刀使ノ指令ダグオン   作:ダグライダー

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 おはようございます。おやすみなさい。まさに何時も通り。
 え?大して進んで無い?次回で鎌倉決戦シリーズの序が終わるので勘弁して下さい。
 
 最近、寝不足が思いの外祟ってたんです、それであまり進まなくて……



第五十話 激動!!鎌倉決戦その2。

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 突如として起こりうる謎の現象。それは日本全国で刀使にのみ起こっていた異変であった。

 龍悟、そして翼沙の得た情報から異変を察知したダグオン達はその原因を探ろうとする。

 そこへ現れたのは……ぜ、ゼータだとぉぉおお?!

 あ…あの阿呆、何を勝手に別の管轄に…しかも実体を伴って介入しておるのだ!!?

 ええい!アルファと言い自重しろぉおおお!

 


 

 それは、刀使達に起きた不可思議な異変が起きた直後の事。

 潜水艦にて折神家……タギツヒメと戦う事を決めた6人は自分達の身に突然起きた異変に慌てて朱音達が居る部屋に駆け込む。

「どうした!?」

 駆け込んで来た6人を見てフリードマンが彼女達に何事かを問う。

 その対面では朱音と累が可奈美達同様の現象に苛まれていた。

 そして丁度、可奈美達が朱音達の状況を認識した瞬間にその現象は収まりを見せる。

 少し間を持ってエレンが開口一番フリードマンに今の現象を訊ねる。

 「グランパは何ともなっていませんでしたね…」

「この現象は刀使達にしか起こらない。以前同じ現象が確認された事がある……20年前の事だ」

 そう口にして両手を組ながら頬杖をするフリードマン。彼の中で嘗ても起きたこの不可思議な現象がリフレインする。

「恐らく隠世で何か大きな変化が起こったのだろう。……そして大荒魂が出現した」

 確信を持って語るフリードマンに朱音が自らの意思を伝える。

 「これは国家レベルの災害です。一刻の猶予もありません、この事を直ぐにでも人々に報せなくては……真っ直ぐ横須賀に向かいます。報道陣を集められますか?」

 朱音はこの事態を以て真実をテレビ中継を使って全国民に報せようと言うのだ。

 「そこで私が全ての真実を語ります。折神家が隠してきた事。タギツヒメのことを」

「それが明らかになれば、最早この国だけで済む問題では無くなるかもしれないな…。だが折神紫がそれを許すとは思えん。最悪の場合もあり得ます」

 フリードマンは事実を明らかにすれば日本どころか世界に波及しかねない折神家の真実とタギツヒメの存在に対し紫がむざむざとそれを許す筈が無い。下手をすれば殺されてしまう事もあり得ると明言こそ避けたが暗にそう表した言い様を口にする。

 だが朱音は折れぬのか退かない。

 「私に何が起きようと舞草には協力者が沢山居ます」

「駄目です!朱音様の代わりはいません!」

 累が思わず叫ぶように朱音を止める。フリードマンも累の意見に賛成なのか窘める様に冷静に告げる。

「逆に貴女さえ無事ならチェックメイトにはならない」

 事実、此処で万が一朱音に何かあれば、舞草としてはかなりの痛手だ。

 後に残るのは折神家同様に歴史を誇るとある名家、その一族が舞草内での派閥一強となるのは些か問題がある。それにタギツヒメが復活を完全に果たしてしまえばそんな余裕が人類に残されているのか否か……(無論、ダグオンの存在は考慮していない結論ではあるが)

 そんな大人達に姫和は彼等が良案無しと見るや口を開く。

 「…ならば横須賀から私達は別行動をとります。折神紫を討てば全てが終わる」

 姫和を始め、既に結論を下し決意をした6人。エレンが姫和の言葉に補足する様に続ける。

 「攻撃は最大の防御といいます!」

言うなれば御前試合のリベンジ、あの時たった独りであった者が今や6人。まぁ、最早暗殺とは言い難いが。

「止めても無駄なようだね……。朱音様といい、君達といい…本当に刀使というのは……」

 彼としても溺愛する孫娘含むうら若き少女達に託すしか無いジレンマに不甲斐なく顔をしかめる。

 「分かりました。ですがせめて、私の出来る事はお手伝いさせて下さい。あなた達が戦い易くなるよう少しでも多く敵を私の元に引き付ける様にしましょう」

 嘗て刀使であった者として、彼女達の覚悟が理解出来る朱音はせめて、今の己に出来る仕事をこなそうと彼女なりの支援を約束する。

 

 「ところでどうやって折神紫の元に辿り着く?」

話が決まったところで、ふと、薫がこの状況から如何にして鎌倉の折神紫の居場所へと向かうのかを問う。

 「え?それは…」

これにはエレンも流石に考えが沸いて無かったのか言葉に詰まってしまう。しかしそこへ可奈美が妙案思い至ったとばかりに口を挟む。

 「ねぇ。アレ、使えないかな?」

果たして彼女が思い付いた策とは一体……。

 

 

 

 

 一方、鎌倉の刀剣類管理局本部発令所内にて親衛隊の真希、寿々花はとある報を受け、その意図を図りかねていた。

 「折神朱音が投降?」

 「今更そんな事をして何になりますの?先程の現象と言い、何が起こっているのでしょう……」

 この発言から親衛隊であっても紫の真意を知っている訳では無いという証、結局の所彼女達とて組織の歯車に過ぎないのだ。

 「ボク達も横須賀に向かうべきだろうか?」

 「何が起こるか分かりませんし、此処を動かない方が良いでしょう。罠という可能性もありますわ。鎌府の刀使を出動させましょう、高津学長に連絡を」

 真希からの案に罠の可能性を踏まえ自分達は残るべきと指摘し鎌府の刀使隊を使おうと雪那に連絡を取るよう指示を飛ばす寿々花、だが発令所のオペレートをこなす男性所員は困惑しながらも事実を伝える。

「高津学長は鎌府の刀使を引き連れて既に横須賀港に向かっていると、今報告が……」

 まさかの独断専行、結果として良い方に向かったが、曲がりなりにも伍箇伝の一角を成す学長が事後報告の専行と言うのは責任者として宜しくない。

 

 その雪那は現在、横須賀港に向かう車の中で朱音の存在に忌々しさを覚えていた。

 (折神朱音……紫様の実の妹でありながら紫様に弓引く愚か者め。絶対に私がこの手で……)

 

 同じく神奈川へ向かうヘリの機内では結芽が胸を抑えながら呟く。

 「楽しい事私抜きで始めちゃやだよ……」

けほけほと咳き込む結芽、声には今一つ生命の覇気が無い。

 

 

 

 夢を見ている。霧に包まれた神社に続く階段、可奈美にとっての何時もの夢。

 「そっか、六人で行くんだ…でも強いよ。紫は」

若かりし姿の母、藤原美奈都が可奈美と語らう。

 「解ってる。あの人が御刀持ってる所、一回見たから…」

 「そっか。まぁ強いって言っても私程じゃなかったけどね~」

 「え~?そうなの?」

後数刻もすれば決戦だと言うのに、夢の中では何時も通り、緊張感の無い親子の語らい。いや、緊張はあるがそれが足を引っ張る事が無いのだろう。

 「…ねぇ、可奈美。刀使って素敵だと思わない?人を守って、感謝されて、剣術も学べる。最高だよね」

 千鳥を掲げながら美奈都は嬉しそうに語る。

 「うん!」

可奈美はそれに笑顔で答えるのだ。

 「それに福利厚生バッチリだしね!」

 美奈都はそんな可奈美にウインクする。霧が深くなる。もうすぐ夢から醒める。

 

 「可奈美ちゃん、そろそろ時間だよ」

 「ん…おはよう…」

舞衣が眠る可奈美を優しく揺すって起こす、薫がそんな可奈美に呆れる。

 「こんな時に良く眠れるな」

 「何処でもすぐに眠れる事も刀使の大事な資質デス!」

そこへ累が現れ6人に号令を掛ける。

「みんな!そろそろ横須賀だよ!」

 

 「ねぇ!大荒魂を倒したらみんなで美味しいモノ食べに行かない?」

「そういう事なら私がご馳走してあげる」

 「オー!累っぺお腹太いデース!」

 「…わざと間違ってるだろ」

可奈美が言い出した戦いが終わった後の展望、そこに累が年長者らしく奢りを約束する。

 そんな累にエレンが何時もの調子でおどけると薫からツッコミが入る。

 「やった!姫和ちゃんデザートは勿論チョコミントアイスだよね?」

 「コース料理確定かよ」

 「人をチョコミントのアイスがあれば良いみたいに言うな」

 可奈美の中ではデザート込みは確定事項らしい、姫和にチョコミントアイスを食べるよねなんて振るのだから最早、彼女の中では完全に姫和=チョコミントアイスなのだろう。

 当の姫和は自分がそんな単純図式に物申す。

「みんな無事に戻って来てね。美味しいお店探しておくから」

 そんなやり取りに累は笑って返す。

 赤い照明に照らされた部屋の中で姫和が舞衣に視線を向ける。

 「十条さん?」

 「お前が全体の指揮を執ってくれ。お前の指示があればきっと折神紫に辿り着ける」

 「え?!」

それは舞衣に全てを委ねると言う訓示、姫和としてもこの集団を隊とした時、指揮官は舞衣こそ相応しいという信頼の証。

 「お前にはその力がある。孝子先輩達も言っていただろう」

 「十条さん…」

 「姫和でいい。舞衣、後ろは任せたぞ」

彼女なりの信頼に、ならば答えねばならない。それは正しく仲間であることの証明なのだから。

 「うん。姫和ちゃん!」

だから迷わず名を呼んで返す、出会った頃の蟠りも無い、確かな絆が生まれた証左、そんな2人を沙耶香も嬉しそうに眺める。

 

 

 

 

 

 ━━横須賀港

 多くの人が集う夜の港、とは言っても大半が鎌府の刀使、特祭隊の機動隊、そして報道陣。後はパトカーと報道車ばかりで野次馬は一切存在しない。

 既に潜水艦は港の波止場に停止している。朱音は潜水艦の船上に着の身着のまま、警戒も備えも無く立ち尽くす。

 

 「皆さん!私は折神朱音です!私の話を聞いて下さい!」

 

 ヘリの、そして機動隊が展開したサーチライトが彼女を照らす。

 幾重もの報道カメラが朱音の姿を全国に映し出す。

 「何故マスコミが居る!有事の際に備えろ」

其処へ雪那が現れ現場の惨状に声を挙げる。

 

 「今この国には大きな危機が迫っています!20年前、いえ、それ以上の災厄が起ころうとしているのです!」

 

 波止場を臨む倉庫街から狙撃手がスコープを覗く。そのスコープ越しに写るのは折神朱音の背後、無防備な後頭部。

 

 「20年前の災厄の元凶、大荒魂は再び蘇ろうとしています!」

 

 テレビに、街頭ビジョンに、ネットの動画サイトに、様々な映像メディアに朱音が撮される。

 

 「刀使の皆さんも感じたでしょう?先程の不思議な現象を!それが大荒魂が顕れる前兆です!最早一刻の猶予も無い!」

 

 朱音の言葉に包囲を敷いていた鎌府の刀使達も顔を見合せ困惑している。何が正しい事なのか?それは末端である彼女達には分からない。

 いや、よしんば知っている者が居たとしても、一生徒でしかない者に出来る事などたかが知れている。

 そんな刀使達の動揺、日本中の喧騒を朱音の中継を艦内で眺めながらフリードマンは不敵に微笑む。

「フン…準備は整った」

 潜水艦の上部発射管が次々解放されてゆく。

 

 「どうか皆さんのお力をお貸しください!」

 

 黒煙と共に炎を吹き、空に立ち上るのは6つの黒鉄の翼。その行き先は鎌倉、折神本家。

 

 「これは攻撃ではありません!今飛び立ったのは──」

 

 演説を続けながらも空を仰ぐ朱音、視線の先には既に見えなくなった彼女達の最後の切り札。

 

 「私達の希望なのです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━鎌倉・折神家刀剣類管理局本部

 発令所でオペレートを勤める男性が潜水艦から射ち出された飛行物体の正体を判別する。

「これは……ストームアーマーのコンテナです!」

 飛び立った6機の正体はS装備用の強襲コンテナ、その現在地を今も尚計測し続けている。

 「予測着地点は!?」

その正体を知り寿々花がいち早く敵の目的を察する。

「ここです!ここに向かって飛んできます!」

 オペレーターが返した言葉は予想通りのモノ、舞草残党…いや、反逆者達の狙いは空からの正面突破。

 

 「本部まで早く!」

 雪那は最早朱音の事を棄て置き、即座に待機させていたヘリに乗り込み鎌倉の本部に脱兎の如く帰還を急かす。

 

 

 

 

 そんな横須賀の上空を停滞する黄金の剣。

 彼の者の名をライアン、彼は先程起きた現象からおおよその位置を察知したがそれは飽くまでおおよそであり、細かな居場所を掴めずにいた。

 しかし、そんな彼に僥倖とも言える出来事が起きた。それは自分とは違う6つの飛行体、そこから僅かに感じるノロと御刀の気配、アレを追えば念願の相手に合間見える事も叶う。

 『アレの先に奴が居る……。嗚呼、遂に使命を果たす時が来た!』

 首を洗って待っていろと続くその口調は暗い憘びに満ちていた。

 

 

 

 

 

 遮るモノもない空の道を片道切符の特急便で敵の頭上を悠々と飛び越え本丸に弾着する強襲コンテナ。

 衝撃に舞った土煙が辺りを包む。

 聳え立つ剣の如き黒鉄の翼から6人の人影が躍り出る。

 それは決戦装備としてストームアーマーを纏った可奈美達6人の刀使達であった。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━火星圏・衛星軌道

 同じくしてエデン内でも、女医の装置により横須賀での出来事が知られる。

 「クスッ……良いわぁ!とても良いわぁ!こういういかにもな感じ…大好きよぉぉぉぉ!!」

 「ふん!大荒魂とやらがどれ程のモノか知らぬが、儂らからしてみれば大した脅威ではあるまい」

 そんな女医の反応にメレトは鼻を鳴らす。無論鼻らしき場所は判らないのだが。

 と、其処へ鬼と道化師、甲冑、そしてマッニーが現れる。

 「中々、愉快な出来事が起きているようだね」

 「カトウセイブツノウチワモメカ……マァ、ヒマツブシクライニハナルカ」

 「下賎、無価値。無意味。進攻急務!」

 「せやなぁ……猿どものいざこざは金にならんから興味無いなぁ。ま、滅んでも困るしとりあえずタギツヒメ?とやらには負けてもらわあかんけど」

 口々に好き勝手物を言う彼等、漸くして鬼は何かを思い付いたのか提案する。

 「ふむ、大荒魂とやらが存在するのならダグオンも現れる可能性は高い。それに刀使と言う原生種の中でも特殊な存在の力も見てみたかったところだ」

 「ホウ?シカシダグオンハマダシモ、トジトヤラハドウハカルノダ?オオアラダマトヤラトノセントウノジョウホウダケデハタイシタコトハワカルマイ。セイゼイガゴクイチブノジツリョクテイドダ」

 首魁の案に道化師は些かの疑問を呈する。しかしそれを予想していたのか鬼は笑いながら問題無いさと返す。

 「マッニー。君の初仕事だ、例の処置を施されたクイーンから幾つか見繕って彼等を地球に降ろせ」

 「ん?クイーンって…あのザゴス星人のか?ま、確かに改造したお掛けで数には困らへんな。わかった、ほんなら、軽ーく七千ばかりお届けや」

 「あら?もう例の処置は済んでいたのね。なら妾にも少しちょうだい。例のノロを使った実験に数百匹程使いたいのよぉ」

 「良いだろう。持っていきたまえ」

曲がりなりにも同じ監獄に住まう相手を替えの利く道具程度に扱う彼等、憐れザゴス星人には最早人権などありはしなかった。

 

 地球での決戦に宇宙の彼方からの魔の手が迫る。

 凶悪な犯罪宇宙人と大荒魂タギツヒメ、果たして世界はこの危機を乗り切る事が出来るのであろうか?

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 燕 戒将だ。我々が決戦に対する決意を固めた頃、青砥館で新たに山城を迎えた調査隊達も己の成すべき事に動き始めていた。

 

 ……何だゼータとやら?俺の決意を知りたいだと?

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 結集!鎌倉決戦その3

 

 例え周りがあの娘を赦さなくとも、俺だけは味方でなければならんのだ!




 はい、次回調査隊の描写を入れたら遂に反逆者対親衛隊の幕開けです。
 ザゴス星人にはとりあえず戦闘員ポジションになって戴きます。

 だってあの宇宙人、数だけは多いし丁度良い感じの巨大戦力あるし、潰しが利くんですもん。
 ではまた次回

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