刀使ノ指令ダグオン   作:ダグライダー

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 おはようございます、ダグライダーです。
 今日は仕事なんでこれ書いた後、一回寝て、また起きたら仕事に行ってきます。
 



第四十三話 スルガの脅威。ミルヤ、解放する力!

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 ヒトの姿形を成した荒魂、『スルガ』。

 それを造り出したのは人間。『スルガ』は言う。

 生み出したお前達に情けを掛けられる謂れなど無いと。

 『スルガ』は言う、これは復讐なのだと。

 

 例え己の信じた正義が揺らごうとも、刀使であるならば、今、目前に居る荒魂が、人々の脅威となるならば迷いを振り切って戦わねばならないのだ!

 


 

 ━━第五生理研究所前

 1つとなったジェゲンガ星人を前に、ファイヤーエンとシャドーリュウが怒濤の攻めに転じている。

 「オォォォオオッ!」

 「……ゼェェアッ!」

炎を纏った拳が、剣の如く振るわれるクナイが、ジェゲンガ星人を押し込める。

 「ぐっ?!」「な、何故!?」「「想定していたよりも強い!!?」」

 彼にして彼女たる異形が苦し紛れに洩らすのは、以前、メイルがリュウを除く4人と戦った際の記憶と記録、そして、フィメルが受けたターボカイの力の上昇をデータとして想定した戦術と戦略。

 しかし実際には思う通りには行かず、エンには正面から押し込まれ、リュウからは要所で急所を狙われる。

 だがジェゲンガ星人が狼狽えるのも無理からぬ事。

 ダグオンもまた成長しているのだから。

 これがもし、以前のエンであったならば此処まで苦戦はしなかっただろう。しかし、彼は既にギガンタースとの戦いで融合合体に至った。

 その戦闘経験が彼を更に強くする。

 リュウに至っては、データが無い事も多少の要素ではあるが、エンの支援に撤し、しかし、要所で致命部位を狙いにくる為に、そちらに意識を割かざる終えない。

 そうなれば今度はその隙をエンに漬け込まれると言う、ジェゲンガ星人にとっては悪循環が起きているのだ。

 「…ちぃっ!?」「だからとてぇ…」「「舐めるなぁ!!」」

だが、彼にして彼女とて、腐っても犯罪者。戦闘のプロでこそ無いが、その攻撃はダグテクターという防具があっても、易々と当たって良いものではない。

 「くそっ、合体は伊達じゃねぇか…!」

 「…思いの外、やり手だな……」

やはり2人だけでは攻め手が足りない。…そうリュウは心中でぼやく。

 「……施設の中から殺気を感じる。……どうやら彼方もあまり、良い状況では無いようだ…」

 「マジか?なら、早いとこ野郎…野郎だよな?とにかく倒さねえと」

 ジェゲンガ星人が後ろへ飛び退いたと同時に、研究所から感じたスルガの憎悪にリュウは清香の身を案じる。

 エンもまた美炎の無事が気になるのか、言葉にやや焦りが見え始める。

 ここがもう少し拓けた場所ならば、ガードアニマル達でジェゲンガ星人を追い詰める手もあっただろう。

 しかし、人気が無いとは言え、市街地、後ろは依然荒魂の群れ、それ故にガードホークは其方に注力させている。ファイヤーストラトスの中に居る撃鉄の事も考慮すると、ウルフとタイガーは今の段階では易々と使えない。

 切れるカードの少なさに歯軋りすら覚えるリュウ。

 だが実を言えば、ジェゲンガ星人もまた攻めあぐねているのである。

 真の姿を晒して尚、想定以上の力を持っていたダグオン。フィメルの肉体的耐久力(フィジカル)とメイルの精神的超能力(メンタル)が合わさった姿なのにだ。

 今はまだ2人だけだから……ダグオン達が何かに意識を割いているから互角に戦える。しかし、5人揃えば私達に勝ち目は失くなるのではないか?そう思えてしょうがない。

 互いに時間は味方とは言い難い、が、それでも状況としてはダグオン側に利があるだろう。

 「………仕方無い。嗚呼、実に仕方無いなわたしよ」

 「ええ、このままだと負ける。それは恥ずべき事ねワタシ」

 何かの覚悟を決めジェゲンガ星人は互いに会話を交わす。

 「まさか」「「私達が」」「この場で」「実証するハメになるなんてね!」「しかし、逆転の為には時にリスクを取る事も致し方無し!」

 取りい出したるは謎の液体が入った薬瓶、それを二本、其々の胸にある顔に向け仰ぐ。

 「「オォォォォォァァァアッギィィィ!!」」

1つにして2人の異形が奇っ怪な叫びを挙げる。

 3メートルの身長は更に伸び、10メートルに、肉体は筋肉が膨張し、二又の爪は三又に、のっぺらぼうの頭部には側面から角が生え、胸にある男女の顔は眼が血走る。

 「こいつは…!?」

 「…どうやら、まだ隠し玉があったか……」

依然としてダグオン達の厳しい戦いは続く。

 

 

 

 

 

 ━━第五生理研究所屋内

 智恵のビンタによって、訳も判らぬまま休む事になった七之里呼吹。

 とは言え、それなりに動ける様になれば直ぐに前線へと戻るのは彼女らしいと言えばらしいか…。

 だがしかし、相変わらずスルガ相手に5人がかりでも致命打は与えられない。

 そしてスルガの神速の前に次々写シを剥がされ追い詰められる調査隊。

 「……くそっ!」

 「チッ…!」

 「きゃぁあっ?!」

 「……くっ!?捉えきれない…!」

 

 ──グルルルルルゥゥウアアアアア!!

 

 最早、獣同然の唸りを挙げるスルガ、美炎、呼吹、清香、智恵と斬り捨てミルヤへ肉薄する。

 

 ──キンッ!キンッ!

 

 「ハァ……ハァ………五人がかりでも防ぐのがやっとですか…!?」

 4人を斬った際に落ちたスルガの速度を何とか見定め、刃を受けるミルヤ、とは言え疲労が大きい、長引けば不利になるのは調査隊の方だろう。

 「何か…逆転の決め手は……っ、仕方がありません。奥の手を使います。……調査隊!一旦、スルガからは離れろ!!」

 「え?ミルヤさんが眼鏡を外して……」 

打てる手が最早1つしかないと、覚悟を決めたミルヤ。清香の言う通り、ミルヤは自身の顔から眼鏡を外す。

 「行きます…二段階の迅移を!」

木寅ミルヤの瞳が不思議な光を帯びる。何時もよりいっそう深い階層へと潜る。

 時速を越え、音速へと近付いた斬撃が1度、2度、3、4度と斬戈を刻む。

 「ガッァァァアアッ!?!き、ザマ…ナニを!?」

 「"鑑刀眼"です。私の眼は、斬り結んだ相手からあらゆる情報を得て、その急所を割り出します。そして私の眼に曰く……」

 いきなり大きなダメージを受けたスルガは悲鳴を上げながらミルヤへ何をしたのかと問い叫ぶ。

 迅移を抜け、再び眼鏡を顔に掛けるミルヤ、己が何をしたのか、スルガに…そして仲間に語る。

 そして鑑刀眼から得た、スルガの急所それは──

 「右上腕、藤原兼重。右前腕、備前長船義光。右大腿、青江重次。右臑、宇田国宗。それ以外に7本……そして背骨には、南无薬師景光……写し。成る程、貴方は、赤羽刀を骨格としてノロをまとわり着かせただけの存在。実験体という程の複雑さも見られない、私達が今まで戦って来た、赤羽刀を核とする荒魂と何も変わりません」

 それは、今までの荒魂同様、赤羽刀を内包しただけの荒魂。

 「ただの荒魂が、どういった経緯で人の言葉を話すに至ったのか、興味は尽きませんが……未知の敵でないというのであれば、話はシンプルです。まずはその悪趣味な人を真似た姿を崩させてもらいます!」

 ミルヤの宣言を聞くスルガ、そのカタチはかろうじてヒトの姿だが、大きな隙が出来る。

 それを好機と見た調査隊、ミルヤに続き、スルガへと斬り込んで行く。

 

 そして───

 

 

 

 

 ━━第五生理研究所門前

 

  「オォォオッ!!ファイャァァアッ!ナックルゥウッ!!」

 ファイヤーエンの炎の拳が巨大化したジェゲンガ星人に突き刺さる。

 「「グゥゥウヌゥゥ…」」

 ダメージはあるのか唸り声を上げてその足が一歩、後退さる。そこへ……

 「…大回転!剣・風・斬!!

 自らを独楽の様にして回転する大技を放つシャドーリュウ。

 「ちぃぃいっ?!」「舐めるなよ!下等生物!!」

しかし、その巨体で無理矢理弾くジェゲンガ星人、2人のダグオンは態勢を崩しながらも距離を空け、敵を見据える。

 「はっ!舐めるかよ!」

 「……此方も本気だ。そして、俺たちには仲間がいる……!」

 

 

 「そう言う事だ!」

リュウの言葉に応える様に、何処からか声が響く。そして、それに続く様に現れるミサイルと竜巻

 「ショルダァァァアッ、ミサイルッ!!」

 「ダブルブリザードハリケェェエエエンッ!!」

 新たに現れた3人の戦士、ターボカイ、アーマーシン、ウイングヨク。

 ここに揃った五人のダグオン。これにはジェゲンガ星人もマズイと焦りを見せ始める。

 「ちぃっ!?」「五人揃ったか…!」「青いダグオン、あの時はよくもやってくれたわね」「出来る事なら、貴様らが揃わぬ内に倒したかったが……」「「こうなれば最早関係ない!全員纏めて血祭にしてやるわ!!」」

 当初の策は崩れ、邪魔者が揃い踏みとなり、半ば自棄糞となるジェゲンガ星人、そんな異星人を前にしても5人は怯まない。

 「こいつをさっさと倒して、中の安桜達を助けるぜ」

 

「「「「応っ!!」」」」
 

 

 

 エンがジェゲンガ星人を指しながら宣言する。それをファイヤーストラトスから口惜しげに撃鉄は眺める。

 「ぬぅぅう!何か……何か、ワシにも出来る事は無いのか!?……そうじゃ!」

 何事かを思い付き、その大きな体で前の座席に無理矢理移動する。

 滑り込んだのはハンドルがある運転席。

 「ヤツの土手っ腹に体当たり噛ましちゃる!!」

 ハンドルを握り、アクセルを踏む撃鉄。しかし……

 「?……うん?何故動かん?!この!こんちくちょう!!」

 何度もアクセルをペダ踏みする撃鉄、だが一向にファイヤーストラトスは動く気配を見せない。何故ならばそれは、このビークルがファイヤーエン専用であると言う、至極単純な理由からだ。

 結局、田中撃鉄はダグオン5人の戦いを見ているしか出来ないのであった──

 

 

 

 

 

 

 

 第五生理研究所屋内にて──

 

 「くアっ?!ガ…ガ……ガ……ガァァァァァアアアッ!」

 スルガが大きく吼える、その姿はヒトのカタチが崩れ行く悲鳴。そして、逆転の為の最期の足掻き。

 「人の形を維持出来て無い?わたしたちの攻撃が効いてる!?……違う?!崩れてるんじゃなくて、周囲に散った荒魂の残骸を集めて大きくなろうとしてる!?」

 

 ──ァァァァァァァァア!

 

 ──ッァァァァァァァAh…アアアッ!!

 

 智恵の言う通り、周辺の荒魂、そしてスルガが座っていた赤羽刀をも取込み、その異形は膨れ上がる。

 廃墟の空間が歪みたわむ。

 そして露れたのは巨大な荒魂の竜。

 「やっと正体を露にしましたね……」

 「………」

 「どうしました?安桜美炎?」

 スルガであった竜を見据えて黙っている美炎、彼女の変化に気付いたミルヤが美炎に声を掛ける。

 「ねえミルヤさん…。これを倒せば、終わる?スルガを倒せば赤羽刀の拡散はなくなって、赤羽刀の荒魂に苦しむ人は少なくなる………そう信じて、良いんだよね?」

 「………はい、多分。少なくとも、今以上に増えることは無い。そう断言出来ます」

 そう、此処でスルガを打倒出来れば、これから先、少なくとも今までよりは被害を抑える事が出来る。

 ミルヤの答えを聞き、美炎はひび割れ崩れた信念の欠片を再びかき集めてカタチを造る。

 「わかった…やる。一人でもたくさんの笑顔を守れるなら、私と……私の清光がスルガを止める!」

 覚悟の言葉と共にミルヤへ決意の視線を向け、頭を下げる美炎。

 「だから、私たちの指揮、最後までお願いします」

 

 「安桜美炎……そうですね、分かりました。貴女の……いえ、皆さんの力、預からせて下さい」

 ミルヤが美炎の懇願に笑みを浮かべ応える。

 「お願いしますミルヤさん!!みんなも力を貸して!お願い!」

 彼女の答えを聞き改めて礼をする美炎。そして他のメンバーにもその力を貸して欲しいと懇願する。

 

 清香が心強く応える──

 「はい!わたしも一生懸命頑張ります!!」 

 

 智恵が笑顔で返す──

 「当たり前でしょ?」

 

 呼吹がバツが悪そうに顔しかめて、けれど、智恵に窘められる様に名を呼ばれて舌打ち気味に短く応える──

 「………」

 「呼吹ちゃん?」

 「チッ………ぉぅ」

 

 

 「ありがとうみんな!ミルヤさん!お願いします!」

 みんなの答えを受けた美炎は微笑み、ミルヤに全てを託す。

 「……ならば、始めましょう」

調査隊の全てを預かったミルヤがここに告げる。

 

 「調査隊!構えろ!荒魂、呼称"スルガ"をノロに還して、これ以上人に仇なす前に、赤羽刀を回収する!」

 

 調査隊が結成された使命を、彼女達は今、果たそうとする。

 敵は巨大な荒魂、対するは五人、万全とは言い難い、しかし、この敵を倒す事は刀使としての役目。

 決して退けぬ、だからこそ、ミルヤは皆の全てを預かった。だからこそ美炎は、清香は、智恵は、呼吹は、彼女に全てを委ねる。

 この戦いを越えた先に人々の平和な明日に繋がる未来があると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──彼女達は知るよしも無い、スルガすら知らない。この先に待つ結末を……、スルガの中に取り込まれた赤羽刀、その中に…大いなる力が眠っていることに──

 

 続く

 


 

 次回予告

 

 ──ダレダ、ワタシノ眠リヲ揺リ起コスノハ……。

 

 ───ダレだ、わたシヲ、呼ぶモノハ………。

 

 ────何だ、私の中を駆り立てるこの怒りは!!

 

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 眠れる獅子目覚めの時。驚愕?!ジェゲンガ星人の悪足掻き!

 次回も"トライダグオン"!




 という訳で、多くは語りません。
 また次回に、おやすみなさい。

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