割りと平和な回です。その筈です。
それにしても改めてとじともサポートを見返せば、平城は刀使科の娘大半本当に平坦と言うか慎ましいと言うか、刀使科以外の娘は有るのに……。
酢昆布先輩は元々刀使だろって?今は警邏科だからノーカンですノーカン。
一応志保ちゃんはあの制服の上からでも判るくらいにはお山が見えますね。
だがひよよん!君はダメだ!!
ライアンが新たに仲間となり数日が経ち──
━━岐阜県・美濃関学園
「久しぶりに帰って来たぜ、美濃関…」
学園の門へ降り立つ青年、名は鳳焔也。
「にしても…定期報告の為にわざわざ戻んなきゃなんねぇのも面倒だよなぁ」
彼が今口にした通り、鎌倉の本部から岐阜の美濃関に報告の為帰って来たのだ。
「はい、ご苦労様でした。鳳君、本部での生活はどう?」
学長室にて今までの成果を報告する焔也、江麻は彼に鎌倉での日々を訊ねる。
「まぁぼちぼちって感じです。一応、他校の知り合いも出来たッス…じゃねぇ…出来ました。仕事の方も、余所の刀匠科の研ぎ方なんか色々参考になる…なります」
たどたどしく敬語を使う彼に江麻は苦笑しながら所感を述べる。
「それは良かったわ。貴方はどうにも誤解されがちな子だから、向こうで仲が良いお友達が出来たようで何よりよ」
まるで母親のような事を宣う江麻に焔也は微妙な表情を顕にする。
「後はもう少し座学に力を入れてくれたり、遅刻を減らしたり、最近見られる様になったサボり癖を無くしてくれれば言うことはないのだけれどね」
そんな言葉に思わず引き吊った笑みを浮かべ視線を逸らせる焔也。
「稲河さんもだけれど、鳳君も…無茶は程々にね?」
「う…うっす…」
「兎に角ご苦労様、後はゆっくり過ごしてちょうだい」
江麻の言葉を受け、学長室から退室する焔也、扉を閉め一息浸くとさて、どう時間を潰そうかと思案しながら学園の廊下を歩む。
「鳳先輩?」
すると、対面から歩いてくる女生徒が彼の名を呼ぶ。
「柳瀬?久しぶりだなぁ!お前、こっちに戻ってたんだな」
焔也が彼女の名を告げ手を挙げる。呼ばれた舞衣は微笑みながら彼の挨拶に応える。
「先輩は学長に報告ですか?本部では中々お会い出来ませんでしたけど…」
「おう、学長には今しがた報告を終えたとこだ。ま、本部の方はお前ら刀使は忙しいからな、工房に籠ってたりすると中々顔を合わせるなんて無いだろうし、お前の孫六はまだ大丈夫みたいだしな」
ちらと舞衣の腰の孫六兼元に目を向ける焔也。
「何と言うか……流石ですね、それだけの慧眼があるのにどうしてもっと真面目に授業に取り組まないんですか?」
「それを言うなよ……それに誰これ関係なく判る訳じゃねぇよ、衛藤と安桜、そんでお前のだから判るんだ。長江や福田先輩のは直接診ねぇと判らねぇ」
「ふふ…ちょっと意地悪が過ぎました、ごめんなさい先輩。ところで今日は大丈夫なんですか?お金?」
困った人と言わんばかりの微笑で焔也に今日の調子を訊ねる舞衣。
「あ…やべぇ、今手持ちが雀の涙程度だ。金振り込まれるの再来週だしなぁ」
本部までの交通費は組織から出るが自身の手持ちは無いに等しい、これでは腹拵えも出来ない。
「本部なら食堂で食えるんだけどなぁ……」
そこで助け船を出すのは目の前の舞衣。
「良かったら家に来ますか?」
「お!良いのか?お前が良いってんなら喜んでゴチになるぜ!ん?てことは衛藤も一緒か?」
13、4の年下の娘に食事の面倒を見られる高校生の姿が此処にあった。
「残念ですけど、可奈美ちゃんは雷火さん…可奈美ちゃんのお兄さんと久しぶりにご一緒するそうです。美炎ちゃんもまだ任務中ですから先輩も構えませんね」
「あー、安桜はまだ任務なのか……最近絡んでねぇなぁ。あいつからかうの楽しいんだけどなぁ」
美炎本人からすればいい迷惑である。
「ま、とにかく世話になるぜ柳瀬!」
「はい、お世話します鳳先輩」
この後、柳瀬家にて食事をご馳走して貰う焔也、舞衣の妹の美結と詩織相手にゲーム等して楽しく過ごすのであった。
━━静岡県・ダグベース
「さて、どうしたものかな。本部に勤めるに辺り、もう一度向こうに住居を構える必要がある訳だが……いっそセーフハウス扱いにでもしてしまうか」
ダグベース内の自室で本部勤めとなり改めて本部近辺に居を構える必要が出た戒将。
しかし既にダグベースで暮らす事幾数日、転送装置の存在も在ってか必要性が低い、が、住所が不定と言うのは戴けない。
仕方無いので適当に安物件に入居してしまおうかと考え始める。
因みに結芽は現在整備区画でライドビークル共々修復中のシャドーガードの元へ居座り彼等相手に自身がライアンを伴って戦った様子を自慢気に語り聴かせている。
ホークは真面目に聞き、ウルフは娘に接する様相で相槌を打ち、タイガーは眠り転けている。
「しかし…本部長直々の呼び出し、その真意が此花の要望だったとはな……」
現在本部の治療施設にて体内のノロを除去する処置の為、研究医師と本部長のように限られた人物しか面会出来ない"元"親衛隊第二席此花寿々花の事を思う戒将、在学中は互いに気安い関係であった2人、それが変わったのは果たして何時の頃からだったのか。
「此花の話とは…まぁ十中八九結芽の事であろうな。さて、今の内にどう返答すべきか考えておかねば」
今はまだ彼女に妹の生存を伝える訳にはいかない、ある程度世渡りを心得ている戒将とて演技は正直得意では無いのだ。ダグテクターを纏っていればマスクで顔を隠す事も出来よう、しかし燕戒将として寿々花に会った時、果たしてボロを出さずに済むだろうかと悩む戒将であった。
━━東京・渋谷
若者が多く集う街の1つで道行く女性を口説く調子の軽い男がいる。
「オネーサーン!オレとお茶しなぁい?」
勿論、ナンパは全てスルーされている。
「チッ…今日はシケてんなぁ、シャーねからゲーセンでも寄って帰るか」
と引き上げようとすると遠くから何やら少女の声が聞こえる。
「ウヘヘ……かわいい…」
オープンテラスで談笑する…恐らくは一般の女子高生を遠目に眺め、今にも涎を垂らしそうなだらしない顔でいる刀使──山城由依だ。
「かわいい女の子は眺めるだけでも幸せな気分になるなぁ~。でも出来ればおさわりしたい!よし!帰ったら清香ちゃんかミルヤさん辺りにアタックしよう!」
やはりこの少女、どうしようもなくとんでもない変態である。本人も軽い変態だと自覚があるのが質が悪い。
きっとその内彼女は僻地に飛ばされるだろう、それも夏真っ盛りのシーズンに
「ありゃ…あの時のオモシロ美少女か…顔がヤベェな、それなりに整った顔してんのにあれじゃギャグにしか見えねェ」
取り敢えず由依から視線を外し、その対岸に眼を向ければ、成る程確かに美少女が揃ってキャッキャしてる光景は悪くない。
「ヨシ!ダメ元であのカワイコチャン達にナンパ仕掛けてみっか!ヘイ!彼女ォ!」
果敢に向かう申一郎、しかしそこでまさかの邪魔が入る。
「ちょっとちょっと!?!そこの人ぉ!!何してくれちゃってるんですかぁ!!」
邪魔者の正体は先程まで溶けた顔をしていた由依であった。
「ナニって…ナンパだけども、そっちこそ何ダヨ?オモシロカワイコチャン?」
「オモシロカワイコチャン!?それあたしの事ですか?いえ、そういう事ではなく!美少女同士の尊いやり取りに割って入らないで下さい!」
申一郎の元に大股で鼻息荒く近付く由依、身長の差故、由依が申一郎を見上げる形になる。
「良いかオモシロチャン、オレは
「そんな羨まけしからん事!おてんとう様が許してもあたしが許しません!!この世にあまねく女の子達の為にあなたの様な軟派なチャラ男は見逃せないんです!だいたい何ですか!?その髪型!カッコいいとか思ってんですか!!」
憤慨する由依は申一郎のツーブロックカット、その側頭部の剃り込みを指摘する。
「ハァッ?!オマ…言うに事欠いてコレをバカにしやがったな!カワイイからってチョーシ乗んな!!」
「乗ってまーせーんー!乗ってんのはあなたでしょ!」
「上等!こうなりゃ…カノジョ達に選んでもらおうじゃないか!オレらが言い合ってもラチ明かねぇからな!」
「いいですよ?!きっとあたしの方を選んでくれるに決まってます!!」
顔面付き合わせて言い合う2人、周りの視線も何のそのだ。
そして巻き込まれる女子高生達は堪った物では無い。
今の内に逃げようと隣の友人とアイコンタクトを交わしつつ、ソロリソロリと席を発とうとしてしかし運悪く目の前で言い争う2人が此方を向き訊ねて来るのだ。凄い剣幕で。
「さぁ!お姉さま方!」
「オレとコイツ!」
「「どっちと付き合う!!?」」
「「いえ、そういうの結構ですから…」」
真顔で返す女子高生達、その目は零下の如く冷たい。
対し2人の反応はバラバラであった。
「oh……」
項垂れる申一郎。
「はぅあん!」
身悶える由依。
そんな2人とこれ以上関わりたく無い女子高生達は、ではもう二度と声を掛け無いで下さいと言い残し早々に去っていた。
そして──
「オイ…ドーすんだよ、オマエの所為でオレの今日の予定ダイナシじゃネェか」
「えぇ…知りませんよ、そんなこと。大体あなた何者なんですか?あたしの事知ってるみたいですけど…」
「アァン?そーいや顔を遇わせんの初めてか……。オレはオマエと同じ綾小路の生徒ダヨ。高等部二年、技巧科一応専科、鎧塚申一郎だ」
「え゛!?先輩なんですか?嘘でしょ!?」
その言葉恐らく大半の綾小路生に振ればお前の様な後輩が居る事が嘘でしょとなりかねないブーメランと化す言葉だとは彼女も思うまい。
いや寧ろ女性である分マシ………いややはり変態に貴賤は無い。充分事案通報案件だ。
「………分かりました!先輩には一度女の子同士のキャッキャウフフの尊みをご教授してあげましょう!!」
「ハッ!オマエこそオレのモテる為のイロハ諸々を聞いて腰抜かすなよ!」
そうして2人揃って近場の喫茶店に入る先輩後輩、この後、数時間の話し合いの末に何かしら琴線に触れたのか意気投合し肩を組んで出てくるのだが話の詳細については割愛させて貰う。
━━鎌倉・刀剣類管理局本部修練場
フローリングの床と畳敷きが同居する屋内に大きく響き渡る何かを打ち付ける音。
「あたた……受身失敗です…」
畳の上に倒れ伏すのは着させて貰っている感の胴着に身を包んだ少年というか青年、渡邊翼沙。
そして彼を投げ飛ばしたのは同じく胴着に身を包んだ──此方は実に様になっている少女、小池彩矢。平城の警邏科に属する高等部3年生である。
「大丈夫?渡邊くん、無理せず少し休みましょ?」
彼女からの労いを兼ねた小休止に翼沙も特に反論せずに従う。
「いやはや、理論では出来ても実践となると中々上手くいきませんね」
彩矢が持ってきてくれたお茶を手に翼沙がポツリと溢す。
「でも渡邊くん素質はあるわよ?最初の頃から比べても大分様になってきたし」
「あはは…どうも、そう言って貰えると幸いです」
「最初六角くんから君を紹介された時は驚いたけどね。彼に他校の知り合い、それも年上の友人だなんて…って」
彩矢の言う通り、翼沙は龍悟の紹介で彼女から護身術の稽古を付けて貰っているのだ。
「まぁ色々ありまして……龍…六角君とは良くして貰っています」
流石に詳しい訳を話す事が出来ないので笑って誤魔化す翼沙。
「ふーん。まぁ六角くんも色々謎が多い子だからね。妹さんとも大分雰囲気違うし……でもまさか研究科の君が護身術を習いたいって言うのは意外だったかな」
翼沙と同じ様にマグポッドからお茶を注いで口にする彩矢はそんな事を言う。
「何と言いますか、思う所ありまして…自分の身を守る術が欲しかったもので……」
「そうなんだ、でもそれにしては素人とは思えない体捌きだったよ?昔…もしかしたら今でも何かしら運動みたいな事をしてるの?」
「え、ええ…そんな所です……。その今更ですが小池先輩は六角君とは仲がよろしいようですが、やはり同じ科だからですか?」
口を濁しつつ彩矢の方へ話題をシフトする翼沙、すると彼女も苦笑し語り始める。
「確かに同じ警邏科と言うのもあるけど、彼の妹さん。清香さんね、私が刀使だった時に使っていた御刀に選ばれたの。でも彼女なんだか自信無さげだったから声を掛けたのね?そしたら蓮華不動輝広──私が使っていた御刀の前に小竜景光って御刀から見放されて、それで自信が無かったらしくてね。それで言ってあげたの、"貴女を見放した景光を見返してやりましょう"って、それからかしら、六角くんと話す事が多くなったのは…」
彩矢の語る過去に感心して聞き入る翼沙、そんな彼の視線に彼女はちょっと恥ずかしいなと溢し頬を掻く。
「もうっ!この話はここまで!続きを始めましょう!」
「え…あ、はい。お願いします」
ダグオン内でも未だ秘密が多い龍悟の事を詳しく知るチャンスが流れ少し落胆する翼沙、しかし好意に甘え稽古を付けて貰っている身なので図々しく聞けない。
それから暫くの後翼沙は彩矢に投げられる事になる。
━━奈良県平城学館・中庭
立派に茂る大木の枝に身を預け仮眠を摂る六角龍悟。
そしてそれを影からこそこそ監視…もとい見守る数人の少女達。
「むむ!………寝てる」
トーテムポールの如く顔出す一番上の少女──刀使科中等部3年生鴨ちなみがそう切り出す。
「あの……恥ずかしいので止めませんか鴨さん」
二段目、同じく刀使科中等部3年岩倉早苗がおずおずと切り出す。
「ダメ!だって見てよあの寝顔!?あんなに美人なのに男の人だからか、無頓着に制服は着てるし髪だってあんなに綺麗なのに無造作なんだもん。ファッションに携わる人間としてはあの逸材は見逃せない!!」
そしてそんな上と中のやり取りに気を取られず龍悟を観察し続ける刀使科高等部2年成瀬実紀。
「二人とも静かに…!気付かれてしまいます」
2人のやり取りが大きくなるのを諫め変わらず眠る龍悟を見続ける。
この3人どういう集まりなのかと言えば、非公式の六角龍悟ファンクラブなる謎の集会のメンバーなのである。
元々顔も良くミステリアスな雰囲気と相まって平城の女生徒から人気が高い龍悟。
しかし謎が多すぎてよく分からない、ならばそれを少しでも暴こうと実紀が始めた追跡に、龍悟の女性に見違える程の中性的な面持ち等に興味を持ったちなみが合流、そこに数人の女子達が更に集まり何時の間にやらファンクラブと化していた。
そして早苗はそんな彼女達に運悪く巻き込まれ会員となったのだ。
余談だが実妹の清香は名誉顧問、仲の良い辰浪桃は栄光のNo.06、クラスメートでそれなりに会話を交わす松永衣里奈がNo.66、動物好き仲間の姫野志保がNo.65、警邏科同士の先輩後輩で親しい仲の小池彩矢がNo.666をファンクラブから勝手に進呈している。
そして発起人の実紀、ちなみはNo.1、No.2と言う……早苗はNo.89だ。
早苗は思う、何故こうなってしまったんだろうと……。
そしてそんな3人を偶々通り掛かった姫和が何とも形容し難い瞳で見詰めていた。
(何なんだ……あれは…。岩倉さん、そういう趣味だったのか……)
早苗にとって完全なとばっちりであった。
━━東京・秋葉原
「ふっ、遂に買ってしまった……。しかしそれも仕方あるまいて、ワシだけ未だに専用ビークルが無いからのう、せめて気分を味わう為に、いつもの鉄道模型の他にジオラマ用の物を幾つかと…ロボットプラモの代名詞!ガンプラ!コイツを改造してワシの未来のビークルを想像もとい!創造すんじゃい!ガッハッハッハッハっ!!」
田中撃鉄、彼は一体どこへ向かっているのだろう………。
━━ダグベース
「それであの時、おじさんが降ってきて…私がそれをババッ!って掴んでシュッ…って振ってね──」
結芽が整備中のシャドーガードに身振り手振りで話を伝える。
『………』
ガードホークは既に何度も話を聴いているだろうに真面目に聞き続ける。
「──でね倒したんだよ、凄いでしょ!」
『Guo…』
ガードウルフも結芽がそう言うその度に律儀に相槌を打っては結芽を笑顔にさせる。
『Zzzz…』
ガードタイガーは話が始まった最初の時点から寝ている。
そしてそれをブローチの通信シグナル越しに耳にしているブレイブ星人と洞窟内で何ともむず痒そうにしているライアンであった。
一方、ラボでは桃色の髪の少女……に見える少年──アルファが頭を抱えている。
「手……手が足りない………。う、うぅ…この姿じゃ仕事が片付かないよぉ!ドリルライナー作んなきゃいけないし、ガンキッドのAI組まなきゃだしガワの無限砲だってあるし、今日はみんなのダグコマンダーの機能アップデートに忙殺されてるし!誰か助手が欲しいよ!早くサンダーライの候補も見付けなきゃいけないのにぃ!!」
完全防音のラボ内に虚しく響き木霊す絶叫。
しかし彼の普段の行いを知る同僚からすればこれでも甘い罰である。
アルファの仕事は終わらない
因みに管理者内で一番重い罰がアイドル◯スターの世界の管理だったりします。
デフォルトとで混沌としたあの世界は誰も彼も管理したがらない正にフリーダムの権化。
何故ってアイ◯スだから仕方無い。
公式でカオスですからね。某ラーメン大好き月のお姫ちんとか世界レベルとか段ボールサンタクロースとかぶおお!とか幸運の才女とか不幸の13歳とか外宇宙の支配者っぽいロリとかにゃんにゃんにゃんのユニコーンガンダムとかぷっぷかさんとか茜ちゃん人形とか天空橋騎士団とかむんさんとかエトセトラですからね!
あれは手に終えない。