刀使ノ指令ダグオン   作:ダグライダー

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 お久し振りです。最近は仕事の方で人手が少なくなりその分穴埋めに駆り出され、寝不足気味に拍車が掛かり、机に向かっても筆が進まず、ならば暫く執筆を控え睡眠に専念しようと過ごしてました。
 バイトで良いから新しい人員欲しいなぁ。

 良い事と言えばウマはタンホイザ狙いで行ったら一緒にキタちゃん来てくれたし、アリスギアは遂に念願の波佐美さんが来てくれました。
 後、バレンタインリネットも無事ゲットした…くらいですね。



第九十八話 激動、刀剣類管理局・特祭隊24時?  

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 新聞:新幹線のダグオン達が合体したよ、ライナーダグオンだよ!

 

 薫:ちくしょぉぉぉぉお!!生で観たかったぁああ!!

 

 ねね:ねねぇぇぇええ!!

 

 エレン:oh…過去一番の叫びを更新しまシタ

 


 

 ━━太陽系火星衛星軌道近辺

 

 それは一筋の光を描いて翔ぶ叡智の結晶。

 

 「うーん?座標的にこの辺りだと思うのだけれど……」

 

 遥か銀河の彼方より、辺境と目される太陽系にやって来たまだ見ぬ星の隣人。

 エデンの犯罪者達とは違う、純粋なこの世界に存在している異星人。

 宇宙海賊達とも違い、我々と同様に人型(ヒューマノイド)の姿をしており、何より見目麗しきと評しても過言では無い美女…いや美少女と呼ぶべきが妥当であろう容姿をしている。

 

 「やっぱり計器のエラーだったのかしら?こんな辺境もいい所に遭難者なんて…。もう!超銀河同盟規約なんて面倒ったらありゃしないんだから!」

 

 舟のコックピットで愚痴を叩く少女、すると奥の扉が音を立てて開き彼女と同年代と思われる少女と青年の異星人が現れる。

 

 「はや~、大声出してどうしたノ~?もしかしてマダ見つかってナイノ?」

 

「そもそもそれ本当に救難信号だったのカネ?」

 

 何ともぽやぽやした口調の少女の疑問に神経質そうな眼鏡の青年の言葉が続く。

 

 「解らない、そもそも同盟基準の信号とは微妙に異なっていて……」

 

「はぁ?!なんだネそれは!!どこの原始時代の信号だ!?まったく卒業旅行が台無しだ」

 眼鏡の青年が苛立たし気に憤慨する。彼女達は何処かの星の学生であり、卒業に際して旅行を数人か数十人で旅行をしていたと言う事なのだろう。

 

 「仕方ナイノ~、この辺りの銀河で一番近くに居たのがワタシ達だったノ~。この辺は辺境が過ぎて周辺の銀河にも同盟統括軍の駐屯地が少なくて、ワープ航法を使っても64万光年以上離れてるノ~」

 

「そんな文明があるかも定かでは無い銀河に我々の様な学生身分を代理にするような規約もどうかと思うがネ!」

 

 自身が属する惑星が加盟している大規模行政機関に悪態を吐き続ける眼鏡の何某。

 そんな青年を横に置いて少女達は会話を交わす。

 

 「他のみんなは?」

 

 「ダーリンとワタシがこっち来る時はまだみんな寝てたノ~、今は誰か起きてるかもだケド~」

 

「そんな事よりだ!何も無いのならばさっさと撤収して旅行に戻るのだネ!」

 

 「そう……だよね、うん…何も無いならそれで良いんだよね…」

 友人からの言葉にどこか己を納得させ言い聞かせる様に呟く少女。

 

「そうだとも!さぁ、こんな辺境の銀河など後に───ギュ?!」

 

 眼鏡の青年がその言葉を最後まで紡ぐ事は無かった、その代わりに奇妙な断末魔を挙げて鮮血が飛び散る。

 

 「「え……?」」

 

 少女達は呆然となる。

 

 何が起きた?分からない。

 死んだ、誰が?友達が──友達の恋人が目の前でよく分からないナニかに貫かれて死んだ。

 

 少女に見えたのは舟の下方からナニかが光の尾を引いて青年の左下腹部から右肩首付近を通り過ぎたという事だけ。

 

 「あ…え?」

 

 言葉が出ない、それくらい一瞬の出来事だった。舟に空いた小さな穴が応急装置で直ぐ様塞がる。

 

 「ぃ……ぃゃ…いやァぁぁあああ!!?」

 

 「っ…、落ち着いて!」

 

 何時もどんな時ものんびりのほほんとした友人が壊れた蓄音機も斯くやと絶叫し、この世の終りとばかりに顔を絶望に染める。

 そんな有り様だからか当の少女の方は幾何か冷静になれた。

 錯乱する友人を宥めようと肩を掴む、しかし思いの外暴れる力が強く、何より死体が目の前に転がっているのも精神衛生上良くない。

 途もあれ何とか友人を座席に縛り着け、舟のインターフェースを操作して此処から逃れようと行動を起す。

 

 (とにかくココから離れなきゃ!ココに居たら危ない!?)

 

 そんな必死になっている彼女の耳元に甲高い電子音が繰返し叩き付けられる。

 

 「(こんな時に…!?)っ何?!」

 

 見ればそれは接近警報。キャノピーの外に眼を向ければ無数の星の海の内から瞬く光が1つ、近付いて来る。

 

 「星……じゃない、舟?!もしかして私達の他に捜索に来ていた舟がいたの!?」

 いけない!此処は危ない!それを伝えなくては!そう思い立った彼女の想いはしかし、ほんの一瞬キャノピーから眼を外した瞬間裏切られる事となる。

 

 「同盟基準のシグナルで………返答無し?!何で!!?あの舟は救難捜索の為のモノじゃ無いの?!って消えた?!!」

 

 レーダーを見る、反応無し。

 キャノピーから覗ける範囲を見回す、しかし見付からない。

 

 (幻…?私も切羽詰まっていたの?)

 

 落胆する少女、力無く真後ろの椅子にへたり込む。

 だがこの時少女は思い違いをしていた、彼女達の舟に近付くモノは確かに居たのだ。

 だがそれは救命艇の類い等では無く、ましてや舟ですらなかった。

 

 少女達が乗る舟が真下から揺さぶられる様に揺れる。

 「何?!デブリ!?」

 周辺を漂う宇宙ゴミ(スペースデブリ)でも当たったのかと思ったが違う。デブリ等と生易しいモノでは無い。

 

 「……手…!!?!!」

 

 キャノピーを包み込む指が見えて、舟に何がぶつかったのか理解する。

 それは少女が見た通りの巨大な手、そう"手"だけである。

 大きな右手か…或いは左手なのかもしれない手が舟を掴む。

 

 (逃げ…)

 航行システムを操作するが手が絶妙な力加減で舟を掴み続ける為、逃げる事は叶わない。

 

 (なんで?!どうして!?あの手にスラスターが付いてる訳でもないのに!!)

 泣きそうになる気持ちを必死に押し留め舟のエンジンを噴かす、だが──

 

 「?!!重力制御が!」

 

 先程まで感じていたエンジンの手応えが消え、更に重力制御装置が壊れたのか身体に掛かる重さが消え、上に引っ張られる。辛うじてベルトによって身体が椅子から離れる事を免れるがコックピット内は危険信号(レッドシグナル)で赤く染まる。

 

 「ちょ、何があったん?!いきなり重力─ガボッ?!」

 

 異変を感じて駆け付けただろう友人の1人が青年を殺したモノと同じ──否、それを更に巨大にした凶器によって下半身を吹き飛ばされ絶命、舟に大穴が空き先に死亡した青年共々宇宙の深淵に放り出され星屑の1つとなって消えた。

 

 「…………!!?」

 思わずパクパクと口を動かしかけて思い切りつぐむ。

 しかしそんな危機は"手"が出した粘性の液体が固まった事により急死に一生を得た。

 

 「ったくよぉ…雑なんだよなぁ【螺穿】は【十変(てんぺん)】が損傷を直さなきゃ…せっかくの素材候補が全部オジャンだったんだぜぇ?」

 

 朦朧な意識の片隅に届いた声は誰とも知らぬ面倒そうな男のモノであった。

 意識が堕ちる最後の時に見た光景は錯乱が止まった友人を担ぎ上げた見知らぬ男の姿であり、少女の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━火星・地表

 

 「ウルせっ、エンジンと重力装置止めるんだから威力がいるんだよ、クソがっ!」

 

 「もう聴こえとらんじゃろうて」

 

 左腕が弓の様になった特徴的なボンパドールが吐き捨てる様に呟くと、共に火星に降り立ったガレプテン星人が肩を竦めて諫める。

 

 (しかし螺穿…十変に曲界、あの三兄弟といい……特別監獄棟の囚人達は我が強いのう。四騎士とどっこいじゃなかろうか……いやさ十変は大分マシか)

 

 【十変】と呼称された巨大な手ことワルガイア星人の懐刀であるギガロクスが拿捕した舟をエデンに運び行くのを見届け、ガレプテン星人は【螺穿】と共に小型艇に乗り込み此方もエデンへの帰路に着くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━地球・日本関東某所

 

 折神家襲撃事件──延いては舞草によるタギツヒメ討伐の一件からはや四ヶ月、関東一円に荒魂が蔓延る事となった"鎌倉危険廃棄物漏出問題"に於いて特祭隊は常に対応へと追われている。

 その上関東以外の地域に於いても荒魂の目撃・出現

があり、果ては異星人の襲撃まであると言う混沌たる様相を描いている。

 何より僅か数週間頃前に起きた異世界事件等も記憶に新しい。

 異星人、異世界の件はさておき、荒魂事件に関しては日夜特祭隊の刀使の奮戦が光る。

 それは今この瞬間深夜のレインボーブリッジにて展開されている作戦行動にも見てとれる。

 

 

 

「タイミングを合わせろ!訓練通りやれば出来る!」

 

 交通封鎖を行った吊橋の上で、誘導された大型の百足荒魂を前に学院問わず混成された刀使の小隊が小隊長の号令に合わせて御刀を構える。

 

「来るぞ!抜刀!」

 

 無論訓練をしているからと言っても個々に差はあり、今回の小隊編成にも実戦・実働経験の少ない者等も存在する。

 それをフォローするのも熟練の仕事ではあるのだが、そんな集団の縛りを持たない遊撃に配された少女達も存在する。

 そして今まさに、小隊目掛け蛇腹を荒ぶらせていた百足荒魂が、上空から降って来た2人のストームアーマーを纏った刀使によりその角を斬り落とされ怯み、そこを間髪入れず跳び荒魂の反撃を許さず圧倒。

 小隊の刀使達を尻目にたった2人きりで制圧してしまった。

 2人の刀使の名は衛藤可奈美、糸見沙耶香。漏出問題の折、折神紫暗殺に関わった反逆者であり、事実が明らかとされてからは一変英雄と化した者達。

 S装備に身を包んでいるとは言え、大型を僅か数十秒程度で倒してしまうそのある種残酷なまでの実力差はその場に居た1人の少女の心に鮮明に刻まれる事となる。

 

 

 

 荒魂殲滅後、ノロ回収の為に封鎖が一部解かれ検分の為状況待機となった可奈美と沙耶香、彼女達は小隊の刀使達に挨拶を交わす。

 

 「応援の衛藤可奈美です」

 「糸見沙耶香」

 

 「応援感謝します。以後は我々が…」

 応援の2人だけで片付けてしまった事にも難色を示さず敬意をもって敬礼する鎌府の制服を着た小隊長、彼女が後の現場処理を引き継ぐ旨を告げる最中、小隊の1人と見られる綾小路の刀使が可奈美達の前に歩み出る。

 

 「あの、二人は四ヶ月前の……」

 側面の髪が耳に掛かるか掛からないかの長さのミディアムショートの綾小路の刀使が、芸能人を前にしたミーハーなファンの様な面持ちで声を掛ける。

 

 「はい、そうです。あなた綾小路の?」

 

 可奈美も可奈美で自分がそれなりに名が知れている自覚が出来たのか当り障り無く訊ねる。

 

 「はい!出向で特別任務部隊に参加しています綾小路中等部一年、内里歩です!」

 

 天上の人、或いは高嶺の花とも思える存在に認識され声を掛けられた。そんなミーハーな高揚を顔に出し喜ぶ歩、去り行く2人の背を見送りながら小さく手を振る。

 そんな憧れの視線を背に送迎車に向かう可奈美と沙耶香。

 

 沙耶香は可奈美の表情を見て思わず訊ねる様に呟く。

 

 「可奈美…楽しそう」

 

 「ん?何?沙耶香ちゃん」

 

 「…」

 

 しかし当の可奈美は上機嫌で沙耶香の言葉など耳に入っておらず、無邪気な顔で訊き返すものだから沙耶香はどうにも複雑な心境を秘したまま沈黙を返すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━管理局本部・食堂

 

 明くる朝──。

 【「米軍所属艦艇の奪取、都市部への不明機射出、国民がどれ程の不安を抱き実害を被ったか…どの様に受け止めているのでしょうか?」】

 食堂に設置されたテレビから垂れ流されるニュース、内容は国会中継による証人喚問──と言う名の弾劾誘致による追及。

 野党と思われる詰問側からの問答答弁、議長を務める人物が追及を受ける人物──折神朱音の名を呼ぶ。

 

 【「折神証人」】

 

 名を呼ばれ壇に立つ朱音が詰問者とマイクへ向け声明を発する。

 

 【「一部の特祭隊により二十年前の大災厄の様な事態は未然に回避する事が出来ました…」】

 

 語りだした朱音が撮された映像、そんな緊迫した内容に目も留めず配膳口に立つ可奈美は笑顔で口を開く。

 

 「ご飯、大盛でお願いしまーす!」

 

 内容は白飯、牛乳、味噌汁、水、回鍋肉か青椒肉絲か──途もあれ肉と野菜がセットになった物とまずまずのバランス。

 受け取った食事を持って沙耶香と同席すると彼女方は可奈美とは逆にとても白飯、おかず共に少ない量で纏まっていた。

 

 「沙耶香ちゃんそれだけ?駄目だよ~育ち盛りなんだからもっといっぱい食べないと」

 

 「これ…あんまり好きじゃない」

 

 「好き嫌いも駄目。それにここの学食美味しいよ」

 

 「舞衣のお菓子の方がいい」

 

 年長者としての世話焼きを気取って沙耶香に言って聞かせる可奈美、しかし沙耶香からの返答は今一つ…挙げ句、()()()お菓子が食べたいと言う始末。

 

 「舞衣は…いつ来るの?」

 

 「来週には来るハズだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━美濃関学院

 

 胸元に書類を抱えて学長室への道を歩くは、今し方可奈美達の話題に出た柳瀬舞衣。

 部屋手前で軽いノックをした後、中に居るであろう部屋主からの返事を待って入室する。

 

 「来週鎌倉に出向する者の名簿をお持ちしました………朱音様の証人喚問ですか」

 

 一礼を伴って入った部屋では美濃関学長羽島江麻が備付けのテレビで朱音の証人喚問を観ている。

 

 「今や刀剣類管理局は格好の的ね。新体制とか舞草とか言っても世間的には同じにしか見えない」

 江麻が述べる通り、現在の刀剣類管理局の風当りは強い。なまじっか特撮ヒーローもびっくりな勇者達が存在する事もあり、内輪揉め同然な此方は世論での論争は尽きない。

 

 「ノロを大量に漏出し土地を汚した杜撰な組織…」

 

 どうあれ数十年と管理局延いては伍箇伝に務めて来た者としては苦い顔にもならざる負えない。

 

 「事実だと思います」

 

 当事者の1人として、真実を目の当たりにした舞衣は淡々と言ってのける。

 

 「そうね…でも体を張って人々を守った貴女達や朱音様が責められているのを見ると、どうしてもね……」

 そう言う江麻の声はやはり苦い物を噛み潰した様な物言いだ。

 彼女はそのまま舞衣から受け取った名簿に目を落とし、列なる名前を頭の中で読み上げて止まる。

 

 「あら柳瀬さん。貴女も来週から出向なのね」

 

 「はい、三度目です。可奈美ちゃんは殆ど向こうに行ったきりですけど……この四ヶ月お母さんを目標にすごく頑張ってましたから」

 

 舞衣の言葉を受けながら名簿を捲る江麻、本部から上がって来る可奈美の遊撃任務の成果へ話題をシフトさせる。

 

 「学長は可奈美ちゃんのお母さんとは同級生だったんですよね?」

 

 「ええそうよ。本当に強い刀使だったわ」

 そう言って席を立ち、窓辺に寄る江麻の顔は当時を思い出してか感慨が込められた物。

 過去を語り出した江麻はそのまま舞衣の側へと足を向ける。

 

 「私はね、ずっと彼女に憧れていたのよ。ちょうど柳瀬さんが衛藤さんに懐いている様な気持ち…かしらね」

 嘗て己が懐いたモノと似たような思いを持つであろう多感な若者へのアドバイスも兼ねて説く。

 憧れ。情愛。友愛。僅な嫉妬。ある種の恋とも言える思春期特有の少女が通る道、言葉にしてしまうとチープかもしれないがそんな風に表す事が適した感情。

 そして紡がれた言葉の先にある少女もまた、その言葉に心当りがあるように俯きがちに微笑する。

 

 「だからね。美濃関預りだった千鳥が衛藤さんを選んだ時とても嬉しかったの」

 

 「はい……」

 

 江麻の言わんとする事の真意に理解の頷きを返す舞衣。世代を越えて1人の天才に振り回される者同士のシンパシーが此処には在った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━綾小路武芸学舎

 

 「カァ~、お上も懲りねぇナァ。何べん同じ問答テレビで流すんだヨ」

 綾小路の食堂テレビから流れる中継に辟易した声を出すのは我等が勇者ダグオンの1人、鎧塚申一郎その人。

 食事を掻き込みながら辟易と言った具合を口にする。

 

 「せやかて、仕方ないんとちゃいます?管理局がノロをばらまいてもうたんは本当なんやし」

 対面に座る仲野順がはんなりと返す。

 

 「そりゃあそうなんだケドも、仲野チャン達刀使がバッシング受けるのは違くネ?」

 

 「嬉しい事言っとくれるやないの」

 

 順が自分が軟派な申一郎に友好に接する理由はそう言う所なのだと言外に微笑み返す。そしてそう言えばと思い出した様に申一郎へ話題を振る。

 

 「先月辺り本部に出向した時から何度かチラホラ見かけたんやけど…鎧塚はん、最近よう戒将はんや渡邊はんだけやのうて、他の伍箇伝の男子とも仲が宜しいいんどすなぁ?意外やわぁ。女の子しか興味あらへんかと思うとったのに」

 

 「マァ、ちょっとした縁があってさ。つかヒドくね?一応はクラスにも趣味の合うヤロウのダチはオレにだっているゼ?」

 

 流石にそんな極端なイメージは心外だと告げると順はせやなぁとはぐらかす様に笑う。

 

 「そんで、戒将はんは兎も角として…渡邊はんは最近綾小路(コッチ)で見かけんくなりましたなぁ」

 

 「アァ、何でもノロの研究をやってるつー施設に学徒研修?みたいなヤツでソッチに掛かりきりなンだと」

 

 「は~、そんなら暫くは爆発騒ぎも起こらんちゅうことやね」

 

 「肩持つワケじゃネェけど、そんなショッチュー爆発してるワケじゃネェヨ?……オン?」

 

 入口が見える位置に座り食事を終えた申一郎が訝しむ様に入口を見つめる。

 

 「どないしはったん?」

 

 「いんやぁ、見馴れない美少女チャンを見付けてさ。高等部じゃねぇナ…中等部か?オレのセンサーにクるってこたぁ、一年じゃネェようだが…チョッチゴメン!」

 

 「ややわぁ、目の前の娘ぉ放って他の娘に目移りするやなんて…ホンマに軽いお人やす」

 

 見掛けた少女が気になり席を急いで発った申一郎の背に態とらしくヨヨヨと泣き真似を掛ける順。

 入口で立ち止まった申一郎が両手を合わせて軽く頭を下げ、順に謝罪のジェスチャーをすると再び直ぐ様見馴れぬ少女の影を追った。

 

 

 

 

 「サァて…まだ見ぬカワイコチャンは──っと、居た居た♪」

 申一郎が視線を巡らせ見付けた背中。綾小路の制服を身に纏い、肩口まで切り揃えられた()()()()()()()()()()()()()()に中背の少女。

 御刀を持っていない事から刀匠科或いは技巧科か神職科かとアタリを付ける。

 

 「ヘイ彼女~、良かったらオレとお茶しナイ?」

 

 「………誰ですか?」

 

 「アレ?知らない?んじゃあこれから仲を深めるにはモッテコイだね、ナァにキミはカワイイしたっぷりリードして──「よ・ろ・い・づ・か・くぅんんん?」──ウぇい?!水科パイセン!!?な、なんスかネ……?つか、コッチ戻ってたんスね」

 

 メッシュが入った少女を口説こうとしていた申一郎の背後から笑顔で迫る水科絹香に肩を掴まれ中断される。

 

 「うふふふふ…聞いたよぉ?綿花ちゃんにちょっかいを出したんだってね~」

 

 デフォルメされた青筋立てた血管が見えるくらいの圧を申一郎へ掛ける。

 

 「ヤ、それは………誤解デスヨ?」

 コナを掛けたのは事実なので、必死に視線を反らしてはぐらかす申一郎。詰め寄る絹香。

 対して呼び止められていた少女は愛想の無い無表情のまま社交辞令を口にして去る。

 

 「スミマセン、ご用がお有りで無いのでしたら失礼します。()()

 

 何やら語調や最後の語尾がおかしかったが、それを追及する前にそそくさと去ってしまった為、申一郎は片隅に僅な違和感を懐きながらも絹香からの追及を逃れるのに骨を折るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━奈良県郊外・十条宅

 

 都心の喧騒から離れた田園地に建ち並ぶ旧い家屋の1つに十条姫和が住まう茅葺屋根の平屋。

 畳張りの部屋の1つに仏壇が置かれ、その荘厳には姫和の母──篝の写真が置かれ、供養壇としている事が判る。

 そしてその仏壇の前で静かに手を合わせ黙祷する姫和。

 彼女は夏休みの終わり頃から今日に至るまでの数十日間、特祭隊の活動には精力的で無く心此処にに在らずといった具合で日常を過ごしている事が多くなっている。

 そんな虚ろな面持ちのまま軒先の枯葉を掃く姫和の元へ訪ね人が1人……。

 

 「五條学長…」

 

 その人物は五條いろは、平常学館学長である。

 恐らく学館公用車であろう後部の席から降り立った彼女は見上げる形で姫和に視線を向ける。

 

 

 

 陽が沈む軒先で焚火を前にしゃがみ込み炎を眺める姫和と、そんな彼女を見守るいろは。

 哀愁の空の下、姫和が口火を切る。

 

 「この家…私が居ない間も誰かが手入れしてくれてたようですが」

 

 「家は人の手が入らへんとすぐ傷むからね。朱音様が気を遣ってくれはったんよ」

 

 語るいろはの声を背に、姫和は焚火へ篝宛ての手紙を近付ける。

 その小さな背中へいろはは今日訪ねた本来の用件を切り出す。

 

 「なぁ姫和ちゃん。刀使辞めるか迷ってるん?」

 

 「岩倉さんに聞いたんですか?」

 

 「早苗ちゃん…何か悩んだ顔してたから私が無理矢理聞き出したんよ。責めんといてあげてな」

 

 飽くまでも非があるのは己であると前置きし姫和に先を促す。

 

 「二十年前私の母はタギツヒメを討ち損じました。今更学長にする話でもありませんが」

 「これでも当事者の一人やからね」

 「折神紫に憑依したタギツヒメは刀使を使ってノロを集めさせその力を増していきました。それを知った母は全てを自分の責任だと悔やみ続けました。この世を去るその日まで…」

 

 語りながら手紙を火の方へと近付け放る姫和。熱に焙られ火が着いた手紙はどんどん黒く焦がれてゆく。

 

 「私は母がやり残した事を成すと誓いました。折神紫を討つと」

 御前試合での暗殺騒動に至るまでの心境を振り返る。

 

 「そうとは知らんと………。ほんまに一人でよう戦えたね」

 姫和が抱えていたモノの吐露にいろはは己の不甲斐なさに伏せ、姫和の奮闘を労う。しかし、姫和はそれを笑って否定する。

 

 「いえ、一人じゃありません。多くの人に助けて貰いました…私が気付いていなかっただけで」

 自嘲気味に、しかし心の内を吐き出す顔は吹っ切れた様に穏やかであった。

 

 「小烏丸も学長が」

 

 「ほんまはあかんのやけど学長権限でこっそりと。私はただ篝ちゃんの娘が小烏丸に選ばれたんが嬉しかったんよ」

 普段は微笑んだ様な糸目を開いて己の胸襟を開くいろは。

 

 「そのお陰で私は母の本懐を果たす事が出来ました」

 

 「タギツヒメも暫くは現世に出て来んやろうなぁ。それに今回は姫和ちゃん達も無事やったし、二十年前に比べたら目覚ましい戦果やで」

 

 そうして、姫和が何故刀使を続けるか否かに悩む意図を推察し彼女の方へ振り向き訊ねる。

 

 「でも…そうやなぁ、姫和ちゃんの戦いは一区切り着いたんやね。それで引退を考えてるん?」

 

 訊ねるいろは。2人の傍、焚火の中で燃える手紙は言うなれば嘗ての姫和の意思。然りとて半ば目的を果たしたも同然の彼女の心を現す様に燃え尽きて往く。

 

 「タギツヒメ本体を討つまでは…、と考えてはいます。ただ……」

 

 「どうにも身が入らへん。って所?それはそれでええと思うよ、姫和ちゃんはもう充分戦ったんやから。一度よく考えてから返事くれる?」

 

 「わかりました…」

 ある種燃え尽き症候群とも取れる今の姫和の心中を慮り返事に猶予を与える。

 しかし五條いろはと言う女傑は存外油断の出来ぬ人となりである。

 

 「実は…あ、これは言わん方がええな」

 世間話の様に口にしかけ、しまったとばかりに口に手を当て遮るいろは。その絶妙加減が姫和の興味を引く。

 

 「何ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━━刀剣類管理局本部・エントランス

 

 夜、変わらず出動待機の状態にある中でエントランス付近の休息場にて可奈美は沙耶香に1つの嘆願を持ち掛ける。

 

 「あのね沙耶香ちゃん。ちょっとお願いがあるんだけど…、お風呂の前に手合わせお願い出来ないかな?」

 胸の手前で手を合わせ申し訳無さそうに沙耶香に訊ねる。

 しかし、沙耶香は俯き表情は暗い。

 

 「いいけど…私で…いいの?」

 

 「何が…?あ、薫ちゃんお帰りー」

 

 沙耶香の発言の意図を図りかね訊き返すが、其所で廊下の方からフラフラとした足取りで益子薫がやって来る。

 その顔は青ざめ、大きな隈を描き、肩でぐったり凭れるねねも同様に今にも過労で死にますと言わんばかりの悲壮である。

 

 「お疲れさま~。遠征だったんだよね?」

 

 「公務員には…労働基本権が…無い…」

 

 可奈美の言葉に対する返答が労働基準に対する愚痴から始まる。何を言っているのだこのツインテール。

 

 「しかも俺たち警察や消防には団結権、団体交渉権、争議権と言った労働三権ですら認められていない………」

 休息場のソファに突っ伏して怨嗟を募るように現代風刺を宣う薫。

 「あのクソパワハラ上司…」

 挙げ句の結論はやはりと言うか現本部長に対する愚痴。隈の濃い顔を上げ腹の奥底から声を出す。

 

 「真庭本部長の事?」

 

 「なぁ~にが本部長だっ!!ふざけんなー!!!!!

 「ねねー!!!!!」

 

 がばりと起き上がりソファの上で絶叫する。

 

 「東へ西へ…完全に不当労働行為じゃねーかよ!!

 

 切実、切実なまでの叫び。

 

 「あの非人道的な…グェォッ?!」

 

 だがしかし突如として頭上に振り下ろされた鉄拳により薫の言葉は最後まで紡がれる事無く黙さ…鎮圧される。

 

 「少しは労ってやろうと来てみれば…この野郎」

 振り下ろされた鉄拳の正体、噂のブラッククソパワハラ上司こと真庭紗南が薫が倒れ付したソファの背後に立っていた。

 

 「これやるぞー。ケーキだ」

 

 「ケーキ!」

 倒れた薫を無視して左手に持ち合わせていた白い菓子箱を沙耶香に手渡す。

 受け取った沙耶香の声が弾む。この娘も大分現金な面が出て来る様になった。

 

 「お前は反省室行きな」

 そんな訳で紗南はケーキを渡すと薫の制服の襟首を掴み、猫を持ち上げる様に持ち去って行く。

 

 「離せ!何で俺ばっかり…エレンはどうしたーーー!!」

 

 「あいつはちょっと別の用事でな」

 

 紗南に拐われて行く薫とのやり取りを見送る可奈美と沙耶香。

 憐れ薫、北海道から沖縄まで…日本全国津々浦々が反省を終えた君を再び待っている。

 

 

 

 

 「フルーツタルトだ!」

 さては置いて、薫達が去った後沙耶香が受け取った菓子箱を開けば中身は彩り鮮やかなフルーツタルトが綺麗に5つ並んでいる。

 

 「おいしそう…」

 「貰っちゃって良いのかな?薫ちゃんの分は残したかないとだね」

 タルトに夢中の沙耶香、一応は薫の取り分を残そうとする可奈美の元に少女が2人通り掛かり、その内の1人が可奈美達へ声を掛ける。

 

 「あっ!衛藤さん糸見さん!」

 少女達は綾小路の制服、そして声を挙げたのは昨晩見掛けた内里歩。

 

 「あ!今ちょうど本部長にケーキ貰ったんだ!二人も一緒にどう?」

 

 「良いんですか!?」

 

 この時点で薫はねねとケーキを分け合う事が決まった。

 

 「おいし~♪」

 瞳を星の様に輝かせ、タルトに舌鼓を打つ可奈美。その横で上機嫌に黙々とタルトを口に運ぶ沙耶香。

 そんな2人を目にして歩の連れの少女──田辺美弥が歩に身体を傾け訊ねる。

 

 「ねぇ…この二人って例の大荒魂を討伐した……」

 「そうだよ」

 些か2人に畏まりながら訊ねる美弥に対し歩は二つ返事で肯定する。

 

 「知り合いなの?」

 

 「ううん。たまたま昨日の出撃の時に応援で来てもらって」

 

 2人の会話を知ってか知らずか、可奈美は突如として歩達へ誘いを掛ける。

 

 「そうだ。私達この後道場で手合わせするんだけど一緒にどう?」

 刀使ならば刃交える事が常識であるとばかりにあっけらかんと言ってのける誘いに対して2人の反応は──

 

 「いや~私は……」

 「見学させて下さい!!」

 雲の上、高嶺の花、著名人芸能人に対する一般人の如く遠慮する美弥と…、

 羨望、尊敬、英雄に憧れる子供よろしく食い付く歩。

 対象的な反応は或いはこれからの彼女達の未来に起因するのやも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━本部・発令室 

 

 反省室行きを口実に内密の話の席を設けた紗南。

 彼女から告げられた事実に薫は胡乱に訊き返す。

 

 「襲撃された?回収班がか?」

 

 「ああ。ノロが強奪された」

 

 「荒魂か?」

 

 「いや違う襲撃したのは刀使だ。………刀使による荒魂討伐後のノロの輸送中だった回収班の車両が別の刀使に襲撃された。この一週間で四件、全てノロが奪われた」

 

 「おいおい…。管理局何故護衛を付けない…?」

 

 「付けた。二件目以降は刀使が護衛した、だが奪われた……相手は相当の手練れらしい」

 

 「意味が解らん、そもそもノロを奪ってどうする?そんなモン例の宇宙人か以前の折神家じゃあるまいし……そうなのか?今更宇宙人連中が欲しがるようにも思えんし、旧折神紫派の仕業なのか?」

 

 「いや…、まだそうとは断定出来ない。兎に角襲われた者達の証言によれば相手は一人だ。フードを深く被って顔は見えない、皆同じ証言だ」

 言って、中央モニターの映像を示す。

 

 「御刀持ってるじゃないか。管理局なら特定出来るだろ?」

 

 「それが出来なかった。登録されていない御刀だ」

 

 「剣術の流派は?」

 

 「当てはまる流派が多すぎる」

 

 「可奈美に見せればいい、あの剣術オタクならコイツの手癖から直ぐに割り出せるぞ」

 行動を共にした点から、確信する様にニヤケる薫の言葉に紗南も同意し自らの考えを伝える。

 

 「ああ。近く衛藤にも協力して貰う。だがまだ一部の者にしか知らせていない」

 

 「勿体付ける事か?」

 

 「事が事だけにな。情報を制限したい」

 

 紗南の物言いに薫は眉を潜める。

 

 「管理局はまだ内部を疑ってるのか。折神紫の件もあるからな」

 先の一件の事から紗南の言わんとする事も理解出来る薫が皮肉か自虐か、管理局の体制の杜撰を口にする。

 

 「ふん。何とでも言え」

 信頼する教え子の言葉に笑い飛ばす紗南。こんなやり取りを交わせるのも互いの信あってこそ、2人の関係の深さが分かる一幕であった。

 

 

 続く

 


 

 次回予告(BGM:静かなる瞳)

 

 つーかこのフードの刀使の画像はまぁレコーダーか周辺監視カメラのヤツなんだろうが、その辺の情報を追ってんのは誰だよ?

 

 そこは先輩の伝手で平城から呼び寄せた信頼も信用も出来る隠密がいるからな。

 

 隠密ぅ~?……ああ。清香の兄貴の忍者か

 

 アイツは凄いぞ~、お前と違って仕事に文句一つ言わずに淡々とこなしては次の調査に向かうからな。

 

 ブラック過ぎんだろ……。

 

 まぁ表向きはバイト活動で済ませてるからな。実際バイトもしてはいる様だが…。

 

 超人かよ…。

 

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 

 正体不明、謎の刀使を追え?

 

 …………腹が減ったな…。

 

 龍悟さぁ、ちゃんと自分の食事にも金使いなよ?桃さんはそこ心配だよ。

 

 




 取り敢えずですねお風呂の会話とかは次回です。
 3月はまた公休のローテーションが替わるので、またちょっと更新が遅れる可能性がありますかね。
 なるべく早めに書き上げたいとは思っております。

 それはそれとして心寿ちゃんキタ!かわいい!(ヤンガン本誌読者感)

 ではまた次回
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