刀使ノ指令ダグオン   作:ダグライダー

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 おはようございます、思ったより長くなってしまった。ダグライダーです。
 ちょっと最後駆け足気味になりましたが御容赦の程を


第四十四話 眠れる獅子目覚めの時。驚愕?!ジェゲンガ星人の悪足掻き!

 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 合体したジェゲンガ星人と互角同然に戦う、エンとリュウ。敗北を感じ取ったジェゲンガ星人は自らを強化する薬品を使用しパワーアップする。

 

 復讐に狂うスルガに追い込まれる調査隊、そこでミルヤが起死回生の切り札を切る。

 ミルヤの奥の手『鑑刀眼』によって正体を見破られスルガも又、最後の手段を取る。

 

 ダグオンとジェゲンガ星人、調査隊とスルガの戦いはクライマックスへと突入した。

 


 

 研究所屋内の廃墟であった場所、最早、その空間は建物の中とは思えぬ程、広大な空虚が拡がる。

 そこに地面があるのかすら怪しい足場、屋根で覆われている筈なのに広がる妖しい空。

 彼岸と此岸、隠世と現世、その狭間の空間。

 

 まさに巨体が暴れるに不足ない程の広さ、そこで竜と化したスルガ相手に調査隊はミルヤ指揮の下彼女達は奮戦する。

 「瀬戸内智恵!切り込んで先鞭を!七之里呼吹は吶喊。写シが切れるまで好きに暴れて良い!六角清香は二人の背を守れ!」

 「「「了解!」」」

指示を出された3人が力強く応える。呼吹など好きに暴れられるとあってウキウキ顔だ。

 「ミルヤさん!私はどうすれば!」

 「合図は私が出す。その時が来るまで力を温存しろ!」

 「えっ?!どうして!?」

美炎もミルヤからの指示を仰ぐが、返ってきた命令は待機、その理由を訊ねる。

 「ノロは個を得て、やがて物の怪と化す。その躰を刻み、元の物言わぬ金属へと還す事、それが荒魂を討滅する唯一の方法。だが、スルガは大型の荒魂だ。一筋縄でいくことは先ず無い。故に……私達は御刀を手に荒魂の躰を徐々に断ち斬る。行場を失ったノロが体内で1ヵ所に集まって核を成した時……安桜美炎はそこを狙え!」

 美炎に任された役割はとどめの一撃(ラストアタック)

 「うん。わかった!」

 「…良い返事です」

強く頷く美炎にミルヤは口端に笑みを浮かべる、そして告げる。

 「ならば調査隊……突撃!これで最後だ!安桜美炎の為に道を切り開け!」

 彼女達の使命を果たす、その為の道を切り開く、そして美炎はその時を待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━第五生理研究所門前

 丁度、スルガが竜へと転じた頃、ダグオン達の戦いもまた、一進一退を繰り広げていた。

 「いい加減に」「潰れてしまえ!」

 ジェゲンガ星人が両手を胸の前に添えエネルギーの塊を生成する。生成されたエネルギー弾を5人の敵に向け放つジェゲンガ星人。

 しかしダグオン達は即座にかわす。

 「あんな技まであるとはな…!」

 「クソッタレ!デカくなってやたら打たれ強くなってヤガル!」

 「出来れば、エンに融合合体して欲しいんですが……」

 「そう言う訳にもいかない。見習い……今、撃鉄をあそこから降ろすのは危険だ」

 ライナーチーム3人が、攻撃をかわしながら決め手に欠ける戦況の打開策を講じる。

 そこへリュウが研究所内の変化に気付く。

 「……殺気の出所、奴の気配の質が変わった……?……これは…?」

 「どうしたんだよリュウ?!こんな時に!」

 「…エン、皆……目の前の施設、あそこにいる荒魂は危険だ。早々に星人を倒さなくては……!」

 「ってもよぉ!?」

 「こう…相手が巨大ではな。ダグファイヤーを頼ろうにも……」

 リュウからの進言にエンが悲鳴を上げる、カイもファイヤーストラトスを横目で視界に入れながらどうにもならないという仕草をする。

 「いっそのこと、オレらのビークルでヤツを攻撃するか!?」

 「呼んだとして乗り込む隙を与えてくれるかどうか……」

 「……ならば、ガードホークを呼び戻し、奴にぶつける──」

 と、リュウがガードホークを使いジェゲンガ星人を倒す為の隙を作ろうとした時、撃鉄から通信が入る。

 『ワシに遠慮なぞするな!このパトカーを奴にぶつけてくれ!』

 「お前……」

 「無茶です!?ファイヤーストラトスの強度は兎も角、撃鉄さんの安全は保証出来ないんですよ!!?」

 『へっ!皆まで言わずとも分かっておるわ。じゃがのう、見習いだろうがワシもダグオンの一員じゃ!出来る事があるなら何でもやるし、覚悟もある!……それに心配せんでも、死ぬ気はないわい!!』

 翼沙の制止を聞いても尚、意思を変えぬ撃鉄にカイはエンを見やり、

 「彼奴はああ言っているがどうする?確かに致命打を与えるにもこのままでは難しい。確実に仕留めるならば、星人が大きな隙を見せた瞬間、お前が融合合体して倒す他あるまい、奴の決意に応えるか決めるのはお前だ鳳焔也」

 最終判断を彼に託した。エンは暫し沈黙した後、撃鉄へこう応える。

 「ハンドルしっかり握ってろ!但し動かすなよ!」

 『!?……おうとも!!』

エンの意思を感じ取ったファイヤーストラトスがジェゲンガ星人目掛け走る。

 中の撃鉄はハンドルを握り締めながら前方へと固定する。その際必用の無い行為であるアクセルペダルを思いっきり踏み込んでいたのは彼の気合いの表れか…。

 「「なんだ?!」」

突如、自分目掛け突っ込んで来るファイヤーストラトスにジェゲンガ星人はその判断を一瞬鈍らせる。

 「おぉぉぉおお!喰らえぇぇぇえ!!」

車内に撃鉄が叫ぶ。ファイヤーストラトスが大きく跳ね、星人の腹部に突撃する。

 そのままジェゲンガ星人を巻き込み研究所の壁を破壊してファイヤーストラトスは撃鉄ごと研究所に突っ込んだ。

 「………。当初の予定では飽くまでも星人の体勢を崩した後、我々が抑えている隙にお前が融合合体する手筈だったんだがな……」

 「ああ、俺もそのつもりだったんだけどよ……思いの外、気合いが入っちまってたみたいだ……」

 エンとカイが顔を見合わせながら唖然とする。これは全くの偶然だが、撃鉄の気合いと思いに感化されたエンの意思を、ファイヤーストラトスは読み取り、そこに更に撃鉄の気合いが重なり、この結果を導き出したのだ。

 「悠長に言ってる場合ですか!!追いますよ!」

そこへヨクが研究所内に消えた星人とストラトスを追うように声を挙げ、2人は我を取り戻し、ダグオン達は研究所へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 幾重もの剣閃が煌めく。

 智恵が、呼吹が、清香が、そしてミルヤが竜の躰を斬り刻む。美炎への道を切り開いてゆく。

 ミルヤが吼えるように叫ぶ。

 「安桜美炎!走れ!」

 「はい!」

仲間達の開いた道を真っ直ぐ走る。遮るモノは容易く斬り捨てる。

 「すげぇ……あいつ、あんなに強かったのかよ…」

鬼神もかくやという勢いでスルガへ向かう美炎に、そし呼吹は只々、唖然と驚いているばかり。

 「これ、まさか美炎ちゃんの…刀使としての力!?」

智恵もまた、今までの美炎と違う極限の集中を見せる彼女の潜在力に驚愕を示している。

 「美炎ちゃん……すごい………あっ?!いけない!後ろから攻撃が!?」

 だが、前だけを見る美炎は後ろから迫る攻撃へ対処が遅れた。

 「……っ!?(受けきれない!?)」

攻撃こそかわしたものの、御刀を弾かれてしまう。

 「美炎ちゃんの御刀が、弾かれたっ!?」

 「くっ……後、数歩と言う所だと言うのにっ……!?これまでですか……!」

 万策尽きたと諦めを見せるミルヤ、智恵も呼吹も同様の顔になる。

 「終わらせない……!

 しかし、唯一人、諦めない者が飛び出した。

 六角清香が清光へ駆け出す!スルガの妨害を避け、清光を美炎に向け投げ渡す。

 「ほのちゃん!受け取って!!

飛んできた清光を受け取る美炎、スルガの眼前に迫った彼女は清光を振り上げる。

 「ありがとう清香……確かに受け取ったよ、行くよ!清光!!……これで終わりだっ!!!」

 そう、これで終わり。スルガと調査隊の戦いは本来であれば此処で決着が着いていた。

 

 

 

 

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 空間に亀裂が走る。大きな音を立て壁を破壊して現れる……それは調査隊にとって未知の存在とその腹に突き刺さる一台のパトカー。

 未知の存在はそのままスルガの上に落ち、下敷きにする。

 パトカーはその前方に落下するも横転はせず、停車する。

 「何事だ!?」

突如現れたイレギュラーにミルヤは只々、驚くしかない。

 「………なに……何が起きたの…?」

パトカーが降ってきた為、即座にかわし止めが空振りとなり、呆けている美炎。清香もまた、目を白黒させている。

 「警察の車輪…?いったいどうして?」

 「何なんだよ……何が起きたんだ……」

智恵と呼吹すらスルガの事が頭から吹き飛んでしまう程の衝撃を受けている。

 そこへ更に新たな乱入者達が現れる。

 「いた!ファイヤーストラトス!」

最初に現れた赤い影が何事かを叫ぶと、パトカーが動き出す。

 調査隊を避けるように大回りに声の下へ走るパトカー、ミルヤ達がそちらに視線を傾ければ、声の主の正体は渋谷で遭遇したダグオンのファイヤーエン。

 更にエンの後ろから4人、青、緑、白、紫と現れる。

 「ダグオン……?!それも五人全員!?」

この中で唯一、全てのダグオンを目撃した事があるミルヤが勢揃いしたダグオンに驚く。

 「あっ……(あの紫の人…あの時山であった…)」

清香などはシャドーリュウに注目している。

 「どうして彼らが……」

 「あの時のヤツら……他にもいたのかよ」

智恵は何故彼らがここに現れたのかを考え、呼吹はエンとリュウ以外のダグオンに微妙な顔で驚いている。

 

 ターボカイが周辺を見回し、状況を把握する。

 「成る程な、どうやら決戦の最中に割り込んでしまったようだ」

 「まさか……ですね、間が悪いと言うべきか……」

 「あのデカイのは荒魂か…?って事は邪魔しちまったってコトになんのカ」

 ヨクとシンも自分達の間の悪さに些かバツが悪そうにしている。

 「……奴は動かない……か…」

リュウがジェゲンガ星人の動きに警戒しながら何時でも対応出来る様に腰を落とす。

 エンはと言えば、ファイヤーストラトスの中にいる撃鉄の様子を伺っている。

 「エン、げき……彼は?」

 「ああ、大丈夫みたいだ。気絶してるが見たところヤバい怪我は無い」

 ヨクが撃鉄の名を呼ぼうとして、調査隊が見ている事もあり、正体を知られるのを避ける為、名を呼ぶ事を憚る。

 ダグオン達のただならぬ雰囲気に智恵が勇気を出して訊ねる。

 「……あの…、どうか……されたんですか?」

 彼女の質問にダグオン達は顔を見合わせ、沈黙する(実際にはダグテクターの内で通信を交わしているのであるが)。

 (どうする?こいつをこのまま中に乗せておく訳にもいかないぜ)

 (確かにな、星人に止めを刺した訳では無い以上、ファイヤーストラトスに乗せたままと言うのはよろしくない。我々の正体を伏せた上で見習いの介抱を任せるべきだろう)

 (チッ、なんて羨ましいヤローだ。どさくさ紛れに可愛コチャンに面倒見てもらえるとか…)

 (何を言ってるんですか、全く……。カイ、交渉は任せても?)

 (……なるべく手短な方が良い、いつ奴が動くか判らん…)

 (解った。彼女達には俺が対応しよう)

 「あの……」

 「済まない、いきなりで悪いが、この車両の中で延びている者を介抱を頼みたい。今、降ろすから待っていてくれ」

 話が纏まった為、智恵に応対するカイ。いきなり話を振られた智恵は驚くも怪我人がいるであろう彼の言い様に首を縦に振る。

 「助かる。我々はダグオン、と言っても既に知っている様だな」

 「はい。以前、そこの赤い彼と紫の彼には助けてもらいましたから」

 「……そうか。(エンの方は兎も角、リュウに関しては俺も見ていたのだがな)私はターボカイだ」

 正体を悟られない為、一人称を"私"と称するカイ。そのままストラトスから撃鉄を降ろす。

 「え…撃鉄さん?!」

そして智恵もパトカーから降ろされた人物が渋谷で会った撃鉄と知り、双眸を大きく開き驚く。

 「知り合いか?……それならば丁度良い。彼は君達に任せる」

 「一体、何があったんですか?」

 「悪いが詳しく話している時間は無い。君達は彼を連れて離れてくれ」

 智恵相手に飽くまでも撃鉄とは繋がりが無いように振る舞うカイ、説明を求められるも、ジェゲンガ星人が未だ息がある以上、長話は出来ない。調査隊には撃鉄を連れ離れる様に言い聞かせるが、そこで呼吹が食って掛かった。

 「はぁっ?!冗談じゃねぇ!こんな中途半端な終わり納得出来るかよ!!」

 「呼吹ちゃん!……ごめんなさい、撃鉄さんは此方でお預かりします。でもあの荒魂はわたしたちが倒さなくてはいけないんです」

 カイに突っ掛かる呼吹を宥めつつ、スルガの処遇は譲れないと述べる智恵、しかしそこでジェゲンガ星人の下敷きになっていたスルガに変化が起こる。

 「ォォォオオオ!!?!」

突如として唸りだすスルガ、それは神の悪戯か悪魔の思惑か、星人から流れ出た、ほんの僅かな血を含み再び動き出す。

 それも先程のダメージを全て修復してだ。

 「……っ!?馬鹿なっ!!?いくらなんでも修復が速すぎる!!」

 ミルヤがスルガの脅威的な回復に目を見張る。躰を修復させたスルガは大きく暴れる。

 「いかん!」

それを見たカイは智恵と撃鉄を抱え飛び退く、エンも呼吹をファイヤーストラトスに引っ張り込み、急バックで下がる。

 シン、ヨク、リュウも手近にいた美炎、ミルヤ、清香を抱えカイとファイヤーストラトスの元に急ぐ。

 「……面倒な事になった…」

 「ええ、まさか星人の血を含む事で死に体の荒魂がこれ程強大に再活性するとは…!」

 リュウとヨクが口走った事に目敏くミルヤが反応する。

 「星人とは一体どういう事でしょうか?もしや、貴方がたが追ってきたと目されるあの巨人がそうなのですか?」

 「……中々理解が早いな」

 ミルヤの問い掛けに肯定同然の物言いを返すリュウ、ミルヤとしても何となく理解してはいたが、あっさりと答えを示され逆に驚く。

 「皆さんがあの荒魂に何かしらの因縁があるのは理解しました。ですが、事は既に貴女達だけの問題ではありません。僕達にも協力させて下さい」

 ヨクが急変した状況に交渉がどうのと言っていられなくなった為、直球に協力を申し出る。

 「……………良いでしょう。我々も最早、限界に近い状態です。スルガ……あの荒魂が万全以上の状態であるのであれば貴方達の協力は有難い!」

 ミルヤもまた、指揮官として決断を下す。

 「調査隊聞け!荒魂スルガはどういう理由か解らないが復活した。万全の奴に対し我々は満身創痍と言っても良い、だからこそ彼等……ダグオンと共同戦線を張る!」

 「チッ……しゃぁねぇ、今回だけだ!」

 「確かにこのままじゃジリ貧だものね…」

 「くっ……あの時私がもっと早く止めを刺せてれば……」

 「ほのちゃん…」

ダグオン達もまた調査隊との共同戦線に異論は無いらしく、5人が皆頷く。

 「よっしゃ!それなら……取り敢えず降りてくれるか鎌府のお嬢ちゃん」

 「はぁっ?!テメェが勝手に引っ張り込んだんだろうがっ!」

 エンからの懇願にキレつつも素直にファイヤーストラトスから降りる呼吹、彼女の降車を見届けたエンはそのままアクセルを踏みスルガに向かって行く。

 それを見た調査隊は各々、あまりの無謀さに驚く。

 「えっ!?あの人突っ込む気!!?」

 「無茶よ!?いくら何でもパトカー1台でどうにかなる相手じゃないわ?!」

 「ハッ、カミカゼのつもりかよ!」

 「無茶苦茶ですっ!」

 「一体何をする気ですか!!?」

そんな彼女達の心配や阿鼻叫喚を他所にダグオン達は落ち着いている。流石のミルヤも仲間が1人特攻するのを黙って見ている彼等に怒鳴る。

 「何故止めないのですか!あのままではいくら貴方方が企画外と言えど…「心配要らない、見ていたまえ」…え…?!」

 カイがミルヤを落ち着かせる様に言い含める。

 そしてファイヤーストラトスに乗ったエンは叫ぶ──

 

 

「融合合体!」

 

 エンがファイヤーストラトスの屋根から飛び出す、ファイヤーストラトスが宙を舞う。そしてそのまま変形すると人型となりエンが蜃気楼の如く人型となったストラトスに溶ける。そして

 

『ダグファイヤァァアア!!』

 

 機械仕掛けの巨人が叫ぶ、それは紛れも無いロボットであった。そしてその一連の流れを見ていた彼女達は驚きのあまり叫ぶ。

 「「「「「へ…変形したぁぁああっ!?」」」」」

彼女達の驚愕も無理からぬ事、実は彼女達は鳥取の件を詳しくは知らない。何らかの騒ぎがあったのは周知しているが山狩りでの件、鎌府の実験棟…延いては燕結芽との件等で詳細までは知らなかったのだ。

 『へっ、速攻で決めるぜ!』

そんな彼女達を尻目にダグファイヤーは自らの左腕、ビークル時、ドアであった場所に右手を構えると、そこから赤い銃が射出され右手に収まる。

 『ファイヤーブラスター!!』

 その銃の名はファイヤーブラスター。ファイヤーブラスターのトリガーの上部、本来の銃ならば薬莢を排出するスライドがある辺り、水晶の様なパーツが炎を浮かべる。

 『シュゥゥゥットッ!!』

 高熱のエネルギー弾が軌跡を描いてスルガへ向かう。スルガもソレには本能的にマズいと感じたのか身を捩るが尻尾を抉り取られ悲鳴を挙げる。

 『かわしたか……けど、今のは効いたみたいだな!』

ダグファイヤーが手応えを感じ不敵に笑う。

 それを攻め時と見たカイが残るシン、ヨク、リュウ、そして調査隊に指示を出す。

 「今だ!我々も続くぞ!」

カイがターボホイールに乗る。シンが構える。ヨクが全てのファンを回転させる。リュウがクナイを剣の様にして自らも回る。

 

 「タァァボッホイィィイイルアタァァアアック!!」

 「ブレストモォォタァァアキャノォォン!!」

 「ブリザードハリケーンフルパワァァアアア!!」

 「大回転…けぇぇんぷぅぅぅうざぁぁぁあん!!」

 

 各々の攻撃がスルガの回復した巨体を容易く削り取る。残るは再び核となり集まろうとする僅かな部位。

 調査隊もまたスルガの再生を阻止せんと御刀を振るい、今度こそ美炎に止めを任せる。

 「行け!安桜美炎!!今度こそ奴を仕留めろ!!」

 再び駆け出す美炎、スルガは最早抵抗する力すら無いのか無防備その物だ。

 

 「今度こそ……これで終わりだぁぁぁぁあああっ!!

 

 核の中心を清光で斬る、するとどうだろう、禍々しい空間が消えていく、後に残るは最初のヒトガタであったスルガ。それももう崩壊寸前の弱々しい姿だ。

 「はぁっ……はぁっ……今度こそ…やったよね……!?」

 息も絶え絶えに美炎がスルガを見る、スルガは何かを口にしようとして、しかしダメージが大きかった為に何も言えずに消滅した。

 後に残るはスルガを構成していた大量のノロと赤羽刀のみ。

 

 『しっ!やったなみんな』

ダグファイヤーが仲間達と調査隊に声を掛ける。

 「油断するなまだ星人が居る。どうやら奴も意識が無い様だが……今の内に止めを刺すべきだろう」

 「賛成だぜ、オレらの目的もあるし早いとこ済ませちまおうや」

 カイとシンが喜ぶダグファイヤーに厳しく言葉を返す。

 「赤羽刀……あの中に例のモノが!」

ヨクはアルファが落としたと思われる剣を探す為、赤羽刀の山に近付く。

 「……皆、無事か…?」

リュウが調査隊に怪我人は居ないかと訊ねる。

 「あ…わたしは大丈夫です……」

 「チッ、結局美味しいとこは持ってかれたじゃねぇか」

清香はリュウに相変わらず既視感を覚えつつも素直に答え、呼吹は悪態を付く。

 「ダグオン……まさかあんなモノまであるとは……」

 「まだ…信じられないわ……」

ミルヤと智恵は未だ目の前で起きた出来事に頭を押さえる。

 「……終わったんだ、今度こそ…」

美炎はスルガとの決着が着いた事に今度こそ肩の力を抜いた。

 

 

 

 そう、確かにスルガとの戦いは決着が着いた。

 だが終わりでは無かった、ダグオン達もソレが声を挙げるまで気付かなかった、否、気付けなかった。

 

 「「フフッ……フフフ……フフフハハハハハハハ!」」

 

 「何っ!?」

 「ヤロウ!!」

 「……やはり息があったか…!」

 『チッ、大人しくくたばりやがれ!』

ダグファイヤーがブラスターを向けるも既にジェゲンガ星人は復活していた。

 彼にして彼女は笑いながら言う。

 「「ふふ!あの荒魂とやらは良い実例を見せてくれた!奴に出来るのであれば私達にも可能なのだと!!」」

 その言葉を発するジェゲンガ星人の身体は朱く光る。それはノロの光り。

 「まさか?!」

 「取り込んだのですか!?ノロを!?」

カイ、ヨクが星人のまさかの行動に驚愕する、そして星人の存在とノロを取り込んだという事情に調査隊もまた驚きを露にする。

 「「さぁ!下等種共!!今度こそ貴様らを始末してくれる!!」」

 ノロを得てジェゲンガ星人は更に凶悪な姿へと変貌する。それはまるで悪魔の様だ。

 『っ!上等だ!!今度こそテメェを倒してやるぜ!』

ダグファイヤーが見栄を切るように星人に向かって指を指す。カイ達が調査隊を庇うように位置取りをする。

 だからこそ、赤羽刀に近付いたヨクも直ぐには気付く事が出来なかった、星人以外にも解放された存在が居た事に。

 

 『荒魂……滅すべし

 

 『な、何だ!?』

 「これは声か…!?」

 「一体今度は何ダヨ!」

 「今、僕達以外に生体反応は無いはず……」

 「……何処からだ…?!」

ダグオン達が聞こえた声に辺りを見回す。

 「もう!次から次に何が起きてるの!?ちぃ姉!ミルヤさん!」

 「私にも分からないわ……ただわたしたちの理解の範疇を越えた事が起ころうとしている。これだけは確かよ」

 「瀬戸内智恵の言う通りです。どうやらダグオンに関わると我々の常識は破壊されてしまう様ですね」

 「うぅ……流石にもう勘弁して欲しいですぅ…」

 「なぁ、おい……アレは荒魂ちゃんで良いのかよ……」

美炎の叫びに智恵、ミルヤ共に最早お手上げ状態と言わんばかりの反応、清香も流石に宇宙人は想定外過ぎて気弱モードに戻ってしまう。呼吹などジェゲンガ星人を荒魂と見て良いのか迷っている始末だ。

 そうしている間にも声は大きくなる。

 

 『荒魂は滅すべし!』

 

 「「何だ!?何者だ!!」」

 

 『荒魂は滅ぼす!全て!!

 

 「「ふざけるな!出てこい!」」

 

 『ォォオオオ!!我が怒り!刻み滅せよ荒魂ァァアア!!

 

 段々と大きくなるその声と共に赤羽刀の山から飛び出したのは刀の中にあって場違いな程、綺麗な西洋剣(ロングソード)、その剣は人が手にするサイズから巨大化し、巨人へと変形する。

 

 『我が名はライアン!荒魂を滅ぼす者!!』

 

続く

 


 

 次回予告

 ウイングヨクです。

 荒魂スルガを倒した僕達と調査隊の前にノロを取り込んだジェゲンガ星人が立ち塞がったその時現れた剣の巨人。

 一体貴方は……

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 復讐の刃!ライアン推参。

 次回も"トライダグオン"

 





 やっと……やっと本編登場だよライアン。
ではおやすみなさい。貴重な休み、睡眠に明け暮れる私、ではまた次回

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