刀使ノ指令ダグオン   作:ダグライダー

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 おはようございます。いやぁ気付けば9月、何とも情けない。
 しかし1つ言い訳を許して頂けるならば、8月はどうにもやる気が一段階下がってその上仕事で疲れが溜まる、ゲームはイベント目白押しとありまして…ええ、はい、取り敢えずパイセン正式ゲットまではいきました。パープルは採れませんでした。典厩ちゃんも水着来なかったし、アリスギアもffは来ないし、成果と言えば鎌府制服の夜見をゲット出来たくらいでしょうか



第五十六話 新たな仲間。兄妹命の瞬き。  

 

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 あらすじに復帰したら私の知らない内に好き勝手荒らされていた件。

 と言うかニューとシグマの奴が来ていた痕跡があるのだが…奴等何故普通に此方に侵入して来ているのだ!?……あっ…また胃が……

 


 

 それは可奈美と姫和が親衛隊2人を相手に刃を交えていた頃。

 安桜美炎、七之里呼吹、瀬戸内智恵のAチーム3人は美炎の案により可奈美達を追うように、祭殿へと向かう。

 勿論そこにも警護に就いている刀使達が居る訳で、彼女達が突撃した可奈美達を追撃する事を阻止しなくてはならない。

 結果、Aチームの面々は再び撹乱役をこなす事になる。数の差に対し鬼気迫る勢いで圧倒する3人とは言え腐っても折神家の警護を任された刀使、実力は確かなモノだ。救いは彼女達にノロが投与されていない事と大多数が折神朱音確保に割かれている事で本来よりも数に限りがあるという事だろうか。

 ともあれ最初は気迫で押せ押せしていたものの、一向に衰えない警護の刀使の数に流石に辟易する呼吹、何と無しに口にした南无薬師景光含めた赤羽刀の話題、未だオリジナルの南无薬師景光は行方知れずどころか最近は赤羽刀すら探せていない事を皮肉気に溢せば、智恵が色々あったから仕方無いと図星を突かれた事を濁し、美炎が同意する様に仕方無いと追従する。

 そんな彼女達の本分はさて置いて、軽口を交えつつもその物量に再び呼吹が苦言を呈する。

 「にしても、いつ終わるんだよ!いい加減打止めになれ!!」

 そんな叫びを聞き付けてか、ある刀使が3人に声を掛けて寄ってくる。

 「あー、居た居た!こんなところに居たんだ。館中探し回りましたよ!」

 「チッ……またかよ、大人しく寝てろぉぉぉ!」

しかし突然現れた彼女に、現れる刀使全てを気絶させる為対処していた呼吹は彼女も敵と見なして斬りかかる。

 だがその刀使が写シを張っていない事に気付いた美炎が慌てて止める。

 「ふっきーダメ!その人写シ張ってないよ!?」

 「何……だとっ……?!クソがっ!!?」

美炎の指摘に即座に振り切る腕に制止を掛ける呼吹、風を斬る音が流れ消える。

 謎の刀使はよたよたと千鳥足で後ろに下がると自分の首へ触れながら一息吐くと、Aチームの3人を見据えつつ口を開く。

 「おっと…。文字通り、首の皮一枚繋がった。もう少しでぼくの首が胴とおさらばするところでしたね」

 「てめー正気か!?写シを張ってなきゃ斬られねーだろうなって油断させる作戦か?」

 堪らず叫ぶ呼吹にしかし謎の刀使はキョトンとしながらその氏素性を明かす。

 「え~!だって味方じゃないですか…!ぼく、味方。味方です!聞いてません?!………聞いてません?そのお顔を見ると、聞いてませんね。ヒドイなぁ。青砥の陽司さんも山城由依も、ぼくの事伝え忘れてるんだ。困ったものですよ」

 夜空の月明かりが雲の切れ間から射し込み謎の刀使を鮮明に映し出す。

 綾小路の制服に身を包む茶色いサイドテール、生真面目さを感じさせるつり目、しかしどことなく捉え所を感じさせない雰囲気を醸し出す彼女はそんな風に独りごちながら口を尖らせる。

 「木寅先輩が配属された調査隊の助太刀に抜擢されて、張り切ってたのになぁ……もう!」

 そんな彼女に見覚えがあるのか智恵が驚きに目を丸めて彼女の名を呼ぶ。

 「あなた……鈴本葉菜?そうよね?」

 「良かった!ぼくの事知ってる人が居た!あなたは智恵さん、瀬戸内智恵さんですよね?」

 葉菜と呼ばれた彼女は智恵の誰何に肯定で返し、智恵もまた葉菜に対し含みを込めて返事をする。

 「ええ、貴女の話は()()()()聞いてるわ」

 「ちぃ姉ぇ、この子の事知ってるの?じゃあ助太刀っていうのホントなんだ!助かるよ~、鈴本葉菜さん!私は安桜美炎、美炎で良いよ!」

 と、警戒もへったくれも無く易々と葉菜に気を許し名乗る美炎。実際、味方に間違いは無いので問題は無いのだがもう少し猜疑心を持つべきではなかろうか……否、その素直な気性が安桜美炎の良い所なのだろう。

 さておき、美炎が葉菜相手に和気藹々と和んでいる今この時も敵は現れている訳で……

 「自己紹介は、そこまでだ。ほら、また団体さんが来たぜ!」

 呼吹が呆れつつ敵が迫り来る事を指摘する。

 

 

「賊めぇ!これ以上好きにはさせないぞっ!!」

 

 

 迫る刀使達を前に葉菜が強く息巻く。

 「早速、ぼくがお役に立てる場面が来たようですね。真面目だけが取り柄のぼくですが、精一杯頑張ります!」

 斯くして、鈴本葉菜を加え4人となった調査隊Aチームは、追加で現れた警護の刀使を相手に立ち回る。

 葉菜の実力は確悦したものという訳では無い、堅実かつ基礎が確りとした地道なモノではある、その腕は成る程調査隊に推挙されるに十分なものだ。

 「流石調査隊!皆さんやりますね」

 葉菜は3人の立ち回りを見て、流石と評価する。

 「葉菜さんこそ、真面目なだけが取り柄なんて、全然そんなこと無いよ!」

 「真面目な()()が取り柄……ね。鈴本さん、二人に例の件、話していいわね?」

 美炎の純粋な喜び様を横目に智恵は葉菜の口にした真面目なだけという言葉に含みを持ちながら美炎と呼吹に対し、隠していた事を話しても良いかと葉菜に訊ねる。

 「はい、問題ありません。むしろ話していただいた方が早く信用していただけるかと」

 智恵の質問に対し肯定の意を返す葉菜、話が見えないのか呼吹は訝しげに智恵達を見る。

 「チチエ、一体何の話だ?」

 「彼女は舞草が綾小路武芸学舎に潜入させた諜報員なの──」

 つまり、元々舞草のメンバーなの…と続け、呼吹の疑問に答える智恵。一方、言葉の意味が解らないのか美炎は首を傾げて言葉を反芻する。

 「ちょうほう…いん?」

 「スパイって事だよ、いちいち話の腰を折るな」

美炎のアホさ加減に呆れながら意味を補足する呼吹、ともあれ鈴本葉菜という刀使は諜報員に選ばれる程には優秀である。決して真面目なだけが取り柄等という訳では無い。

 とは言え、そんな彼女でも綾小路の相楽学長の意図は図りかねているらしく、些か疑問が晴れない。

 とは言え、調査隊には頼もしい仲間がまた一人加わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━折神家・祭殿へと続く道の1つ

 方々では巨人達が拳を交え、調査隊が攪乱に徹しているとは思えぬ程静な道すがら、夜の静寂に消え入りそうなまでに弱々しい呼吸を湛えながら、自らの御刀を杖のようにして精一杯力を振り絞りながら進む少女。

 口元に一筋血を滲ませ土気色に近付いた生気の無い顔で今にも瞼が落ちそうなまでに霞む眼を開きながら、ゆっくりと進む、途中咳き込み吐血しながらも彼女は在りし日の想いを馳せる。

 燕結芽にとって始まりはとても些細な事であった。

 今よりも幼い日、両親に連れてこられた神宮で大人達が見守る最中、御殿の中央に祀られた御刀に手を着ける。

 するとどうだ、自らの体を淡い光が包むではないか。そして周囲の大人達は驚嘆と歓喜の入り交じった声で言うのだ。

「おお!素晴らしい!」 「御刀に認められた」 「まさかこの歳で……」

 周囲の様子から自分はとても凄い事を成したのだと子供ながらに理解した。

 何分、燕家は結芽が生まれるまでは嫡子が息子一人しかおらず、彼女の誕生、そして御刀に選ばれた事は大いに湧く程であった。

 御刀に認められてからは一層励んだ。道場では目上に交じり御刀を振るい、最早敵は居なくなった。

 強いて相手になる人物は兄だが、御刀を使えぬ以上、どうしても実力は発揮しきれないジレンマが付いてまわる。

 故に多数の刀使相手に幼子である結芽が余裕で勝利を掴んだ事実がより一層周囲の大人達を歓喜させ、結芽の自信に繋がり、悪い言い方をすれば皆が彼女に甘くなった。

 同年代には敵は居らず、上の世代でも壁には為り得ない。まさに神童。

 そんな風に周囲が沸き立てるごとに自分は凄いのだと思い至る結芽。実際、他の誰も彼女に勝てないのだからそれは名実共に神童という称号を確固たるモノとさせる。

 そして少しばかり時を経て、燕結芽は初等教育過程を飛び級し、綾小路武芸学舎へと入学する。

 周りは年相応の少女達の中、幼い自分だけが特別な状況、両親が喜び褒め称える事が何よりも嬉しい事であった……あの時、胸に走った痛みに喘ぐまでは。

 結芽の人生が狂ったとしたらその瞬間だろう、学舎(まなびや)で友人を作る間も無く、気付けば病院のベッドの上。

 生命維持装置に繋がれて胸から全身を侵す病の痛みと苦しみに耐え喘ぎ、マトモに体を動かす事すら儘ならない。

 最初は心配して来てくれた両親もいつの間にか来なくなった。

 日に日に痩せ細っていく体、瑞々しかった指は骨と皮だけになり、顔からは生気が抜け白くなっていく。

 ついぞ見舞いに来るようになったのが兄だけとなり、しかしマトモに語らう事すら難しい身となった彼女は独りとなった時はいつも窓の外から見える空へと、力無い手を伸ばしながらぽつりと呟く。

 「苦しいよ……パパ…ママ……助けて……」

やはりと言うか、少女にとって最も頼れる大人である両親を呼ぶ、しかしその願い虚しく叶うことは決して無い、兄とは言え、未成年でしかない戒将はそれを歯痒く思い拳に力を込める事しか出来ない。

 ある日、彼女の点滴を交換しに来た看護師の一人が結芽を不憫に思ったのか同僚に訊ねる。

「ねぇ…この子の御家族は?」

「お兄さんが毎日時間作って来てはいるけど…ご両親の方はそれがもうずっと……」

 彼女達は与り知らぬ事ではあるが、この時燕家では少々の諍いがあり、戒将が家を出る運びとなったのである。無論、当時の結芽にそれを知るよしも無いが。

 とは言え戒将は学生の身、出来た人間であっても子供である。まして、被保護者として扶養など出来る訳も無い、結果、寮に入る運びとなり、兄妹が会う時間は更に少なくなる。

 花瓶に指した花も枯れる程季節が巡った頃、それはある日突然に結芽の前に現れた。

 綾小路武芸学舎の学長、相楽結月を伴って英雄折神紫は死に体同然の結芽に言葉を投げ掛ける。

 「選ぶがいい。このまま朽ち果て誰の記憶からも消え失せるか、刹那でも光輝き、その煌めきをお前を見棄てた者達に焼き付けるか」

 それは見るものが見れば悪魔の誘いであったのかもしれない、しかし幼い彼女にとっては今一度もたらされたチャンスであったのだ。

 故に彼女に断ると言う選択肢は存在しない。その証拠に少なくとも結芽からしてみれば兄が喜んでくれたのだから。

 ならばその選択は間違いでは無かった、そう思うのも無理からぬ事。

 もたらされたソレを受け入れ、学舎へと復帰し、沖縄での一騒動を片付けて、親衛隊へと招集されれば、燕結芽の存在は瞬く間に最強の一角として知れ渡る。

 強くなれば誰もが自分を認める、強い相手を倒せば誰もが自分を褒め称える。

 ──私は凄いのだと見せればママとパパも帰って来てくれる、お兄ちゃんともっともっと長く一緒に居られる──

 幼心に思い至った結論に彼女は我武者羅なまでに強者との立ち会いを望んだ。

 自身が強くなったと証明出来れば、再び両親に見てもらえる。兄に心配を掛けないで済む。

 全てはこの短い生の中で誰かにその存在を刻み付ける為。

 沖縄での試作S装備を下し、親衛隊に招集され、その力を存分に発揮した。

 同僚となった年上の彼女達は優しくもあり、口煩くもあり、そしてよく解らなくもある。

 自身を含め一癖も二癖もある者ばかり、仕える主は強く未だ一度として刃を届かせる事すら叶わない。

 兄も自分を追って京都から鎌倉の本部へ来てくれた。

 結芽にとってはその関係が全て。

でも、病魔は消えた訳では無かった、だから強者と戦い己の存在を示さねばならない、故に弱者へ関心は向けない、弱い者に勝っても誉めてはくれないから……。

 そして見付けた折神紫以外で自分を奮わせる最強の刀使。

 楽しかった、もっともっと戦っていたかった、彼女なら自分を覚えてくれるかもしれないから、そしてそんな彼女に勝てばみんなが……パパとママが……そして何よりもお兄ちゃんがいっぱい褒めてくれるから。でも──

 「もうおしまいかぁ……まだ全然足りないのに…もっとすごい私を…みんなに焼き付けたいのに……」

 祭殿に続く道の、石畳から外れ幾つかある樹の1つに寄り掛かりながら惜しむように呟く結芽。

 判然としない程衰弱した瞳が映すのは夜の深い闇、孤独の中で命の灯火が蝋燭の様に吹けば消えてしまうまでに弱くなった彼女、涙が目端に溜まりながら、必死に望みを口にする。

 「なんにもいらないから……おぼえてくれてれば…それでいいんだよ……」

 腕から力が抜けていく、恐らくは今眼を閉じれば2度とは醒めない。杖代わりのニッカリ青江から滑り落ちる細腕、しかし、しかしだ幾重もの世界で繰り返してきた彼女の死に、抗い、戦う者が世界(ここ)にはいるのだ。

 「忘れぬとも。俺が居る限り、決してお前を死なせない」

 僅かに残った意識へ語り掛ける優しく強く、それでいて泣きそうな程必死な声、最早感覚すら薄くなった己の細腕に暖かい熱が加わる。

 何かの空気が抜けていく音、それが燕結芽が最後に聴いた音、霞んだ瞳が捉えたモノは青い影、それを何かと認識するより早く彼女の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 「……………」

帳の中、大樹に背を預け眠る少女の左手首に、何かが入っていたであろう小さなタブレットを押し充てる青い装甲の人影。

 彼の視界には少女のバイタルが表示されていく。

 「紙一重……であったか……。この時ばかりは神の存在を信じたくなるな…」

 片膝を着きながら安らかに眠る彼女を眺めるターボカイ。

 その声は安堵に包まれている。

 「お前の為に俺の様な粗忽者が出来るのはこれくらいしかない。だが……もし許されるのであれば、次にお前が目を醒ました時に、今度こそは共に居られたらと願う俺の我儘を受け入れてくれるか?」

 聴こえてはいないだろう、しかし血の繋がった妹の御髪を優しく撫でながら呟く彼のそのマスクの下はとても優しい顔であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━日本上空

 7つの流星が島国を目指し墜ちてくる。

 1つは横須賀港へ、1つは何処かへ、2つはとある傭兵の元へ、そして3つが鎌倉へと墜ちていく。

 大気圏を抜け、今にも壊れそうな簡素な方舟は中空で分解する。

 現れたのは蟻の様な異容、人であれば死を免れぬその状況に恐怖の声1つ挙げる事無く静かに地上へ降り立つ。

 "ザゴス星人"、嘗て幾度となく元の世界でダグオンと合間見えた宇宙人、この世界のダグオンとはまだ数度刃を交えた程度、そんな彼等はダグオン達からしてみれば数以外は大した脅威にはならない存在。

 そう、個々は脅威ではない。しかし弱くとも数がいればそれは十分脅威だ。

 今、この地は刀使同士が戦いあい、大荒魂に呼応し荒魂達が群れ、混沌を極めている。彼等の目的はそこへ更に混沌をもたらす事。

 降り立った地で彼等の言語で2、3言葉を交え嗤う。

 視線の先にはこの星に巣食う下等な猿と野蛮なムシケラ、彼等は彼女達が恐怖に震える様を想像して歓喜にその身を打ち奮わせるのであった。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 ……六角龍悟だ……。

 ライアンを降し、束の間猶予を得た俺たち……。しかし、世界は往々にして優しくは無いらしい…、遂に衛藤と十条は折神紫の姿をしたタギツヒメと邂逅し、別れた調査隊は現れた荒魂を相手に四苦八苦する……だが、突如乱入して来たのは…ザゴス星人だと?!

 ……ちぃっ!奴らめ大人しくしているとは思わなかったが…ここで介入してくるとはな……。

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 混迷必死!?人類対荒魂対異星人。

 …刀使たちはやらせん…!




 次回こそは速めに投稿したい。
 とか書いていたら新作のライダー、聖刃とラピライの話とか読んでみたいなぁとか思ってしまったり……。
 私別に流行りモノ嫌いな訳じゃ無いんですよ?ハーレムとか無双だってある程度読みますし、ただねぇ……割合的には成長ものとかドロドロの三角とかも好きなんですよねぇ
 ではまた次回

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