刀使ノ指令ダグオン   作:ダグライダー

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 おはようございます。
 遂に登場ドリルゲキです。
 ぶっちゃけドリルクラッシュ時に体がどうなってんの?とかツッコんではいけない。
 ところで海賊ガチャ第二段でサナセンセーが出たんですが……オバさん無理す───

             文章はここで途切れている



第六十八話 新たなる勇者、ドリルゲキ!

 前回の"刀使ノ指令ダグオン"

 

 おぉぉっ?!焔也の奴、更に合体しおったぞ!!

 

 焔也おにーさん格好いい!でも勘違いしないでねお兄ちゃんの方がもっと格好いいんだからね!

 


 

 ━━エデン・???

 

 「嘘だぁぁぁああああ!」

 絶叫が反響する。

 叫んでいるのは癇癪を起こしていたあの少年。

 「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!負けるハズ無いんだ!だってSSRクラスを素材にしたんだぞ!?なのに!なのになのになのになのにっ!何でっ!!」

 地団駄を踏み、手にしていたゲームのコントローラらしき装置を壁に叩き付ける。

 砕け散る装着、荒く息を吐く少年。

 「そうだ…悪いのはぼくじゃない。SSRのクセに大したことないアイツが悪い!全く情報に無かったあの赤いエネミーが悪い!下等生物の分際で抵抗してエネミー共と一緒になって邪魔したトジとか言うムシケラが悪い!ぼくは悪く無い、悪く無いんだ!」

 徹底して自分自身を擁護する彼、そのまま部屋の片隅に置いてあるペットロボットの様なモノのスイッチを入れる。

 「聞いてよ、酷いんだ…折角最高レアクラスを使ったのにヤツら寄って集ってぼくを虐める。それにそのレア素材も能力の割りに大したこと無いし、敵なんか単純短調なカスのクセにやたら抵抗するし、挙げ句狩られるだけのポイントまで逆らってくるんだ、どうだい?酷いだろ?」

 自分の非など一切無いとばかりに手にしたソレに語る彼の顔は他のエデン囚人が見れば嘲笑か侮蔑が返ってくるであろう物だ。

 <うん、ヒドイネ。キミは一生懸命ガンバったのに、きっとそいつらはバグなんだよ。それに素材もだけどコントローラがよく無かったのさ>

 少年の声を加工した様な音声がソレから発せられる。

 「そう…そうだよ!全く、何が信頼と安心のクオリティーだよ!ただの不良品じゃないか!あ~あ、そうと解れば新しいヤツ買わなきゃ…あの胡散臭い商人に頼むのは癪だけど、背に腹は変えられないし。それに新しい装備も作んなきゃ…今度は素材を吟味して時間を掛けて、徹底的にやってやる。くふふ…見てろよ雑魚エネミーども」

 少年は暗く嗤う、彼とその周囲の世界はその唯一つで完遂していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━地球・日本の何処か

 

 『こいつで終わりだ!』

 白い翼と赤いボディを携えて、ファイヤーダグオンが吼える。

 『ファイヤーホォォルドッ!』

 ファイヤーダグオンの胸の猛禽を象った嘴の部位から敵を拘束する光が放たれ異星人を捕らえる。

 

  『ファイヤァァァァブレェェドッ!』

 右腕の剣が捕らえた敵を一閃。ファイヤーダグオンは腕を振り剣を収納する。

 敵異星人は敢えなく爆散した。

 

 

 

 

 ━━ダグベース・サロン

 

 「いや~勝った勝った!もう向かう所敵無しだぜ!」

 帰還した焔也が意気揚々とご機嫌な声を挙げる。

 「確かにファイヤーダグオンは強力だが…油断は禁物だ」

 戒将はそんな調子に乗った焔也を嗜める様に厳しく苦言を呈する。

 「っても、ぶっちゃけファイヤーダグオンだけでここ最近の宇宙人ドモは簡単に倒せちまってるし、このバカがチョーシ乗んのも分かるゼ」

 申一郎が頭の後ろで手を組ながら呆れた様に呟く。

 「実際、ファイヤーダグオンになった時のパワーはダグファイヤーの五倍…或いはそれ以上かもしれません」

 翼沙が手許のタブレット端末を操作しながら所感を述べる。

 「…ここ最近も、ザゴス星人達はもとより…、キラード星人、フェニックス星人、デスパルス星人、トラッカー星人、ガロン星人と……ファイヤーダグオンが全て倒している…」

 龍悟がここ5日で出現した敵の名を挙げ列う。そう、龍悟が今口にした通り、今日を含めここ暫く地球に現れた異星人は程度の差は有れど全てファイヤーダグオンによって打倒されている。

 勿論、戒将達とて活躍していない訳では無いが、やはり現状、焔也が飛び抜けて敵を倒している事は事実であろう。

 「それもそうですが、僕が他に関心したのはザゴス星人を刀使が小隊単位とは言え、難なく倒せる様になっていた事ですね。あれには驚かされました」

 やはり例のシミュレーターが効いたのでしょうかと溢す翼沙に他の4人も同意を示す。

 「播つぐみ…だったか、鎌府の研究班。中々のものだな」

 「これで俺達がデカいの相手にしてる時でも安心だな!」

 「……完全とは言い難いが、ザゴス星人程度ならば脅威度は低くなっているのだろう…」

 「こうまで戦力が充実したんだしヨ。もうライアンをムリに引き入れるコトも無いんじゃネェノ?」

 と、申一郎がそんな事を口にした途端、バタバタとサロンに駆け寄る小さな人影。

 「それはダメだよ!!

 息を切らしながら無理矢理声を挙げる少女…の様な少年ことアルファだ。

 「ダメだ、それは絶対に看過できないよ申一郎君!ライアンには荒魂に対し深い憎しみの念があるし、何よりダグオンと共に戦う仲間として製作したし、後本当にこれ以上ボクのせいにされたくないし!!」

 何だかんだ理屈を付けているが一番最後が本音なのだろう。

 (((((いや…どう考えてもそれは避けられ無いのでは……?)))))

 5人共、今更取り繕ってもアルファに責任が掛かるのは変わらないだろうと言う思いが一致した。

 「とーにーかーくー!ライアンを仲間にするのは規定事項です、よろしく!」

 「まぁ、元よりそのつもりではある。ダグファイヤー……焔也との勝負以降、周辺の被害を考慮はしている様だが、空を飛ぶ剣の目撃情報は目立つ。そろそろ腰を据えて貰わねばな」

 「確かにな、戦って思ったけどよ…あいつには多分仲間が必用なんだよ。そんな気がする」

 激化するであろうこれからの戦いに関して戦略的、戦術的にライアンの必要性と常識を考える戒将と、拳を交え感覚的なモノでライアンの仲間入りに賛成する焔也。

 この2人がこう言う以上、他のメンバーも文句は無い。

 「で、だ。あのヤロウは何してんダヨ…?」

 当面の意見が纏まったのを見計らって、先程から無視し続けていた事に触れる申一郎。

 彼は頭を掻いた左手をそのまま、親指を立てて後ろを指差す。

 「つーん、つーん。撃鉄おじ…おにーさん生きてる?」

 その指先に視線を向ければ先程から結芽に指示棒でつつかれる平城の改造学ランを纏った大男が体育座りで膝を抱えて全く動かない。

 「何故じゃ…ワシが変身するよりも焔也が先にパワーアップしおった…これではワシが活躍出来んでは無いか…」

 いや違う。その体躯に見合わぬ声で喋って口が動いている。

 「こればかりは俺達にはどうしようも出来ん。こら結芽、止しなさい」

 戒将が眉間を解しながら結芽の行為を止めさせる。

 「で、実際どうなんだよ?あいつ(撃鉄)のダグコマンダー、まだ用意出来ねぇの?」

 「う~ん……いやまぁまだちょっと掛かるかな」

 焔也の問いに視線を游がすアルファ、何ともあやふやな返答だが、これ以上問い詰めても望む答えは返って来ないのだろう。

 ともあれ今日はこれでお開きと相成った。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━エデン・北監獄

 

 「ふん、小僧め…遊び気分でいるから失敗すると、それすら分からんとはな」

 蒼い炎が激しく揺れる。

 「フェフェフェ、随分不機嫌ではないかえ?」

 蒼炎──煉獄魔人メレトに声を掛ける嗄れた声、炎が向きを変えれば其所に居たのはシワだらけの後頭部が異様に長い木乃伊の様なヒトガタ。

 「マンドーセか……白々しいな、聞いておったのだろう?」

 「フェフェ、まあなぁ…ところでな、メレトよおんし、もし良ければ拙が地球に出向くぞよ?」

 「貴様が?……今更貴様程度の者が出向きどうなると………いや、悪く無いやもしれん。良いだろ、どうせ他の連中は積極的に動かん、好きにすると良い」

 マンドーセの発言に無理だと答えようとして、何かに思い至ったのか一転許可を下すメレト。

 木乃伊の窪んだ眼窩が愉快そうに細まる。

 「そうさせて貰おう…フェフェフェフェ…」

 暗闇には蒼い炎だけが揺れていた。

 

 

 

 

 

 ━━神奈川県鎌倉市・鶴岡八幡宮

 

 平日にも関わらずそれなりの人で賑わう鶴岡八幡宮、その本宮の境内にて柏手を打ち祈りを捧げる巌の如き青年が居た。

 「む~ん…神よ!どうかワシの願いを!何卒!どうか!」

 必死に懇願する撃鉄、ここ最近のダグオン5人の活躍振りに……特にファイヤーダグオンとなった焔也の活躍に対し、変身も出来ずダグベース内でただ座して待つしかない己の歯痒さ、無力感に激しく打ち震えていたのだった。

 「今日はこんくらいにしとくかのう。神様よ、毎日迷惑かもしれませんが、明日もまた来ます。宜しく頼んます!……さぁて今日も御守り買って帰るかのう」

 そうして御守りを販売している詰所に向かう撃鉄。

 カラコロと下駄を鳴らし近付くと詰所には刀使の姿が見える……数は2人、鎌府の刀使と長船の刀使。

 「うん?あの背中…それに長船の制服、まさか!?」

 長船の刀使の姿を認めた瞬間走り出す撃鉄。

 その凄まじい勢いに2人の刀使が気付く。

 「え?」

 「何です?」

 振り返れば怒涛の勢いで自分達に向かって走ってくる改造された平城の制服を翻す時代錯誤の大男。それも大声で何事か叫んでいる。

 

  智恵さぁぁぁぁぁんんんん!!

 

 「げ、撃鉄さん?!」

 呼ばれた方の刀使。長船女学園の瀬戸内智恵が目を丸くして驚いている。

 「おおおお、お久し振りです!智恵さん!ワシです!田中撃鉄です!」

 智恵ともう1人、鎌府の刀使が佇む場所で急停止しガバッと勢いをつけて頭を下げて上げる撃鉄。

 智恵もだが、鎌府の刀使──玉城真梨江も固まっている。

 「あ…は、はい…お久しぶりです撃鉄さん。その制服……平城に編入されたんですか?」

 混乱する頭で何とか言葉を紡ぎ出す智恵、対して撃鉄はよくぞ訊いてくれたとばかりに胸を張る。

 「ええ!ええ!そうですとも!ワシこと田中撃鉄はこの度平城学館の警邏科兼神職科へと編入致しました!!今後とも宜しくお願いしますわい!」

 ガハガハと上機嫌に笑う撃鉄。先程の神頼みの必死さが嘘の様だ。

 「あの…瀬戸内さん、お知り合いですか?」

 真梨江が智恵に撃鉄の事を慎重に訊ねてくる。智恵は困惑しどう話したものかと考える。

 「ワシと智恵さんは運命的な出会いを果たした、ロミオとジュリエットじゃ!」

 と、撃鉄がとんでもない事を口走る。

 「えっ?!ちょっと!!?」

 これには智恵も動転する他ない、そして肝心の真梨江は頭に多くの疑問符を浮かべながら、

 「はぁ…」

 そう答えるより無かった。

 正直、ロミオとジュリエットだと家が敵同士だとか、最終的に悲恋で終わるとか思ったが、そこは敢えて空気を読んで黙っていた。

 「違います!!違うのよ玉城さん、お願いだからそんな目で見ないで!!」

 勿論智恵本人は堪ったもんでは無いので強く否定する。

 「いえ、人の趣味はそれぞれですから…部外者がとやかく言う事では…」

 「本当に違うのよ!もう!撃鉄さん!」

 「はっ!何でしょうか智恵さん!」

 誤解を与える様な事を言わないで下さいと撃鉄を叱る智恵、怒られた撃鉄はしゅんとするものの智恵に会えた喜びが大きいようだ。

 (…………案外、お似合いでは?)

 そんな2人のやり取りを見て思う真梨江であった。

 さておき──

 

 「智恵さん達はどうしてここに?」

 鶴岡八幡宮に智恵と真梨江が訪れた事を訊ねる撃鉄、その手には買ったのだろう御守りが握られている。

 「大した事では無いんです。定期的な関東一帯の荒魂の捜索とノロの再分祀の事で鶴岡八幡宮(ここ)の責任者の方とお話に…他にも辺りの調査に数人刀使が派遣されてますし」

 「成る程。例の事件以降、ノロの一括管理体制は見直されておるんでしたな」

 「ええ…。って、そういう撃鉄さんはどうしてここに?」

 今度は智恵が訊ねる番となる。

 「ナハハハ!はぁ…お恥ずかしい話、私事でうまくいかん事があったのです。そんで今出来る事として神頼みをと……」

 どこか元気が無い撃鉄を見て、智恵の世話焼き心に火が着く。

 「それは、良ければ──」

 相談に乗りましょうか?と口に仕掛けた時、誰かの悲鳴が耳に届いた。

 「!?智恵さん!!」

 「撃鉄さんは此処に居てください。玉城さん、急ぎましょう」

 「了解です」

もしかしたら荒魂かもしれないと、撃鉄をこの場に留め、真梨江と2人急ぐ智恵。

 階段を下った先に待っていた光景は荒魂ではなく、後頭部が異様に長い木乃伊が笑いながら妙な怪物を従え一般人を襲う姿であった。

 「せ、瀬戸内さん…あれは!?!」

 想定していた荒魂では無く、想定外の存在に狼狽える真梨江、反対に智恵は冷静だった。

 (異星人!……大きさは二メートルちょっと、わたしたちよりも少し大きいみたいね。怪物も中型の荒魂くらいかしら…。ダグオンの人達はまだ…それなら!)

 頭の中で瞬時に状況を見極め判断を下す。

 「玉城さん、私とあなたであの怪物と異星人を相手にします!」

 「ですが?!」

 「大丈夫、この騒ぎなら他の子達も直ぐに駆け付けてくれるし、相手が異星人ならダグオンだって…」

 その言葉を言い切る前に星人達が智恵達に気付く。

 「フェフェ、刀使か…まぁ良い景気づけに貴様等とも遊んでやろうぞ!」

 そう言ってガリガリの指で怪物に指揮する木乃伊。怪物、その指示を受け智恵達に襲い掛かる。

 「来るわよ!」

 「致し方ありません!」

散開し怪物の攻撃を躱す2人、木乃伊はそれをニタニタ笑っている。と、其所へ──

 

 「ショルダーバァァァン!」

 

 「ホイールキィィイック!」

 

 怪物に対し放たれる炎弾と木乃伊に向けて突き刺さろうとする青い影。

 怪物は炎弾を喰らい苦しみ、木乃伊は蹴りを危なげなく躱す。

 それを見て智恵と真梨江が声を揃えて叫ぶ。

 「「ダグオン!!」」

 その言葉の通り現れた5つの色鮮やかな影。

 「なんだぁ?ミイラ野郎と少しデカいだけの怪物の二匹だけかよ」

 「油断するな、人間大とは言え異星人は異星人。何らかの能力を持っている筈だ」

 「っても、デカブツが居ないってのは楽でイイゼ……って、ヒャッホウ!長船のカワイコチャン発見!」

 「シン!今は戦闘中ですよ、ふざけてないで真剣にやって下さい!」

 「……周囲に人が多い。手早く済ませるべきだ」

 5色の戦士が怪物と異星人を取り囲む。

 「逃げられないぜ!」

 ファイヤーエンが余裕の声で木乃伊達に宣言する。しかし、木乃伊は眼球の覗かない窪んだ眼窩を愉快そうに歪ませ嗤う。

 「フェフェ、現れたようだのうダグオン。待ちわびたぞ」

 「何……どういう意味だ?」

 ターボカイがその言葉に訝しみ警戒を見せる。

 「チッ、何仕出かす気かシラネーけどその前に倒せば良いだけダゼ!」

 「…同感だ」

 「おうよ!」

 「そう…だな!」

 「ええ」

 アーマーシンの啖呵で気を取り直し全員で怪物と木乃伊に取って掛かる。

 「拙を護れ!我が僕!」

 それを予期していた木乃伊が怪物をダグオン達の前に置き、自らは怪物の腹の下に隠れ何事かを唱え始める。

 「怨!リキリキリバシカワソ!

 その呪文を唱え終えた瞬間、ダグオン達が空中で停止する。

 「…?!(なっ?!)」

 「………!?(これは…体が!?)」

 「……!(動か…ネェ…!)」

 「……?!?(そんな……?!?)」

 「…!!?(…力が!!?)」

口すら動かせないダグオン達、頭の中だけでこの状況に驚愕している。

 「ああ!?ダグオンの人達が!!?」

 真梨江もさしもの状況に悲痛な声を挙げる。

 「フェフェフェ!そしてこれでおんしらは仕舞いならぬ終いぞ!嵒!呪法死刻の陣

 又しても木乃伊が呪文を唱えると空中で停止した5人の目の前で怪物が膨張し破裂する。

 するとダグオン達の装甲に飛び散った破片が付着し禍々しいオーラを発した。

 「フェフェフェ…さぁ、終わりぞ?」

 このままでは殺られる!5人がそう思ったその時、階段の方から怒号と共に跳び上がる影。

 

 田中流!我流喧嘩式!下駄ぁ!ドロップキックじやぁぁあああいっ!!!

 

 撃鉄が階段からの落下速度の勢いを利用し木乃伊に下駄でドロップキックをかます。

 「ほげぇぇぇぇエエエ?!」

 その勢いに堪らず吹き飛ぶ木乃伊。そしてそのお陰かは解らないがダグオン達に自由が戻る。

 「しゃっ!動ける」

 「助かったな。まさか奴にこんな形で救われるとは」

 「自由になったし、ヤロウに倍返しと行こうや!」

 エンが腕をぐるぐる回し、カイが地べたにドロップキックをかました勢いで寝っ転がる撃鉄を見やりながら苦笑する。

 シンが取り戻した自由と共に仕返しをしようと皆に声を掛ける。

 「待って下さい!あれを!」

 ウイングヨクが待ったを掛け木乃伊が吹き飛んだ方向に指差すと其所には頭の凹んだ木乃伊が、しかし余裕の笑いを浮かべ透けていく。

 「フェフェフェ……今のは少し驚いた。がもう手遅れよ!後は拙が直接手を下さなくても貴様等は死ぬ!フェフェフェ…」

 「……出鱈目を…!」

 木乃伊の言葉にシャドーリュウが否を唱えるが木乃伊は笑いを止めない。

 「フェフェフェ、冥土の土産に教えてやろう。拙は宇宙呪術師マンドーセ。全宇宙の呪いを網羅した者よ!フェフェフェ!ではなダグオン、精々最期の時まで足掻くと良い、フェフェフェ…」

 「なっ!待て!!」

 エンの制止も虚しくマンドーセと名乗った木乃伊は虚空に溶けて消えた。

 

 「呪いだって…?別に何とも無いぜ?」

 「只のハッタリか……」

 「バカバカしい。敵さんが退いたみたいだし帰ろうゼ。と、その前に…ヘイ!カノジョ達、オレとデートしなぁい?」

 「シン…君と言う人は…」

 「……平常運転だな」

 特段、目立った変化も見られない為、杞憂かと結論付けたダグオン達、シンはそのまま智恵と真梨江に粉をかけようと近寄る。

 「させんわ!ど阿呆う!!」

 しかし撃鉄が智恵をシンの毒牙から守らんとタックルを交わす。

 「グエッ?!何しや…が…ル……あ、アララ?何か…体が…重く……」

 そのまま倒れるシン、撃鉄も流石に焦る。

 「お、おい。何をやっておるんじゃ……おい!」

 そして異変はシンだけでは無かった。

 「うっ…!」 「がっ?!」

 次にヨクとエンが苦しみ胸を押さえ膝を着く。

 カイとリュウも様子がおかしい。

 「これは……まさか本当に……いかん!」

 カイが即座に何かをしたのか光に包まれ始める。

 「エン、シン、ヨク、リュウ…お前達も…早く……」

 「は…はい…」

 「………ああ…」

 「ダメだ……体が……力…入ネェ……」

 しかしシンだけが転送機能を起動出来ない。

 「くっ…エン…頼む!」

 「あ、ああ……ファイヤー……レスキュー…!」

 エン自身は転送で消え、シンにはファイヤーレスキューが何処から途もなく現れ後部扉を開け待機している。

 その間にもカイ、ヨク、リュウもまた転送を終え、後には倒れたシンと撃鉄、智恵、真梨江のみ。

 「おい!しっかりせんか!」

 撃鉄は即座にシンを担ぎ上げ肩を支えながらファイヤーレスキューの寝台まで彼を乗せる。

 シンが収容されたのを認識したファイヤーレスキューは扉を閉め。彼方へと走り去って行った。

 「あの…撃鉄さん…」

 智恵が躊躇いがちに声を撃鉄に掛ける。すると撃鉄は真剣な顔で智恵を見詰め返し──

 「申し訳ありません智恵さん、ワシも緊急の所用が入りました。今日はこれで失礼致します」

 そう言い残して何処かへ走ってい行った。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ダグベース・転送装置前

 

 ダグベースに帰還したダグオン達、しかし彼等は急激に衰弱していた。

 「お兄ちゃん!」

 結芽が真っ先に変身が解けた戒将の元に近寄る。しかし返ってくるのは弱々しい吐息だけで何時もの声が聴こえない。

 「お兄ちゃん!お兄ちゃん!?!」

 「結芽ちゃん先ずはみんなをメディカルルームの治療ポッドに!このままにしておくより大分マシになるはずだよ!」

 アルファが結芽の肩を抑えながら告げる。

 しかし、御刀も無く八幡力を発揮出来ぬ12歳の少女と少女の様に華奢な少年では精々1人運ぶのも難しい所だ。

 「なるべく早く運ばないと…ブレイブ星人!お願い!」

 <承知している。今向かわせた>

 アルファの言葉にブレイブ星人が応え、暫くの後現れたのは2頭身のずんぐりとした結芽よりも少し小さいロボット。

 彼等がダグオンの若者達をせっせとメディカルルームに運ぶ。

 最初に転送された戒将を皮切りに、翼沙、龍悟、焔也、そしてファイヤーレスキューの帰還により運び込まれた申一郎とメディカルルームの治療ポッドに寝かせられている。

 「不味い…まさかあんな敵が居たなんて……」

 想定外の異星人の存在に汗を流すアルファ。

 其処に1人の男が入室してくる。

 「管理者よ、話がある」

 八幡宮から、人目を避け転送機能でダグベースに来た撃鉄その人である。

 「……一応何をする気か予想が付くけど、なんだい?」

 「ワシに…ダグオンに変身する為の機能を付けたダグコマンダーをくれ!」

 「ダメだ!相手は呪術なんてオカルトを宇宙規模で極め存在なんだよ?!今更一人増えた所で……」

 流石にこの状況を変えられないと嘆くアルファ、しかし撃鉄は諦めない。

 「このまま黙っていても皆死んでしまう。ワシらは泣き寝入りする訳にはいかんのだろう!」

 「でも対策も無しに危険過ぎる!流石に呪術なんてボクも想定外だ、データが足りな過ぎてダグテクターの機能も更新出来ない。今君に渡せても、君まで彼らと同じ様になってしまうよ?!」

 両手を広げ必死に止めるアルファ、だが撃鉄の意思は変わらない。

 「かもしれん。が、それがどうした!ワシらはこの星を守る戦士、勇者ダグオンなんじゃろ?ならば一人でも戦える者が残っているなら、戦うべきじゃ」

 「でも…それは…」

 言葉に詰まるアルファ、そんな彼に撃鉄は肩を叩き笑う。

 「なに、心配せんでもワシなりに対策は用意した。後はお主がワシをダグオンにしてくれりゃ良いだけじゃ」

 「撃鉄君……」

そんな2人のやり取りを見て涙で眼を腫らしながら結芽が近付いてくる。

 「撃鉄おにーさん、お願いします。どうかお兄ちゃんを…お兄ちゃん達を助けて下さい。私にはまだ戦う力が無いから……助けたくても助けられないから……お願い…します」

 深く、深く頭を下げる年下の小さな少女。

 「御チビ…」

 「結芽ちゃん……」

 アルファもまた言葉が出ない。

 <管理者アルファよ、我々の負けだ。田中撃鉄にアレを>

 見かねたブレイブ星人が口火を切る。

 「けど?!……………あああっ!もう!しょうがないなぁ!!撃鉄君!左腕出して!」

 「お、おう」

いきなり大声で頭を掻き毟るアルファに面食らう撃鉄、言われた通り左腕を出す。

 「ブレイブ星人」

 <ああ>

 アルファとブレイブ星人が同時に手を翳すと、撃鉄の腕に今まで着いていた限定機能付きのデバイスが消え、5人が着けている物と同じスターエンブレムが刻まれたダグコマンダーが装着される。

 「これがワシの……!」

 「良いかい?危なくなったら逃げるんだ、彼らの事はもしもの時はボクが何とか…」

 そう言い掛けたアルファに手を出しその先を止める撃鉄。

 「分かっとる。が、心配無用じゃ!ワシは勝つ」

 そして結芽の方に視線を向けて、

 「御チビ…いや結芽、お前の兄貴もワシのライバルも仲間もみんなまとめてワシが必ず助けちゃる」

 「…っ、ほんと?」

 「漢田中撃鉄、交わした約束は必ず守る。大船に乗った気で待っていろ」

 其処には結芽が知る何時もの情けない撃鉄ではなく、確かな強さを感じさせる戦士が居た。

 アラートが鳴り響く。

 「来おったか…」

 「撃鉄君…」

 「撃鉄おにーさん」

 <田中撃鉄、武運を祈る>

 ブレイブ星人の言葉を受け撃鉄は駆け出す、先ず向かったのは自身がダグベースで過ごす際に使っている部屋。そこに常設された机の引出し、或いは棚の引出しから名にかを取り出すと制服の内側にこれでもかと言わんばかりに詰め込み、部屋を出る。

 そして向かうは転送装置。

 そこでマンドーセが現れただろう場所に飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━神奈川県鎌倉某自然公園

 

 陽が落ちて暗くなり始めた其処に木乃伊は現れた。

 「フェフェフェ、あのまま待つのも悪く無いが…万が一の可能性もある。暴れて奴等の出方を見るとしようか、フェフェフェ!」

 不気味に嗤う木乃伊、其所へ轟く声が木霊する。

 

 「待てい!!」

 

 「フェ?」

視線を声のした方に向ければ、立っていたのはあの時自分の頭を凹ませてくれた無礼な人間。

 「フェフェフェ、生身の人間が態々死にに来たのか?フェフェフェフェフェフェ!」

 「いや、死ぬ気は毛頭無い。ワシはお前を倒しに来た」

 「フェ?フェフェフェフェフェフェフェフェフェフェフェフェ!!これは可笑しな事をほざく!只人に何が出来ると言うのか!?」

 嗤うマンドーセを無視して撃鉄は己の左腕に装着された装置をスライドさせ勇者へと転じる言葉を発する。

 

 「トライダグオン…!」

 

 大地を砕く黒き装甲が彼を包む。

 

 「フェフェ?何だと?」

 

 黒い光が収まれば現れたのは第6の戦士。

 全身が黒く肩に螺旋のドリルを2つに別けたアーマー、腕にドリルの溝を彫った様な鈍色の装甲、両脚の片側にキャタピラを模した謎のパーツ。

 胸部中央の装甲には橙色の水晶らしき六角形の意匠。

 頭部を覆う装甲は左右にドリルらしき角、マスクを纏い眼を覆うバイザーの色は赤。

 肩の分割されたドリルが反転頭部を包み1つの巨大なドリルとなって回転、大地を砕き立つは勇者。

 

 

 

「ドリル…ゲキ!!」

 

 現れた新たなダグオンにマンドーセは驚くも、それがどうしたと一蹴する。

 「貴様も呪ってくれるわ!!」

 禍々しいオーラがドリルゲキに直撃する。

 「フェフェフェ、折角現れご苦労な事だが、拙の呪法の前には無力……」

 その言葉を言い切る前に黒い拳が彼の顔を穿つ。

 「ドリルナックル!」

 「ペギャュ?!」

 ゴム毬の様に弾け飛ぶマンドーセ、ドリルゲキはピンピンしている。

 「馬鹿な!?速効性の呪いだぞ?!何故!!?」

 「教えてやろう、この星には八百万の神々がおって、この国日本には様々な神社仏閣がある。そしてソコには御守りや縁起物ちゅうもんが売っておるんじゃ、そしてワシのこの装甲の下にはそれが大量に詰まっておる!」

 そのゲキの言葉にマンドーセはハッとする。

 「ま、まさか?!そんなたかが辺境の護符やらが拙の呪法を防いだとでも言うのか?!そんな馬鹿な話が有って堪るか!!ええい!式神よ拙を守れ!」

 マンドーセが符を投じると現れたのはあの時の怪物、どうやらマンドーセの式神だったらしい。

 しかしゲキは眉ひとつ歪ませず諭す様にマンドーセに告げる。

 「無駄じゃ、今から放つ必殺の一撃はそんなモンじゃ止められはせん!とおぉっ!」

 跳躍するゲキ、肩の別れたドリルが再び1つのドリルとなる。

 

 

「ドリルクラァァッシュッ!」

 

 上半身がドリルと化し地面に大穴を空け消えるゲキ、マンドーセは相手が何を仕出かそうとしているのかを察し、式神を己の下に移動させ防ぐ準備をする。

 「フェ!無駄無駄!何をしようと無駄なのじゃて!!」

 マンドーセと式神が居る地面の真下の大地が盛上がる。現れたのはドリル状態のゲキ。

 式神とドリルが激突する。

 「オオォォォォッ!漢の一転突破ァ!」

 「フェェェエエ!?ば、馬鹿な?!ああ…ァァアア!!」

 式神ごとドリルに貫かれるマンドーセ、空中に飛び出たゲキの上半身が元に戻る。

 「これがワシとこの星の力じゃ!」

 着地と同時に首をマンドーセに向けるゲキ。マンドーセと式神は身体に大穴を穿たれ爆発した。

 

 「さて、皆の呪いは解けたかのう…」

 黒き巌の戦士は呑気な声で基地で眠る仲間の事を思い浮かべる。

 暫くの後、結芽から皆が元気に快復したと通信を受けた彼は豪快に笑いながら帰還した。

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:transformation verドリルゲキ)

 

 くそっ!あのブラック本部長…俺にばっかり仕事を押し付けやがって!

 

 まぁまぁ、それだけ薫ちゃんを信頼してるんだよ~。

 

 可奈美は良いよな、俺と違ってそこまで遠征に駆り出されないし。くっ、俺も見たかった、赤いダグオンの新しい形態…

 

 あはは…そう言えば、また増えたらしいよダグオン。

 

 ナニぃ?!クソォッ!?!俺の知らん内にどんどんパワーアップしていく!!……ってマジなヤツか?

 

 うーん?どうだろう私も直接見た訳じゃないから…

 

 ふん、まぁニセモノなら俺が退治してやる。ホンモノならサインだ!

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 孤軍奮闘!結芽とライアン?

 

 おい!?何で第四席が出てくる?!!

 

 さ、さぁ?

 

 




 はい、前回よりは短いです。
 え?誤差だろって?短いんです!( ・`д・´)キリッ

 甲冑の方はもう本体が大分ボロ出てますね。彼はまぁ兎に角、自分可愛いの自己中ですから……名前が出る頃には死ぬ間際かな…。
 そしてマンドーセ。久しぶりの等身大の敵。しかも何々星人ではなく◯◯仙人とか◯◯導師とかの枠。
 そして次回は遂に……

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