刀使ノ指令ダグオン   作:ダグライダー

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 こんばんは。
 遂に戦闘の決着、後は後日談的なエピローグを残してこの異世界編は終わりとなります。

 遂に終わってしまったとじとも……大変楽しかったですお世話になりましたお疲れ様です。

 いやぁスパロボ30ヤバいですね、楽しい。惜しむらくはプレミアムサウンドがDLC限定な事でしょうか、私PlayStationStore繋げてないのでソフトは普通に直に購入したんですよね。



第九十三話 最終決戦その3!二天龍VS二大巨獣。激突女神と偶像。

 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 うーん困った。GPSだと関東の何処かのはずなのに…。

 おかしいなぁ、迷子になるにしてもこんな事今まで無かったんだけどなぁ……?!あれ空が歪んで…!?

何か蜃気楼のような物が……っ!!?ダグオン!!

 

 って…!うわっ?!

 

衛藤雷火・偶然帰還前に偶然次元の歪みで現れたダグオン・異世界人と異星人の戦いを数秒目撃。調書報告○七より

 


 

 ━━歪曲断層・断崖クレーター内

 

 4体の勇者が巨大な敵を異世界の仲間と共に戦っている頃、女神パープルハートと赤と白、二天龍の力を振るう戦士達もまた各々に相対する強敵と火花を散らしていた。

 

 二天龍……兵藤一誠とヴァーリ・ルシファーが相対している怪獣は()()()()の左右で色が別れた甲冑と肉体が一体となった2対の半人半獣。

 種を変え品を変え、青黄が一誠を幻で翻弄したかと思えば、次の瞬間にはヴァーリの背後を強襲し、緑赤がヴァーリと正面から衝突したかとも思えば、一誠の真横から痛烈な剛腕を振るう。

 

 「見た目の図体の割りに…速い、堅い、鬱陶しいと厄介な三拍子のオンパレードだな」

 『こちらが慣れる前に互いが入れ替わる…。双方ともあの不可視の壁と同様半減が意味を為さない』

 「効いていない訳では無いのだろうが…こちらが半減や吸収をするよりも早く元のエネルギー総量に戻るか…警戒されたものだな」

 自らの神器に宿る白き龍と語らいながらどう戦ったものかと俯瞰する。

 

 一方で一誠は一誠でどうにも必死になりながら駆け回っていた。

 

 「くそったれっ!ヴァーリの野郎空から余裕そうにしやがって」

 『相棒も悪魔の翼で飛べば良いだろうに』

 「簡単に言ってくらるなぁ?!あんなん相手に長時間も飛べるかっての!!」

 赤龍帝の鎧に翼が存在しない事もあるが、そうでなくとも高速空中戦をあの2体の巨獣相手に慣れない身で仕掛けるのは無謀である。

 

 『だがどうする?そろそろ何か手を打たんと不味いだろう』

 「やっぱ、あの貰ったの使うしかないよなぁ…でもなんかそこはかと無く不安があるなぁ」

 『埋め込まれた側としてはまぁ何だが、特にこれと言っておかしな感覚は無い。いや発動してみない事には正確な所は言えんが』

 「だからって何時までもコイツらに気を取られる訳にもいかねぇ!あの宇宙人を倒して俺達の街を元のカタチに戻さねえと」

 言って急速を緩め、くるりと振り返る。

 

 「行くぞドライグ!」

 『おう!Boost!』

 相棒の声に応え強化の言を発する籠手の宝珠。

 

 『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!』

 

 繰り返される力の増幅。これを敵と交戦を続けながら都合数百回目、転生悪魔の少年は自らを世界の管理者と宣う存在から与えられた力を起動させる。

 

 

 「よっしゃぁぁあっ!"起動"!!」

 『Explosion!Transfer!!Awaken!Gordion Hammer!!』

 籠手より出でるミョルニルに翠晶粒子が纏わり付いて形を変える。

 金色の鉄鎚が橙色の大鎚らしきツールに変化を完了させた。

 

 「【勇者王】GGG式ハイパーツール!ミョルニルオンハンマー………って、ピコピコハンマーじゃねぇかぁぁぁああ!?!?」

 マテリアライズされた武装に思わず叫ぶ一誠、よく見ると右手の籠手もかなり変化しているのだが、彼の注意はツールの方に釘付けになっている。

 

 「ちくしょう!不良品掴まされたぁぁあ!!」

 『いや待て相棒、コイツは……』

 嘆く一誠に何かを伝えようとするドライグ、しかしそんな彼等のやり取りを隙と見た緑赤の強獣が襲い来る。

 『っ…!来るぞ相棒!』

 「だぁぁぁあ!!ままよっ!!」

 自棄っぱちに吠え強襲する敵をハンマーを我武者羅に振るう事で迎撃しようとする一誠。

 だからこそ、敵も彼の持つ()()を侮った。

 自らの腕の一振で容易く破壊出来ると踏んだ強獣はそのまま一誠ごと叩き潰そうとして腕を大きく振り下ろす。それで終わる筈だった。

 我武者羅に振るわれたハンマーが己の手を打ち弾き、亀裂を入れるとも露にも思わず。

 

 「はぇ?」

 

 一誠も自らがもたらした結果に思わず間抜けな声を洩らすが、しかし目の前の事象は間違い無く現実である。

 対し大いに狼狽える強獣はその本能に従って距離を取る。

 

 「マジか!」

 『ああ、マジだ。このミョルニルを変化させたハンマー…とんでもない代物だ。コイツに力を込めればやり様によっては国を一振で滅ぼせるぞ』

 「え…、何それ恐っ!メッチャ恐ェェ」

 与えられたツールの真価を語るドライグからの評に戦慄する。

 

 「やれやれ、中々とんでもないモノを貰ったじゃないか」

 

 「ヴァーリ!」

 

 「今のでもう一方も警戒を強くしたのか、君達とこうして語らう時間が出来た。さぁ奴等を倒す策を練ろうじゃないか」

 赤と白が並び立つ。

 

 「で、具体的にどうするんだ?」

 「俺が君を抱える。君も自分の羽を出して俺の飛行の助けになる事だ。そして俺が君を投げる。敵の片方をそのハンマーで叩け」

 「くそ雑いなぁ!?てかお前はもう一方の敵、どうするんだよ、さっきのディバインディバイディングドライバー?だかはもう使えないんだろう」

 「フッ…そんな事か。生憎と無用な心配だな、あの時アルビオンにインストールされた武装は1つでは無い」

 その言葉を聞いて一誠は鎧の下で顔をしかめる。

 

 「なんだそれ、ズルい!」

 

 「と言われてもな、元々アルファは俺にこれも使わせるつもりだったようだからね」

 『Divide!Divide!Divide!Ignition!!』

 戦場に散見する余剰エネルギーを半減させ、その力を受け取ったもう1つの武装の起動に使用する為の火を手に入れるアルビオン。

 敵から吸収した物を含めたエネルギーを再び左腕に収束させる。

 

 『Dimension!Boulding Driver!!』

 

 ソレは龍の尾を分割した物体が結合したカタチを成していた。

 ソレは破壊神の力を模したガジェットツール。

 

 「【勇者王】ジェネシック式ガジェットツール。ディバイドボルディングドライバー」

 本来黒い筈のソレはヴァーリの白龍皇に合わせて光を照り返す純白の円錐。

 

 「くそぉぉぉっ!カッコいいし!いや、それにしてもまたドライバーかよ!?」

 一誠が言う通りヴァーリの左腕のツールはまたしてもドライバー。

 但し、先のモノと違い螺子回しの先端を取り替えるアタッチメント方式型である。

 

 「行くぞ、暴れるなよ」

 

 空いた右の腕で一誠の鎧の首元を掴む。

 

 「もう少し運び様があるだろっ!?」

 

 文句を言いつつ悪魔の翼を出してヴァーリに掛かる負担を減らす。

 と同時に巨人達の戦場で大きな動きがあり、青黄の幻獣、緑赤の強獣、2体の巨獣が僅かに其方に気を取られる。

 

 『出来たな』『ああ、最大級の好機だ』

 

 「投げるぞ!」「こうなりゃとことんやってやるよ!!」

 

 巨獣達の頭上まで飛んだ2人、ヴァーリの声に合わせて身体を捻りながら構える一誠。

 器用に片手で人1人を投げるヴァーリも見事だが、投げられる方も身体の動かし方は見事だと言えよう。

 

 「行くぜぇぇぇぇぇぇ!!ミョルニルオンハンマァァァア!!光になぁれぇぇぇぇえええ!!!

 

 振りかぶった大鎚を強獣の頭頂部へ叩き付ける。

 その一撃は触れた物全てを原子レベルで素粒子分解する文字通りの一撃必殺。

 一誠のサイズに合わせて、あくまでも人間が持てるサイズの大鎚にまでダウンサイジングされているが、ドライグの増幅と強化により、サイズそのままでも自身の数倍あろうかと言う巨獣を倒す事など訳無い。

 強獣は一誠の言葉通り、光の塵と消えた。

 

 「す…すげぇ……武器なんてレベルじゃねぇ」

 『ああ、戦略兵器と断言するのも過言じゃない。歴代赤龍帝も真っ青な代物かもしれん』

 自身の能力ありきとは言え、巨大な敵をこうも容易く破壊…否、分解消滅させた事にある種の怖気すら感じるドライグ。

 感情の暴走の果てに行き着いた覇龍に匹敵するだけの結果を別世界の人類の叡智が、異星からの情報があったとは言え己の技術で再現するのだから末恐ろしさを感じるのも無理からぬ事だ。

 

 『赤いのが敵を倒した様だ』

 「ならばこちらも片付けてしまおう。ディバイドボルディングドライバー!」

 白き輝きを放つ破壊神の力、その名を高らかに叫び幻獣へと吶喊する白い閃光。

 

 『まずはコレだ』

 「プロテクトボルト!」

 アルビオンが選択したアタッチメントはプロテクトボルト、本来はディバイディングドライバー同様、空間歪曲によりバトルフィールドを生み出す物だがアルファの手が入り、アルビオンによって歪曲の指向性を調節された結果、幻獣を捕らえる檻と変質する。

 

 「次だ」

 『了解した』

 「ブロークンボルト!」

 檻の中で抵抗する幻獣目掛け、先端をブロークンボルトへと変更する。

 ブロークンボルトは龍王の波動を湾曲空間に通し檻を無視して幻獣へ直接衝突させる。

 すると幻獣は内部より爆発を起こす。それにより左右に別たれる上半身、但しその切断面は不自然な程に綺麗過ぎる。

 

 「ほう…奴の正体は二匹の怪物が一体となった物だったか、だが分離する暇も再生する暇も与えん」

 『これが最後だ』

 「決める。ジェネシックボルト!!塵芥と帰せ!

 最後に装着されたアタッチメント、ジェネシックボルト。

 ぶつけた目標を広範囲に半永久的に内部分解させると言う恐ろしい兵器だ。

 青い右半身に打ち込まれたソレは瞬く間に黄色い方にも伝播して、幻獣の存在を無き物とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ただの彫像と甘く見ていた訳ではないけれど……予想以上に手を焼かせてくれるわね…!」

 

 同じ頃パープルハートも目の前に立ち塞がる敵に対し歯痒さを懐いていた。

 自分の紫と黒のプロセッサユニットに当て付ける様に正反対な白金と淡緑の女性を模した彫像。

 自分が女神ならば、彼方は差し詰聖女か御子か…此方の動きに着いてくる程の柔軟性を見せながら顔は彫像らしく無表情一辺倒、不気味な事この上無い。

 

 「このままじゃいけない。本当はあの宇宙人相手に取っておくつもりだったけど…そんな悠長な事を言っている場合じゃ無いわ」

 アルファに託された物とは別に、彼女が元々持ち合わせていたとある切り札を切る事を決意させる。

 

 「とは言えまずは隙を作らなきゃね…喰らいなさいクロスコンビネーション!」

 何をするにしてもまずは敵に邪魔をさせない事が重要である。

  返す刀で畳み掛けるパープルハート。

 「まだまだ行くわよ!32式エクスブレイド!!」

 強力な斬撃を繰り出し、相手が離れたくなるよう誘導する。

 思惑通り、女性の彫像はパープルハートより上に上昇して行く。

 

 「私より高い場所なら余裕で躱せる……そんな風に思ってるのかしらね、彼女に明確な意思があればだけど」

 自分を見下す位置から対応出来る様にしているだろう彫像を見上げながら、パープルハートはとある(ピース)を取り出す。

 ソレは自らの負の1面を封じた物。

 心の奥底にあった澱み、自らが向き合った陰の己。

 混沌の駒(カオスピース)──それが彼女の切り札。

 

 「さぁ、覚悟は良いかしら?これが私のネクストステージ!」

 神より出し落とし子がその身を禍々しき力で包む。

 

 

 

 

 

 「うわぁ…何あれ悪役みたいなオーラしてるー。でも制御してるから暴走フォーム的にはおいしくないなぁ」

 

 「ネプテューヌさんの周りに黒い靄?かな…何かが…」

 

 「あれは大丈夫な物なんでしょうか」

 

 アルファが上空数百キロメートルを平然と裸眼で認識している横である程度余裕がある刀使達の中で明眼を持つ柳瀬舞衣と鑑刀眼の応用で力の流れを見ているミルヤが声を洩らす。

 

 

 

 

 

 

 そしてその上空では闇が収束しパープルハートは新たな姿を顕にする。

 

 「刮目しなさい、これがカオスフォームよ!」

 

 一見すれば禍々しい姿、しかし同時にヒロイックさも持ち合わせた秩序と混沌のマリアージュ。

 女神パープルハートカオスフォームが異世界に顕現した。

 

 「何か…好き勝手言われた気もするけど……次は"コレ"ね」

 

 姿を変えたパープルハートに傍観していた彫像は危機を感じ、直ぐ様強襲に移る。

 

 「ちょっと…行動に移るのが遅かったわね。もう"起動"しているわ」

 

 黒き混沌と秩序の太極に新たなに混じるのは太陽の光。

 それは正しき者を守る炎。悪を焼く勇気の閃光。

 人が生み出した鋼の身体に宿った不屈の正義。

 闇祓う暁の黎明。

 宇宙警察機構の英雄の力。

 

 「フレイムソードNEXT!」

 

 タイプ【太陽の勇者】天野式レスキューウェポングレートフレイムソード、フレイムソードNEXT。

 それがカオスパープルハートが手にした武装の名である。

 グレートファイバードが振るった必殺剣の力を、今パープルハートが振るう。

 

 「チャージアップ!」

 

 バイオレットグラデーションに彩られ輝く刀身に光と炎が逆巻く。

 フレイムソードNEXTとなったブレードを手に彫像を迎え撃つカオスパープルハートその身が交差する距離で女神は剣を振り上げ、下ろす。

 一見して一刀、しかして彫像には都合七度の斬撃線。

 バラバラになった彫像だった物が地上へと落ちて行く。

 

 「次に生まれる時は、正しい命として生まれて来る事を願っているわ」

 

 討伐と同時にカオスフォームを解く。

 

 「残るはあの宇宙人だけね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━冥次元・山北町

 

 その現象は唐突に起こったとその場に居合わせた者達は思ったであろう。

 

 街ごと反転し、アザゼルに兵藤邸で保護?を受けて以来毎日好き勝手している(主に全てエミリー)転位した調査班達だったが、その日、丸山茜の慌てた言葉によって、兵藤邸に残る英雄の血脈の者達やアザゼル含む数人の堕天使達とその現象に遭遇していた。

 

 「おいおい……コイツぁ何の冗談だ?」

 

 アザゼルの視線が空に釘付けになる。

 さもありなん、彼を含めた皆の視線が空に集まるのも無理からぬ事、何せ今彼等の視線の先には突如発生した蜃気楼らしき現象がまるでプロジェクターの如く、もう1つの世界で今まさに行われている最終決戦の様相を映し出しているのだ。

 

 「ああ、ダグオンが異星人と戦ってますね。あの大砲は初めて見ますが」

 

 「ムムム!新兵器でしょうかな?私クン、目茶苦茶興味津々ですぞ!」

 

 「ファイヤーダグオンにダグターボ、ダグアーマー、ダグウイング、ダグシャドー……ライアンにふむふむ…あの蒸気機関車の側にドリルゲキ氏」

 

 「あっちに見える人達は……むっ!もしやアレは祢々切丸!?ってことは薫先輩!なら他の人達ももしや!!?」

 

 渡邊エミリーが空の現象を見て口を猫の様にしたりながら無限砲に注視し、続いてその指摘に森下きひろが興奮気味に声を荒げる。

 更に隣で播つぐみが目に見えて目立つ鋼の巨人達を数え、そこからやや離れた場所で転がるドリルライナーとその屋根に立ちながらロッククラッシャーで異星人に攻撃しているドリルゲキを見付けて付け加える。

 最後に丸山茜がドリルライナーから少し離れた場所でダグオンと女神一行の戦いを見守る刀使達の姿を認め、その中でも一際目立つ大太刀を持つ少女が薫である事に気付き、他の刀使達もあの時自分達と共に居た面々だと思い至る。

 

 「あのロボットが度々お前達の話に出て来たダグオンだと言うのか…」

 

 アザゼル同様に空の光景を見ていたゲオルクがすぐ側の茜に確認する様に呟く。

 

 「はいッス!今はロボットの姿ッスけど普段はもっとヒーローっぽい感じなんッスよ?えっと…こう…なんて言ったらいいッスかね、薫先輩が大好きな五人組ヒーローみたいな感じの……」

 

 「スーパー戦隊デスかね?ワタシもあまり詳しくは無いですけれど、色とかメンバー構成は似てますシ。ああ、でもメンバーは全員男性らしいとの事ですから仮面ライダー?に近い部分もあるんじゃないかと」

 眼鏡を頻りにクイクイ動かしながら首を動かさずに茜の言葉に被せる様に語るエミリー。

 恐らく彼女の場合、映像の内容よりも、それを起こした現象の方に好奇心が向いているのだろう。

 

 「はー、半信半疑な所もあったが…こうして見せられちまったら納得するしかねぇな。なんせウチのねぷ子達も一緒に戦ってるとあっちゃなぁ」

 アザゼルが同じく映っているパープルハート達の姿を認めながら呆れ半分感心半分の息を吐く。

 

 

 

 「スゥゥゥゥウパァァァアロボットォォォオオ!!?」

 

 

 

 そしてそんな兵藤邸の庭から見上げていた彼等彼女等の耳につんざく様な歓喜の悲鳴が木霊す。

 

 「なっ、なんだぁ?!」

 

 急に聴こえた声に思わずたじろぐアザゼル。宙から視線を外し、玄関の方に周り込み声の主を探す。

 玄関前の門を出て道路の路端に停まった黒塗りの高級車を見付ける。

 果たして声の主は其処に居た。

 見付けた人影は3人、内2人は制服姿に刀を帯刀した少女。

 

 (うん?あの白い制服は森下と同じ綾小路武芸学舎だったか?の制服だな。もう一方のは……見覚えは無いが、刀を持ってる所を見るとあの娘達と同じ刀使か…。いや、それはいい。問題は最後の一人だ)

 

 人影を認め即座に思考の中で答えを弾き出す堕天使総督。

 そうして判明した人物に思わず頭を抱える。

 

 (何をやっているんだあのお嬢さんは……)

 

 声の主の正体はアザゼルも知る人物、冥界の大物、大公アガレス一族次期当主、シーグヴァイラ・アガレスがまるでアイドルのライブに熱を上げるかの如く恍惚とした顔を浮かべていたのだ。

 

 「あ、あの…シーグヴァイラさん?」

 

 「まさか目的地を目前にしてこんな事になるとはね…」

 共に居た2人、岩倉早苗と鈴本葉菜が困った顔を浮かべて立ち尽くしている。

 と、其処へアザゼルの後を追い声の主を一目見ようと出て来たつぐみが2人の名を呼ぶ。

 

 「おや、岩倉さんに鈴本さん、お久し振りです」

 

 「えっ?播さん!?」

 

 「この街にいるぼく達の仲間って君の事だったのか!」

 

 管理局本部で幾度となく顔を合わせたポーカーフェイスの少女の登場に早苗、葉菜共に再会の喜びよりも驚きが勝る。

 

 「成る程、アザゼル氏が言っていた同類とは貴女方でしたか。所で、此処には私以外にも居ますので単数で表すのは適切ではありません」

 

 「おや、おやおやおや?!何事かと思えば平城と綾小路の制服を着た刀使が居るではありませんか!」

 

 「ななんとぉ!鈴本氏ではありませぬかぁ!」

 

 「おおぉぉ!!御前試合平城代表のお一人ではないッスか!!」

 そうして続々顔を出すエミリー、きひろ、茜の中々に濃い面子に早苗も葉菜も思わず顔を見合せ苦笑するより他に無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「馬鹿な……我が秀作が全て討ち果たされただと」

 

 『残るはお前だけだ!大人しく倒されろ!!』

 

 未だしぶとく逃げ回るアーティシャン星人相手に、ジェットファイヤーミサイルを撃ち続けるファイヤーダグオンが最後通告を叩き付ける。

 

 「否!否否否否否!断じて否だ!私は死なん!この星を作品と化すまではぁぁぁああ!」

 

 叫ぶ星人、だがそんな彼の元にその野望を阻むが如く戦士達が集結する。

 

 『ブレイクホイィィィィルッ!』

 

 『アーマーミサイルゥゥウ!』

 

 『フリーズビーム!』

 

 『シャドーバルカン!』

 

 「聖魔剣!」

 

 「デュランダル!」

 

 「ドラゴンショット!」

 

 「にゃぁぁあ!」

 

 「そぉおらっ!」

 

 「せいっ!」

 

 「雷光よ!」

 

 ダグオン達は当然として、他数名も裂帛の声と共に攻撃を放つ。

 大小様々な技が星人へと殺到する。

 

 「オゴォッ!?ばぁッ!ギギ…このままでは…このままではァァァア!!」

 

 『よし、砲身冷却完了。エネルギーフルチャージ可能。今度こそコイツで決めてやる!』

 

 囲まれ四面楚歌と化した戦場で尚打開策を講じようと足掻くアーティシャン星人。

 一方でファイヤーダグオンは無限砲を再び放たんと構える。

 

 「ギ…ヒッィィ?!(まさかもう一度撃って来るのかぁぁあ?!)」

 

 アーティシャン星人はファイヤーダグオンが無限砲を構える様子を目撃し慌てて逃亡手段を何としても生み出さんと己の獣と化した肉体を無理矢理改造し始める。

 

 (逃げる…何としても逃げ延びる!我が芸術の為にィィィ!その為にはぁ!空…そう空だ!赤いヤツは砲を撃つ為に動けない。緑のヤツは飛べない。青いのも高高度はそこまで速く飛べない筈!警戒すべきは白と紫…そして異世界の女神を名乗る女に白い甲冑くらい……)

 残った右腕を己の身体に突き刺し造り変える。

 獣の四足は消え、鳥類の様な逆間接の細足となり、千切れた腕を補う様に大きな翼を生やす。

 突き刺した右腕を胸部に取込み胸から三本指の腕を改めて生やす。

 

 (余計な事は考えず逃げる事のみを頭に…他少の邪魔は腕を振るって蹴散らしてやればいい!)

 

 屈伸の勢いを付け跳躍を始める星人。

 脇目も振らず真上に跳び、そして翼を羽ばたかせた飛行を始める。その様はロケットだ。

 

 「ヒヒッ…ヒヒヒヒッ!いくらあの大砲が凄まじい威力であってもこれ程の距離を狙撃するような真似は出来まい!!」

 

 大気層まで逃れたアーティシャン星人が暗い笑いを浮かべ滞空する。

 

 「ふぅ…ふぅ…はは、フハハハ…!さぁて後は手間だが宇宙に出てエデンに帰還し傷を癒すだけだ」

 

 肩であった場所で息を切らしながら自身の生存を確信した芸術家は呟きを洩らす。

 真下がどうなっているかも確認せず──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『野郎…!逃がすもんかよ!』

 跳び去った星人を追い掛けようとファイヤーダグオンが翔び立とう脚に力を込め、翼のエンジンを回転させる。

 

 『待てファイヤーダグオン』

 

 『何だよ?!止めるなよ!』

 

 其処へ待ったを掛けるダグターボに思わず反論を返す。

 

 『アルファ、確認するが奴はまだ無限砲の射程範囲内なんだな?』

 

 「そうだねぇ~、地上を逃げられたらちょっと厄介だったけど空なら今余計な障害物は無いから、()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 話を振られあっさりととんでもない事を答える美少女風美少年。

 それを聞いて頷いたダグターボはダグアーマーを近くに呼び寄せる。

 

 『ンでオレの仕事は何だ?』

 

 『何、難しい話では無い。貴様の視覚センサーを私を経由してファイヤーダグオンに同期させる』

 

 『ハハーン、要はオレはライフルのターゲットスコープってワケか』

 

 『なら僕にも視覚情報を共有してください、余剰情報は僕の方で処理しておきましょう。言うなればスポッターですかね?』

 其処へダグウイングも合流し提案をする。

 

 『良いだろう、決まりだ。先の一撃を見る限りこのままこの場所から撃つのは危険やもしれん。ファイヤーダグオン、お前は念の為ある程度宙に滞空した後、ダグアーマーの合図で引き金を引け』

 

 『そう言う事か!分かったぜ任せろ!』

 

 ダグターボの意図を理解し空へと翔ぶファイヤーダグオン、姿勢を水平にし滞空、無限砲を両の手で構える。

 

 『相対距離問題無し、風速は無視して構いません!』

 

 『見えるぜ見えるゼ!バッチリ見えてらァ、外すなヨ?』

 

 『アホ抜かせ、こんだけお膳立てされて外せるかよ!エネルギー充填100%!ターゲットロック!』

 

 無限砲に光が溜まってゆく、甲高いガイドビーコンのピピピと言った音がファイヤーダグオンの頭の中に響く。

 

 『今度こそコイツで終わりだ!』

 

 翼のエンジンを吹かしながら姿勢を固定させ、捉えたその姿を視線から外さない。

 

 『フルパワー無限砲!シュゥゥゥゥウトォォォオオ!』

 

 放たれる極大の光芒、立ち上るは光の柱、行き着く先は邪悪の徒。

 悪を滅ぼす一撃が今放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ハハハハハハッ!さて休息はこのくらいにして宇宙へ──」

 

 その言葉を彼が最後まで紡ぐ事は無かった。

 真下から立ち上る光の柱に気付かないアーティシャン星人は光の渦に路傍の石の如くあっさりと呑み込まれ、何が起きたのかすら理解する前に消滅した。

 

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 おお!何かよくわかんないッスけど悪い宇宙人が倒されたんッスよね?!

 

 ですな!これで我々も元の世界に帰れるやもしれませんぞ!

 

 まぁ今すぐとはいかないでしょう。

 

 同感、早々すぐに戻れる程世界は都合良くないデスしね。

 まぁそれまではワタシ達もこっちで好き勝手させて貰いましょう♪

 

 いやお前達もう充分好き勝手してるだろうが……。

 

 

 うーん判断を誤ったかなぁ、こっちに合流するんじゃなくて…ぼく達が見付かった場所から素直に帰るべきだったかな…。

 

 まぁまぁ…折角みんなと合流出来たんですから

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 異世界協奏曲エピローグ。

 

 きっと向こうも完全に元に戻るまでのモラトリアムを思い思いに過ごしてるハズデスよ?

 

 





 はい、因みに今日の正午に二度目の接種に行く予定となります。
 副反応が如何になるか想像も付きませんが次回はなるべく早く投稿出来たら良いなと思っております。

 モレーさん全然出ないんですケドォ!!?

 次回にてまたお会いしましょう。

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