターボライナーに乗っていてくれ。我々は後から行く」

 そう告げると後は何も無いとばかりに黙る。その意図を理解した祐斗達は、結芽を訝しげに見つめる智恵と、結芽に抱き付かれたカイを羨ましそうに眺める由依を諭しながらターボライナーへと向かう。

 

 2人きりとなった砂の大地、カイが結芽をあやす様に声を掛ける。

 

 「さぁ、いつまでもこうしている訳にはいかん。我々も戻り、次の場所へ向かおう」

 

 「ん」

 

 『であれば、私は先に行く。異星人の彫刻とやらを私が先に当たりを付けておいてやろう』

 少々不躾な物言いだが、ライアンなりに兄妹を思っての発言を残し、カイの手を離れ空の彼方へ消える。

 

 ターボライナーへ2人揃って乗り込み、コクピットにてカイは一度戒将の姿へと戻り、再びターボカイへと変身する。

 これによりカイ自身のダメージは兎も角、ダグテクターの傷は完全に修復される。

 その後、マイクを通して2、3同乗者達に何事かを告げると300系ひかりの姿形をした高性能ビークルは空に飛び立つ。

 

 後には量子崩壊を始めるVRSアーマーが砂漠の風に運ばれるのみ。

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 見て!ピザの斜塔が戻って来た!!

 

 ピサの斜塔な?

 

 凱旋門も帰って来たみたい。

 

 いやぁ苦労したぜ。まさかファイヤージャンボで空飛ぶ彫刻を壊したかと思ったら、壊した彫刻の中から本体?の彫刻が車みたいなるなんてな~。

 

 うっぷ……お陰でカーチェイスに付き合わされて酔っちまった……。

 

 情けないな、それでも赤龍帝か?

 

 お前だって膝が笑ってんじゃねぇか!! 

 

 楽しかったね!

 

 (衛藤は平然としてたなぁ)

 

 次回、刀使ノ指令ダグオン。

 

 戦士再集結!とっておきのセカンドアタック。

 

 わーっはっはっは!!遂に出来たよプロトタイプ無限砲!!と変形出来ないドリルライナー

 

 ダメぢゃん

 




 ─86─エイティーシックス、アニメの分割1クール目をあそこで切るとは思わなかったなぁ、取り敢えずフレデリカが2クール目に出るのは確定にかなぁと。
 ファイド可愛いよファイド。

 夏は夏で現実主義がアニメ化しますし、ええ、これも原作持ってます。
 最近は積み気味でせうが。

 ヒシアマさん欲しいな……。

 来月どこまで投稿出来るか分かりませんがまた次回。
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