Fate/Grand Order 亜種特異点OOO:欲望解放領域 オーズ 作:banjo-da
特異点と出会いと新たなる戦い
『何処までも届く俺の腕』───俺の欲しい物。
どうすれば手に入るんだろう───────。
◆
人理継続保障機関フィニス・カルデア。
魔術だけでは見えず、科学だけでは計れない世界を観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐ為の各国共同で成立された特務機関───彼等は来る2016年に人類滅亡が証明されたことを受けて、本来は存在しないはずの過去の特異点事象を発見し、これに介入して破壊する事により未来を修正するための作戦を始動した。
特異点とは、本来存在しない大小様々な歴史の歪み。本来、仮に多少過去へ介入したとしても人類史に影響は無いが、そうならない───即ち、人類史を異なる方向へ変えてしまいかねないそれを特異点と呼ぶ。
カルデア所属の新人マスター・藤丸立香は、本来数合わせとして選出され魔術に関して完全に素人でありながら、2016年の人類滅亡の原因と成り得る7つの特異点の修正、そして全ての黒幕たる存在との決戦を乗り越えた。
この物語は、そんな彼が、次なる大きな戦い───異聞帯での冒険へと踏み出す少し前。亜種特異点と呼ばれる、7つの特異点とはまた異なる戦場へと赴いていた時期に起こった出来事である。
「新たな特異点?」
「そうさ。元々微弱なもので、放っておいても自然消滅するものだと踏んでいたんだが…どうもその気配が見えない。辛うじて残っていると言っても過言ではない不安定さだが、このまま放置して新たな問題が発生するより先に、我々の手で修復するべきと判断したのさ。」
ある日の昼下がり。今やカルデアの司令官も同然のレオナルド・ダ・ヴィンチ…通称ダヴィンチちゃんから呼び出された立香は、頼れる後輩のマシュ共々彼女からそんな話を聞かされた。
「了解!それで、何時何処に現れた特異点なんです?」
「話が早くて助かるよ!年代は2011年の8月末頃、場所は日本の東京付近だね。」
「おお…冬木、新宿、それに昔とはいえ下総国に続いてまた日本か…why Japanese people?」
「先輩、日本人の方にそれを聞いても分からないかと…。」
立香の傍らで控え目にツッコミを入れるマシュ。彼が初めてカルデアに来た日に出会った後輩にして、彼が初めて契約したサーヴァントでもある少女。
魔術王を名乗る黒幕との戦いの後、彼女のサーヴァントとしての力は行使出来なくなってしまったものの、立香にとって頼れる仲間にして大切な存在である事に変わりはない。
「まあ、冬木で嘗て幾度にも渡って聖杯戦争が行われていた事といい、案外あの国には魔術的なものを引き寄せる何かがあるのかもしれないね?…とまあ、それはさておき藤丸君。早速だが支度を整え、2時間後にはレイシフトを開始してもらいたい。大丈夫かい?」
「先輩、今回も私は同行出来ず申し訳ありません…。」
「俺は大丈夫です。マシュ、気にしないで?それよりも、その分カルデアからマシュがサポートしてくれると助かるよ。」
「……!は、はい!頑張ります!」
「うんうん、君達は相変わらず仲良さそうで何よりだ!───それじゃ、準備に取り掛かってくれたまえ!」
立香とマシュのやり取りを微笑ましげに眺めながら、ダヴィンチちゃんは二人に指示を飛ばすのだった。
それからきっかり2時間後。
レイシフトの支度を整え、召集された立香。そこには既にダヴィンチちゃんと共に、今回同行するサーヴァント達が集まっていた。
「ランサーのクー、呪腕のハサン、それにイリヤと美遊…?」
「出撃可能なメンバーの中から、私の独断と偏見で編成させてもらったよ。2011年という比較的最近の日本、そこに順応出来そうなメンバーを集めてみた。───無論、キャメロットの時の様に滅茶苦茶になっている可能性も否定出来ないが…そうで無かった時、なるべくスムーズに物事を進めたいからね。」
「ダヴィンチ殿の仰有られた通り。微力ながら、尽力させて頂きます。今回も宜しく頼みますぞ、魔術師殿。」
ダヴィンチちゃんの説明に、立香も納得した様子で首を縦に振る。確かに、イリヤも美遊も特異な経緯でサーヴァントになったものの、本来は現代日本在住の女子小学生である。
ハサンは外見こそ、この時代の日本では通報ものだが、サーヴァント故の霊体化に加えアサシンとしての気配遮断も有している。加えて理知的で順応性も高く、どの様な特異点でも情報収集で大活躍してくれる。
「でも、クーは何で?」
「あー…俺自身は確かに日本と縁はねぇんだがな?ここの召喚システムのせいか、昔日本の聖杯で召喚された時の記憶がちらほら有ってよ。だから向こうの様子にも直ぐに馴染めると思うぜ。」
何処からともなく、いかにも軽薄そうなデザインのアロハシャツとパンツを取り出すランサー。どうやら、お気に入りを持参するつもりらしい。その衣装に身を包んだ彼の姿を想像し、立香は思わず苦笑する。
「本来ならエミヤくんが最適なんだが…彼は霊基の損傷が激しくてね。前回のレイシフトで負ったダメージが回復しきっていない。」
「んー…それならクロは?私と美遊だけより…。」
「ゴメン、あたしはパス。おにーちゃ…エミヤが出られない分、種火周回出っぱなしだったから。それは良いんだけど、流石に疲れちゃった。」
不思議そうに問い掛けるイリヤの言葉に彼等の背後から答える声。
振り返れば、イリヤや美遊と同じ位の年頃の少女が欠伸をしながらそこに居た。
「クロ!」
「そういうワケだから、あたしは今回留守番させてもらうわ。────あ、でももう一人、同伴希望者が居るわよ?」
んー、と大きな伸びをするクロの背後から、立香達の元へ歩み寄る影が一人。
イリヤ達の様な例外を除けば、本来歴史上の偉人や伝説の存在が殆どのサーヴァント達の中で珍しい、現代の衣服に身を包んだ少女。
「ご紹介どうも。彼女の言う通り、今回は私も同行させてもらいます。」
短めの銀髪を揺らしながら、新宿での記録を元に霊衣を現代の装いへと変化させた少女 ──────『
「今回は偶々、気乗りしたから手伝ってあげるわ。異論は聞きません。良いわね、マスターちゃん?」
『ニタァ…』そんな擬音が聞こえてきそうな、とても良い─── 否、とても悪い笑顔を浮かべ。彼女は強引にメンバーの一員へと加わった。
◆
「ここが…?」
「見た所、普通の町っぽいけど…。私やイリヤの居た世界と、違いは感じられない。」
レイシフトした一行を待ち受けていたのは、意外にも平穏な街並みだった。
スーツに身を包んだサラリーマン。携帯電話片手にお喋りに興じる学生。ヘッドホンで耳を塞いだ若者もいれば、町行く人々を眺めるお年寄りも居る。
『……どうやら、新宿やアガルタの様に突拍子も無い世界と言うわけでも、ロンドンや冬木の様に大きな危機が迫っている…という雰囲気でも無さそうだね。美遊君の言う通り、記録として残っている2011年の日本の風景と違いは見られない。
とは言え油断は禁物だ。一見普通の光景でも、よくよく探っていけば何か起きているという可能性は高い。普通に見えても、そこは間違い無く特異点なのだから。』
カルデアのダヴィンチから通信が入る。どうやら現状、カルデアでも異常らしいものは見当たらない様だ。
「それじゃあ、先ずは情報収集と行くか。俺、ハサンがそれぞれ動いて、マスターは嬢ちゃん三人と行動…でどうだ。」
「はぁ!?異議有りです。何故私が子守りをしなくてはいけないのかしら?」
大きく伸びをしながら、本当に持参したアロハシャツを纏ったランサーが提案する。─── が、真っ先に噛み付くジャンヌオルタ。
そんな二人の間を取り持つ様に、ハサンが間に割り込みオルタを宥める。
「まあまあ、オルタ殿。この特異点、ある意味表立って異変が起きているものより厄介なのです。先ずは異変を探す所から始めねばなりませんのでな…故に、数手に別れて探索するのが妥当かと。」
身振り手振りを交え、人当たりの良さそうな声音で語り掛けるハサン。人は見た目によらないもので、この手の交渉や説得は彼の十八番である。
「私はこの容姿故、普通にしていても目立って仕方有りません。ですが…この身は腐ってもアサシン。逆に気配を遮断しておけば、諜報は得手と自負しております故。
ランサー殿も、この出で立ちであれば問題無くこの時代に溶け込めるでしょう。万一敵と遭遇しても、光の御子殿であれば大抵の敵は問題になりますまい。」
「……その位の事は分かります。ですが、何故私が彼等と同行しなければならないのですか?その理由なら、私もそこのランサー同様独自に動いた方が効率的と思いますが?」
「いえいえ!魔術師殿の護衛は是非オルタ殿にお願いしたいのです。オルタ殿はカルデアのサーヴァントの中でも屈指の実力者。貴殿が魔術師殿と共に居て下されば、我々も魔術師殿の身を案ずる事無く、安心して周囲の探索に専念出来ます。」
「……私が。………まあ、確かに貴方の言う通りですね。ええ、ええ。分かりました。マスターちゃんが幼女二人連れてうろついて、お縄に掛かる…なんて間抜けな事になっても困りますし。─── 良いでしょう!貴方の口車に乗せられてあげます。」
果たしてオルタがちょろいのか、ハサンの話術が巧みなのかと聞かれれば。恐らくその両方だろう。
ともあれ、これにて当面の方針は定まった。
一同はその場で三手に別れ、行動を開始した。
◆
「とは言っても…ホントに平和だね。」
記憶の残る街並みとは異なるものの、よく似た風景を眺めながらイリヤが呟く。
「ほんっと、平和ボケした連中ばかりね。これ、何も出ずに特異点消滅するんじゃないの?」
「オルタちゃん、それフラグじゃ…。」
呆れた様子で辺りを見渡す彼女の言葉に、立香が控え目に突っ込みを入れたその時。
『チャリン…』
立香の聴覚が、まるで硬貨が落ちた様な音を捉えた。
「…?誰か小銭落とした?」
「は?そんな物、私達が持っている筈が無いでしょう。大方マスターちゃんの聞き間違いか、その辺の通行人が落としたんでしょ。下らない事言ってないで、とっとと先に─────」
面倒臭げに流そうとするジャンヌオルタの言葉を、カルデアからの通信が遮る。
『皆、気を付けたまえ!たった今、明らかにその時代には不自然な敵性反応を感知した!いや、正確には
君達の目の前だ、というダヴィンチの言葉を待たずして───── 彼等の前を歩いていた通行人。その身体から、まるでミイラ男の様な不気味な生物が出現した。
「「何これーーー!?」」
思わぬ急展開に、立香とイリヤの叫びが重なる。
二人だけではない。その現実離れした光景に、その場は一気にパニックに陥った。
我先にと逃げ惑う人々を尻目に、ジャンヌオルタと美遊はミイラもどきを睨み付ける。
「あんなの、見た事無い…。」
「ハン!見た事有ろうが無かろうが、どう見てもあれはこの特異点の異常でしょ。この時代のこの国が、魔術に関してフリーダムなら話は別ですが。」
「どう考えても…それは無い…。つまり、あれは倒すべき敵!」
「でしょうね!行くわよロリっ子ども!」
オルタと美遊の反応は早かった。
二人は即座にサーヴァントとしての力を解放、衣装を…つまり霊基を、戦闘時のそれへと変化させる。
美遊が魔力の弾丸を撃ち込み、怯んだミイラもどきへオルタは炎を纏った斬撃を叩き込む。
「
堪らず吹っ飛ばされたそこへ、遅れて転身を完了させたイリヤが魔力の砲撃で追撃する。
即席ながらも息の合った連携。並大抵の敵ならば、間違い無く撃破出来るものであった。
───────が。
「ウゥ…。」
「……嘘…!」
ミイラというよりゾンビの様に、不気味な動きで起き上がる怪物。見れば、その体には傷一つ付いてはいない。
「何よコイツ…もしかして、不死性でも持ってるの?」
苛立ち舌打ちしながらも、冷静に状況を分析するオルタ。
確かに、先程の自分の一撃には手応えが有った。イリヤの追撃にしても、倒すまでには至らずともダメージを与えられるだけの火力は有していた筈だ。
けれど目の前の敵は、現に何事も無かったかの様に平気で戦闘へと復帰した。
ヘラクレスや、それこそクー・フーリンの様な化物じみたタフネスを持っている…とは考えにくい。たった数秒に渡る交戦だが、それにしてはこの敵は
ならば、何らかの特殊な耐性、或いは不死性を持つ…という可能性が一番しっくりくる。ジークフリート然り、アキレウス然り…現時点で弱点は不明だが、それを突かねば何時倒せるのか分かったものではない。
「マスターちゃん!撤退するわよ!今、コイツに馬鹿正直に付き合うのは得策じゃないわ!」
「ッ……!でも、このまま放っておいたら…!」
立香も、オルタと同じ結論に至ってはいた。伊達に数多くの死線を潜り抜けて来たワケではない。
だが、目の前の敵はそれ程強くは無いものの。それはサーヴァントという規格外の戦力と比較した場合の話だ。
このまま放置すれば、犠牲者が出る事は間違い無い…その事実が邪魔をして、立香は撤退の判断を下せずにいた。
「マスター、私も彼女と同意見。ここは退くべき。」
「だけど…!」
「~~~ッ!いい加減に──────」
なおも決断に踏み切れぬ立香に、オルタの堪忍袋の緒が限界を迎えたその時。
『スキャニングチャージ!』
「避けて!」
何処からともなく響き渡ったテンションの高い音声と、切羽詰まった様な男性の声音。
その声に、立香達は考えるより先に本能に従い、咄嗟に全員が後方へと退避。ミイラもどきから距離を取った。
「ハァ…セイヤー!!!」
それとほぼ同時に。ミイラもどきの上空に、赤・黄・緑色の三つの円が出現。そして気合いの入った叫び声と共に、凄まじい速度の
「ふえぇぇ!?今度は何、何なのー!?」
「まさか…アーラシュ…?」
上空から敵へと撃ち込まれたその一撃は、一瞬ペルシャの大英雄の宝具に似た印象を受けた。だが、立香は直ぐにその考えを否定する。
彼の宝具はあんな色とりどりの輪を生成はしない。何より、確かに途轍もない威力ではあったが…
「じゃあ…一体誰が…?」
新たな疑問に表情を曇らせる立香だったが─────その答えは直ぐに明かされる事となった。
爆発の衝撃が収まり、撒き散らした粉塵や炎が少しずつ引いていく中。
「ふぅ…。君達、ケガは無い?」
爆発の中心、先程までミイラもどきの居たその場所に。
先程の輪と同じ、赤・黄・緑の三色を身に付けた異形が立っていた。
アンクの真似してアイスキャンディ外で食べたら寒すぎて腹壊した筆者です。良い子の皆は、ちゃんと時期考えて適切な場所でアイス食べようね!
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