刀使ノ指令ダグオン   作:ダグライダー

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 こんばんおはようございます。
 胎動編も残す所後僅かとなりました。
 なるべく早めに書き上げたい。
 所で刀使ノ巫女OVAの新キャラ、ちゃんまきが声を宛てる長船の刀使、御刀が水口レイピアって……マジですか?え?レイピア?あれも珠鋼製なの?マジで!?
 


第五十八話 激戦!それぞれの戦い!!

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 突如現れた異星人ザゴス星人の存在により戦場はより一層混迷を極める。

 苦境に立たされる刀使達の前にシン、ヨク、リュウが其々の戦場に助太刀に現れ状況を打開せんと奮戦する。

 そしてカイとエンは──

 

 と言うかだな……アルファめいい加減帰って来い!

 


 

 ━━エデン監獄・中央円卓の間

 

 「はっ?!ウッソやろ?なんぼ未開の惑星でも素通り降下とか、ありえへんわぁー」

 7隻の即席輸送突入艇の出撃を見届け地球の状況を知る為、円卓の間に戻ったマッニー。

 そこで妖精から先生と呼ばれる女医の異星人が用意した映写装置にてザゴス星人達がどの様に地球へ降下したか知った彼は地球の警戒網の弛さに呆れ思わず声を挙げてしまう。

 「ソレダケチュウカンコウエキヤコウリュウ、センソウナドガナカッタノダロウサ」

 道化師が些か馬鹿にする様に笑う。

 「侵略容易!一気呵成!」

甲冑がこれならば我等も攻め入るべきと声高々に意見する。

 「ふん、どうせ貴様のそれは体の良い遊戯感覚から来るモノだろうに…」

 メレトが甲冑の発言を聞いてつまらなそうに呟く。

 「妾的にはもう少し楽しみたいからぁ、今のまま、それぞれ好き勝手に動いても良いかなぁって思うわぁ~」

 「どうにせよ我々が動くのはダグオンと刀使達がどの程度やれるか知ってからでも遅くはないだろう」

 「わくわく!わくわく!」

鬼が総括し、妖精がこれから起こりうる出来事に心を弾ませている。

 地球に住まう人間達の恐慌や奮闘も犯罪者たる彼等からしてみれば何処までも退屈しのぎでしかないのである。

 

 

 

 

 ━━折神家敷地内・Aチーム

 

 「オーバーヘッド手裏剣!!」

 空中に舞う紫白の影が足元に装着された手裏剣をサッカーのオーバーヘッドキックの要領で蹴り投げる。

 そこから身を捻り両腕のクナイでザゴス星人を斬り裂く。

 そして近くに倒れた刀使を回収、美炎達の下へと退く。

 「……これで全員だな…」

倒れた警護の刀使を全て回収した事を確認したシャドーリュウ、油断無く敵を見据えながら共に戦う美炎達に伝える。

 「……手間だろうが彼女達を起こせ。このまま寝ていて足手まといになるよりは…戦力として役立つだろう?」

 「確かにそうかもしれませんけど……」

 智恵がリュウの問に歯切れが悪そうする。それも仕方ないだろう、元々は反抗作戦で強襲を掛ける可奈美達の手間を減らす為、囮となって彼女達と刃を交えたのだ。

 起こしたとして、果たして素直に指示を聞いてくれるか否か……不安に思うのだろう。

 「……流石にこの状況を見て、人同士で争う程……愚かでは無いだろう。……それでもと言うのであれば俺が微力を尽くそう…」

 シャドーリュウにここまで言われては流石に嫌とは言えない。

 ちらりと美炎達に視線を向ければお任せしますと言う態度の葉菜、良いんじゃねぇのと鼻を鳴らす呼吹、ブンブンと首を縦に振る美炎と一応は問題が無いようだ。

 「……大丈夫なようだな」

 そうして、リュウと呼吹、美炎がザゴス星人を相手取る中、智恵と葉菜で気絶した刀使達を起こす。

 目を醒ました彼女達は最初、憤慨し警戒を露にしたが、リュウとザゴス星人を見た事により状況を遅まきながら把握し共同戦線を張る事に成功する。

 とは言えだ、リュウが一騎当千の活躍をしたとしても相手の数は多く、またAチーム含む警護の刀使達が幾らか高い実力の持ち主でも最低限3人一組で当たらなければ異星人の相手は厳しい。

 ザゴス星人は単体で見れば比較的に弱い部類の異星人である。しかし、それは広い宇宙全体の視点で見た時の事だ。

 宇宙開発が未熟で未発達な地球人類ではまだまだ手こずる存在には変わり無い、ましてや刀使達にとっては完全に未知の敵なのだ。

 御刀の真価は荒魂相手だからこそ、それ以外では精々切れ味が良く折れない事くらい、写シ、迅移、金剛身、八幡力も一般人からすれば脅威だが、異星人からすれば最低限の装備でやっと同じ土俵に立っただけと言うモノ。

 相手が数で圧すザゴス星人だからこそ最低人数でも勝負になるのはある種の皮肉だろうか。

 「ちぃっ!多すぎだろコイツら!!マジでゴキブリ並みじゃねぇか!!」

 呼吹が跳び回りながら愚痴を溢すのも仕方あるまい。何せ、1匹を2人が押し留め、そこを背中から残りの1人が攻撃して弱った所で3人で確実に止めを差して居るのだから駆除に時間が掛かる掛かる。

 大半はリュウが片付けてくれるとは言え、ダメージの浅いモノはゾンビの様に起き上がるので鬱陶しい限りだ。

 だが、其処へ月光を乱反射して飛び交う飛刃が現れ起き上がったザゴス星人を斬り裂く。

 「……ヨクか…!?」

 「どうやら無事のようですね」

戻って来たクリスタルブーメランを手に手近なザゴス星人へ斬り掛かる。

 彼はエレンと薫の道を切り拓いた後、彼女達を追うのを諦め逃げたザゴス星人の群れの後を追いここまで来たのだ。

 「恐らくはシンの方にも何割か向かったはずです。リュウ、ここは僕が代わりに引き受けますので君は横須賀港の方に」

 「……承知した…。だがその前に奴等を一気に片付けるぞ……!」

 「?…なるほど、了解です。何時でもどうぞ」

リュウはヨクと何かを示し合わせると背中併せとなる。

 「……皆、俺たちから出来る限り距離を取れ……!行くぞ…!」

 「はい!」

 刀使達へ警告を飛ばしヨクと共に回転し始める。

2人の回転が小規模な竜巻を生み出し更にヨクの胸と背中の翼のファンが回転する。

 

 「大回転!ハリケーン!ダブルアタァァァック!!」

 

 2人のダグオンの合体技が炸裂する。彼等へ群がろうとしていたザゴス星人達が竜巻に吸い寄せられ凍結され乱れ斬りにされる。

 

 「すごい……あんな事まで出来るなんて……!」

 「すごいよちぃ姉ぇ!目茶苦茶格好いい!!」

 「これ……アタシらいるか?」

 「まぁまぁ、ぼく達はぼく達でやれる事をコツコツとやりましょう」

 その光景を見ながら彼女達は目の前のザゴス星人へ止めを差した。

 

 ヨクとの合体技により大半を倒したリュウはその回転の勢いのまま、跳躍し空中へガードホークのカードを投擲、ガードホークを召喚し、彼の背中に乗って横須賀港へと向かって行った。

 残ったヨクは刀使達へ向き直り言葉を紡ぐ。

 「さぁ、もう一息です!頑張りましょう皆さん!」

「「「「「「お、お…おー……!」」」」」」

 取り敢えずそう応えるしか無い警護の刀使達であった。

 

 

 

 ━━折神家敷地内・Bチーム

 

 「なるべく荒魂と異星人を交互に集まる様に中央へ追い込め!」

 ミルヤが全体の指揮を取りながら目の前の荒魂を斬り裂く。

 警護役の刀使達は釈然としない思いがあるものの、緊急時の為不満は胸の奥に仕舞い彼女の指示通りにザゴス星人と荒魂を追い詰める。

 荒魂とザゴス星人を交互に集める事により彼等は互いに潰し合い此方に対しての対応が遅れるからだ。

 さてそこで敢えて一部に包囲の穴を開ければ、自然とそこから逃げ出そうとする。

 だがその行く先には彼等の終わりが待っているのだ。

 

 「っし、イイ具合じゃネェノ。さぁ!喰らいやがれ!ブレストモォォタァァアアキャノンッ!」

 アーマーシンの胸部の四連機銃が火を吹く、ガトリングの様に回転するブレストモーターキャノンから放たれる弾丸の威力にザゴス星人も荒魂も等しく蜂の巣となり倒れる。

 「すごい……!」

 「はぇ~!」

 「成る程、あれ程の火力ならば、一網打尽も難しくはありませんね」

 シンの火器の威力に驚愕する清香と感心する由依、そして彼の武装を冷静に分析するミルヤ。

 他の刀使達もおおよそその3パターンの反応に別れる。

 「さぁて……残り少なくなってきた!カワイコチャン達、もうちょいの辛抱だ。援護ヨロシクゥ!」

 言うやいなや、飛び出し、残ったザゴス星人の前へボクシングのステップで肉薄するシン、瞠目するザゴス星人へ強烈な右ストレートを叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 折神家最奥の祭殿、そこでは衛藤可奈美と十条姫和が折神紫…否、タギツヒメ相手に奮闘を演じている。

 肉体が紫である為か写シを使用するタギツヒメに対し

S装備によって引き上げられた八幡力の打ち込みで攻める2人、しかしタギツヒメはそれを御刀を持った片手で難なく止めて見せる。

 「すごい……」

 「ストームアーマーの打ち込みを片手で!」

 曲がりなりにも大英雄の体と大荒魂の力という訳なのだろう、相対する2人も緊張が増す。

 一方で2人が纏うS装備の性能を実感したタギツヒメは愉しそうに嗤う。

 「ふん…我が尖兵の鎧たるその装備、荒魂を宿した親衛隊と渡り合えたのならまずまずと言った所か。愉しいな……」

 そのタギツヒメの言葉に姫和は小烏丸を構える手により一層力を込めタギツヒメへ吼える。

 「母のやり残した務め…この私が果たす!」

ヘッドギアのディスプレイに表示される残りの稼働時間、それに気を配りながら姫和はタギツヒメへ疑問をぶつける。

 「最後に聞く。貴様は折神紫なのか?それともタギツヒメなのか?!」

 「フッ…話している余裕があるのか?」

 タギツヒメが嘲る様に告げる。確かにこのまま時間が経てば不利になるのは反逆者である自分達の方だ。

 質問の答えをはぐらかされた気がしないでもないが、世界の危機を前にその答えは些事と言えよう。

 「くっ…全力で畳み掛けるぞ可奈美!」

 「うん!」

 姫和の意思に強く応える可奈美、二羽の鳥が果敢に挑む。

 端から見れば完全装備を纏いたった1人を相手に2人がかりで戦う行為は、とても褒められたモノでは無いだろう。しかし、相手は二天一流を極めし最強の刀使の肉体を持つ大荒魂だ。

 ましてや命懸け、世界の命運まで懸かっているとなれば卑怯だ等とはとても言えない。

 寧ろS装備があって、やっとマトモに打ち合えているのではと思わせる攻防だ。

 「…っ、これが折神紫の二天一流……」

 間近で見る二天一流の凄まじさに可奈美が息を呑む。

 「躊躇っている時間は無い!可奈美!次で決める!」

 そう宣言するや、タギツヒメへと突撃する姫和。至近で刃をかち合わせ、二振りの勢いで一度、距離を取らされれば、そこをすかさず突きの構えで肉薄しようとする姫和、しかしタギツヒメは難なくかわし彼女の胸を貫く。

 それにより纏った写シは全て剥がれ、膝の力が抜け倒れそうになる。

 「姫和ちゃん!」

 そこへ可奈美がフォローに入り、タギツヒメからの追撃を防ぎ、今一度間合いを開ける。

 「なぜ…奴は今の一撃を躱せた……私達の剣は完全に読まれている……」

 可奈美の肩を借りながら驚愕と疑問の入り混じった言葉を発する姫和、それに対してタギツヒメはその瞳をノロの輝きを宿しその長い髪からも異形の瞳を覗かせ、姫和の言葉を肯定する。

 「ああ、見えているのだ私には。全てが」

 紫の姿をした大荒魂(タギツヒメ)、は事も無しにそう言ってのけた。

 

 

 

 

 ━━折神家敷地内・祭殿へと続くとある山道

 

 夜風が吹く山道に立つのは2つの影。

 片やダグオンのターボカイ。片や折神紫親衛隊第一席獅童真希。

 2人に共通する繋がりがあるとすればそれは、カイの足下、大樹に背を預けピクリとも動かない燕結芽の存在であろう。

 彼と彼女の間に漂う空気は一触即発のモノ……いや、どちらかと言えば彼女、獅童真希がカイに対して一方的に醸し出していると言うべきか。

 「何をしている…か、だったか……」

真希の怒気を孕む声に、さてどう答えた物かと僅かに思案するカイ。

 嘘偽り無い真実としては、妹を不治の病から救うため、地球外の技術で投薬し仮死状態とした……というモノだが、それを馬鹿正直に伝える義理は彼には無い。

 彼女達の思惑や信念、理由はどうあれ、荒魂を体に受け入れ果ては山狩りの際の態度を考慮するならば寧ろ黙って結芽を連れ此処から去るのが一番の選択肢だろう。

 等と考えている内に、真希が現れた方向から今度は自分も良く見知ったら相手…親衛隊第二席此花寿々花が現れた。

 「真希さん!」

 真希の名を呼び、しかし彼女と対面しているターボカイに気が付いたのか寿々花の顔に警戒の色が灯る。

 「………何もしてはいない。少なくとも私が彼女を傷付ける事は無い」

 悩んだ末に出した答えは何も手を出していないと言うモノ。

 実際には結芽を病から救うため、オーバーテクノロジーによる投薬をしているのだが、それについては触れないでおく。

 「心配だと言うなら、確かめてみると良い。お前達の罪が其処にある」

 「ボク達の罪だと……?」

 寿々花を一度視線に納めた後、真希へ道を開けるカイ。

 真希は警戒しながらもフラフラと結芽に近づき彼女の前で膝を折り、そして彼女の胸の鼓動が脈を打っていない事に気付く。

 「結芽………」

 それで理解してしまった。いや、真希自身認めたく無い気持ちもあるのだろう、しかし、同じ様にノロを受け入れた者として解るのだ。

 結芽の瞳には涙を拭った跡がある。恐らく拭ったのは今自分達の隣に立つ人物。

 「これが結果だ。人の身でノロを…荒魂を受け入れた者が辿る末路がこんなモノならば、私はお前達を認める訳にはいかない」

 カイが静かに、しかしどこか詰る様な声で告げる。

 「ボクは……」

 それ以上言葉を紡ぐ事が出来ない真希を見て寿々花が口を挟む。

 「お行きなさい真希さん。紫様の元へ…残念ながら(わたくし)にはもう戦う力はありません。此処で結芽の遺体の処置を行います」

 「処置…?」

 「そのままでは結芽は荒魂になってしまいます」

実際には投薬されたナノマシンセルにより、既にノロは消去され、病の進行を止める為仮死状態となっている訳だが、彼女達はそれを知らない。そして寿々花の言葉に、結芽の死に動揺する真希は其処に希望を見出だした、()()()()()()()()()

 「そうか…結芽はもう一度…」

敗北と親しい者の死で精神的に参っていた真希はついぽろっと溢してしまった。それが彼の逆鱗に触れた。

 「真希さ「貴様っ!何処まで愚弄する気だ!!」っ……?!」

 寿々花の声を遮って激昂し真希の胸ぐらを掴むカイ、アイバイザーの奥に一瞬だけ見えた瞳は真希の心を恐怖に震わせた。

 激昂も束の間、僅かな息を吐く音と共に真希を離すカイ。

 「良く解った。やはり彼女は貴様達に任せては置けない。彼女は此方で引き取る、文句は聞かん」

 そんなカイの発言にしかし寿々花は食って掛かる。

 「それを認める訳にはいきませんわ!彼女は此方で処置します、少なくとも(わたくし)にはそうしなければならない義理があるのです。彼の為にも……!」

  最後の方の科白は歯噛みしながら絞り出す様に紡がれた。

 その顔を見てカイは察する、彼女は自分(燕戒将)への義理を通す気なのだろうと、しかし今此処に居る自分は燕戒将であると同時にダグオンのターボカイでもある、おいそれと正体は告げられない。

 このままでは埒が明かない、ならば……とカイは行動に出る。

 「来い…ファイヤーレスキュー……!」

 予め受諾を取り、借り受けたライドビークルの名を告げる。

 すると森の中から器用に木々を避け飛び出す、白い車体。トヨタ・ハイメディックをベースとした救急車型のビークルが彼と彼女達の前に現れる。

 「なっ…?!」

 「一体…何処から!?いえ、それよりも何を……?」

驚き固まる真希と寿々花を尻目にカイは結芽を抱き上げると、自動的に開いたファイヤーレスキューの後部扉から見える治療スペースにあるメディカルポッドの寝台を目指す。

 「っ!お待ちなさい!」

 「此花寿々花、義理があると言うのならば見逃せ、先にも言ったが私はこの娘を悪い様にはしない。少なくとも化物何ぞには決して堕とさない!」

 カイから察せられる気迫に言葉に詰まってしまった寿々花、結芽はファイヤーレスキュー内のメディカルポッドへ優しく置かれる。

 「頼んだぞ……」

誰に言うと出もなく、ただ自然にファイヤーレスキューに対してそんな言葉を呟くカイ。

 その意思を解したのか不明だが白い車体はカイが外へ出た事を確認した後、後部扉を閉じ再び何処かへと消えて行った。

 ファイヤーレスキューを見送ったカイが真希へ向き直り、言葉を発す。

 「獅童真希、折神紫の元へ行くと言うならば、しかと覚悟しろ。己が一体どういう選択を取ったのかと言う事を」

 そのまま真希達の方へ駆けるカイ、その様に危機を感じ構えようとしてしかし、寿々花は最早真面に戦う力は無く、真希は足がすくんでいる。

 目の前に脅威が迫る……かに思われた。

 「えっ……?」

 「(わたくし)達が狙いではない?!」

2人を素通りするカイ、一瞬呆ける2人。しかし次の瞬間、後ろへ振り向けばそこにあった光景は蒼い閃光が蟲の異形を殴り飛ばしているというもの。

 「私は貴様の選択を認めはしない。だが、だからと言って殺したい程憎い訳では無い、少なくとも、異星人如きに無防備になった貴様等を殺らせる訳にはいかない!」

 例えどれ程頭に来ようと、人間を……結芽と共に過ごしていた相手をこんな所で死なせる訳にはいかない、彼女達は生きて己の罪をより一層自覚し償って貰わなければならないのだから。

 そして何よりも寿々花が見せたあの表情……彼女が自分へ少なからず義理立てをした以上は自分もその義理を果たさねばならない。

 「行け!獅童真希!此花寿々花は私が守り通す!貴様は……お前は自らの目で真実を見て来い!!」

 それは彼なりの断罪、そして激励。寿々花もカイが敵対する意思が無いと確信を得たのか真希へ再び告げる。

 「お行きなさい!彼の言う言葉が真実なのか、その目で確かめて来て下さいませ!親衛隊第一席!」

 敢えて突き放す様な厳しさを籠めた言葉で彼女の背中を押す寿々花。

 戸惑い、悩んだ末、真希は上へと登って行く。

 「行きましたわね………。さて、(わたくし)も休んでばかりはいられませんわ…!」

 九字兼定を杖代わりに立ち、ザゴス星人へ立ち向かおうとする寿々花。

 「無理はするな、まだ休んでいろ。奴等には指一本として貴様に触れさせはしない」

 「お言葉は有難い限りですけど…守られてばかりと言う訳にはいきませんのよ?」

 「ならばせめて真面に立ち回れるぐらいには回復するのだな」

 「………仕方ありませんわね…。ですが充分に休んだら、助太刀させて頂きますわ」

 「……好きにすると良い」

 図らずも、カイの正体を知らぬまま守られ、共闘の運びとなった寿々花、彼女は彼との会話に何処か居心地の良さを感じていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━折神家敷地内・祭殿近くの雑木林

 

 そこでは激闘の末、倒れ臥したライアンを僅かに警戒を込めて監視しながら自らも休息を採るダグファイヤーが居た。

 『みんな大丈夫なのか……?』

 未だダメージ抜けきらぬ状態のまま、各所で起きている戦いに思いを馳せるダグファイヤー、すると隣から呻き声と共に動き上がる気配を感じる。

 『っ……ぐ…ここ…は……?』

 気配の主はライアン。どうやら目が醒めたようだ。

 『よう、思いの外早いお目覚めだな』

 『貴様は…!そうか…私は敗けたのだったな……』

 ゆっくりと身体を起こしながら目覚める前の記憶を思い出すライアン、その声は先程までの復讐によって暴走していたモノとは違い消沈しているようだ。

 『なぁライアン……あー、なんだ、ええっと……だー!面倒くせー!融合解除!』

 掛ける言葉に迷い、融合合体したまま喋るのが億劫になったのかダグファイヤーは融合を解除しファイヤーエンとファイヤーストラトスに戻る。

 「お前、覚えてっか?さっきの勝負、勝った方の言う事を聞くってヤツだ」

 『無論、覚えている。約束を違える程、耄碌したつもりは無い』

 「なら良いや。取り敢えずだ、お前今回はこれ以上暴れんな、そんで手ぇ貸せ。この後、俺はこの先の祭殿に行く。あいつらがどうなったのか見届けなきゃならねぇしもしかしたら、俺がタギツヒメを倒す必要があるかも知れねぇ、お前と戦って疲れてんだ。そん時、一人じゃ流石にヤバい、だからお前の力を貸してくれ、その後は…好きにすりゃいい。ただし!人様に迷惑はかけんなよ!!」

 少々矢継ぎ早に物を言うエン、そんな彼にライアンは黙って目を閉じる。

 「聞いてんのか?」

 『聴こえている。手を貸せと来たか…しかしタギツヒメを前にすればもしかすると私は再び我を失うかも知れんぞ?それでも良いのか?』

 「そん時は…まぁ、何とかするさ。相手が荒魂な以上、お前の復讐心その物を否定出来る程、俺は偉くも何ともねぇ、けど…やれる事は出来るならやらなきゃな!」

 『フン…変わった男だな貴様は…。良かろう、好きにしろ、私は敗者だ。勝者には従うのが道理と言うもの』

 エンとライアンの間で話が纏まる。その時、エンの後ろの林から複数の物音と気配がたった。

 「っと…、どうやら先に進む前に片付けなきゃならねぇ連中が来た。お前はそこで見てな!ちゃちゃっと片してやるぜ!」

 『否、私も戦おう。貴様が組むに値するか確かめてやる』

 現れたザゴス星人を前に1人戦おうとするエンにライアンが自分も戦うと宣言し、エンに手を貸す価値があるか見定めると言う。

 「確かめる?どうするつもりだ?」

 『こうするのだ…!』

エンの疑問にライアンは立ち上がると一度空中に飛び、剣へと変形する。そしてライオソードとなった彼は、どういう原理か、エンが持てる大きさまで縮むと彼の手に収まった。

 『さぁ私を使って見せろ!但し勘違いするなよ、私は貴様を使い手と認めた訳では無いからな!』

 「へっ!オーケー、見せてやるよ。ダグオンの戦いってヤツをなっ!!」

 ライオソードを両手に構え、ザゴス星人の群れへ突撃するファイヤーエン。

 

 戦いの終わりは近い……。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:輝け!ダグオン)

 

 ワシが田中撃鉄じゃい!

 おうおうおう!皆一応に戦っておるわ!ワシも出来れば加勢したいが……生身ではな…。

 それはそれとして遂に始まった反逆者のお嬢ちゃん達と大荒魂の戦い!

 終始大荒魂優勢じゃが…そこに現れるはお嬢ちゃんの仲間達!?って何ィ?!腕が増えたぁっ!!?

 ど、ど、どうなるんじゃい?!!

 

 次回!"刀使ノ指令ダグオン"!

 最終決戦!!逆転の一手。

 

 ぬぉぉおおお!!ワシはいつ変身出来るんじゃい!!

 




 はい、ちょっと長くなりましたが……寧ろ他の作者様方の作品と比べると短いのかなぁ?
 取り敢えず、今回出たシャドーリュウの技。「オーバーヘッド手裏剣」ですが、アレ実はダグオン本編でもやってるんですよね、リュウメイン回の時、憑依宇宙人が敵の回だったかな確か……。
 他にもそういう技が無いかちょくちょく漫喫で確かめて見ます。
 ではまた次回

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