刀使ノ指令ダグオン   作:ダグライダー

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 おはようございます。ダグアーマー登場回にして申一郎の実家の情報が明かされる回です。
 そして次回は……これが籤の結果だ!を反映させた結果となります。
 うん、回毎に文章が長くなるなぁ……一話に納めようとするとどうしてもね……。
 ところで時子さまが天使長とかあの天界おっかないなぁ。まぁ、時子さんはプロデューサー以外には優しい方だけど……。
 後、今更ですけど、仮面ライダー剣斬、忍者ライダーなんですね。宇宙船読んで衝撃でした。
 短編読み切りで書いた設定、それを知る前だったので……。



第六十六話 重甲!ダグアーマー!!!

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 オレらが海の上で取引ってんのに、アイツらは基地で何やってんだ?

 お?結芽っちに翼沙のヤツが何か着せたぞ?

 ヴァリアブル?リアライズ?ストームアーマーだぁ?

 ワケわからん。

 


 

 ━━駿河湾海上

 

 海中から黒い鋼鉄の鯨が競り上がる。

 水密扉を開け、船外に出てくる2人の女性。

 「真庭本部長からの報告によれば……今夜、この時間、この場所に現れるとの事でしたが……」

「何も居ませんね~」

 辺りを見渡す女性達、一人は舞草の現代表とも言える刀剣類管理局局長代理・折神朱音。

 彼女に帯同するもう一人は嘗ての戦いの折りにも共に居た元美濃関卒業生にして刀使に関連する企業に勤め、現在はすっかり舞草の構成員が板に着いた恩田累である。

 さておき、彼女達は揃って辺りに注意を向けるもののダグオンらしき存在は見当たらない、もしや謀られたのでは?と思い至った時、夜空が揺らぐ。

 「何事ですか…!?」

「朱音様!あれを!!?」

 空より現れるボーイング747をベースとした既存の旅客機には見られない部位を持つライドビークル、ファイヤージャンボ。

 そして300系のぞみをベースとしつつも後部にレーシングカーのエンジンらしき部位を持つターボライナーが揃って現れる。

 二機のビークルは海上に着水──正確には僅かにホバリングしているが──し朱音達が立つ潜水艦の正面に位置取る。

「嘘でしょ?!不時着でも無いのに普通に海上に着水……?してる?!」

 微妙に波が波紋を打っている事に気付いたが端から見ても海上に浮いているようにしか見えない事実に累は驚愕する他無い。

 彼女達がそうして驚いている内にファイヤージャンボからファイヤーエンが、ターボライナーから何やら少しまごついた後、紫を抱き抱えた(所謂お姫様抱っこ)ターボカイが跳躍、潜水艦に着地する。

 「時間通りだな!忙しい中来てくれてありがたいぜ」

 エンが明るく笑ってのける。

 「言った筈だ。どうあれ来る以外の選択肢は彼女達には無いと…とは言え無理を通して貰い感謝します」

 カイが紫を潜水艦の甲板に降ろしながらエンに対して呆れた様に溢し朱音達に礼を述べる。

 「姉様………貴方方だけですか?」

 紫に視線を向けた後、意を決しダグオンに話し掛ける朱音、彼女は彼等が何の目的を持って自分達へ接触を図ったのか、それを不審に思っているのだ。

 「此処に居るのは我々のみです。しかし別の場所から此処を望む事が出来る場所に仲間を一人待機させています。万が一我々に対し敵意を持った者が事を起こした場合、即座に対応出来る様になっています……貴女達ならば、そんな事は無い…とは思いますが、ご理解頂きたい」

 その言葉の意味する所に背筋が凍る思いを懐く朱音と累、息を飲む音と共に累が口を開く。

「それって…要するに下手な事したらこっちを何時でも攻撃出来るってこと?」

 「結果的に脅しと取られても仕方無い事ですが、そも我々は貴女達に多くを求める気は無い、今回の接触も彼女…折神紫を其方に引き渡す事が目的です」

 カイが内心不敬を働いている事に対する罪悪感に苛まれながらも淡々と事を進める。

 「朱音……少なくとも彼等の言葉は信用に値する。今回、何事かを要求する必要は無いはずだ…」

 見かねて紫が横から口を挟む。それを基に朱音は視線を暫し紫とダグオンとで行き来させ眼を瞑ると決意の息を吐く。

 「分かりました。では1つ、1つだけ質問をさせて下さい。貴方方と連絡を取る手段は無いのですか?」

 朱音の質問にカイは面を喰らう、予想していた質問とは違ったからだ。

 「驚きました、てっきり我々が敵か味方かを訊ねるとばかり……」

 「嘗て貴方方は姫和さん達を助けた際、こう仰ったそうですね?"我々の敵は異星からの脅威、そして人々の命を脅かす荒魂だ"と、ならば私は…私達は貴方方を信じます。いえ、信じたいのです」

 「成る程、それ故の質問の意図でしたか……解りました。質問に答えましょう。折神紫…貴女の姉に預けた物を我々が去った後に見ると良い」

 朱音の答えに納得し質問に答えるカイ、その後紫へと視線を移す。紫は寝耳に水といった様相で眼を見張る。

 「我々は常々刀使と共に肩を並べ戦う事を望んでいます。今は難しいかもしれませんが、何れはそうなればと願います」

 そう残してターボライナーへと戻って行くカイ、エンもファイヤージャンボに飛び移っている。

 彼等はコックピットに乗り込むと再び空へと舞い上がり彼方へ消えて行った。

 

 

 

 暫しの後、折神姉妹は無言で見詰め合い、互いに歩み寄る。

 「姉様…よく、ご無事で」

 「彼等に大いに助けられた、だがこの状況化では私が表舞台に立ち戻るのは色々とまずいだろう」

 現在の刀剣類管理局の立場を思ん諮ってかその様に述べる紫、朱音としても最初からそのつもりだったのか肯定で返す。

 「はい、姉様には暫く療養と言う名目でこの潜水艦での生活を強いる事になります。それと……」

 「ああ…彼等が私に預けた物だな……私自身心当たりが無かったが、可能性としては恐らく今私が身に纏っている着衣…あぁ、やはりか」

 紫が自身の着ている服のポケットに手を差し込み、其所に挟まれていたであろうメモを見付ける。

 「それには何と書かれているのですか?」

朱音が世界の命運が懸かったかの様な顔で訊ねる。

 「燕再び疾や駆け翔び上がる時、七光の勇者降り立つ。剱の神巫と並立つ……随分と思っていた物とちがうな……」

 内容に困惑する紫、このメモを仕込んだのはデルタならこんな風に書くかなと思い至ったアルファの仕業なのでダグオン達は内容までは知らされていないのである。

 彼女達に在らぬ誤解が広まったのは言うまでも無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━翌・刀剣類管理局本部

 

 「あーあ、クソッ!勿体なかったナァ。オレも折神紫を乗せたかったゼ」

 深夜の邂逅から時を経て明くる朝、本部の廊下を歩きながらぼやく若者が1人。

 「結局オレだけ警戒で独り寂しく監視だしヨォ……ハァ」

 「何を監視していたのです?」

 「アァん?そりゃ……って木寅チャン?!」

愚痴る申一郎に声を掛けたのは木寅ミルヤ、彼女にいきなり声を掛けられた申一郎はギクリと身を硬直させる。

 「あー…まぁ、何つうの?同好の志で集まった中でビンボーくじを引いちまってサァ、HAHAHA!」

 自分が普段周りに思われているイメージで誤魔化す申一郎、ミルヤはそれを僅かに怪訝に思いながらも、彼の日頃の行いを知っているからか追及はせずそうですかと納得する。

 「んで…オレに何かようかい?」

気を取り直して何時ものノリを取り戻す申一郎、茶色く染めた短めの髪を掻き上げる。

 「ああ、そうでした。本部長より任務を賜りまして……現地までの機材運搬に人手が居るので貴方を探していたんですよ」

 「お?それってつまりオレが頼りになるってコトかい?」

 「いえ、貴方が一番、暇を持て余していそうだったからです。鎧塚申一郎」

 格好を付けた申一郎はアテが外れてズッコケそうになるも気を取り直して考え直す。

 (ま、考えてみりゃどうあれカワイコチャンとご一緒出来るんだしデートみたいなモンに変わりは無いな!うん、そう思っとこう)

 「それで、引き受けてくれますか?」

 返事の是非を問うミルヤ、暇していると予想を着けておきながら選択の有無を与える辺り、申一郎の都合も考えてくれているのだ。そして彼の答えは──

 「モチのロンだっての!カワイコチャンのお誘いは大歓迎ダゼ!」

 YESの返事と共に意気揚々歩き出す彼に苦笑しながらミルヤは後を追う。

 「全く…場所は解っているのですか?」

 彼女の言葉に間抜けな声を洩らす申一郎であった。

 

 

 

 

 

 「で、ナンでお前が居んの?」

 「……任務の場所柄、土地勘がある者を数人組み込むのは当然の事だ…それに、警邏として現地研修もある」

 ジト目の申一郎に答えるのは六角龍悟、因みに彼の他は申一郎を呼んだミルヤ、糸見沙耶香、姫野志保、丸山茜、安桜美炎、そして他数名の刀使。

 「ふへぇ~清香にお兄さんが居たんだ」

 「ええ、私も驚きました。ですが優秀だそうですよ」

美炎とミルヤが此処には居ない友人の顔を思い浮かべながら話題に華を咲かせる。

 「よろしくッス糸見さん」

 「うん…よろしく…お願いします」

茜が元気溌剌に沙耶香の手を握り人懐っこく笑っている。

 そして申一郎に絡まれている龍悟に志保が近付いて来て、

 「お久しぶりです!六角先輩!」

 「……姫野か、飼い犬は元気か?」

この2人は同じ平城同士であると同時に動物好き同士であるので仲が良いのだ。

 

 「龍悟のヤツ……お独り様って雰囲気出してる割りに意外と交遊関係あるな……」

 「鎧塚申一郎。貴方、六角龍悟さんと親しいのですか?随分と気安い関係に見えますが?」

 美炎と共に申一郎に近寄るミルヤが龍悟との関係を訊ねて来る。

 「ン?まぁ御前試合の時にチョットな…」

 本当はそれ以前、ダグオンに選ばれた事件から交遊関係があるがそれをバラす訳にもいかない。

 「そうですか、いえ、そうですね。一瞬貴方が彼を見間違えてナンパしたものと思いましたが、貴方は例え後ろ姿でも男性と女性を間違える事はありませんでしたね」

 同校の知己故の発言、それを隣で聞いていた美炎が感嘆と共に疑問を挟む。

 「へぇ~凄いんですね、あれ?でも女装してたりしても判るんですか?」

 「モチよ!女装ヤロウだろうが、男の娘だろうが体幹や呼吸、臭いで判るね!」

 「へ、へぇ……」

 「流石にそれを自信満々に言うのはどうなのですか……」

 申一郎の答えに2人共流石に引く。

 「そう言やぁ木寅チャン、任務ってドコよ?」

 「京都から奈良間における荒魂の調査と討伐になります」

 「ほーん、それなら刀使だけでも良くね?いやマァ、オレはカワイコチャンと一緒に居れて嬉しいけどサァ」

 「鎌倉特別危険廃棄物漏出問題の件以降、我々刀使は所属に関係無く全国へ派遣されています。何より昨今の世間の当たりの強さに保護者の方から刀使を止めるよう説得される方達も居ます。現地の土地勘がある人間で伍箇伝の所属ならば猫の手も借りたいと言うのが本音でしょう」

 「あー…そりゃそうなるのか?ま、荒魂が出たらオレらは一目散に逃げりゃ良いワケだし」

 「本来なら避けて然るべきなんですがね、さぁ皆さん出発しますよ!」

 こうして一行は任務へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━日本の何処か

 

 紺碧の巨体が大地を揺らす。

 其処に鋼鉄の騎馬が並走する。

 「出掛けるのかい、だったらこれを持ってきなよウン」

 「ふん?要らぬ世話を…まぁ良い、貰える物は貰っておくのが流儀だ。精々ザゴス共々役に立ててやろう」

 巨体が騎馬から"何か"を受け取る。彼はその長い鼻から吹雪を撒き散らしてその姿を消し何処かへと向かった。

 

 

 

 

 

 ━━京都駅

 

 「とまぁ、特にトラブルも無く着いたワケだが、此処と奈良の間ってたよナ?具体的にはドコよ?……にしてもチョット寒くね?」

 申一郎が身体を擦りながらミルヤに訊ねる、ミルヤは眼鏡を直し白い吐息を吐きながら答える。

 「宇治市です……鎧塚申一郎?顔色が悪いですよ?」

 「イヤ…だって…エェ、マジカヨ……奈良との間って聞いた時から嫌な予感してたけど宇治かよ…」

 「……何かあるのか?」

 後ろから龍悟が口を挟む。

 「実家が…………あるんだよ…」

 とても嫌な顔をして返す申一郎に龍悟や美炎が首を傾げる。

 「まだご実家と折合いが悪いのですか?」

 「だってイマドキ、やれ作法を守れだの芸を磨き学べだのウルサイったらネェ」

 申一郎が溢す愚痴に美炎が疑問を呈する。

 「芸?作法?鎧塚先輩の実家って何かやってるんですか?」

 「ウチは両親の実家からして歌舞伎と日舞の…まぁイワユル古典芸能の名家ってヤツでな……一番上の兄貴が日舞、二番目が歌舞伎…それも女形だからオレもどっちかにってな……」

 明かされた意外な真実に龍悟が眼を丸くする。

 「……なる程、鎧塚…何処かで聞き覚えがあると思えば…あの鎧塚だったか」

 ともあれバスに乗り込み宇治市へと向かう一行、やはり道中も荒魂の反応は見られないのか問題無く進む、強いて異変を上げるならば夏も近付く季節であるも関わらず矢鱈気温が低い事か。

 

 斯くして目的地に着いた一行は、まず拠点となる民宿へ向かう。

 「民宿かよ、せめて老舗旅館とかじゃネェノ?!」

 「え~ボクは民宿も好きですよ?」

 「栄養価が正しく摂れる食事に豪華さは関係無いッスよ!」

 「別に…何処でも眠れるから、大丈夫」

 「いや流石にちゃんと眠れる時は布団で寝たいよ!?」

少女達が姦しく囃し立てる、龍悟は口端を上げ申一郎の肩を叩き、

 「……異論があるのはお前だけのようだぞ?」

 「へいへい、悪ゥござんした…」

とそんな彼等のやり取りに何か気になったのか着物を着た現地の人間が近付く。

 「ああ、その声…やっぱり間違い無い、申一郎やな?綾小路に入って以来一切ウチに顔を出さんと何をやっとるんかと思えば…相も変わらず他所様に迷惑掛けよってからに、ほんに何の為に入学したのやら…」

 声を掛けた人物は京訛りで線の細い男性、彼は申一郎の事を知っている様だ。

 「ゲッ?!零史朗…!」

 「兄に向かって"ゲッ"とは何や、それに呼捨ても礼儀がなっとらん!おとんに報告させて貰うわ」

 申一郎から零史朗と呼ばれた男性は口許を扇子で抑えながら鋭く言葉を投げる。

 申一郎が

言葉に詰まっていると見かねたミルヤが間に割って入る。

 「申し訳ありませんが、彼は現在私達の任務に帯同しておりますので、ご家族同士の込み入ったお話はまたの機会にして頂けますでしょうか」

 「刀使……ふん、あんなけったいな怪物をバラ撒き散らしてよぉ言うわ。ま、ええわ。今回はこんくらいにしとくわ、けど申一郎…一度ウチに顔を出すんやで、おとんも万兄も心配しとるやさかい」

 「心配?万葉兄はトモカク親父は寧ろオレが居なくて清々してんだろうよ。」

 申一郎が嫌味たらしく吐き捨てると零史朗は溜め息を着くと彼等の側を通り過ぎる。

 「はぁ、こんな所で無駄を喰ったせいで身体が冷えてしもうたわ。精々在学中は勝手にするんやな、そんで後悔するんわ自分やからな」

 零史朗は最後にそれだけ残して去って行った。

 

 その夜、申一郎、龍悟、そして刀使達が身を寄せる民宿にて──

 「ダァー!ムカつく!クソッ兄貴が!オレはトモカク…カワイコチャンにまでネチネチ言いやがって!」

 「……お前にも色々あるようだな、意外な一面を見た…」

 当然の様に男同士相部屋になった申一郎と龍悟が部屋で会話に興じる。

 「ま、二度とツラ合わせる気はネェけどな、それにしても夜は一層冷えやがるゼ」

 「…それなんだが、妙だとは思わないか?昨今の環境問題があるとは言え場所によっては防寒具が必須……それもニュースを確認した所では範囲が広がっているように見える……」

 左手に持ったスマホの画面を申一郎へと見せる龍悟、確かに画面に表示される寒波の図は宇治市中央近辺から広がっている様に見える。

 「考え過ぎダロ、さっさと寝ようゼ。明日はカワイコチャンとデートして兄貴の事は忘れる!」

 「……だと…良いがな」

布団に耽った申一郎を尻目に龍悟は窓越しに空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━翌朝・民宿前

 

 「何じゃコリャァァァアアア!!?」

 

 「何コレぇぇぇええええ!?!」

 

 申一郎と美炎の絶叫が重なり木霊する。

 彼等が朝、目を醒まして目撃した物は一面の雪景色……と言うよりも猛吹雪と強烈な寒波であった。

 「……やはり…か」

 「これは……調査どころではありませんね。仕方ありません任務は中断せざる終えませんし、この吹雪が去るまではこの宿にお世話になるよりありませんね」

 ミルヤがチームのメンバーに向かって当面の指示を出す。

 そんな彼女達を横目に置き、ダグオンの2人は顔を寄せ話合う。

 「……申一郎、やはりこの吹雪は妙だ……携帯の電波が遮断され、視界はほぼ皆無……念の為、俺は調査してくる…」

 「確かにナ、いくら地球環境がイカれてるっても京都でいきなり猛吹雪ってのはオカシイ。木寅チャンもそれが解ってるからああしてみんなに言うしかネェワケだ。取り敢えず原因究明はオマエに任せる。オレはアイツらに連絡してみる」

 申一郎のその言葉を聞き姿を消す龍悟、申一郎はそれとなく宿に切って返す。

 「あれ?鎧塚先輩、お一人ッスか?」

丸山茜が龍悟の影が無い事に気付くが……

 「あー…奴さん先に戻った。トイレだとさ」

 「でも…気配、感じなかった…」

 「六角先輩だからね、平城でも気付いたら居なくなってるって事が良くあるし」

 申一郎の誤魔化しの言い訳に沙耶香が鋭い指摘を言い放つも、志保と言う龍悟を良く知る者が居たお陰で事なきを得る。

 (マジカヨ、アイツ普段から忍者みたいな事してたのか……っと、こんな所でモタついてる場合じゃネェ!)

 皆の前を飄々と通り過ぎた後、急いで宿の自分達が使用している部屋に籠る申一郎。

 「オイ!みんな聴こえるか?!」

ダグコマンダーを起動、序でにアーマーライナーをコールしてから通信機能で残りのメンバーに連絡を取る。

 『どうしたんですか?』『ちょっ?!お前いきなり通信寄越すなよ!?危うくバレそうになったじゃねぇか!』『何かあったのか?「何々~?」 「結芽ちゃん、邪魔しちゃダメだって」…済まない』

 因みに撃鉄の端末には連絡は入っていない、通信先から除外しているからだ。

 「京都近辺のニュース見れるか?チョットヤバい事になってる。オレはこれから龍悟がそうした様に調査に出る、一応アーマーライナーももう呼んである。オマエらも来てくれて」

 『ちょっと待ってて下さい……成る程、確かにこの異変は妙ですね』

 『ああ、不自然に吹雪が一定の地区に吹き荒れている』

 『ちょ、ちょっと待ってくれ!今俺もダグベースに向かうから!』

 翼沙、戒将と違い恐らく第三者が居る為慌てている焔也が焦る。

 『申一郎、我々は焔也が合流した後、其方に向かう。龍悟共々先行調査は任せるぞ』

 戒将からの指示が飛んだ後通信が終了する、申一郎は意を決しダグコマンダーの変身プロセスを起動する。

 「トライダグオン!……アーマーシンッ!」

 部屋の窓を開き深緑の戦士が吹雪の中に消えた。

 民宿から大分離れ木々の間隔が広い場所にアーマーライナーが着地する。

 「龍悟、聴こえてっか?オレも今からアーマーライナーで空から調査する」

 『……承知した、俺は南に向かう』

 「ならオレは北からだな」

 2人が短く言葉を交わすとアーマーライナーが吹雪の空へ飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、龍悟は吹雪の中、人気の無い森の木々を跳び移りながら周囲の気配に気を配る。その時、龍悟に襲い来る殺意の凶弾。

 「…っ!トライダグオン!…シャドーリュウ!」

 咄嗟に変身しクナイで弾くシャドーリュウ、事なきを得た彼は凶弾が現れた先をクナイを構えながら見据える。

 ──ギィ…ギッ。ギギ、ダグオン…──

 リュウを囲むザゴス星人の群れ、紫影の戦士は吹雪に舞う。

 

 

 

 

 

 

 京都上空をアーマーライナーが飛ぶ、コックピットからアーマーシンがレーダーを眺め回遊する。

 「ドコだ…宇宙人共はドコに居やがる………っ?!何だ?!!」

 そこに突如として強い衝撃が加わる。体勢を建て直し衝撃が来た方向に向けば白い世界の中で1つだけ見える不釣り合い程の青い巨体。

 巨体は獣の様に見えて戦車の様な風体にも見える。

 「?何だアリャ?っともかくアレが敵か!ブッ倒す!」

アーマーライナーの武装を謎の巨体に向け撃ち放つ。

 アーマーライナーとタンクモードとなった宇宙海賊ビッグローの砲撃戦が始まった。

 

 

 ━━宇治市近辺の京都周辺上空

 

 3機のダグビークルが吹雪を前に足を止める。

 「くそっ!?入れねぇ!?」

 「こう強烈な勢いではな…アーマーライナーの装甲で無ければ厳しいか……」

 「我々はどうにか突入する手段を講じなければなりませんね。さもないとこの吹雪は京都全域を覆ってしまう」

 3機のコックピットの中で3人が歯噛みする。そこに奇妙な風体の円盤らしきモノが現れる。

 「アレは?!」

 「異星人の円盤!?ですが何処から…」

 「驚くのは後だ!奴等は我々を狙っている様だ、迎撃するぞ!」

 何処から途もなく現れた謎の円盤に3人は急遽戦闘に突入する。

 

 

 

 

 

 

 「ウラァ!とっとと倒れろ!」

有りったけの火力でビッグロータンクモードに攻撃をするシン、対しビッグローは鼻が変形した大砲で迎撃する為、連射という点で不利を被る。

 「チィッ、面倒だな腐ってもこの星の護り手かっ!チェェエエエンジィィッ!」

 紺碧の巨体が人型へと変形する。砲撃に曝されても尚立ち上がるその姿は雄大な戦士のソレだ。

 「変形しやがったダト?!っだとしても!引けねぇ!オレはムカついてんダヨ!兄貴には遭うしカワイコチャンとのデートはお流れ、これ以上テメェらに好き勝手されて堪ッカヨ!!」

 シンの怒りが頂点に達する、彼の心が新たな力の扉を開く。

 

 

 

「融合合体!」

 

 アーマーライナーからまるで武道の構えの立ち姿で競り上がるシン。

 アーマーパックが分離し、車輌が変形を開始する。

 ターボ、ウイングと同様客席の部分が脚となり乗車口近辺が腕となって後部から側面に展開、アーマーパックがキャタピラ部を前面にミサイルターレットとキャノン砲の位置が変化、人型に変化中のアーマーライナーの背中にドッキングする。

 シンが立つ背後に無骨な頭部が展開、シンが融け消える。そして瞳に光が灯る。

 

 『ダァグッアァァマァァァアア!!』

 

 重装甲の深緑の巨人が紺碧の戦士と相対する。

 「ほぅ…面白い!俺様と正面から殺り合うつもりか!?」

 『とっととブッ倒す!覚悟しろよデカブツ!』

 ビッグローに啖呵を切って走り出すダグアーマー、5機の中で随一の出力を誇るパワーが籠った拳をボクシングのジャブで繰り出す。

 『オラオラオラオラ!』

 「ヌゥ?!フフフ…やるゥ…ならば!」

 右の脚を振り上げ思いっきり大地に叩き付けるビッグロー。衝撃でダグアーマーがバランスを崩す。

 『うおっ?!』

 「ビッグキャノントンファー!」

 武装となった鼻を振り回すビッグローがダグアーマーを吹き飛ばす。

 『っ!…アーマーキャノン!』

 吹き飛ばされつつも背部のキャノン砲で反撃するダグアーマー、ビッグローはその威力に呻く。

 「ぐぅ……辺境と侮っていたが、中々どうして……楽しめるじゃないか。だが俺様も今死ぬ訳にはいかん」

 そう溢したビッグロー、懐から謎の装置を取り出すとそれを放り投げる。

 装置は浮島十三重石塔の真上で回転し石塔の情報を読み込むと光輝く。

 『何だ?!』

 「さらばだダグオン!次に会う時は本気で相手してやろう」

 『なっ!待て!…何っ?!?』

ダグアーマーの制止など異に返さず大砲を大地に向け冷気を放ちビッグローは姿を消し、ダグアーマーには石塔の形をした怪物が組み付く。

 『なっろう!ゼェェイ!』

 石塔の怪物を背負い投げし叩き伏せる。

 『ヤロウは逃がしたがテメェは倒すゼ!』

 ダグアーマーが全火器を石塔の怪物に向ける。

 

 ファイナルバスタァァアアア!!

 

 背部のキャノン砲が、ミサイルが、肩の機関砲が石塔の怪物を蜂の巣にする。

 爆発を背に重装甲の戦士が聳え立つ。ビッグローが去った為吹雪は晴れダグアーマーを照らし出していた。

 ザゴス星人を掃討したリュウが円盤を退け吹雪が晴れた市内へ入ったエン達が彼の元へ向かう。

 

 仲間達を見上げダグアーマーは呟く。

 『ったく、遅せぇぞ!オレ一人で何とかなっちまったじゃネェか!』

 

 そしてこの後申一郎として宿に戻った彼はミルヤに叱られるのであった。

 

続く

 

 


 

 次回予告(BGM:transformation ver融合合体ダグアーマー)

 遂にオレも融合合体してダグアーマーに!くぅ~!我ながらカッコイイ!

 

 我々の戦力も幅が出てきたな。

 

 後は龍悟だけか!

 

 ……まぁ、その内な。

 

 皆さん!そんな和気藹々してる場合じゃありません!例の甲冑がまた現れたんですよ!?

 

 またしても現れた甲冑野郎に苦戦する俺達、糞っ!このままじゃやられる!?

 俺は衛藤の!安桜の!柳瀬の奴が笑っていられる毎日を守る為に負けられないんだよ!

 そんな俺の想いにファイヤージャンボが応える。

 

 次回"刀使ノ指令ダグオン"

 勇気の火炎合体!ファイヤーダグオン爆誕!

 これが俺の真の力……?!

 




 はい、次回はダグシャドーではなくファイヤーダグオンです。
 いやね、そうでもしないと後々の展開状、パワーとかドリルとかスーパーとか出しづらい感じになっちゃうんですよ。ご了承下さい。
 因みに鎧塚家は数字が零から始まり万で終わるとまた零から始まる名前を子供に付けるので、長男万葉で一度数字がリセットされてるんですよね。
 なので申一郎は三男だけど1が名前に入っています。また、一桁の内は10になるまでの数字を名前に付けるので申一郎の弟は2が付く名前となります。
 ではまた次回

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