へしきりことへし切長谷部が出たりした為、大分遅れましたが投稿です。
今回、どこを詰めて、どこをカットして、どこを入れるかかなり苦労しました。
みんな大好き高津のオバチャンと俺たちのユイ・ヤマシロは絶対に入れたいと思ったのでこうなりました。
私の中でオバチャン、由依、イチキシマヒメ、ひよよんはもう完全にネタ方向の認識なんですが、皆さんは如何でしょうか?
前回の"刀使ノ指令ダグオン"
ええい?!奴め一体何処に隠れ……
──職務怠慢。嘆かわしい。
?!お前は……申し訳ない我が上司があんなで……
──それもある。しかしこれ以上介入する必用性があるのか?
……済まない、此処はあらすじなのであまり長く喋れない。
──そうか。……そうか…。
━━火星近辺
地球から最も近い惑星の1つ、そして地球と最も似通った性質を持つ天体、それが火星。
テラフォーミング技術さえあればすぐにでもこの星は命の惑星へと生まれ変わると言っても過言では無い。無論、言葉で言う程簡単ではないが。
そんな赤い大地の星の空に奇妙な月が1つ……否それは月に非ず。
それは宇宙の名だたる凶悪な犯罪者達を収監した牢獄。しかしそれも今は昔、既に牢の意を為さず、犯罪者達の巣窟と化したそこでは地球の様子を伺うようにして浮かぶ
「~♪」
そこへ現れるのは蒼い炎の怪人。
「随分とご機嫌ではないか、女医よ。何ぞまた新しい玩具でも手に入ったか?」
「あら、珍しい。あなたの方から妾に話掛けるなんてぇ、天変地異の前触れかしらぁ?」
蒼炎より女医と呼ばれた彼女はからかう様に言葉を返す。
「ふん。儂とて何でもかんでも拒絶している訳では無いわ!それで……何をしている」
「別にぃ大した事じぁあないのぉ、この前ぇ、ジェゲンガ星人が送って来たモノを調べてたらぁ、面白い事が判ってぇ、その辺り詳しく知りたくなったからぁ、地球を覗く事にしたのぉ。」
「地球を覗く?あの
女医の言葉に首……恐らく首だろう部位を傾げる蒼炎ことデモフレア星人"煉獄魔人メレト"、そんなメレトの疑問を聴いて彼女はコロコロ笑う。
「あらぁ?別にあなたが思う程、つまらなくは無いわよぉ?特にあの惑星の原生生物の中でも人間とか言う霊長類は面白いわぁ♪特に、教訓を活かそうとして全く活かせない愚直さとか」
「儂には理解出来ん価値観だな、それで一応訊ねるが、何が見えているのだ?」
「そうねぇ、丁度火星に着いたと同時に装置が出来たからぁ、経緯は知らないけどぉ、中々愉快な事になってる場所があるみたいよぉ?」
そうして彼女が指差す装置に映る場所とは日本列島。
その座標は鎌倉の刀剣類管理局本部と舞草の潜水艦を著していた。
━━地球・日本
長船女学園、美濃関学院、平城学館、伍箇伝の教育機関を構成する実に三つの学校がその日、刀剣類管理局麾下の機動隊、そして県警によって封鎖が行われた。
その内、美濃関と長船は大規模テロの容疑により機動隊が突入、強制捜査と相成る。
この事実は現体制下の元、刀使により守られてきた国民達にとっても衝撃的なモノとなった。
そして、潜水艦によって逃亡した折神朱音率いる舞草残党もこのニュースを艦内にて知る。
「長船と美濃関が……」
「平城も警察によって封鎖されたようです」
艦内にある談話を目的としたテレビモニターのある部屋に朱音、累、可奈美、姫和、舞衣、沙耶香、薫が座り、そして少し離れた場所でエレンが壁に寄りかかりながら沈痛な面持ちとなる。今この場の空気は重い。
「孝子さん達どうなったんだろう…」
「一気に窮地に追い込まれたね……大分前から仕組んでいたんだろう」
可奈美がポツリと溢した言葉に誰も返せない中、フリードマンがこの状況に対し自己分析した結果を口にする。
「どうして里の事が知られていたんでしょう?」
累が朱音の顔色を伺いながらフリードマンへ疑問を挟む。
「舞草内に内通者がいた痕跡は無いし、あの里の情報は地図やネット、衛星からもリアルタイムでデリートし続けてるからね」
まさか孫娘が手に入れたアンプルから場所が割れたとは彼も思わないのだろう、一切の心当たりも無い故、彼なりに仮説を立てる。
「知られていたと言うより、何らかの方法で見つけたんだろう。もしかすると今の我々の位置も筒抜けかもしれないな……」
アンプルは既に長船にある為、潜水艦の現在地自体は割れていないが、進路の予測は立てられているだろう。
紫……いやタギツヒメに判らぬ場所など、この地球には最早1ヵ所だけだろう。
「問題は邪魔者が居なくなった奴等が次に何をするかだ」
「まさか20年前のような!?」
フリードマンの予測に累が最悪を想像する。しかし彼はやれやれと言わんばかりの動作で彼なりの最悪を述べる。
「それで済むかな?今や折神家に集められたノロの総量はあの時以上の筈だよ。まさにステイルメント、打つ手無しだね」
切迫した状況だと言うのにお手上げだと軽く振る。
「ここのまま予定通りに長船に向かいますか?」
エレンが指針を訊ねる。
「いっそ国外ににげるかい?」
フリードマンは茶化した様に提案する。
朱音は複雑な顔色で思案する。
一方で昨夜舞草が襲撃を受けたと同じ頃、智恵は焦り苛立ち、再び精彩を欠いた事によりミルヤに責められ諭される、そしてこのまま独り思い悩んでいても解決はしない。
遂に智恵は自らの秘密を調査隊の皆に明かす。
今までの経緯の中で皆を騙していた後ろめたさもあり、智恵の面持ちは重い、しかし意を決し話した事で仲間達は驚きこそはしたものの、責めるでもなく、詰るでもなく、寧ろ仲間としての瀬戸内智恵の言葉をしんじてくれた。
智恵はその事に今まで自分の中で積もりに積もっていたモノが軽くなったのを感じる。
ミルヤも真実を見極める為に情報は多角的であるべきと納得してくれた。
そしてミルヤの助言案で現状、最も身近に居る舞草の人間へコンタクトを図る。つまり青砥館の青砥陽司の下へ向かう事と相成った。
━━鎌倉・刀剣類管理局本部
「舞草と思わしき者を全て掌握しました。これで事態は収束に向かいますが…」
本部、折神家の発令所内にて此花寿々花が舞草隠れ里での報告を読み上げて嘆息する。
「あれ程我々を悩ませた組織を一夜にして壊滅に追い込むなんてえげつないほど鮮やかな手腕ですわね」
自分達がどれ程手を尽くしても掴めなかった尻尾を簡単に掴み、一夜で解決してしまった主の手腕に感嘆と戦慄を覚える。
「現場に向かった機動隊員達は刀使の写シ対策のために、武器まで持っていったらしい」
「対刀使用の武器を態々開発していたなんて…。舞草対策だとしても少しの容赦もありませんわね」
「紫様は十条姫和の起こした御前試合の一件からここまでずっと布石を打っていたんだろうか……」
「……それ以前から、という感じですわね。
自分達にすら知らされていなかった武器の存在、何処で得たかも知れぬ敵の本拠地の場所、彼女達には紫の考えが読めず困惑するより他ない。
しかし仕えるべき主の事を疑うなどと不敬にあたる、ならばそれは必要な事であったのだろう。
彼女達は自分の中でそう思考し納得した。
本部庁舎の一区画、鎌府学長室にて雪那は職員から報告を受ける。
「長船?美濃関、平城の帯刀権の剥奪、武装を解除致しました。また、折神朱音の行方は海上保安庁が全力で……」
「甘いっ!!海自にも圧力をかけて捜査させなさい」
「ですが……」
「これまで我々がどれだけ連中に貸しを作って来たと思う ?」
海上自衛隊どころか今、この場に居る職員に既に妙な圧力を掛ける雪那の視線、彼女の頭の中では未だ沙耶香の存在が崩れた未練を繋ぎ合わせている。
(沙耶香…貴女の居場所はここだけなの……!)
親指の爪を咬みながら雪那は妄執にすがり続ける。
折神家奥の祭殿、そのまた更に奥にあるノロを貯蔵する空間、其所に折神家現当主折神紫にして大荒魂タギツヒメが立っていた。
紫がその身に纏う衣服を脱ぐと周囲の大量のノロが彼女を中心とし集まり出す。
その様相はまるでマグマの中から何かが蠢く
「………」
紫…否タギツヒメはただ黙って為されるがままその身をノロの海に委せる。
━━ダグベース・メインオーダールーム
そしてここでもそのニュースに衝撃を受ける者達が……。
「マジかよ…美濃関が……」
「…………ダメです。長船の従姉に連絡が着きません」
「……平城も封鎖された…」
各々の学校に縁がある3人が茫然としている。
「こりゃあ、マジでシャレになんねぇかもしれネェ……」
「明らかに、仕組まれた事が分かる程の手際の良さだ…」
申一郎と戒将はニュースを見て初動の速さ、折神紫の手管に舌を巻いている。
「どうする?」
「焔也と龍悟はここから帰らない方が良いだろう。俺達も有事の際を考えればここに留まる事が吉だろう」
「そう……ですね……ですが戒将は本部に顔を出さなくても平気なんですか?」
長船が検挙された事に予想以上に動揺を顕にする翼沙、何とか感情を抑え戒将に戻らなくて大丈夫かと訊ねる。
「どの道、警邏の男子生徒に出来る事など知れている。それに今は……いや、何でも無い」
戒将はそんな翼沙の疑問に問題無いと返し何か言いかけるも言葉を濁す。
「兎も角、異変があれば即座に動ける様にしておけ。恐らく渦中の場は鎌倉…折神家となるだろうが」
「……なるほど、壊滅したテロリストの本拠地とは舞草の里…。そして封鎖された三校は反逆者が出た二校と舞草の息が掛かった長船、そして未だ行方知れずの折神朱音……、つまり十条達は逃げおおせたと言う訳か…」
「そうだ。その際、起死回生を打つならば電撃戦を取るより他に無い、であれば我々の目的地は鎌倉になる」
「「「「………」」」」
戒将の予測に皆が黙り混む、恐らく彼等は本能的に決戦が近い事を感じ取ったのだろう。
5人は各々に拳に力を入れた。
場所は戻り原宿は明治神宮駅前通り。調査隊は青砥館へ舞草の情報を求め向かう最中である。道中、矢鱈と荒魂に遭遇し、思うように進まない。
そんな中でまたしても智恵は焦り始める。
「どうして…急いでいる時に限ってこんな……」
「アタシは荒魂ちゃん大歓迎だけどな!へへへっ!」
「荒魂のせいで余計な時間を使いましたね。青砥館へ急ぎましょう」
逸る気持ちを抑えきれず焦燥する智恵に対し、呼吹はいつも通り荒魂と遊べる事に笑う。
ともあれ青砥館へと先を促すミルヤが声を掛ける。
「まさか原宿に着いてすぐに荒魂と戦うことになるなんて思わなかったです…」
「私だって思わなかったよぉ……ちょっと出てくるタイミング考えて欲しいよね」
先程の荒魂との遭遇戦闘に思わず愚痴と言うか文句を溢す清香と美炎、すると呼吹までもが2人に同調する。
「まったくだ」
これには美炎も目を丸くして驚き訊ねる。
「あれ、何かいつもと反応が違う!?いつもなら荒魂と戦えて喜んでるのに……どうしたの?」
「チチエにあんな辛気臭い顔されりゃ、楽しめるモンも楽しめねぇよ」
「…………」
そういって呼吹が顎で指す方を向けば智恵が思い詰めた様な顔で沈黙している。
「ちぃ姉ぇ?ちぃー姉ぇ?!」
そんな智恵に美炎も見かねて声を掛けるが彼女の反応はどう見ても著しく無い。
「えっ?!な、なに?ごめん聞いてなかったわ」
「別に何でもないけど………大丈夫?」
「うん……もちろん」
美炎に心配をかけてしまった事に自分の中の焦燥を無理矢理しまいこんで笑顔で返事を返す智恵、しかしミルヤはそれに異を唱える。
「そうでしょうか?私にはとてもそうは見えません。これまで以上に動きに精彩が無く、その上、状況判断に乏しく周囲の動きも見えておらず、声も届かない始末。今の戦闘で何度危険な場面があったか理解していますか?安桜美炎や六角清香のフォローがなければ無事では済まなかったでしょう」
ミルヤが羅列する智恵の現状のコンディションに智恵自身も自覚があるのか眉根を寄せる。
「舞草の事が気になるのは解りますが、余りにも余裕が無さ過ぎます。あれでは戦力になるどころか足を引っ張るだけです。正直、戦いに参加して頂かない方が助かります」
「も、もうそれくらいで…」
「あなたに何が──」
つらつらと事実を挙げて智恵を責めるミルヤに清香が制止に入る、だが智恵も頭に来たのか反論を口にしようとして
──Giaaaaauuonnn!!
そこへまたしても新たな荒魂が現れる。
「ええっ!?またぁ?!」
「こんな時に!次から次へと、まったくもうっ!!」
これに美炎は辟易し、智恵は余計に苛立ちを募らせる。
「各員戦闘準備。七之里呼吹は敵正面。瀬戸内智恵と六角清香は後方にて支援。私と安桜美炎で死角を突き、これを殲滅」
ミルヤは沈着冷静的確に指示を飛ばし、戦闘体制を取る。
そこへ智恵が並び御刀を抜きながらミルヤに懇願する。
「今は一刻も早く仲間の安否を確かめたい!私も前衛に加わります」
「忘れているかもしれませんが、この調査隊の隊長は私です。隊長としてその案は却下します。今の貴女では、寧ろ余計な時間を浪費するだけです」
が、ミルヤは隊長判断で智恵の前衛参加を拒否、清香に指示を下す。
「六角清香。瀬戸内智恵が無理をしないよう注意を怠らないで下さい」
「は、はい!」
そして再び戦闘の幕が上がる。
呼吹が暴れ、荒魂の列が乱れた所を美炎とミルヤが突き、数を減らして行く。
清香は途中、彼女達が討ち漏らした荒魂に対処しながらミルヤに言われた通り、智恵の方をなるべく意識する。
その智恵は歯痒い顔で支援に撤し、今の所は問題は無い。
しかし、彼女の心理を考えれば時間は掛けられない。そこでミルヤは彼女にしてはらしく無い、以外な戦法を取る。
それなりの数を有す荒魂に対し、写シを剥がされながらも突撃、中心となる中型の荒魂を討つ。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
流石にそれが祟ったのか息の上がり方が悪く、怪我も負ってしまっているミルヤ、清香が心配そうに声を掛ける。
「ミ、ミルヤさん、腕から血が……」
「問題ありません。この程度であれば、戦闘に支障をきたす恐れはありません」
簡単な止血をして息を整え返事をするミルヤに呼吹と美炎も呆れたり驚いたりしている。
「無茶しやがって、チチエに無理するなって言ったヤツが随分らしく無い戦い方じゃねぇか」
「うんうん。写シが剥がされたのに無理に突っ込んでいくから、見ていてハラハラしちゃった」
そんな2人からの言葉に彼女は当たり前の事を判断したまでとばかりに返す。
「やれると判断したから行っただけの事。今は一刻を争う時、時間を浪費する訳にはいきません」
「……もしかして、私の為に怪我を?」
ミルヤのらしく無い無茶に智恵は思わず自分の為に彼女が怪我をしたのではないかと後悔を露にする。
「それは違います。怪我を負ったのは私の未熟故、もっと精進に励まねばなりませんね」
しかしミルヤはその後悔を否定で返す。その返事を受けて流石に頭が冷えたのか、智恵がミルヤに謝罪を述べる。
「さっきは…ごめんなさい……」
「分かって頂けたなら結構です。先を急ぐ気持ちは理解出来ますが、そのせいでこの隊全体が危機に晒されるような状況は好ましくありません。全員の安全を確保しつつ、その上で目的を達しなければ意味は無いのですから……全員の中には勿論、貴女も含まれているのですよ、瀬戸内智恵。貴女が舞草を心配するように、私は貴女の事が心配なのです」
「ミルヤさん……ありがとう」
彼女の彼女らしからぬ行動と彼女らしい思い遣りに智恵は微笑みながら礼を口にするのであった。
その後、簡単に息を整え再び出発しようとミルヤが号令を掛けようとした所、新たに悲鳴が聞こえ、そちらを向けばまたしても現れる荒魂。
流石にもう勘弁して欲しいと溢す美炎達、そこで呼吹が1人残り、所謂『ここは俺に任せて先に行け』的な台詞を吐くのだが、まぁぶっちゃけ彼女自身が荒魂と遊びたいのと、面白いから格好を付けただけである。
だがそこは智恵が何時もの調子を取り戻し、結局調査隊全員で事に当たり、荒魂を殲滅したのであった。
そして再びやって来た青砥館、来店した調査隊を店主青砥陽司が軽い口調でもって迎える。
「いらっしゃい……って、久しぶりだな、お嬢様方。なんだい?俺が恋しくて会いに来てくれたのか?いやはや、モテる男はつらいねぇ」
「ご無沙汰しております」
そんな陽司の挨拶にミルヤは礼儀正しく返す。
「ちょっと見ない間に更に別嬪さんになったんじゃねぇか?男子三日会わざれば刮目して見よって言うが、女の子も同じだな…………で、冗談は置いといてだ。今日はどうした?刀身以外の事なら歓迎するぜ」
陽司としても彼女達が態々そんな軽いノリで訪ねて来た訳では無い事くらい判るので、即座に営業に移る。
「今日訪れたのは他でもありません、舞く──「あっ!可愛い子がいっぱい現れた!もしかして調査隊の人ですか!?」そうですけど……貴女は?」
智恵が陽司に青砥館に訪れた理由を話そうとした所に新たに割り込む声が1つ、全員が其方に目を向ければ、現れた声の主は綾小路の制服を身に纏った1人の少女。
クセが強いのか、いくらかハネ気味の黒髪に後頭部を長いポニーテールが尻尾の如く覗いている。
何より特徴的なのは制服の左腕に黄色いスカーフらしき物を巻いているのだ。
「やっぱり!みんな制服が違うからピピーンと来たんだよね~!」
そんな彼女は何やら随分と興奮した様子で調査隊の面々を見ながらおかしな事を宣い始めた。
「はぁ~……みんな可愛いなぁ!可愛い過ぎてため息が出ちゃう!まとめてギューってハグしたい!」
何処かの高等部男子とウマが合いそうな事を宣っている少女は思い出したかの様に自己紹介を始める。
「あっ、そうそう、自己紹介しなきゃ!!綾小路中等部二年、山城由依。相楽学長に命じられて調査隊に参加する事になりました!」
「相楽学長に?」
これはミルヤも寝耳に水であったのか意外そうな顔で驚いている。
「ですです。足取りを追ってここに辿り着いたんですけど、まさかこんなに早く会えるなんてラッキー!相楽学長から、ミルヤさんの指示に従うよう言われてます!一応事情は色々聞いてるんで、何でも命じて下さいね!」
「具体的にどの程度事情を知っているのですか?」
「え~とですね、相楽学長と舞草という組織が同じ目的のために手を結んだこととか──……瀬戸内さんってどなたです?」
「…私ですけど…」
「はぁ~…綺麗なお姉さまって感じで素敵ですねぇ!まぁそれは置いといて、瀬戸内さんが舞草の一員だとかそんな感じの事です」
由依の濃さに少々圧され気味の智恵が名乗り出る、そんな彼女を見てより一層蕩けた顔をする由依、控え目に言って変態にしか見えない。
「相楽学長は舞草の事を知っていた…?そう言えば真庭学長とも話が着いていると……ですが瀬戸内智恵が舞草の一員だと知ったのは我々もつい最近の事、何故貴女がそれを知っているのです?」
由依の口から飛び出た事情をおおよそ把握していると言う言葉にミルヤが疑問を呈する。すると由依の代わりに陽司がそれに答えた。
「それはだな、俺が話したからだ。その方が色々と話が進みそうだったんでな」
そう言いながら智恵の方に視線をやり、ニヤリと笑う。
「そっちも身分を明かした方が良いと思ったから、仲間に話したんだろ?…つまり、そう言うこった」
「分かりました。陽司さんがそう判断したのなら何も言う事はありません。それでわたしたちがここを訪れた理由なんですが──」
「ああ分かってる。さっきはつい何時ものノリでふざけちまったが、それどころじゃねぇよな……舞草の事だろ?」
「実はだな──」
陽司が続きを口にしようとした瞬間、異形の奇声が挙がる。
「荒魂ぁぁあ?!折角ひと休み出来ると思ったのにぃぃぃ」
流石に何度も荒魂に遭遇している為辟易してしまう美炎、逆に呼吹はやる気満々である。
そこへ由依が渡りに船とばかりに誰よりも早く動く。
「これは、あたしの実力をアピール出来る大チャンス!皆さんお先に~!」
「あのヤロウ!抜け駆けなんて許さねえぞ!」
一目散に店外に出る由依、一番槍を取られ噴飯する呼吹、彼女達に続いて店外に出る残りの面々。
「うりゃぁぁぁああ!」
そこでは既に荒魂と戦闘を開始している由依、裂帛の雄叫びで御刀"蛍丸国俊"を振り回す。
「あの人…強い……」
清香がそんな由依を見て、ポツリと呟く。
「補充要員に選ばれるだけの事はあるようですね。瞬発力は無いようですが、一撃一撃が重く的確に相手を捉えています。」
ミルヤが由依の戦いぶりを冷静に評価する、彼女の言う通り、太刀による大振りの一撃は重く、細かい機動力こそ無いが相手を確実に仕留める為の攻撃を繰り出している。
「そして、どれだけ揺さぶられてもブレない軸…優れた体感の持ち主だという事が伺いしれます」
「感心してる場合かっ!!アタシの楽しみを横取りするなぁ!?」
ミルヤの評価などどうでも良いから荒魂を盗るなと呼吹の悲鳴が木霊した。
続く
次回予告(BGM:輝け!ダグオン)
ようみんな、鳳 焔也だぜ。
ちくしょう!俺の学校が…!美濃関が封鎖されちまった!?
そして刀使達に現れる異変、それを感じ取るライアン。
中継を通じてみんなの前に現れた折神朱音。
そして俺達にその異変を知らせた謎の女……ってお前誰だよ?!
次回、"刀使ノ指令ダグオン"
鳴動!?鎌倉決戦その1。
こうなりゃあいつらに賭けるっきゃねぇ、俺達もそいつを助けるだけだ!
さて、胎動編終盤の流れは大分時間が掛かる気がしてます。
ここを乗り越えたら、間章で融合合体を始めとした回が書けるので頑張ります!
V(´▽`*)Vエヘガオシマムラピース