刀使ノ指令ダグオン   作:ダグライダー

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 こんばんは。そして遅ればせながらミルヤさんお誕生日おめでとう。と同時に私もおめでとう……あーあ、また年取っちゃったよ。
 私もミルヤさんと誕生日同じなんですよね。
 暑くて思うように筆が進まなかったのは誠に申し訳ございません。


第五十一話 集結!鎌倉決戦その3

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 儂イプシロン、シー坊が倒れたので代打をする。

 S装備用強襲コンテナで鎌倉の折神家へとカチコミかける平均14,5歳のJCK軍団。

 一方火星では悪の宇宙人達がブラック企業染みた悪巧みをしていた。

 ちな、ゼータはきっちり許可取っての代理ってのは面白いから内緒にしておく。

 


 

 ━━原宿・青砥館

 刀使のみに起きた謎の現象、それによるタギツヒメ復活の前兆に美炎は皆で鎌倉の折神本家へ向かおうと提案するが陽司にそれを止められる。

 そして謎の現象より数十分後、自分達の無力を噛み締めながら美炎はポツリと溢す。

 「……私達…本当に何も出来ないのかな……」

傍に付き添う清香も消沈する美炎に何も声を掛けられない。

 そこへ陽司が血相変えて新たな報せを持ってくる。

 「おいお嬢ちゃん達!拠点を逃げ延びた朱音様達と連絡が取れたぞ!」

 その報せに美炎が陽司を見る。他の皆も彼の口にする言葉に耳を傾ける。

 「間も無く朱音様の元に身を寄せる刀使数名による奇襲作戦が決行されるって話だ!」

 「だけど相手はあの御当主様……それに親衛隊も……並の刀使じゃ相手にならないんじゃ」

 清香が不安げに作戦の成功難度を口にする、しかし陽司は心配には及ばないとばかりに話を続ける。

 「並じゃねぇさ。なんせその中には20年前、紫様と共に大荒魂と戦った藤原美奈都と柊篝の娘が居るんだからよ!」

 陽司の挙げた紫以外の2人の名前に聞き覚えが無いからかミルヤが口を挟む。

 「御当主様と共に大荒魂と戦った刀使達の中に、その様な名前は無かったと記憶していますが……」

 「それが居たのよ。歴史から抹消された真の英雄がな」

それを聞いた由依が感慨深そうに件の刀使達を想像する。

 「英雄の血を受け継いだ刀使かぁ。そんなスゴい刀使ならあたしも名前くらいは知ってたりするのかな?」

 「一人は十条姫和。そしてもう一人は衛藤可奈美って言うお嬢ちゃんだよ」

 可奈美の名を聞いた瞬間、美炎が信じられない事を聞いたとばかりに声を挙げる。

 「えっ、可奈美?あの可奈美が御当主様の戦う!?」

しかし智恵はその話を聞いても楽観的にはなれず現実的な話を振る。

 「どんな凄腕の刀使だって、簡単じゃないわ……相手は御当主様や親衛隊だけじゃない。数えきれない程の刀使達が警護に就いている筈だもの。御当主様の元に辿り着く事すら難しい」

 しかしその反応は陽司も予測していたようで更に続きを語る。

 「そこも計画のウチよ。間も無く朱音様が大衆の前に姿を現し、真相を公表される。そこで御当主様の正体も目的も明かされるワケだ」

 「それではみすみす敵の手に落ちるようなもの。何故その様な──」

 ミルヤは朱音の行動に疑問を懐き、しかしそこで何か察したのか即座に納得する

 「いいえ……成る程…そういう訳ですか……それならば説明が着きます」

 ミルヤが1人で勝手に納得してしまったのでよく意味が分からない由依はおずおずと手を挙げながら訊ねる。

 「えっと…あたしにはよく分からないんですけど。どういう事ですか?」

 「折神朱音様は、相手にとっては何を差し置いてでも確保しなければならない存在。例え罠だと判っていても朱音様が姿を現せば動かない訳にはいかないでしょう。一度逃した相手なら尚更、万全を期して、相当数の人員を動かす筈です」

 そのミルヤの説明に得心がいったのか呼吹もその後の展開が予測出来るのか面白そうに笑う。

 「なるほどな、相手のアジトからごっそり敵が居なくなるって寸法かよ」

 「だとしても、少数で相手をするには厳しい数の刀使達が待ち受けているはずだわ」

 「御当主様の警護を任されてるくらいなんだから、きっと腕も立つんでしょうね」

 その作戦の効果は理解出来るがそれでも敵は居る筈と口にする智恵と由依、しかし美炎は何かを決意した瞳で皆に言うのであった。

 「……私も鎌倉に行く!御当主様と戦う事は出来なくても、出来る事が何かあるかもしれないもん!……無かったとしても、こんなところで黙って待ってるなんて出来ないよ!」

 「私も美炎ちゃんに賛成よ。みんなが止めても行くわ」

智恵が美炎に賛同する。

 「ただ待ってるだけじゃ退屈だしな。少なくともここに居るよりはマシか」

 呼吹も退屈凌ぎに同行する気だ。

 「わ…わたしも…行きます……」

 「清香は待ってて良いんだよ?」

 「ううん、行くよ。……正直怖くて怖くて仕方がないけど……ここでみんなが帰ってくるのをただ待ってるのなんて、その方がずっと怖いから……」

 恐怖心を押し殺し名乗り出る清香、美炎に気を使われるが自分だけが待ち続けるのは嫌だと意思を通す。

 「貴方達と来たら……仕方ありませんね、隊を預かる者として私も同行します」

 呆れた口調だがどこか嬉しい顔のミルヤが言う。

 「学長からは、ミルヤさんの言うことをきけって言われてますし、もっちろんあたしも着いて行きま~す」

 由依はぶっちゃけそれで良いのかと思わなくも無いテンションで着いてくる気満々である。

 「やれやれ…無茶なお嬢ちゃん達だ。こりゃ止めても無駄みてぇだな。なら急ぐ事だ、奇襲作戦が始まるまでに到着しねーと、力を貸すことも出来ねぇからな」

 陽司は仕方が無いと言わんばかりの顔で彼女達に労いを掛ける。

 「うん、わかった!」

 「移動距離を考えると時間がありません。これまで以上に迅速な行動を各自心掛けましょう」

 「待ってて可奈美、今行くからね!」

 6人の意思は1つに纏まった。そうと決まれば兎に角急ぐのみ。

 青砥館を飛び出した調査隊一行は原宿駅前通りまで差し掛かる。

 「絶対に許せない……舞草のみんなを……敵はきっと私が……!」

 どうにも智恵は舞草が壊滅させられた事に対し未だ憤っている様だ。下手人が結芽であると知ればどうなるかは想像に難くない。

 「気持ちは理解りますが、私情は捨てて下さい。怒りは視野を狭め、思考を濁らせます。冷静さを欠いては本来の力を発揮する事は出来ませんよ」

 そんな智恵を見かねミルヤが隊長としての言葉で諫める。

 「分かってるわ…。でもそう簡単に割り切れるモノじゃ……」

 なまじ他者の面倒を見る世話好きな性格故、同校同組織の仲間がやられた事に対し怒りが抑えきれないのだろう、そんな智恵の感情に美炎も共感を示す。

 しかしそれでもミルヤは感情を制御すべきであると主張する。

 そんな彼女に清香が恐る恐る訊ねる。

 「ミルヤさんは……どうしていつもそんな……冷静でいられるんですか?」

 「そうしないと誰も守れないからです。多くの人々は勿論、仲間も私自身も」

 十代半ばでこの心理に到る彼女の在り方に美炎は尊敬はすれど、自分には出来ないと物憂げな顔になる。

 「ミルヤさんは大人だね。頭は良いし、冷静だし、尊敬しちゃうよ。だけど私には無理。そうしなきゃって分かっていても、心が反応したようにしか動けない」

 美炎の言う心のままにと言うのも決して悪い事ではない。しかし、往々にして求められるのはやはり感情よりも理性なのだろう。

 そんなやり取りで調査隊内の空気が悪くなりかける。

 そこで見かねた由依が窘めるように皆に向けて彼女なりにおどけた形で割って入る。

 「まーまー!みんな冷静になって、ここで言い争っても仕方ないでしょ!折角の可愛い顔が台無しだよ!笑顔!笑顔!仲良くしよっ!」

 「私は冷静です。それに言い争っている訳でもありません。意見を述べ合ってるだけです」

 だがミルヤは飽くまでも冷静だと主張している。そんな所へ呼吹が慌てたところでどうしようにも無いのだから堂々構えていれば良いとかっさらっていったので美炎が意外そうな顔をして慌てないのか?と質問する。

 「言ったろ、なるようにしかならねーって。それとも何か?慌てたらハッピーエンドになるのか?ならねぇよ、ならドンと構えるしかねぇだろう?」

 「ドンッと構えるって……ふっきーに似合わない言葉だよね、いつも真っ先に飛び出しってっちゃうし」

 「確かに……」

 「うっせーな!?とにかく、ジタバタすんじゃねぇよ!」

 そんな呼吹の言い様に美炎が何とも似合わないと称し、清香も迷うことなく同意したものだから、何とも気恥ずかしそうに呼吹が怒鳴る。

 「だけど間に合うかな~鎌倉まではまだまだ超遠いよ?」

 「間に合わせるの。何があっても必ずね」

 由依の些かお気楽な物言いに年長者らしくぴしゃりと断言する智恵、だが、そんな時に限って邪魔は現れるモノだ。

 「いんや、そうは問屋が卸さないらしいぜ」

呼吹が何かに気付き、皆に警戒を促す。

 

 ──Giiieeeaaaa!!──

 

 そんな呼吹の言葉に反応する様に現れたのは荒魂の群勢、それを見た由依が泣き喚く。

 「世知辛い世の中だぁ!神も仏も居ないって、こういう事を言うだね!だけど女神さまには居て欲しいぃ!!」

 ともあれ刀使の本分を果たす為に彼女達は御刀を振るう。智恵とて、怒りがあろうとも見ず知らずの力無き人々が傷付く様を見逃す程薄情では無いと言う事だ。

 6人から7人に増えた事もあり戦力がアップした調査隊、しかし荒魂もまた一筋縄ではいかない強さを誇り、思いの外時間が掛かってしまう。

 まるで自分達の邪魔をする為に現れた荒魂に対し、ミルヤはその通りなのかもしれないと類推する。

 ならば一匹でも多くの荒魂を倒しその目算を狂わせる事とする。

 そして街道に出ながら清香は何故急いでいる時に限って邪魔が入るのかと漏らす。

 智恵はそれでも放っておく事は出来ないそれが刀使の使命だとと説く。

 しかしミルヤとしてもこれ以上妨害が入る事は望むモノでは無いと口にするが、由依は一匹見付けたら30匹はいるんじゃないかと溢す。

 「ゴキブリかよ!?……まぁ、あながち間違っちゃいねぇか」

 ツッコむ呼吹、が、存外的を射ているので否定は出来ない。

 「ゴ、ゴキブリ……うぅ~…想像しちゃった……背中がゾワゾワしちゃう……キモチワルいよぉ…」

 「あ~!ごめんね清香ちゃん!こういう時は楽しい事を考えると良いよ~」

 想像力を働かせ思わず身震いする清香に、由依は謝罪しつつも軽くスキンシップを取ろうと楽しい事を想像するよう語りかける。

 結果、戦いが終わったら皆でクレープを食べに行きたいと言う清香の可愛いらしい願望に喜び賛同しながらも、それはフラグなのではと余計な事を口にしてその通りになってしまう調査隊、再び妨害に現れた荒魂と対峙するのであった。

 

 それから暫くして、荒魂を退けた調査隊。時間が有限である以上、これ以上の遅延は避けたい。

 そこで如何にするかと案を出す美炎、それは諦めなければなんとかなると言う根拠、無い理論。

 ともあれ他に妙案があるでも無し、進み行く調査隊。

 そこで突然由依が唸りだす。

 「ん~~~~!」

 「うっせーな!何唸ってんだよ、大人しくしてろ!」

 「もしかしてお腹痛い?トイレ行く?近くのコンビニ寄ってこうか?」

 「や、そうじゃなくてちょっと質問良いかな?」

 「うん?何?」

 「折神家に行くのはいいけど、そこに行ってあたし達何するのかなって、そこが解んなくて……一緒になって御当主様と戦う?けど倒し方解んないし、下手したら舞草の人達の足引っ張っちゃわない?」

 「そう言えば駆け付ける事ばかり考えてて、何するかまで考えてなかった!?」

 「何って……支援だよね?」

 「具体的に何すんだよ?」

 「応援……とか?」

 「ご飯の差し入れとか!戦うとお腹空くし、腹が減っては戦は出来ぬだよ!」

 「そうそう、腹が減ってちゃ戦いどころじゃねぇもんな。出来ればスタミナ満点の弁当を───って、何でだよっ!?」

 「ナイス、ボケ突っ込み」

と以下トリオからカルテットに進化した中等部組のやり取りであった。

 そして呼吹が美炎のアホさ加減に呆れ、清香にもそれが移ったのではないかと口にすると、

 「そんなひどい。ほのちゃんと一緒だなんて…」

曲がりなりにも親友と呼べる立場くらいに発展した間柄なのにこの言い分である。当の美炎は──

 「あれ?気のせいか今、もっと酷い事を言われたような……まっ、いっか!」

 「……いいのね……」

この能天気である。これには智恵も苦笑いしかない。

 ともあれ、ミルヤの指摘で三度現れた荒魂に対処する調査隊。流石に慣れたもので余裕が見てとれる。

 そしてそこから決まる彼女達の役目、それは撹乱による囮。

 調査隊が暴れる事で舞草の突入組を支援すると言うものであった。

 辺りはすっかり陽も落ちた頃、やっと鎌倉に辿り着く調査隊。

 「やっと鎌倉に着いた。まだ間に合うかな……間に合うよね?」

 「折神家は直ぐそこです。今は信じて急ぎましょう」

美炎の不安がる物言いにミルヤはともあれ信じて急ぐ事を口にする。そこへ由依が待ったを掛ける。

 「あっ…ちょっと待ってみんな!これって…舞草の人達じゃない?」

 そう言って取り出したスマホを調査隊の皆に見せる。

そこには生放送のニュースで舞草の潜水艦が撮し出されていた。どうやら間に合っていたようだ。

 「いよいよなんですね……何だか緊張してきちゃった…」

 清香が震える手をもう片方の手で押さえながら呟く。

 「どーせなるようにしかならねぇから開き直れ」

 「そんな事言われても……はぅぅ~~~…」

 「緊張してる時は掌に人って字を書いて飲み込むと良いって言うよ!」

 「もう既に飲んでるの…50人くらい…」

 「あちゃー!飲んでたかー。なら万事休すだー!」

 「万事休すなのっ?!」

 「ドンマイ」

 「えぇ~~~っ!?」

 「大丈夫!あたしが良い方法知ってるよ、効果抜群間違いナシの保証つき!」

 「ど…どうするの?」

 「人肌にはリラックス効果があるんだって!だ・か・ら、落ち着きたい時はハグが一番!カモン清香ちゃん!」

 「あはは……遠慮しときます…」

再びの調査隊中等部カルテットの漫才であった。

 清香は兎も角として美炎達は意外にも落ち着き払っている。どうやら彼女は開き直れたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース

 所変わってゼータの出現によって生放送の中継を視たダグオン達、5人は来るべき時を逃さぬ為に万全を期す為に準備に入る。

 「ねぇねぇ、てっちゃんは行かないの?」

そして只一人、そんな5人を眺めながら仁王立ちする男、田中撃鉄。ゼータはそんな彼に気さくに話し掛ける。

 「てっ、てっちゃん?!……んむむ……ワシとて本音を言えば着いて行きたい。しかし、今のワシが一緒に行っても足を引っ張るだけじゃ、悔しい事にのう……じゃからワシはワシに出来る事として此処で己を鍛えながら皆の勝利を信じる事にした!」

 前回の研究所での一件から思う所あってか、今回は同行を辞退した撃鉄、そんな彼の表明にゼータは眼を輝かせる。

 「やー♪ヤバ!マジヤバ!めちゃんこ激ヤバだし!何てゆーの?オトコギ?ってヤツだし!かわい~い!」

 「はっ!?可愛い!?何を抜かしとるんじゃお主はっ!!(……やはりこういうオナゴは苦手じゃ)」

 ゼータのギャルギャルしたノリに付いていけない撃鉄は本人に言ったら否定するだろう何とも面白い顔をしていた。

 「ねぇねぇ、戒将ちん戒将ちん!」

そんな撃鉄を捨て置いてゼータは次に戒将の方へと向かって初対面にも限らず馴れ馴れしく接する。

 「何用だ?時間が無い、下らない要件ならば後にしろ」

 「ん~…、多分そんな掛かんないけどアタシの主観だし、でも聞いときたいし……戒将ちん以外のダグメンを先に送っちゃえば?」

 右人差し指を唇に宛ながら気軽な調子で宣うゼータの態度に、戒将は一度溜め息を吐くと焔也達に先に行けと視線で示す。

 「ワシも出た方が良さそうじゃな。しかし大変じゃな、こんなアバンギャルドな金髪ギャルの相手をせにゃならんとは……」

 「金髪?黒髪にメッシュが入った少女ではないのか?」

 

 「「うん?」」

 

 撃鉄が空気を読んで退室しようとするなかでゼータの相手をこれからもしなくてはならない戒将に同情の言葉を掛ける。が、ゼータの容姿で戒将との認識に差異があることに気付く。

 「どういうことじゃ!?」

 「互いに見えている姿が違うのか……?いや、そう言えば以前管理者(アルファ)が溢していたな、管理者は我々の世界では個々によって認識に違いが出ると」

 頭を捻る撃鉄に対し、戒将は以前に愚痴の様に溢していたアルファの言い様を思い出し口にする。

 「戒将ちん正かーい!ほら疑問が晴れたらてっちゃんは出てった出てった!これからアタシは戒将ちんとだいーじなお話があるんだから!」

 そう言うとゼータは自分の倍ある撃鉄の背を押しオーダールームから弾き出す。

 「ぬぉうぉおお?!」

 セルフドップラー効果を残し閉め出された撃鉄、後に残るはゼータと戒将。

 「それで、一体何の話があるのだと言うのだ。既に鎌倉では事が起きているのだぞ」

 「まま、転送装置使えば一瞬なんだし、焦らない。急がば回れしょ?んでも、時間が無いのもジジツだしタテマエ無しね」

 そう言うとゼータは側にある椅子に腰掛け戒将に向き直る。

 「しょーじき、全部を知ってる訳じゃ無いけど、アルファに付き合ってこの世界系列は何回か覗いたことあるのね。んで戒将ちんの妹ちゃん、ゆめゆめだけど、あの娘結構大変な事しでかしてるじゃない?」

 そのゼータの言い様に心当たりが幾つもある為、黙り混む戒将、構わず彼女は話を続ける。

 「ま、ぶっちゃけ今回の騒動で、も、舞草?だっけ?それを壊滅させたのもゆめゆめだし、あの娘大分恨まれたりしてるんじゃない?それでも助けるの?」

 「成る程な、つまりは結芽が救われればそれに納得しない者から謗りを受けると言う事か」

 ゼータの要件がどういうモノか理解した彼は一度瞑目するとゼータの顔を真っ直ぐ見据え口を開く。

 「問われるまでも無い。俺はあの娘を……結芽を助ける為にダグオンとして戦うと決めた。そこに迷いは無い、無いが……あの娘があそこまで身勝手極まりない振る舞いをしているのを諫められなかったのには責任がある。謗りを受けるならばそれは俺も同罪だろう。無論、当事者からすれば簡単に割り切れる事ではないだろうが……」

 「そっかそっか、じゃ、その辺は助けた後に置いとくとして、君は一体何を迷ってるのかにゃあ?と言うか具体的な手段はあるの?」

 戒将の決意に一先ず納得してみせるゼータ、しかし彼女は彼が何かに迷っている事を指摘する。

 「手はある。既にお前の同胞からそれを提示され受け取った。だが、それは……俺の手であの娘を手に掛ける事と同義だった……そこに今更ながら恐怖を憶えているようだ」

 「あー……何となく察したし。アイツもデリカシー無いなぁ、もう少しやり方あった気がするし。……ん、でもさ、何があっても助けたいんだよね?ならさ、残酷なようだけど、やるしかないんだよ?どうあってもね」

 立ったままの戒将が右ポケットに手を充てるのを見てそれがどういうモノか管理者権限で即座に察するゼータ、ついでにその際のアルファとのやり取りも察した為か微妙な顔になる。

 とは言え、苦渋に歪む目の前の人の子に優しい声音でしかし揺るぎ無い事実を突き付ける。

 「大丈夫…とは一階は言えないけど、でも、アイツの腕は確かだからさ、少なくとも薬はちゃんと作用するよ。だからさ、怖いかもしれないけど、決めたんならどんなに苦しくてもやらなきゃ、お兄ちゃんなんでしょ?」

 「…………そう……だな、既に手段は示された。後は俺が何を於いても実行するだけだ。手段がその1つしかないのであれば尚更」

 「大丈夫そう?」

 少し心配そうにこちらを見詰める瞳に戒将は歪んでいた顔を解いて、穏やかな顔で微笑む。

 「礼を言う。貴女が俺の中にあった迷いを指摘してくれたお蔭で頭の中がスッキリした。ああ、そうだ。例え世界中の全てがあの娘の敵に回っても俺だけは味方でいなければならないんだ。だからあの娘の内に巣食う病魔もノロもコレを使って取り除けるならば……あの娘が二度と目覚めぬ状況になるくらいなら、俺はあの娘を救う為にこの薬を使おう」

 「ダイジョ~ブみたいじゃん!オッケー!そんならアタシのお話は終わり終わり~。早く行って妹ちゃんを助けてあげてよ」

 「そうさせて貰う」

そう言ってオーダールームを飛び出す戒将、そしてそんな彼の背をを慈愛の目で見送るゼータであった。

 「がんばれ~…フフッ」

 「何じゃ、ワシが居ない間、何があったんじゃ……?」

そして戒将が部屋を出た所を目撃し、外でずっと待ちぼうけた撃鉄がもう良いのかのう?と不思議そうな顔でオーダールームを覗くと微笑むゼータを見て首を捻っていたのであった。

 

 

 駆ける。駆ける。駆ける。オーダールームを出て、転送装置の前まで駆ける。

 既に仲間は先に鎌倉の折神家に跳んだであろう。ならば自分も急がねば、この世で唯一人の妹を救う為に…。

 

 「トライダグオン!」

 

 「タァァァボッカイッ!」

 

 蒼き閃光は跳ぶ、その胸に抱いた願いと共に、混迷極まる決戦の地へ───

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ねねー!ねー、ねねねー。ねねっ!?

 ねー!ねー!ねねね…、ねーっ!!

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 鎌倉決戦!孤高の燕VS変幻自在のコンビネーション。

 

 ねねねねねーっ!ねー!

 

 




 次はもう少し早く書けたら良いな!
 さて、天華百剣の新イベントで少し気晴らしします。
 ではまた次回

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