いやはや、祖父が入退院を繰り返し、再びてんやわんやし、自転車を買い換え、ジェイルに潜入し、司令が給仕服着て、巫女さんアクトレスが来たりと大忙しです。
3月は投稿ペースが元に戻ると良いなぁ。
いえ、話自体は大まかに出来てるんです、文章として書き綴るのが遅いだけなんです、本当に申し訳ありません。
"前回の刀使ノ指令ダグオン"
追う者、追われる者。翻弄される者、抗う者。
彼等彼女等の想いが交錯する山の夜、二羽の小鳥を喰らわんばかりの狩猟者、抗う小鳥達。
そして己の為、仲間の為、駆ける五色の勇者。
訳の判らぬまま運命の掌で踊る五人の刀使。
遠き宇宙の果てより蠢く闇、間もなく夜が明ける。
僅かに覗く月の光が降り注ぐのは、静かな闇夜に流れる小川のせせらぎ。しかしそんな世界に不釣り合いな剣戟が木霊する。
「さぁ、少しはボクを楽しませてくれ」
獣の様な笑みを浮かべながら姫和に切迫する真希、力強い斬擊を姫和は何とか受け流す。
「くっ…!強い…」
あまりの猛攻故に苦言を溢す姫和、相手は伊達に親衛隊に名を背負っていない、腐っても高い実力を持った刀使である簡単な敵では無い。
次第に追い込まれ木を背にする姫和、彼女とて決して弱い刀使ではない。しかし、相手はノロによる更なる身体強化を用いる上に突きを主体にした速度重視の己と 相性が悪い。
防戦一方の姫和に対し攻め手を緩めない真希、その状況を寿々花を相手取りながら見やる可奈美。
「姫和ちゃん?!」
「余所見だなんて、そんな余裕はありませんわよ?」
空かさず距離を詰める寿々花に対し千鳥を振るうも、寿々花の九字兼定によって刃を押さえ込まれる。
絡め取られた状態から一閃、可奈美の腕が飛ぶ、無論写シである為、血が流れる事は無いが写シ越しであれダメージは否めない。
寿々花との距離を取り、再び写シを張り直す可奈美は寿々花が強敵であることを改めて認識する。油断なく御刀を構え、寿々花の後ろにて展開されている姫和と真希の戦闘に意識を向ける。
「姫和ちゃん!」
姫和に対し声を掛け、視線で何かを伝える。
(あいつ戦闘中に何を…私より自分の心配をしろ!……いや、待て、あいつがただ心配するだけなどとあるのか?…そうか!)
「また余所見ですの?気に入りませんわね」
姫和が可奈美の視線の意図を解し、互いと相手が直線的になるように立ち回る。
寿々花がまたしても自身ではなく、別に意識を向ける可奈美に対し苛立ちを募らせる。そうして生まれた僅かな隙をもって可奈美は千鳥を投げ放つ。
「どこを狙っていますの?…っ!?真希さんっ!!」
しかし、千鳥は寿々花を通り抜け在らぬ方に飛ぶ、可奈美の不可解な行動に嘲笑するも、即座に彼女の狙いに気付き相方に声を飛ばす。
「何だ…?ちぃっ!」
寿々花の声に反応し振り向く真希、自身に向かって飛んできた千鳥を身を捻りかわす。そして一瞬、僅か一瞬だが姫和から意識を反らしてしまう、それが運の尽き。
「貰ったぞ、親衛隊!」
真希の隙を逃さず、小烏丸を上に振り抜く姫和。先程とは真逆、川の土手原に真希を追い詰め突き斬った。
「っ!しまった?!」
そのまま写シを剥がされ膝を衝く真希、姫和はその隙に千鳥を回収する。
「可奈美!」
「うん!」
可奈美に千鳥を投げ渡し、互いに迅移を使い戦場より逃れる。
「してやられましたわね。真希さん、大丈夫ですか?問題無いようでしたら彼女達を追いますわよ」
可奈美達の逃げた先を見据えながら真希に近寄る寿々花、しかし真希は俯き茫然自失としている。
「斬られた…ボクが、このボクが斬られた…?紫様をお守りするボクが……紫様の刃であるボクが…」
「真希さん?」
真希の様子を不審に思い覗きこむ寿々花、そこに新たな足音が近づく
「可奈美ー!」
その場に現れたのは美炎を始めとした調査隊の面々、美炎は親衛隊がこのまま反逆者となった可奈美を殺害する事が耐えられなかった為、二人の応援に来たのだが既に勝敗は決していた。
「貴女達…一体何をしていますの?早くあの反逆者達を追いなさい」
現れた調査隊に命令を飛ばす寿々花、だが彼女達は動こうとしない。
「お断りします」
最初に美炎が口を開く、その口から飛び出した答えは拒絶。
「……何だって…?」
自失から意識を戻した真希が怜悧な瞳を調査隊に向ける
調査隊の言い分は単純だ、荒魂を捨て置いて反逆者の討伐に参加する事は出来ない、刀使として我々は力の無い者達の為に戦う事が本分である。とミルヤが代表して宣言したのである。
「どこまでも……弱者の分際でボク達に楯突くのか…?」
「貴女の相手は私がしましょう獅童真希」
「木寅ミルヤか、良いだろう歯向かった事を後悔するといい!」
ミルヤが真希に仕掛ける。一方の美炎には、寿々花が相対する。未だ残る夜見が放った荒魂を駆逐するのは呼吹だ。智恵と清香はフォローに回る形となった。
「私も貴女達の相手をするのは吝かではありませんわよ?」
反逆者を捕り逃し、再び調査隊と刃を交える親衛隊の二人、そしてその様子を離れて見詰める青い人影。
ターボカイこと燕戒将である。シャドーリュウと別れた後、調査隊や親衛隊、反逆者にすら気付かれない様に距離を取ってダグテクターの機能を使い監視していたのだ。
無論、先程の可奈美と姫和対親衛隊の戦闘をも視ていた。いざとなればシールドスモークで逃走の補助をするつもりであったのだ。
結果的には彼女達自身で乗り越えた為その必要は無くなった。だが今度は調査隊が親衛隊と再び戦う運びとなり、カイは三度静観する事にした。
(先の戦い、危うい所もあったが彼女達は乗り越えた。ならば調査隊の面々も俺が手を出さずとも問題は無かろう、であれば獅童此花の隙を伺うとするか…)
状況を観察しながら頭の中でこのように思案するカイ、綾小路武芸学舎在学時から親衛隊の此花寿々花、調査隊の木寅ミルヤとは共に面識があり彼女達の実力もある程度熟知しているのである、しかし、それはあくまでもその二人の実力しか知らないのである。その為他の調査隊もメンバーの実力を読み違えた。
気付けば美炎は追い詰められ、智恵が何とか助太刀しているものの芳しくなく、ミルヤも真希に釘付けにされ、呼吹は荒魂を追って何処かに消えた。清香は怯えすくんでいる。
(む、読みが外れたか?いや、彼女等とて弱い訳では無い。であれば経験、覚悟の問題か…だがあの美濃関の少女は不味いな、あのままではやられる)
調査隊に不利となった状況に万が一の手段として助太刀に入る態勢を取るカイ。
だがしかし、勇者が助力をするよりも早く、怯えていた少女が動いたのだ。
六角清香にとって刀使であることは誇れるものでは無い。
趣味は読書、特に好きなのは恋愛小説、剣を振るのはその次くらい。
彼女にとっては幼少時に叔父の道場でひたすらに剣を降り、強いね、凄いねと周りの人々に褒められた事が嬉しかった。
だからひた向きに努力した、彼女には大抵の事は何でもこなす兄が居たから、だからその兄も褒めてくれる剣の道に進む、そして御刀に選ばれた。
でも現実は甘くなかった。写シがあっても命懸けの荒魂との戦い、一歩間違えたら死が待つ世界、そうして傷付く周りの刀使達、それを自覚した瞬間自分が傷付く事が恐くて清香は戦いから逃げた。
だから…最初の御刀に拒絶されたのだと清香は思う。結局は新しい御刀を手にして今も伍箇伝の刀使として清香は居る。でも荒魂とは戦えない、戦いたくない、恐いのは嫌だから、でも刀使を辞める事は出来なかった、そうして過ごす内にいつの間にか赤羽刀探索の為の特務部隊に編成された、調査ならきっと戦う事などないから安心だった。…その筈だった、けれどもやはり現実は優しくない。
何度も荒魂と遭遇して、何回も皆の後ろで震えていて、今度は親衛隊が襲ってきて……本当に自分はこのままで良いのかと思う、皆戦ってる、必死に戦っている。
安桜美炎は友達の為、瀬戸内智恵はそんな美炎を助ける為、木寅ミルヤは刀使としての使命の為、七之里呼吹は……自分の為、では自分は?自分はなんの為に此処に居る?
調査隊は清香にとってとても居心地が良かった、最初こそ緊張と恐怖があった、でも楽しかった。渋谷での買い物や青砥館での事も…だから、こんな訳の分からない事で皆が傷付くのは嫌だ……だからこそ立ち上がる、前を向く、御刀を手に取る、今目の前で仲間を傷付けようとする嫌な人から友達を守るその為に──
「ダメです…」
「なんですの?ああ、貴女平城の…まだうろちょろしていたのですか?役立たずは見逃してあげますから何処へなりとも……」
「ダメです、わ……わたしのせいでみんなが………、そんなのは、イヤです…!」
「イヤなんです!!」
俯いていた気弱な少女は叫ぶ、守る為に御刀を手に立ち向かう。
寿々花に一瞬で距離を詰め刃を交える。
寿々花自身、驚愕した。何せ先の先まで唯々泣いてへたり込んでいた有象無象であった少女が自分に歯向かって来たのだから。
六角清香は己を鼓舞する、その瞳は力強い意思に溢れていた。
続く
次回予告(BGM:輝け!ダグオン)
糸見沙耶香……、予告?うん…頑張る。
親衛隊に追い詰められる…調査隊の人たち……、そんな時、平城の人が親衛隊…二人を相手に互角に戦う…。すごい…。
次回、"刀使ノ指令ダグオン"…明ける夜、一時の休息。
呼吹…、一人で勝手に動いたら…ダメだよ?
後書きは何を綴るべきか、あ!勇者シリーズと言えば、トランスフォーマーの金型流用ライバル枠ですね!ダグオンには居なかったかな?今作はその辺り出したいですね!
沙耶香ちゃん、予告するならこんな感じかしら?