以前の物から改訂した物を掲載致します。
キャラクターの不適切な発言、不穏当な描写を意図せず書いてしまった事謝罪申し上げます。
前回の"とじドル"!
ねぇ!アルファさん!キッドの格納庫に知らない娘達が居るんだけど!!?
ふわぁ…こずえだよぉ~……。
もうどうとでもなぁぁあれぇぇえ!!
━━広島上空
「え…?ダグベースに出たんですか?アイドルが?」
『ああ、前触れも無く突然にな。ガンキッドの格納スペースに彼が不在の間、いつの間にか現れたそうだ。コヒメが慌てて知らせてくれた』
サンダーシャトルコックピット内で雷火が困惑を顕に訊ねるとオーダールームの折神紫が肯定を返し、端的に経緯を話す。
「コヒメちゃん…そう言えば仲良かったですよねキッド君と。彼女の居住スペース彼の近くだし……いやそのアイドル本当にどうやって現れたんです?!」
『確かに。キッドの所はダグベースの医療セクションを経由するか、発進ゲートを通るしかないはず…ですが発進ゲートは人間が通れる場所では無い。ダグベース内からなら監視システムに引っ掛かるはず……』
『ブレイブ星人は何と?』
通信共有の画面から翼沙、戒将が紫に疑問をぶつける。
『一切感知しなかったと。それで当人達に理由を問えば、最初は長野近辺に居たそうだが、気付けばダグベースのガンキッド格納庫に居たらしい。曰く…「こずえならばしょうがない」との事だ。また、既に保護したアイドルの者達も同様の発言をしている』
『アイドルって何なんじゃ……』
『…それで、雷火。お前の方はどうだ……?』
撃鉄がアイドルの定義に是非を問いたいとばかりにアイドルと言うワードを繰返し呟く横で、龍悟が広島に向かった雷火の成果を問う。
「いやぁそれがですね龍悟先輩、何だか街中で戦闘が起きてるみたいで……多分エデンの宇宙人が原因なんで
『一切感知しなかったと。それで当人達に理由を問えば、最初は長野近辺に居たそうだが、気付けばダグベースのガンキッド格納庫に居たらしい。曰く…「こずえならばしょうがない」との事だ。また、既に保護したアイドルの者達も同様の発言をしている』
『アイドルって何なんじゃ……』
『…それで、雷火。お前の方はどうだ……?』
撃鉄がアイドルの定義に是非を問いたいとばかりにアイドルと言うワードを繰返し呟く横で、龍悟が広島に向かった雷火の成果を問う。
「いやぁそれがですね龍悟先輩、何だか街中で戦闘が起きてるみたいで……多分エデンの宇宙人が原因なんでしょうけど…」
聞かれた事に対しどうにも明瞭に返すのを躊躇う様に、あやふやな返事をする雷火。
それを見て、モニターの向こう側の全員が怪訝な顔をする。
「多分、この規模だから後でニュースで報道されるかもしれないですけど……ザゴス円盤ロボットを相手に巨大な緑色の大鬼が暴れてるんですよ」
告げて、サンダーシャトルの望遠カメラが映した映像を他のメンバーにも共有する。
『鬼…鬼かァ?いや言わんとする事はワカるぜ?角生えてッシ、鬼っつーのも解るけどヨ。ありゃもう人型の怪獣ダロ』
『大きいですね。映像で見ても40m強でしょう…?スーパーファイヤーダグオンより二回りも巨大ですね』
申一郎、翼沙が映像に映る大巨の鬼の暴れぶりに忌憚の無い感想を述べる中、ダグベースに映る紫の後ろからひょっこりと顔を出すホワイトプラチナヘアに金眼の少女、明らかに日本人離れした美貌を持つアイドルが口を挟む。
『あ、タイタモンですね~。巴ちゃんのパートナーですよ~』
『ブモッ!ブモッ!』
彼女の名はイヴ・サンタクロース。その後ろでブモブモ啼いている謎生物はデジモン……ではなく、トナカイのブリッツェンだ。
((((((誰だ…!?))))))
そして後ろの生物は何だ!?続ける7人の心の声。
おおらかな雷火でさえこの反応なのだ、彼女が如何に個性的であるかお分かりだろう。
「…!雷火、見て」
7人がイヴとブリッツェンに慄く最中、サンダーシャトルのサブシートから街中を映した映像の1部を指す沙耶香。
其処には緑の巨鬼からやや離れ影に隠れる形で数人の女性が戦闘の行く末を見守っている。
そしてそんな彼女達を護る様に白いシルエットがザゴス星人を蹴散らしている。
「あれは…あれもデジモン?なのかな?」
『そうですね~、ヴァルキリモンです~。美波ちゃんのパートナーですよ~』
雷火の独り言に近い呟きにイヴがニコニコ笑顔で応じる。
「なるほど…!役割を分担してるんだね、でも敵も数が多い。ちょっと助けてくるね!」
言うが早いや、操縦をオートにしてサンダーシャトルの格納スペースへと向かう雷火。
そのままダグテクターを纏いシャトル下底部からサンダーバイクと共に広島の街中へと降下していった。
━━北海道上空
「広島も中々大変な事になっていますわね」
「此方も向こうの事は言えんがな」
ターボライナーのコックピットでそんな言葉を交わす寿々花と戒将。
彼等の目の前にはピンクのマントと黒い鎧を纏った女性の様なシルエットが横切り、エデン式飛行型強化荒魂を追撃している。
地上は地上でまるで戦車の様な迷彩色が施された巨大な二足歩行重機が電磁波を纏いながら、量産式トラッカー星人を右腕の火砲にて蹴散らしている。
何より目立つのはその重機の頭上に女性が乗って指示を出している事だ。
「最早、問うべくも無いが…彼女も貴女方の…?」
『あら、あれは亜季ちゃんですね。ライデンモンちゃんの上に乗ってるなんて、プロデューサーが知ったらお説教ね』
『千秋ちゃんもいるウサー』
戒将が問えば、映像を共有しているのはダグベースのオーダールームから、ややおっとりとした声とドアップのウサギのパペットの映像が返ってくる。
声の主は持田亜里沙、パペットは彼女の仕事道具ウサコちゃんだ。
そのウサコちゃんが語る通り、ライデンモンと呼ばれた巨大重機の後方にキリッとした出立ちの黒髪長髪の女性が、手にした端末から指示を飛ばしているのが確認出来る。
「ふむ、であれば我々も傍観に徹している訳にはいかんな」
確認出来たアイドルは2人のみだが、もしかすると他にもいるかもしれない。早々に援護に入り、話をする機会を作らねばと判断した戒将は操縦桿を切り、試される大地へと降りて行くのであった。
━京都市内
「……妙な気配だ、この場に在るようで無い……何とも言いがたい…そんな気配がする……」
「君にしては珍しい物言いだ」
京都市内に入って早々、龍悟がそんな事を宣い、隣の真希が心底驚いた様に質す。
しかして龍悟はすぐには答えず、自らの感覚に従って一通り歩き回ると、伏見稲荷大社の方に向かう。
やがて、千本鳥居の辺りまで来たかと思うと、足を止め何かを探る様に瞑目した後、手裏剣を取り出す。
「………そこだ…!」
虚空に投げ出された手裏剣はしかし、何・も・無・い・筈・の・場・所・に・刺・さ・っ・た・。
「これは…!?」
「……行くぞ、この先に…複数の気配がある…」
驚きも束の間、手裏剣が刺さった事による解れから現れた異空間に怯む事無く進み入る龍悟、遅れ馳せながら真希もやや恐る恐るといった足取りで続く。
果たして進む事、数十分後──。
目の前に広がっていた光景は何とも不可思議なモノであった。
「あれ、人おるやん。ちょっとサクヤモンさんや、誰も入って来れないんじゃなかったの?」
『ええ、誰も入って来れないわ。普通の人間は』
まず目に飛び込んで来たのはブリーチ染めした様な銀髪のショートカットに狐の様な切れ長の瞳をこちらに向ける飄々とした少女と、狐の意匠をあしらった鼻頭まで隠す大きさの仮面を被り、身の丈程の錫杖を持った2メートル弱の奇抜な衣装姿の女性。
「ほな、普通の人とちゃうんやないどすか?」
「処す?」
次いで目に入るのは、着物姿の絵に描いた様な京美人と言う佇まいの黒髪の少女と桃色の鎌鼬の様な生物。
「あ…危ないです、よ?」
『………』
そして何より衝撃的なのは浮世離れした雰囲気の小柄な金髪の少女とそのすぐ傍で無言で虚空に手を翳し何・か・を・発動させている黄金の翼に白銀の鎧姿の天使の姿であろう。
天使の翳した手の先を視線で追えば、複数の小型から中型の荒魂が光の陣によって拘束されながら、徐々にノロへと還ってゆくではないか。
「……CGプロのアイドルだな?俺たちはお前たちを捜索、保護する為にここに来た……」
「保護って言われてもねぇ、見ず知らずの他人から言われてハイそうですかってホイホイ着いてくと思う?」
龍悟の言葉に切れ長の狐眼をいっそう細め胡散臭いと言外に告げる周子。
しかし共に居たアイドルの1人辻野あかりが双葉のアホ毛をピコピコ動かして呟く。
「でもうちのプロデューサーの方がもっと怪しくないですか?」
「「「ぶふっ!?!」」」
その言葉に周子と他2人──相馬夏美、難波笑美が思わず吹出す。
(……言伝てをしたためた手紙を預かっていたんだが…、あの少女の発言に出鼻をくじかれたか……)
(そんなに不審者の様な姿なのか…?!)
龍悟の隣で真希は未だ見ぬプロデューサー某の姿像を悪い方向に創り上げる。
「あかりちゃん、ホント色々容赦ないね…フフ。うんまぁ、サクヤモンの張った結界に入って来たのは驚いたけど、そもそも結界に入れる悪い人ならあたし達に声をかけるなんてしないで襲って来るだろうしね。でも変な化け物出た後じゃない?今はマジメモードかなぁって思ったからさ、念の為。
ぶっちゃけ聖ちゃんのセラフィモンが無反応だし、いい人なんだろうなとは思ってたよ」
小柄な金髪の少女──望月聖の隣に佇むパートナー、熾天使型デジモンセラフィモンを一瞥しながら途端にのんべんだらんとした雰囲気になる周子。
「そうですね~。実際皆さんとても良い子達ばかりですよ~」
「茄子ちゃん?!それにミタマモンまで!!?」
突然前触れ無く現れた同僚とそのパートナーの姿に温厚で平静な心持ちを保つ事が常の柳清良が眼を見開いて声を上げる。
「はい~茄子ですよ~。ナスではないですよ~」
「どうやってここに……って訊くまでもないか。もうこずえちゃんや芳乃ちゃんもそっちに合流してるのね?」
夏美が茄子に半ば確信めいた口調で問えば、彼女はニコニコ笑顔のまま首を縦に振る。
「はい、2人の協力のもと、皆さんがいる場所への霊道を開いて、ミタマモンに乗って来ちゃいました~」
「……アイドルは斯くも不可思議な存在だったんだな……」
「多分違うぞ!?しっかりしろ龍悟!!?」
そんなこずえちゃんなら~や茄子ちゃんと芳乃ちゃんなら~等と会話を弾ませる非常識極まる彼女達に、半現実逃避気味に受け入れる龍悟を揺らす真希。
この反応を見せた事により、弄り倒すと面白そうだと判断した小早川紗枝から真希はダグベースに帰還するまでの間絡まれる事となった。
因みに帰還手段は刀剣類管理局経費払いの東海道新幹線である。
━━埼玉県某所
そして此方は埼玉県のとある場所に位置するアミューズメント施設の駐車場。
其処に停車する1台と1両のバイクと車。
「ココにいるの?」
「らしいよ?芳乃ちゃんが『ほー、あちらの地から多くの輝きの気配を感じましてー』って」
「結構似てるな…真似」
「それじゃあ輿水さん、よろしくお願いします」
「フッフーン!カワイイボクに全て任せて下さい!事務所の残りの皆さんを全て見つけてあげますよ!何せボクったらカワイイので!!」
語尾にドヤッと付きそうな自信満面の顔をしながらファイヤーストラトスの後部席中央で鼻高々に宣言するのは輿水幸子。
CGプロきっての"カワイイ"を自称するアイドルである。
両端を可奈美と美炎に挟まれながら座っているとその小柄さが際立つ。そんな彼女の膝上には──
「幸子、今それは関係無い」
茶色い体色につぶらな瞳、登頂部の3本ツノとロップイヤーもビックリな長い垂れ耳のヌイグル…改めデジモン、ロップモンがジト目で呆れていた。
「んで、今更関東近辺を探索なのか管理局の特祭隊に丸投げじゃあなかったのかよ?」
暁が抱えたヘルメットに顎を乗せながら溢す。
「そこは、まぁ管理局の人間だけじゃやっぱ見つけんのが厳しかったんだろ。地方にも結構居たしな」
「すごかったですよね!広島の怪獣決戦、モニター越しでも迫力満天で!後イヴさんが本物のサンタって言うのも驚きました!」
イヴ・サンタクロース、何時の間にやらダグベースから消え、空飛ぶ轌で広島のダグサンダーと合流をしていた。ブリッツェンは死ぬ程息を切らしていたのは内緒だ。
「途中に現れた雷火先輩の加勢!からのダグサンダーとの共闘……燃えたなぁ~!」
「アタシとしちゃあ、そのタイタモン?だったか?のパートナーの赤い髪の…「巴さんです」…そうそう、巴ってのがダグサンダーの眼を見て一目で気に入ったつーのが衝撃的でな。いやロボット状態で仁義云々判るのかよ!?って」
「そこはそれ、ボクの事務所には晶葉さん謹製のウサちゃんロボもいますので!まぁボクの方がカワイイですが!」
「ロボと張り合うな。幸子」
ちょくちょく挟まれる幸子のカワイイアピールを尻目に行動に移る美濃関学院チーム。
「それじゃあ私は輿水さんと美炎ちゃんとで施設の方からあたってみます」
「アタシは可奈美と鳳とで近くの公園含めた外か」
と、二手に別れ捜索に移る面々。ロップモンは幸子の頭の上に乗っかる。
━━施設近くの公園
「やー、まぢ感謝!おサイフ持ってなくてお腹空いてたんだ~!おごってくれてありがとー!後で絶対!返すかんね!」
「や、そんな大した事はしてないぜ。なんつうか、君らがあんまり羨ましそうにあそこのクレープワゴンを見てるのに一向に買いに行かねぇから、何か困ってんのかなって訊いただけだし」
「お兄さんいい人だね!ゆい達みたいな初対面の相手におごってくれるなんて。あ!もしかしてゆいナンパされちゃう?どうしよう千佳ちゃん!?」
「むむ!そうなったらマジカルガールチカの魔法でゲキタイしちゃうんだから!」
えいっ、ツインテールの小学生くらいの年頃の少女からの可愛らしい握り拳を甘んじて受けながら苦笑する焔也。
彼女と金髪のギャルらしき少女達があまりにも純粋に疑いもなく、初対面の自分達からの施しを受ける事を受け入れている状況に面を食らいながら近くのベンチに腰掛ける。
「言っちゃあなんだが、よくアタシ達みたいな人間からの施しをあっさり受けたな?」
疑問に思った事を暁がストレートに訊ねる。
「え?だって、ゆい達に話しかけて来た時の最初の言葉が、君カワイイねーとかじゃなくて、君達大丈夫か?とか何か調子悪いのかとか、救急車呼ぶか?だもん!めっちゃいい人じゃん!」
「それに髪に赤いメッシュ?があるお姉さんはちょっとおっかないけど、そっちのお姉さんは普通に優しそうだし。チカ、これでも悪い人といい人の見分けるの得意なの」
「ですって!良かったですね暁さん!」
「可奈美よぉ、ちょくちょくお前失礼な事を言うなぁおい!」
遠慮無い千佳と可奈美の一言にたじろぎながらも、ギャルと小学生と言う奇妙なコンビから話を聞く3人。
「ふーん、友達がねぇ…」
「そうなの!何か気付いたら迷子になっちゃって!激ヤバ?!ってなって残ったみんなで手分けして探してたの!ゆいと千佳ちゃんがこの公園でたくみんとりなぽよがあっちの駐車場の方、涼ちゃん達があの建物の中で人探し中って感じ!」
「ほーん。んじゃ、駐車場の方に戻ってみっか」
ゆいチカこと大槻唯、横山千佳らと共に愛車を停車させた駐車場の方へと戻る外回り組。
「ねぇ~たくみ~ん、みんなを探そーってば」
「ちょっと待て里奈。あと少しだけで良いからじっくり見させてくれ!こんなイカしたヤツ、早々お目にかかれねぇんだ」
何か居た。
暁のビッグスクーターの横合いに陣取り余すこと無く眼を輝かせて興奮する、恐らく18~9程の少女と彼女の着ているパーカーの裾を軽く引っ張る側面刈上げヘアの金髪に濃いめのシャドウをアイラインに引いたギャルだ。
「あ?」 「お?」
そして眼と眼が逢う暁と拓海、ならば為すべきは1つ。
「……!?」 「!?」
──!?
「えと…たくみんとアキラちゃん何してんの?」
「すげぇ!なんつーうメンチの切り合いだっ!!?」
「知ってるんですか先輩?」
互いに睨み合ったままのレディースヤンキーに戸惑う唯を尻目に某書店の様な空気に震える焔也に図らずも
「アレはな、界隈の人間には当たり前の挨拶なんだよ。俺も地元の族に
解説すると共に懐かしそうに鼻下を擦る焔也は、何処か嬉しそうだ。
「ケンカはダメだよ?!」
「落ち着け千佳ちゃん。アレは確かに喧嘩の時もするが、あの2人のアレはちょっとした日常会話だその証拠に───」
千佳の慌てように焔也は心配無いと首を振るう。そして「ほら見てみな」と指を差し。
「
「
「「………フッ!やるじゃねぇか」」
数刻の睨み合いから同時に笑い合い無言の固い握手を交わす暁と拓海、2人が分かり合ったのだ。
「う~ん、ゆいにはワカンナイ世界だなぁ」
しかし悲しいかな、一般人には伝わらない感性であった様だ。
「皆さーーーーん!」
そこへ掛かるは自称カワイイこと輿水幸子の喜色満面の声、しかし──
「なんとボク達の事務所の方々が見つかり…フギャーーーーー!!?」
間ぬ…可愛らしい悲鳴を挙げる幸子、その原因はマンホールの下から現れた謎の触手。
「さ、幸子ぉぉお?!」
「幸子ちゃんんんん!?!」
「「んあ?!」」
幸子の危機に声を荒げる拓海と焔也、互いに彼女の名を口にした事で顔を見合せついでに意味なくメンチを切る。
「いやたくみん幸子ちゃんピンチだから!」
「先輩!遊んでないで早く助けなきゃ!」
唯と、幸子の後ろから追い付いた舞衣の声にメンチアイコンタクトを交わし頷き合う2人。
「唯!里奈!千佳!巻き込まれないよう離れるぞ!」
「待ってろ幸子ちゃん!今助けてやる!デェヤァっ!」
ビル2階分の高さとなった触手に飛び蹴りをかます。だが触手は衝撃でふらつくも幸子を離さない。
「くそっ!?ダメか!!(どうする…幸子ちゃんのリアクションからして、大槻と千佳ちゃん、それと暁のバイクを見てた姉ちゃん達はアイドル。柳…舞衣と美炎の後ろに居る連中もそうだろう。問題は他の一般人だ)」
触手の抵抗から弾かれながらも宙で1回転、反動少なく着地するが、逃げ惑う人々や被害を気にしてダグテクターを装着出来ない。
「のやろ…人の多い所じゃなきゃ……!」
歯噛みする焔也、しかしそんな彼の真後ろから聴こえて来るのは誰かが全力で駆け寄って来る足音。
「退いてろ、普通の人間には荷が勝ち過ぎる。…っシッ!」
そう言って焔也を追い越し、触手に向かって跳ぶ赤いベストの少年。
彼の拳には炎が灯っている。
「うらぁっ!!」
裂帛の声と共に炎の拳が触手の芯を打ち抜く。
「フギャー!?」
「っとに、とんだバイトだ。割に合わない事が多すぎる…あのおっさん絶対1発殴る」
力の抜けた触手から抜け落ちる幸子を空いた左腕で回収、俵抱きにして肩に乗せ舞衣達の元へと幸子を届ける。
「おい、三好だったか?お前確か空間を変える機能を持ったバイタルウォッチだかを持ってたよな?
俺が穴底に隠れてるヤツを引摺り出すから、姿が見えたらそのウォッチを使え。そしたらこちとら周りを気にせず戦える」
指示し、燃えた掌で追って来た触手を力一杯引き抜く。
「OK、デジヴァイスVのヤツね!任せて!」
現れた少年の言葉に即座に応え懐からデジヴァイスVを取り出し腕に着けると、側面のスイッチを操作し彼女を発生源とし周囲の空間が荒廃した砂塵の荒野のテクスチャへと塗り替えられてゆく。
「あ、ヤバ!あきらちん、かなみん、えんやちゃん。ゆい達のどこかにさわって!」
唯が紗南の行動を見て咄嗟に戸惑ったままの焔也の肩に触れ、可奈美、暁にも声を掛ける。
2人共、突然の事に困惑こそすれ、そこは一端の戦闘技巧者。詳細を訊ねるよりもまずお互いの近くに居たアイドルに触れる。
舞衣と美炎は小梅、あきらに触れていた為、そのまま荒野テクスチャに巻き込まれる。
「うぇぇっ!?何これ!?何これ!!」
(転送?転移!?違う。三好さんが腕に巻いた装置が世界を上書きしたんだ!)
突飛過ぎる光景に右往左往する美炎と、状況を冷静に考察する舞衣。
「うわっ、ギズモンじゃないデスか!?♯ヤバい♯プロデューサーどこ
自分達じゃワンチャンあるの涼サンと有香サンのパートナーだけデスよ!?」
「一体だけならその希望的観測も出来たんだけどな、見なよ」
マンホール周辺の大地を割って現れた触手の元、それは紫色の球体。
触手の正体は機械のコード、側面に鋭い爪、瞳はカメラのレンズの様に人工物めいている。
その怪物の名はギズモンプロトタイプ。
デジモンを殺す為の殺戮兵器である。
「チッ、相変わらず気色悪いオモチャだ。
ギズモンの触手から手を放し、腰からぶら下げた端末──D-スキャナーを起動させる。
そしてD-スキャナーの液晶に表示されるワイヤーフレーム状に描かれるオブジェクト。
左手に顕現したバーコードリングを右手のD-スキャナーで読み取らせると、少年は炎の光に包まれる。
火を象徴する古代デジ文字が刻まれた像が少年と重なって炎を噴く。左手から発生したコードは彼の身体を読み取る様に球を作る。
やがて少年はその身体を情報の核となる影と化し、コードが重なった顔はデスマスクを造り出す。
オブジェクトが分解され、デスマスクに併せる様に仮面の顔を、腕の影に籠手を、胸に鎧を、脚に具足を切り貼る様に重ねる。
影を挟み込む様に前後にフィルムを重ね、空間がフラッシュバックするとオブジェクトが鎮座していた台座に炎の魔人が立ち、炎を纏った拳で演舞を舞う。
その名は───
「ぬぁっ!?」
「嘘ぉ!?変身したよ!?先輩達以外にもダグオンみたいなヒーローが居たなんて聞いてない!!」
「俺だって知らねぇよ!?って、んな場合じゃなかった!ここなら!トライダグオン!」
異空間となった事で人目を気にする必要が無くなったからか、ダグコマンダーを起動させファイヤーエンに転じる。
ファイヤーエンがギズモンの群れに向かって行く。
『はっ?誰だお前』
「それは俺のセリフだ!お前何者だよ?!」
互いに目の前のギズモンを葬りながら、言葉を交わす。
『誰でも良いだろ、どうせこの戦いが終れば赤の他人だ』
「いやこの状況でそう言う訳にはいかねぇだろ!」
「先輩達なんか言い争ってない?!」
「うーん、どっちかと言えば、素っ気ないあの人に先輩が構ってる感じかなぁ?」
離れた場所で2人の炎の軌道を見ながら自らに向かって来るギズモン達を御刀で防ぐ美濃関刀使組、美炎と可奈美はエンとアグニモンの口論を横目で眺め、所感を口にする。
『全く、もう少し愛想を良くしろとM´Loadに口すがなく言われているだろうに』
『ま、天邪鬼な所あるしなぁ。あのガキンチョ』
『だからこそ我等に言伝てを託したのだろう。我が君は』
「えっ?誰?…って本当に誰!?って言うか人なの?!」
「おぉぉおっ?!一体いつ現れやがったぁぁあっ!?」
「派手だねー」
「敵…では無いみたいだけど……」
予兆無く出現した3人…もとい3体のよろい纏う騎士の様な異形に、情報処理がオーバーフローした美炎と、驚きで刃を向ける暁、彼等のカラーリングにのんびりと感想を述べる可奈美、アイドル達が平然と受け入れている事から敵対存在では無いと判断する舞衣。
「あれ、三人だけ?プロデューサーは?」
『よぉ、紗南。大将は今こっち向かってる。今頃はエグザモンに他の連中を乗せてな』
『それに先んじて脚の速い我々が先行したのだ。何せ、先程までリアルワールドであったのがデジタルワールドのテクスチャに塗り替わったのだ。我が君はそれで異変が起きたと断じ、我等を渦中に差し向けた』
蒼い鎧の騎士と緋い人馬の騎士が、自らをこの地へと派遣した主の動向を語る。
『美しいレディ、良ければ私と一時お茶でも如何かな?』
「え…いえ、その、戦闘中ですよね?」
そんな中、マゼンタピンクの鎧の騎士が舞衣に1輪の薔薇を差し出し恭しく傅く。
しかし周りのギズモンの大群に舞衣が焦りながら問えば、3人共に不思議そうに首を傾げる。
『はて?既にレディ達の周りを囲んでいた不細工な玩具は斬り捨てておりますが?』
ピッと肩周りの帯剣を1本振るってギズモン郡を指し、アイドルを守る様に陣を組んでいた刀使達に注目するよう手振りを見せる。
「そういやぁ、さっきより随分大人しいような…」
と、暁が口にした瞬間、彼女達を襲っていたギズモン達は縦、横、斜めに分断され、或いは何時の間にか風穴を開けられ破壊と言う名の機能停止を晒していた。
「なっ!?これだけの数を!?!」
『言ったろ、速さにゃあ自信があんのさ。オレ達はよ』
『まぁ各々速さの方向性が異なるがな』
『美しいものだろう?我々とレディ達は傷一つ無く、無粋な玩具は無様に散る…嗚呼!我ながら自分の実力が美しすぎて恐い!!』
腕を組んだ状態で、人差し指を立て鼻を鳴らす蒼い騎士。
馬の前肢の右側を大地に軽く突きながら瞑目する緋い騎士。
最後に芝居掛かった動作で自画自賛する薔薇の騎士、となっている。
「相変わらずのナルシストだなロードナイトモン」
「でも強いのは事実だからね」
「確かに美しい事は認めます。まぁボクのかわいさには及びませんが!!」
「ふ、ふふ…幸子ちゃん…張り合って、可愛い…」
「当然ですとも!フッフーン!」
『勿論、レディ幸子が可愛い事は自明の理ですとも。このロードナイトモン、レディのその心意気には畏敬の念を覚えます』
拓海、涼が呆れ、苦笑する横で幸子がカワイイを主張して小梅が笑顔で同意すれば、幸子は更に鼻を高くし、ロードナイトモンと呼ばれた薔薇の騎士はそれは至極当然だと、より幸子を持ち上げる。
「ファイヤァァァバァァァドォッ、アタァァァアアックッッ!!」
『バァァァニングッサラマンダァァァアアッ!!』
謎の騎士3人と少女達がそんなやり取りを交わしている一方で、炎の勇者と炎の闘士は自らが相手にしていた最後のギズモン郡を必殺の一撃にて掃討せしめた。
「ふぅ、やっと片付いた…って誰だアイツらぁぁあ!!?」
『ゲッ…ロードナイトモン、アルフォースブイドラモン、スレイプモン……って事はあの野郎も近くまで来てるのか…』
炎魔人が現れた3騎士に仮面から露出した口元を歪める。
「あの野郎?なぁ一体お前は何者なんだ?それにあの派手な連中は──」
『お前も派手だろ。他人を言えるタマか…』
エンの質問に面倒そうに呟くが、アグニモン自身も充分派手なのでブーメランである。
『お前ら随分仲良くなったなぁ』
「『!?』」
背を向けたまま語らう2人の間に一瞬で移動してきた蒼い騎士ことアルフォースブイドラモンが声を掛ける。
『ドコをどう見たらそんな言葉が浮かぶんだアンタは』
『まぁ落ち着け。取り敢えずだ、ダグオンの坊主!色々訊きたい事もあんだろうから、取り敢えず戻ろうや』
「えっ、お、おい…何を───」
『テメェまさか!?』
アルフォースブイドラモンは惑う2人の声を無視して彼等の腕を掴むと、予備動作無しに翔んだ。
「『!?!!?*¥@≧★!?』」
互いに声にならない絶叫を挙げて少女達の前に連れて来られる炎の勇士達。体感で5分、実際には5秒にも充たない瞬間を垣間見て鑪を踏みながらも耐える2人。
『ふむ、アグニモンとなった少年は兎も角。やはりそちらの少年が身に付けている装備はかなり特殊な物だな。加減したとは言えアルフォースブイドラモンの瞬間音速飛行に耐えて見せたのだから』
『M´Loadの言う通り、と言う事だね。ふむ……成る程…、このデザインM´Loadが好む訳だ。あの方はこういうヒロイックな物が好きだからね』
ジロジロと品定めするように評する緋と薔薇の騎士にマスクの奥で何とも言えない気分のエン。そんな中、薔薇の騎士が1つの提案を掲げる。
『さて、炎の勇者よ。一つその腕前を改めて我々に披露してくれないか?勿論タダでとは言わない。我々に叶えられる範囲の事ならどんな願いも叶えよう』
「腕前を披露って…具体的にどんな風にだよ?」
『フーム、流石に初手から我等の誰かはハードルが高い。うん、こうしよう!そこで他人事のようにそっぽを向いているアグニモンと戦ってくれたまえ』
我関せずと今正に人間に戻ろうとしていた所に水を差され口を情けなく開けるアグニモン。
このまま思惑通り運ばれてなるものか!と急いで人間に戻ろうとするが、残念スレイプモンに回り込まれ捕らえられる。
『クソッ!?離せ!ふざけんな!誰がやるか!喧嘩はまっぴら御免だ!』
『ノンノンノン、これは喧嘩などと言う醜いものでは無い。仕事の依頼だ。無論君にも報酬は出すよ?M´Loadが』
報酬と聞いて、抵抗が止まるアグニモン。しかしエンはいまいち乗り気でなく──
「相手嫌がってるし、俺も戦う理由が無いって言うか……」
『ほう!直情的なタイプかと思ったが、話の通じる相手には対話で挑むその態度……素晴らしい!君にも美しさがあるね!だが…我等、延いては我等が王はこの世界の守り人の力を知りたいのだよ、それが幼少のの頃の思い出の戦士であるなら尚更ね。
先程君が戦った相手の様な輩がまた出るとも限らないしね。
それに、アレは雑魚だったが……アレをけしかけた輩がそうとは限らないだろう?
なに、心配は要らない。最後の一線を超える様な事態にならないように私含め我々の誰かが必ず止めに入る。何より気になるじゃないか!同じ炎を使う戦士同士、どんな戦いになるのか』
のべつ幕無しに畳み掛けられ、単純型思考のエンは丸め込まれてゆく。
「それならまぁ…」
「先輩!?良く考えて下さい!確かにさっきみたいな敵がまた現れる可能性はありますけど、敵では無い人と戦う理由は無いですよ?!」
『まぁまぁ、お嬢ちゃん。言いたい事は解るが、オレ達も大将がこっち来るまで暇を持て余しちまうんだ。何せエグザモンには他のアイドルの嬢ちゃん達が数多く乗ってからな、下手にスピード出せねぇし』
『君達としても我々に尋問する事が1つや2つあるのだろう?ただ質問にだけ時間を費やすのもなんだ、彼等の決闘を肴に色々と会話に華を咲かせようではないか』
『それに、何だかんだと当人達はやる気になったようであるしな』
報酬に釣られた苦学生(施設育ち)とまぁ何となく相手の実力に興味があったファション不良は既に臨戦態勢に移っていた。
「良いんじゃねぇの?アタシ達に害を加えるって訳じゃねぇんだろ?
さっきの雑魚らしいのだけじゃ確かにデジモンってのが、どの程度の脅威かも分かんねぇし、拓哉って野郎が鳳相手にどこまでやるか気になるだろ」
「御刀で語り合うのと似た感じですよね!良いんじゃないかな」
「可奈美ちゃん!?………本当に危なくなったら止めて戴けるですね?」
『Yes your Lady。私は仕えるべき主と女性には嘘を付きません。何より彼の様な気持ちの良い勇者を失う事はこの世界の損失でしょう』
舞衣の訴えに片膝を突き頭を垂れるロードナイトモン。
「そう言えば、その王様?って人はこっちに来るのに時間が掛かってるんですよね?どうやって2人の戦いを観るんですか?」
先の会話から度々聞く騎士達の主が、如何にして決闘を観覧するのかと美炎が珍しく気付いて問う。
『我等の眼にする光景がそのまま我が君の元に届く。我等が耳にする音が、鼻にする匂いが、身体を撫でる空気がそのままな』
『詳しく説明しづらいが、そう言うモンだと納得してくれや』
スレイプモン、アルフォースブイドラモン共に目線を合わせて美炎に応える。
そうして唐突な提案により、始まった対決。
予期せぬ状況とは言え同じ炎の力を使う者、実力の程が気にならないと言えば嘘になる。
何だかんだと焔也もまたある種の剣客脳に感化されていたのだ。
果たしてどちらの炎が優れているのか、戦いの火蓋が切って落とされる───。
続く
エイプリル予告(BGM:With the Will)
美しい私と!
カワイイボクの!
次回予告ー!!わー!ドンドンパフパフ!
まったく!プロデューサーさんも仕方ない人ですね!鳳さんと灯さんが戦う所が見たいだなんて。
フフ、M´Load も男ですからね。斯く言う私も興味津々ですがね!
男の人ってそう言うの好きな方が多いですよね、ボクには良く解らないんですけど…。
本当か?幸子だって自分よりカワイイって宣う相手には張り合うだろう。
なっ!?それはそれ!これはこれですよロップモン!
違いが分からん…。
カワイイも格好いいも、美しいも1つの美学。と言う事だよ三大天使。
所謂誉れに近い物だ…今私中々美しい事を言ったな、フフフ。
……はぁ、次回とじドルプロジェクトDAY4
決闘!それはそれとして刀使、アイドルになります。
えっ!?プロデューサーさん!?彼女達もプロデュースする気ですか!!?
感想にて色々と批評頂き、私も懊悩した末に書き直しました。
ただ、デジモンフロンティアと言う作品について自分が嫌いだからと言って、他の人が嫌いとは限りません。
個々の好き嫌いはあくまでも心の中か、そう言った作品の批評サイトなり集会なりで議論を交わして戴けたら幸いです。
因みに私は基本全てのデジモン作品が好きです。
フロンティアやtryも悪い所も確かにありますが、それはそれとして楽しめた所もあるのです。
更にアニメや漫画、特撮等を視聴する時、まずはとことん楽しむ事にしています。
その後、改めて作画、脚本等に焦点を合わせて見直していたりします。