刀使ノ指令ダグオン   作:ダグライダー

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 こんばんは。
 仕事終りからの夕飯中ダグライダーです。
 今回からコラボ回、ロザミア様の作品からキャラクターを借り受ける身としては戦々恐々としております。
 他所様の家の子供を預かる親の気持ちと言う奴ですね!
 今回の話はまだ導入の辺りだからそこまで差異は無い筈……!



外伝 異邦人来訪編
第七十一話 歪曲!?別次元からの来訪者!


 前回までの"刀使ノ指令ダグオン"

 

 六角先輩って何者なんですかね?

 

 成瀬は忍者説を推します!

 

 まぁ、シンシュツキボツではあるよね!それにキレイ!

 

 ぼくもよく知らないんだよね、動物の話で盛り上るけど。

 

 本当に何者なんだろう?×4

 


 

 ━━???━━

 

 あー、退屈ってのは本当に無くならない。

 停滞、退屈は人間の衰退の一因だ、だから定期的に刺激をくれてやらなきゃなぁ?

 結果が滅びでも進化と衰退なら進化の方がマシだろ?

 そう言ゃあ、アルファが管理してるあの世界…今どうなってっかねぇ?

 せっかくだし、もう少しスパイスを足してやるか。あの連中にも刺激になるだろ。

 

 

 

 ──悪意が悪意を加速させる。

 謎の声が世界に何かを投げ込んだ。それは果たして彼の世界に何をもたらすのか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━火星衛星軌道・エデン監獄特別監獄棟

 

 「ふむ……これは、また可笑しなモノが現れた。もしや例の()()()()()()()とやらか?」

 監獄棟の一室で鬼の異形を成した異星人が手許の天秤の様な器具を玩ぶ。4つの皿にその皿を回転出来るよう細工が施されている。

 「ふ~んむ、空間を越え次元を繋ぐ道具……私では宝の持ち腐れだな、なら彼女にでも持たせてみるか……ギガロクス」

 何かを思い付いた様に忠実な側近の名を呼ぶ鬼。

 「ご用命でしょうか我が主」

 「この玩具を彼女に。使い方は彼女なら直ぐ理解するだろう」

 「承知しました」

 白鋼の巨体が鬼から天秤を受け取るとスッと消える、言い付け通り目的の人物に道具を渡しに行ったのだろう。

 「さて……どんな世界が見られるのかな?フフフ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜、人々が寝静まり、或いは尚も働く静寂の帷、その久遠と刹那の瞬き時、人々が気付かぬ内に()()()()()()

 眠りに着いていた人々は天変地異も斯くやとばかりの揺れにある者は飛び起き、またある者はその命を守る為に身を屈める。

 もし、彼等が空から今己が立つ大地を眺める手段を持ち合わせていれば驚愕に震えたかもしれない。

 何せ景色が回っているのだ。夢でも幻でも無い、現実に己の生きる日常(せかい)が回っていく。

 否、回っているのは世界では無い。

 

 彼等と彼等が住まう大地の方が回っているのだ。

 

 まるでコインの表と裏が引っくり返る様に。

 

 大地に大穴が空き、中心にはコインの如く回転を始める街と町。

 

 自らの住まう世界が文字通り180度変わる。そしてそれは、裏側に住まう人々にとっても同じ事。

 気付いた者達は大いに狼狽え、巻き込まれた者達は嘆き、関心の無いものは何処までも無関心に、他人事の様に嗤う者もいれば自らの事のように嘆く者もいる。

 表と裏が入れ替わり、人々は大きな混乱にざわめく。

 そして一刻の後、再び彼等の世界は回る。

 再び目を開けば後には元通りの何時もの日常。

 その日はそれで終わり、まるで胡蝶の夢、しかしそれはこの世界の……この星の大いなる危機の序章に過ぎなかった。

 

 この日を境にいくつもの神隠しと呼ばれる事象が散見される。

 それはこの日本に限らず世界全てを巻き込んで起こる大事、その到来を予見する小事であったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━神奈川県鎌倉・刀剣類管理局本部食堂

 

 『──現在に至るまで行方不明者は述べ800人、負傷者は3000人にまで昇ると予測されています』

 昼時の本部食堂で壁に立て掛けられたテレビからそんなニュースが流れてくる。

 見出しは神隠し!?消える街と人、謎の地震!とある。

 「神隠し……か、きな臭いな」

 定食の白飯を綺麗に平らげた戒将がテレビの内容に目を細める。

 「……異星人の仕業だと?」

 対面の龍悟が焼き鮭の身をほぐしながら戒将の発言の意図を訊ねる。

 「荒魂被害ならばこんな回りくどい事には無らん。それにエデン監獄の囚人達の中には我々の想像も出来ない様な能力の持ち主が居ないとも限らない」

 「確かに、可能性はゼロじゃありませんね。ですが今までの囚人達とは大分手法が違いますね」

 マイ七味、マイデスソースを目の前の饂飩にかけながら戒将の隣に座る翼沙が所見を述べる。

 「怪我人が出てんのも気になるな」

 翼沙の饂飩に振りかけられる大量の赤いナニかを見て引き吊りながら焔也も自身が気になった事を述べる。

 「その怪我は宇宙人共の仕業つぅことか?」

 デザートのカッププリン片手に撃鉄が首を傾げる。

 「ソレなんだけどヨォ、どうにも当直でタイキしてた刀使のコに訊いたらオカシナ事が起きたらしいって話ダゼ?」

 翼沙の隣で焔也と同じく饂飩のスープの赤みに引いていた申一郎が新たな話を切り出す。

 「おかしな話ぃ?例えばなんだよ?」

 「その刀使のコが言うには、一昨日の夜…今テレビでやってるような騒ぎが起きてた頃、荒魂出現で現場に何人かで出たそうでナ。ンデ、いざ現場に着いてみたらスペクトラムファインダーに反応がネェわ、地元の人間に話を聞けば目の前で荒魂がヒックリ返ったと思ったら見たこと無い人間が現れたとかってな感じだわでどうにも要領を得なかったんダト」

 女性限定のコミュニケーションの高さを駆使して聞いた話を皆に教える申一郎。

 戒将と翼沙が考え込む。

 「引っくり返る……その人間に何か変わった事は?」

 翼沙が気になった部分の詳細を申一郎に訊ねる。

 「オレも又聞きだから詳しくは知らネェよ?タダまぁ、ナンでも……現れた人間ってのが日本人に明らかに見えない見た目だったとか、警察に連絡しようと目を離したらいつの間にか居なくなってたとからしいぜ」

 それ以上は解らんと両手を挙げてやれやれという顔をする申一郎、そしてその話を聞いて5人も沈黙する。

 「…………。一度我々で調査に当たってみるか…」

 沈黙を貫いていた戒将が口を開くと仲間内にだけ聞こえるよう声を出す。

 「ダグオンの出番って訳か」

 「しかし直接宇宙人が現れた訳でもないんじゃろ?転送は使えんぞ」

 「承知の上だ。で、あるならば取れる手段は一つ」

 撃鉄からの疑問に戒将は皆の顔を見渡しながら言葉を区切る。

 「アー……オレら警察じゃ…って特祭隊は警察組織だったナァ………」

 「まぁ、自分の足で探す事になりますよね、そうなると」

 「…割り当てはどうする?」

 申一郎と翼沙が少しうんざりした顔をする一方、警邏科に長く属する2人は話を進める。

 「先ずはこの近辺で起きたと目される場所の調査からだ。最初は3:3で行こう」

 「んじゃとりあえずチームはくじ引きで決めようぜ!」

 2人のやり取りを聞き手近の割り箸を使って何時の間にか籤を作っていた焔也が箸を握り込んだ右手を差し出す。

 ((何時の間に……))

 その用意の良さに戒将、翼沙が心中で嘆息する。

 「おぉ?用意が良いのう!ワシはこれじゃ!」

 ノリノリで率先して籤を引く撃鉄、その箸の先端は赤。

 「ま、折角このバカがセッセと作ったんだからノッてやるか!」

 同じく籤を引く申一郎、彼の箸の先端も赤色だ。

 「……ふん?色がないな…」

 そして何時の間にか引いていた龍悟、その先端は無地。

 「っふぅ、仕方在るまい。お前の策に乗じてやろう」

 続いて短く息を吐く戒将、籤の先は無地。

 「最後ですか…では迷うのもあれなので手早く、はっ!」

 残った2本から迷わず引く翼沙、チーム分けの結果が出る。

 「んじゃまずチームAな!俺!申一郎!撃鉄!…ってこれ自分でくじ作っておいてなんだけど大丈夫か?」

 「「んだとぉ?!」」

メンバーの顔ぶれに不安を出す焔也とそれに対し文句あんのかと言わんばかりの2人。

 「……自分で決めた手段で出た結論だ…、今更文句を言うな…」

 「確かに其方の面子に些か不安を憶えないでも無いが、今回の主目的は調査だ。余程イレギュラーな事態が起きなければ問題有るまい」

 チームBの龍悟が籤の結果に文句を言う焔也を詰り、戒将が戦闘にならなければ大丈夫だろうと述べる。

 「何かあればダグコマンダーで即座に連絡を取り合いましょう」

 翼沙がそう言って締め括る。

 話が決まればやる事は早い、即座に食事を片付けて食堂を出る6人、通路に出れば速足で歩きながら正面玄関口へと向かう。

 果たして彼等の行く先に待つものとは──

 

 

 

 

 

 

 ━━エデン監獄・円卓

 

 地球の…より正確には日本の様子を観測する為に用意された映像装置の前に修道女の様な人影が佇む。

 そして修道女の後ろから近付く蜘蛛脚の異形。

 「どぉお?その玩具の使い心地はぁ?」

 蜘蛛脚の異形即ちこの監獄唯一の囚人では無い存在である女医が修道女へ語り掛ける。

 「無問題。状況は上々、この器具は此方(こなた)との相性が良い。其方(そなた)達には無償の感謝を」

 「別に礼なんて良いわぁ、適材適所って奴ねぇ。貴女が空間に干渉する力を持ってた、その道具が次元を越える力を持っていた、その2つを組み合わせて貴女の力が増強される。その副次効果で時間すら超越出来る。そしてあの星に大きな混乱が巻き起こる。最近地球侵攻の手段がマンネリ気味だったしねぇ…他の子にはちょうど良い刺激になるんじゃなぁいぃ?」

 そう女医が口にした通り、修道女には空間に干渉し操作する能力があり、天秤の様な道具には別の次元に干渉出来る力が込められており、その力が掛け合わせられた時、過去、現在、未来の時間にすら干渉可能となったのだ。

 「此方を出汁にするとは其方もヒトが悪い。だが、此処ではコレの真価を発揮出来ぬやもしれない…」  

 「なら地球に降りるぅ?多分ダグオンに見つかってしまうでしょうけどぉ」

 「それでは意味が無いであろう。超速の兄弟に協力を仰げぬか?」

 普通に宇宙船で降りてしまえばダグオンの感知網に引っ掛かってしまう為、隠密能力がある超速三兄弟の名を挙げる修道女、しかし女医は無理ねと笑う。

 「彼以外があの兄弟にモノを頼んでも首を縦に振らないわぁ。まずは彼に話を通す事ねぇ、案外簡単に許可してくれるかもよぉ?」

 「………まぁ一考しておく」

 「なんならぁワタシがその道具をパワーアップさせても良いけどぉ?」

 「ふぅ?連中に頼むよりはマシであろうか………宜しく頼む」

 どちらに頼むのが労力的に楽かを考え、後々のリスクよりも目の前の利益を優先した修道女、そんな彼女の選択にとても悪い笑顔を浮かべる女医。

 「うふふ…任せてくれて良いわぁ。貴女がきっと気に入る物を用意してみせるわぁワタシとあのコがねぇ」

 女医が口にしたあのコと言う言葉に柱の物陰から音が鳴る。

 「え…あの……えっと………ぼく眠いんですけど………また徹夜ですか……先生は製図引くだけですよね……作るの殆んど…ぼくなんですが……」

 「頑張りましょうねぇ、うふふ…」

 「あ、はい……ひぃん…」

 女医はそうして声の主と共に奥へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━神奈川県・山北町

 

 神隠し事件があった山北町へとやって来たダグオンの若者達。

 「見たとこ特に変わった感じはしないな、ホントにここか?」

 焔也が辺りを見回して胡乱気に訊ねる。

 「それを確める為に来たのだ。さぁ予定通りに手分けして調べるぞ」

 戒将の号令で各々チームに別れ散索を始めるダグオンの若者達。

 

 

 

 チームA焔也、申一郎、撃鉄が右側から。チームB戒将、翼沙龍悟が左側から山北町全体を探るように歩き回る。

 

 

 

 

 ━━チームA

 

 「う~む、やはり特にこれといった物は無いようじゃが……本当に此処なのか?別の場所じゃないのか?」

 撃鉄がバケツ式のゴミ箱の蓋を開けながら申一郎に訊ねる。

 「それは間違いネェよ。ちゃんと刀使のコ達に確認したしな…で焔也、オマエはさっきから携帯弄って何してんダ」

 公園の外草を掻き分けながら、先程からスマートフォンを弄る焔也に対し文句を述べる申一郎。

 「いや、ちょっと今回の事を詳しく調べてみようと思ってな…ネットで検索かけたら、何かここ二週間で今回の神隠しと似たような現象が世界中で起きてんだよ」

 そう言って2人にスマホ画面を見せる焔也、2人も神妙な顔になる。

 「これは……戒将達にも教えた方が良いんじゃなかろうか?」

 「あ、その辺は大丈夫だ。LINEで翼沙に教えた」

 見ればグループチャットダグオンの画面に切り替わっている。

 「ってなると、結局は手掛かりをアラ探しするっきゃネェのか……ハァ、いっそ正面キッて異星人が攻めてくりゃ楽なのにヨォ」

 すると申一郎のその言葉に反応したのではないかと言うように大地が大きく揺れる。

 「お、おお…?!」 「地震ダァ?!」 「お、お、落ち着けけけけ!!?」

 「「お前が落ち着け!」」

 狼狽える撃鉄を2人で嗜める、そしてある程度揺れに慣れ状況を把握しようと視線を巡らせた時、3人はそれを目撃した。

 まるで現実味の無い光景……、山北町の自分達がいる区画街とは少し離れた区画が宙に浮いている。

 大地は円形に切り取られ、宙に浮く街は下に全く別の街を抱えている。

 やがて街を乗せぶら下げた円は回転を始め、見覚えの無い街が上へ、元々その区画にあったであろう街が下へと入れ替わる。

 そして宙に浮いた大地は役目を終えたとばかりに元の切り取られた側に戻り、何事も無いように綺麗に痕跡を消した。入れ替わった街だけを除いて……。

 

 「「「ひっ、ひっくり返ったぁぁぁあァ?!」」」

 

 これには見ていた3人も驚く、そして3人のダグコマンダーに同時に通信が入る。

 『三人共に今の光景を見ていたな?我々は丁度、お前達とは街を挟んで反対の方向にいる。今し方入れ替わった街を調査するぞ』

 通信モニターの先で戒将が指示を飛ばす。

 3人共顔を見合せ頷き、入れ替わった街へ向かう為に走り出す。そしてそれと同時に今度は異星人襲来のアラートが鳴る。

 「げっ!?こんな時に…いや、こんな時だからか?!」

 「要は戒将が言ってた通り、宇宙人共の仕業だったワケじゃな」

 「っと、言ってる内に来やがったゼ!」

 彼等が現れた街へ向かう中、空から現れたアダムスキー型のUFOが飛来する。

 3人は足を止めUFOが降り立ったであろう場所を確認する。

 「距離と位置関係からすっとオレらが近いか、どーする?ヤロウが原因かどうか分かんネェが、先に戒将達に合流すっか?それとも…」

 「決まってらぁ!俺達で何とかするんだよ。……っつう訳で戒将、俺達は異星人の方に向かう。街の詳しい調査は任せた!」

 『何だと!?おい!待て!』

 戒将の制止を聞かずに再び走り出す焔也。申一郎と撃鉄も仕方無いとばかりの表情をする。

 「マァ、UFOの大きさからしても敵はオレらと同じくらいかちょっとデカイだけだろ。三人でもなんとかなる…悪いな戒将、翼沙に龍悟共々街の方は任せるわ」

 「じゃな。焔也とワシで前衛、申一郎の火力援護による後衛なら大半はなんとかなる。何、危なくなれば呼ぶでな、心配無用じゃ!」

 そうして焔也の後を追う2人、戒将はモニターの向こう側で眉間を指で解しつつも、状況からそれが妥当かと溜め息を浸く。

 『分かった。其方は任せる…が、何かあれば即座に連絡を寄越せ』

 「アイヨ」 「うむ!」

 2人が焔也に合流する。丁度人気の無い路地裏に入ると3人はダグコマンダーを起動させる。

 

 

 

「「「トライダグオン」」」

 

 そして路地から飛び出す赤、緑、黒の光、3人の戦士が建物を屋根伝いに駆ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━???・空地

 

 一方、入れ替わった街と山北町にある元々の街並みの境にUFOが降り立ち、そこからヒューマノイドタイプの宇宙人が出てくる。

 「クソッタレ!何が完成した装置の成果を確認したいから現地で直接確かめて来て♪だ!そんなもん自分でやれ!あのクソアバズレ!!」

 地団駄を踏む異星人、見た目が妙な痣らしき模様と肌が緑色な事以外は人間の姿そのものだ。

 大地が入れ替わるという不可思議な現象により人々が離れ、或いは家屋に隠る故に人気の無い空地で()()は罵倒を続ける。

 と、そんな事をしていたからか上から近付く3人に気付けなかった。

 「見付けたぜ、まさか一歩も動いてないなんてな。逆に驚きだぜ」

 「よっぽどヨユーなのか、あるいは単なるバカなのか……ってか人間の女型カヨ、しかも肌の色とアザ以外殆んど同じタイプ…やりずれぇ…」

 「言うとる場合か!ともかく、ワシらでとっとと片付けるぞ!!」

 ダグオンの3人、ファイヤーエン、アーマーシン、ドリルゲキ。彼等に見付かってしまった彼女はその顔を驚愕と焦燥に歪める。

 (だ…ダグオン?!しまった!あのアバズレを罵倒するのに夢中で奴等の存在を失念していた!!?マズイ!マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ!?おれは大した戦闘力が無いんだ!早く逃げなきゃ!)

 幸いダグオン達は何故か警戒してまだ自分を包囲してはいない、唯一の出入口を塞がれる前に逃げなくては!そう瞬間的に思考し脱兎の如く走り出す異星人。

 

 「なっ?!」 「ハァッ?!」 「むぅ!?」

 

 此方に仕掛けて来るか?と身構えていた彼等はその予測を裏切られた事に間抜けな声を挙げる。

 「逃げたぞ…」

 「バカ!追うぞ!」

 「おのれぇ!待たんかーい!」

呆けるエンを叱責しつつ逃げた異星人を追うダグオン達、彼等が異星人を追って向かう先、それが奇しくも入れ替わった大地の街であった事は今の彼等の頭の中から抜け落ちていた。

 

 その街の名は"駒王町"、新たな出会いと闘争が待つであろう場所である。

 

 

 

 

 

 

 ━━駒王町・???

 

 ダグオン達が異星人と追い駆けっこを始める前、この街に住まう特殊な集団が自らが巻き込まれた異変の調査に乗り出していた。

 「よぉ~し!しっぱつしんこ~だぁー!!」

 元気溌剌、天真爛漫、そんな言葉が似合いそうなテンションの色素の薄い紫がかった少女が叫ぶ。

 彼女の周りには複数の個性的な見た目の面々、恐らくは彼女こそがこの集団の中心なのだろう。

 「その前に、事前に決めた手筈通りにこの街に何が起きているのかを正確に把握する為にチームに別れるわよ!」

 此花寿々花以上の深紅(ワインレッド)に艶煌めく長髪のグラマラスな少女が、先の元気の塊の象徴らしき少女を止める。

 「え~!みんなで一緒はダメなの?」

 「今、私達の街に何が起きているのかを確めるのよ?手分けして当たった方が速いでしょ?それに使い魔も飛ばしすとは言え、この地の管理を任されているグレモリー家の者として、実際に自分達で確認した方が分かる事もあるわ」

 その言葉には成る程一理有ると、数名が頷く。

 

 

 果たして幾数分後かの話し合いの末、数名組に別れる事となる。

 「よーし!改めて気を取り直して出発だー!」

腕を空に大きく掲げる溌剌少女、小柄な体型と相まってある種の微笑ましさがある。

 「「「おー!」」」

少女に続くのは野性味と言うか粗野と言うか、顔立ちは整っているが些か締まりの無い下心やら何やらが内包された所謂、黙っていればイケメンなのにと言われそうな少年と肩口まで届くか届かないかくらいの青い短髪をざっくばらんに切り揃えた、此方も些か脳筋に見える少女、そして最後に腰まで掛かるシルクの様な金髪、垂れ目の碧眼で面持ちの優しそうな少女が仲間達と別れ己が暮らし住まう街の調査へと駆り出す。

 

 「よっしゃ!ザマァ見ろヴァーリの奴、今回ねぷ姉ちゃんの隣に立つのは俺だァッ!」

 4人組で黒一点となった少年が、恐らくは並々ならぬ関係があろう人物の名を挙げ自慢気な顔で拳を握り喜ぶ。

 そしてそんな彼を見て青い髪の少女がツッコミを入れる。

 「相変わらずそういう所は子供染みた争いを繰り返しているのか、一応ケジメは着けたんだろう?」

 「それとこれとは別!それとこれとは別なんだ!」

 少年が必死の剣幕になる。流石に少女達も引き気味だ。

 「と、とにかく!他の組に別れた皆さんもきっともう調査を始めてるはずですし私達も頑張りましょう!」

 金髪碧眼の少女が空気を取り成して本題に軌道修正する。

 とまぁ、矢鱈めったらグダグダなやり取りをしつつ住まう街を散策する。

 斯くして歩く事数十分、そろそろ紫髪の少女が飽きを感じ始めていた頃、彼女達一行の前にそれは現れた。

 

 「む?何だ妙な気配が近付いて来る」

 最初に気が付いたのは飽き始めた紫髪の少女の代わりに前を歩く青髪の少女、彼女の言葉に少年と紫髪少女が不審に思い訊ねる。

 「どおした?ゼノヴィア?」

 「お腹空いたの?」

 ゼノヴィアと呼ばれた青髪の少女は己の中の野生に近い第六感で何かを感知したのだ。

 「何か……来る!?」

 ゼノヴィアの言う通り前に視線を向ければ酷く乱れた呼吸で走り来る、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 彼女は頻りに後ろを振り返りながら必死に()()()()()()()()

 「あの人……なんだかとっても怯えているように見えます…」

 金髪碧眼の少女が女性の表情から察した事を口にする。

 女性は脇目も振らず走っているからかそのまま此方へ向かって来る。

 「っと…」

 「おわっ?!」

ゼノヴィアと少年が女性を躱したので必然的に紫髪の少女とかち合いぶつかり縺れる。

 「ねぷぅっ?!」

 2回程転がり止まる少女と女性、女性の下敷きになった少女は目を回している。

 「姉ちゃん!!」

 「う~ん…」

 そんな一行の混乱を他所に女性は心中で毒づく。

 (クソッ!クソが!!何だコイツらは!!邪魔しやがって!邪魔しやがって!ふざけんな!奴等に追い付かれるだろうがっ!!?)

 そうして後ろを見れば逃走の原因となった恐るべき存在が既に近付いていた。

 

 

 「見つけた!もう逃げらんねぇぞっ!!」

 

 

 赤い装甲を纏う炎の鳥の様な怪人が女性に対し敵意を向けた言葉を飛ばす。

 そして、その怪人に続けて現れた緑色と黒色の装甲を纏った、赤い怪人の仲間とおぼしき2人。

 「チョコマカ逃げてくれたなァ、ケドまぁ、ココまでだ。大人しくしてもらおうか?」

 緑色の装甲の人物が厳つい銃器を女性に向ける。

 「年貢の納め時ちゅうやつじゃ、引導を渡してやるから潔く向かって来い!」

 黒色の装甲の人物がどうにも穏やかでは無い物言いで女性に言葉を投げる。

 (ど…どうする…!?ダグオン達には追い付かれ目の前には下等生物、下等生物自体は大した脅威じゃないが……いや、おれからすれば脅威ではあるが…ダグオンが追っているおれが異星人だとバレて直ぐ様引き渡されるかもしれん!どうする!?)

 女性が焦燥を濃くさせ狼狽える。しかし、肝心のその下等生物……目の前の人間達の反応が芳しく無い。

 

 「な、何だ……奴らは…!?」

 ゼノヴィアが何かこうとても信じられないモノを見た様な顔になる。

 「おいおい…その銃と言い年貢がどうこうと言い、穏やかじゃねぇな」

 少年までもがダグオンに対して警戒心を顕にしている。

 (な、何だ…、コイツらはダグオンを知らない?この星の住人なのに?………っ!そうか!逃げる事に夢中になって忘れていたが、此処はあのアバズレが調査に向かえと言った場所!クソビッチの能力で入れ替わった世界の住人なら奴等を知らなくてもおかしくはない!ならば!)

 少女の上に未だ馬乗りの女性はニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。

 「た、助けて下さい!私、あの恐い人達に追われていて…もし捕まってしまったら殺されてしまうんです。どうか…!」

 少女の胸に顔を埋める様にして、彼女達だけに聴こえる声で、まるでダグオンが悪役であるかのようにひ弱な女性を演じ助けを乞う。

 「何だとっ!?」

 「野郎……一人の女の人に向かってよってたかってなんて連中だ!」

 ゼノヴィアと少年がダグオンに対し一気に敵意を向ける。

 目を回していた少女も女性の言葉に正気に戻り、飛び起きる。そして──

 「クエスト初っぱなから悪漢とのバトルなんてね!オッケー、この主人公で女神のねぷ子さんがあいつらをねっぷねぷにしてやんよー!」

 ねぷ子さんと名乗った紫髪の少女が何処からか木刀を取り出し構える。

 ゼノヴィアと少年も各々の得物、大剣と赤い籠手を出現させ構える。

 唯一、金髪碧眼の少女だけが戸惑いながらも女性と安心させようと彼女の側に近寄り、寄り添う。

 

 対しダグオン側は突如として武器を取り出した謎の集団に当惑する。

 「おい…今、あのちびっ子はともかく、後の二人…武器がいきなり現れたぞ……!」

 「むむ!?何モンじゃい…」

エンとゲキが警戒を更に厳にしながら正体不明の一行に対応出来る様に構える。

 「オマエら、気ィ付けろ…連中、対人レーダーに反応シネェ。いや…厳密に人間の反応に妙なモンが混じってる。ありゃ多分……」

 シンの言葉に2人はハッとなる。

 「あの異星人の仲間か……してやられたぜ」

 「まさか、ワシらから逃げていたのは仲間と合流し確実に倒す為か…どうする?戒将達に救援を出すか?」

 「いや…ここは俺達だけで何とかしよう。もしかしたら他にも異星人の仲間が居て、向こうのチームとかち合ってるかもしれねぇ…」

 図らずも互いに置かれた状況から誤解を抱いて対面する勇者と来訪者。

 その裏で糸を引いた女は嗤う。

 

 互いの正義が悪によって弄ばれる、護り戦う戦士達が激突する!

 

続く

 


 

 次回予告(BGM:We are DAGWON)

 

 俺達が異星人の仲間とおぼしき連中と刃を交えている時、戒将達も謎の集団と邂逅していた。

 

 

 荒魂を普通の人間が倒したのか?!御刀も無しに!いや…もしや彼女達は普通では無いのかもしれん。

 

 話を聞いてみますか?何か分かるかもしれません。

 

 ……話し合い中悪いが、緊急事態だ。エン達が敵と接触、未知の相手と戦闘になったようだ……。

 

 

 次回、"刀使ノ指令ダグオン"

 勃発!?仕組まれた戦い。

 

 主人公補正仕事してないよ!?なんで!!?

 

 誰だ?!




 所で、昨日発売の今週のヤンジャンのシンデレラグレイのパイセン、久々に簡単パイセンからの天然煽り。それに編集が便乗して「知らないのか?」は爆笑ものでした。
 これから先ダート云々が何度ネタになることやら……プフ

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