遅れましためちゃくちゃ遅れました。
唯でさえ牛歩のごとき執筆速度なのにここまで遅くなるとは……。
しかしやっと納得出来る形で纏まったので投稿。
最近は疲労で少しづつ書きながら眠っていたので申し訳ございません。
"前回迄の刀使ノ指令ダグオン"
融合合体を果たし、ダグファイヤーとなったファイヤーエン。エデン囚人の統率者の一人ギガンタースを仲間と共に倒す事に成功する。
だが、彼等には次なる戦いが待っているのだった。
━━鳥取砂丘
巨人を倒し、新たな野次馬が集う前に砂丘から引き上げるダグオンの若者達、ダグファイヤーは融合合体を解かずシャドージェットの背に乗っている。
『悪いな、まだ戻り方もよく解んねえし戻っても俺だけ陸を走らなきゃいけねえからさ』
「……気にするな、今回の功労者を無下にはしない…」
リュウの表情を伺い知る事は出来ないが、その声は特に不愉快を感じている訳では無さそうだ。
「しかし、強敵だった…。守れた筈の者も守れなかった……」
「気にスンナ…ってのは流石にムリだよな、オレもまだちょっとな……」
「彼等は確かに無遠慮かつ不用意でした、ですが目の前で実際に命を落とされると……心に来るものがあります」
カイは今回の戦いを振り返り、死した人々に対し罪悪感を抱く。
普段はお気楽気味なシンもこの時ばかりは何時もの調子の語尾が弱々しくなっていく、ヨクもまた犠牲となった彼等にマスク越しに沈痛な面持ちで言葉を溢す。
『一番責められるのは俺だ…。俺がもっと早くこの姿になってりゃあ、あのヘリだって助けられたんだしよ』
「……どうにせよ、既に起こってしまった事を嘆いたところで死が無かった事にはならない」
ダグファイヤーの後悔にリュウは彼なりの言葉で発破を掛ける。
「そうだな、我々が悔やんだとして彼等は帰っては来ない。それよりも、後の面倒を避ける為とは言えあの巨人が乗って来た船の残骸を放置する羽目になってしまった事が問題だ」
カイの言う通り、砂丘にはギガンタースが乗り付けて来た武装輸送船の残骸が放置されていた。
恐らくは近くの警察ないし自衛隊等の政府の回し者が回収するであろう事は見てとれる。
その火災もある程度鎮火し、細長い煙が立ち上る残骸跡に不自然に蠢く液体の様な塊が空を行くダグビークルを見詰めていた事は彼等の知るよしも無い事であった。
━━伊豆山中某沖付近
さて、ダグオン達が砂丘で死闘を演じていた頃、可奈美と姫和はFineManの指定した合流地点である石廊崎へ向かって通りがかりのトラックに乗合いしサービスエリアに降り立ち、そこで覚悟について一悶着、更に刀剣類管理局より刺客として長船の2人の襲撃でもう一悶着あったのだ。
長船の2人───益子薫、古波蔵エレンの両名は見事なコンビネーションで可奈美を追い詰め窮地に陥らせる。間一髪姫和が助けに入り両者互角、しかし長船の2人組はS装備を持ち出す…が、可奈美達が逃亡を選択した為に無駄骨となる。
また、親衛隊が出動と同時に高津雪那が捜査責任者を外されるもS装備空輸強襲コンテナが射出が露見。雪那が独自の判断にて捜査を続行。
そして現在、薫エレンの両名からの逃亡と山中を降りしきる雨から逃れる為に近場にあった無人の商店に身を潜めて、改めて可奈美は姫和に感じた剣の重さに対する思いの己の覚悟『姫和ちゃんの目的を守るよ』と宣言したのだった。その覚悟を聞き姫和は全てを語り出す。
始まりは母に宛てられた手紙にあった、嘗て20年前にあった未曾有の荒魂災害"相模湾岸大災厄"──江ノ島に現れた史上最悪とされる大荒魂を折神紫を筆頭として現在の伍箇伝学長達で編成された特務隊が討伐をした、そしてその中に姫和の母も存在していたのだ。しかし、その記録は世間には知られてはおらず歴史の闇に消された。世界の存亡を賭けた戦いに大荒魂を唯一滅ぼす手段を持っていたのが彼女の母であった事、しかし完全には討伐出来ず折神紫に成り済ました事、何より刀使としての力を失い年々弱っていく母が、自らを責めながら息を引き取った事を彼女の死を看取った姫和は母の仇であり母がやり残した務めを代わりに果たすのだと誓った──
「…お前の言う重たさの半分は、刀使としての責務だが……半分は私怨だ。だから付き合う必要は──」
「そうだね」
怒りかはたまた悔恨か…複雑に入り雑じった感情を手紙を持つ手に表す姫和の手に可奈美は手を添え告げる。
「重たそうだから半分…私が持つよ」
雨上がりの山の麓に幾つかの大きなのテントが張られている。
折神紫親衛隊を始めとした特別祭祀機動隊のテントである。現在此処には燕結芽を除いた3名の親衛隊が存在している、山の出入口を封鎖し一切の侵入または脱出を防ぎ、親衛隊自ら逃亡した反逆者を討たんとする為だ。
「ちょうど雨が上がりましたわね」
空を見上げ寿々花が呟く、既にこの山中に反逆者が潜んでいる事は目撃証言から裏が取れている。
真希が山を見据え宣言する。
「さぁ…山狩りだ!」
雲間から月が覗き始めた空を見て姫和は可奈美を伴って再び動き始める。
「行くぞ可奈美、なるべく早く指定された合流地点を目指す」
「うんっ!」
目的地を目指し歩き始める2人…とその後ろから声が掛かる。
「や~~~っと見つけマシた~~~」
「「!?」」
「こんなトコロで仲良く雨宿りしていたのデスね…」
「へっくしゅ!」
再び現れるエレンと薫、その声は雨に濡れた為か震えが混じっている。薫など頭に乗せたねね共々くしゃみしている始末だ。
「…さっきの!?」
咄嗟に御刀に手を掛ける可奈美達に対し、不適な笑みを浮かべ懐に手を差すエレン達、一瞬の沈黙の後長船の2人組がいち早く動く。
瞬間鳴り響く破裂音、呆気にとられる可奈美と姫和。
「「はぁ?」」
「お前ら合かーく」
「ウェルカム舞草~!私達はアナタ達を歓迎シマース!」
「ねっねー!」
先程までの剣呑な空気など何のその、呆気にとられたままの2人を尻目に呑気に盛り上がるエレンと気だるい顔の薫プラスはしゃぐねねに姫和は激昂する。
「ふざけるな!邪魔をするというのなら…」
「ダイジョーブ♪そんなに急がなくても石廊崎は逃げマセンよ」
エレンの発した一言に驚きより警戒する姫和、可奈美は舞草という聞き覚えのない単語に首を傾げる。
「何故私たちが石廊崎に向かっていると知っている!?」
「私達"舞草"は折神紫率いる変革派に抗い、御刀と刀使の在るべき姿を取り戻す為の組織デス」
「折神家に抵抗する組織?じゃあ姫和ちゃんと一緒って事…?」
「YES!目的は同じデスね」
エレンの言葉を聴きつつも警戒は弛めない姫和、彼女はエレンに対し探りながら訊ねる。
「……舞草…、もしかしてFineManと言う名に聞き覚えはあるか?」
「あのアバターは趣味が悪いからやめろといつも言ってマス」
姫和の質問に苦笑しながら返すエレン、明らかに関係者である。
「やったね姫和ちゃん!味方だよー!!」
それから、改めて自己紹介を始めるエレンと薫そしてねね、可奈美は単純に可愛いと評し姫和は荒魂であるねねを警戒し折神家と同類だと糾弾するもエレンが出したスペクトラムファインダーの反応、そして姫和のスペクトラム計の反応も無い事から無害である事が証明され、同時に益子の家に由来する守護獣であると説明を受ける。
「…っ、だからと言って「ヒヨヨンは頭が固いデスね~」ひよよん?!」
「くすぐった~い!」
エレンによって突如名付けられるあだ名に困惑する姫和を横に可奈美に飛び付き甘えるねね、端から見れば少女と小動物の可愛いらしいやり取りだろう……ねねの顔がイヤらしく緩んで無ければ。
「そうそう、ねねはビッグなバストが大好きなのデス」
「そして将来、胸のでかくなる女の可能性をかぎわける」
エレンと薫の説明を耳にしながらねねを見る姫和、ねねが視線に気付き姫和を……より正確には姫和の胸を視る。
「ねー…」
「は!?」
明らかに期待外れだと言わんばかりに顔を反らすねねに奥底から声を出す姫和。
「やはり斬る!」
「もうっ!姫和ちゃんに失礼でしょ」
と可奈美が一番失礼な事を言っているが和気藹々とした空気になり始めたその時、ねねが何かを感知する。
「どうした?ねね」
「荒魂!?囲まれているぞ」
森の中に向かって威嚇するねねに訊ねる薫に姫和はスペクトラム計を見やり警告する、エレンもスペクトラムファインダーを見るが反応は無い。
「コチラは反応無しデスか、折神家から支給された最新式なのデスけどね…」
「来るぞ!」
その言葉と共に森林から小さな蝶の様な荒魂が大量に群がって襲ってくる。
たちまち分断される4人、薫は森に消えたねねを追い可奈美と姫和はそのまま荒魂に追われ、エレンは木の上に退避し荒魂を観察思案し始める。やがて何かを思い付いたのか手を合わせ納得する。
「…決まりました、この手で行きマショウ!」
一方、ねねを追い山中奥深くまで来た薫は蝶の荒魂によって崖から落ちかけるも祢々切丸を刺し何とか助かる。
「正直、舞草なんてエレンに付き合って入っただけだったが……俺も少し本気出すか」
薫を見付けた蝶荒魂が襲い来る、薫は御刀祢々切丸を振り荒魂を蹴散らす。
そうしてより奥へ進むと人影を見付ける薫、影の正体は親衛隊第三席皐月夜見、夜見は自らの手首を切り荒魂を産み出す。
「とんでもないなぁ。人間が荒魂を作った、いや、生んだ…。お前、確か親衛隊のやつだなぁ。悪趣味が過ぎるぞ、折神家」
「親衛隊第三席、皐月夜見。なるほど。あなたは舞草の人間のようですね」
「知るか! ただ、お前のペットに俺のペットが世話になった。その借りを返すだけだ」
「そうですか。どうぞご随意に。私はただ、壊すだけです」
片や荒魂と共生を代々重ねて来た一族の刀使、片や自らにノロを注入し使役する刀使、夜の山に荒魂と深い縁を持った2人が激突する。
目の前に居る敵に夜見は新たに荒魂を産み薫にけし掛ける、薫は鬱陶しそうに御刀を振る。
夜見の血液より産まれる小型の蝶は群れが1つの獣の様に襲い来る。傷付いたねねを気にしながら戦う薫は徐々に劣勢になっていく、そこを荒魂は容赦なく襲う、間一髪その時──
「ブリザァアアドハリケェェェン!」
「「!?!」」
突如冷気の暴風が荒魂を凍てつかせる、2人が暴風の現れた先を見れば木々の間を歩いてくる白い戦士、ウイングヨクが姿を現した。
「まさか、親衛隊がこんな場所に居るとは思いませんでした。それも反逆者では無さそうな刀使と戦う現場に出会すとは……」
「お前……」
「貴方は……?」
「ダグオン、ウイングヨク故あってそちらの長船の刀使に加勢させて頂きます」
「マジか?」
予想外の援軍…それもヒーローの様な格好の人物に薫の心のテンションは爆上げになった。
夜見は新たに増えた予想外の敵に心中穏やかではない。
「出来れば荒魂を中心に相手にしたいので親衛隊の方を任せられますか?」
「お、おう。どのみちコイツには借りがあるし、任せる」
ヨクにより次々と駆逐される蝶の荒魂、数が減るも薫の周りはまだ多くの蝶がいる、それを見た薫が叫ぶ。
「あー、超うざい!一瞬いや一秒でかたずける!」
そう決意し祢々切丸を大きく振りかぶる。
「キエェェエエエエエッ!!」
雄叫びの如く裂帛の猿叫を上げ夜見に向かって叩き付ける。その一撃は正しく夜見を捕らえ断ち切る、かわす間も無く写シを両断された夜見は一緒に絶ち切られた岩に背を預け薫に向け言葉を放つ。
「他の親衛隊の方達を私と同じとは思わない事です」
そう言い残し、僅かに回復したのだろう迅移で撤退した。
「退いた様ですね、良かった」
「あー、疲れた…ねね無事か?」
「ねー…」
「大丈夫ですか?(……この小動物は荒魂?!興味深いですね)」
「あー、悪い少し寝る、暫く守ってくれ(ついでに後でサイン貰おう)」
「え?えぇぇ!?」
続く
次回予告(BGM:輝け!ダグオン)
ウイングヨクです。長船の小さな刀使を助けた僕、その状況に至るには少し時間を戻します。
ええっ?!サンプルの一部が手に入る!?
解りました、手掛かりは1つでも多い方が有難いです!
次回"刀使ノ指令ダグオン"
山狩りの夜、現れる戦士。
いやはや、遂に薫が生ダグオンと接触しました。
次回は何故ダグオンが山奥に現れたのかです。
また遅れる事があるかもしれません。
では次回でお会いしましょう。
転職すべきか…