Fate/Grand Order 亜種特異点OOO:欲望解放領域 オーズ   作:banjo-da

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???「てぇっんさい物理学者の桐生戦」
???「そのくだり前にもやったじゃねぇか。出ねぇよ。」



蹂躙と虚無と太古の王

 

「駄目です!藤丸君と通信繋がりません!」

 

「サーヴァントの皆とは!?」

 

「そちらも全く…応答、反応共に無しです!」

 

慌ただしく職員の行き交う管制室。

突如観測が困難となった立香とコンタクトを図る為、カルデア内の職員の殆どが奔走していた。

 

「ふむ…最後に彼を捉えた映像を見る限り、何かしらの結界に囚われたとみるべきだね。」

 

「エミヤ君、アステリオス君、オジマンディアス王やネロ帝…。候補は割と多いけど、特異点に召喚されたであろう我々の未だ見ぬサーヴァントが何かしらの宝具を使ったか。或いは、そういう能力を持つグリードが居たのか…どっちにしても、厄介な状況になったね。立香君の存在証明は大丈夫?」

 

カルデアの通信は、単純に立香のオペレーターとして現地での活動をサポートする…というだけではない。特異点という「現実でありイフの世界」で立香の実在を常に証明し続けるために必要なもの。万一これを僅かでも怠り、カルデアスが「少し違った可能性の主人公」を現代に観測してしまうと、彼等は二度とレイシフトから戻って来れなくなる。それを防ぐ為、嘗てドクターロマンは…そして今はその役目を引き継いだダヴィンチちゃんやカルデア職員が不眠不休で立香を観測し続けている。

 

「はい、なんとか…。」

 

「よーし。それだけは何としても死守するように!私も最大限サポートするから!」

 

余談を許さない状況ながらも、首の皮一枚繋がった事に安堵するダヴィンチ。

だが、直ぐにその表情は険しいものへと変わる。

 

けたたましく鳴り響く警報。

何事かとスタッフ全員がそちらへ視線を向ける。

 

「今度は何!?」

 

「えっと…こ、これは…!?お、オートで観測を続けていた火野映司君の方に、これまでと比べ物にならない程巨大な魔力反応!」

 

「何だって!?新しいサーヴァントか、グリードが出現したのかい!?」

 

「い、いえ…それが、発生源は…!」

 

─────火野君です。

 

その一言に、スタッフ達やマシュは勿論、ダヴィンチちゃんすら表情を強張らせる中。

唯一人、ホームズだけが冷静に何かを思案している事に気付く者は居なかった。

 

 

 

 

 

 

駄目だ…暴走しちゃ、皆を傷付ける!

 

─────誰を傷付けるんだ?今ここに、俺の敵以外誰も居ないだろ?

 

ハサンさんが居る…それに、ガメル達を倒せても…暴走したままじゃ、戻って来た立香君達も危ない…。

 

─────そのハサンさんが今、ガメルに殺されかけてるんだぞ?それこそアイツらを倒さなきゃ、戻って来た立香君達も危ない。

 

それは…そうだけど…。

 

─────認めるしかないんだ。彼等は強い。

このままじゃ、また俺は誰も救えない。

 

─────手が届くのにその手を伸ばさなかったら死ぬ程後悔するぞ?

 

─────俺はもう受け入れた筈だ。

 

 

 

 

 

─────俺の欲望は何だ?

 

 

 

「俺の…欲望…!何処までも届く腕…力…!」

 

冷えきったその場で、譫言の様に呟く映司。

紫の光を灯した虚ろな目には、もう色とりどりな世界は映っていない。

 

灰色に染まった視界。映る物は全て敵。

 

「………変身。」

 

─────敵なら、倒さなきゃ。

 

『プテラ!トリケラ!ティラノ!』

 

文字通り、映司はその身を異形へ変える。

太古の時代、地球を我が物としていた王者達。その姿を模した紋章が浮かび上がり、光に包まれた映司の身と重なる。

彼を覆う光が弾け飛べば、姿を現したのは破壊の化身。

耳に位置する場所には、翼竜の翼。

肩にはトリケラトプスの角。

強靭な下半身には、ティラノサウルスの尾。

 

『プ・ト・ティラーノ・ザウルーゥス!』

 

混沌を思わせる紫色の王、

仮面ライダーオーズ・プトティラコンボ。

総てを破壊し無に帰す太古の力。それを纏う彼に、もう先程までの映司の面影は微塵も無い。

 

「……!これは…不味いな。最早先程とは別人───いや、別次元の化物だろう。」

 

「アタランテ…あいつ、嫌な感じがする…!俺、あいつ嫌いだ…!」

 

戦士としても、狩人としても、そして野生の獣としても。アタランテの持つ全ての勘が、彼女に最大級の警鐘を鳴らしている。

あの姿の事は、彼女も全く知らない訳ではない。

コアメダルを唯一破壊出来る、無の欲望を有した破滅の力。手を下したのはオーズではないものの、アレと同じ力が嘗てガメルを滅ぼした事も知っていた。

────いや、知っていたつもりだった…というのが正しいか。

目の前の存在は、明らかに他の姿と一線を画してる。無論、先のシャウタと呼ばれたコンボも強敵には変わり無い筈だ。

だが、少なくとも先程までは"強敵"という認識が有った。生前アルゴー船に乗り合わせた勇者達。或いは、記録として残っている"嘗て何処かで行われた聖杯戦争"で覇を競った英雄達。彼等を思わせるその強さに、戦いへの高揚すら感じたものだ。

 

それがどうだ。目の前の存在は、アタランテにとって"未知の敵"以外の何者にも感じない。ただ、ひたすらに危険な存在…それ以外に抱く思いが見付からなかった。

 

「ガメル、気を付けろ!ここは一度距離を取って…」

 

「ウ…ウオオォォォォォォ!!!!!!」

 

警戒しながらガメルへアタランテは指示を飛ば───そうとするも、それを遮り響き渡る咆哮。

ただ吠えただけ。にも関わらず、その叫びは生物の根元的な恐怖を呼び覚ます。グリードのガメルや、サーヴァントであるアタランテですら、その雄叫びに怯み、全身が硬直する。

それを知ってか知らずか、怒濤の勢いで走り出すオーズ。アタランテは 気力を振り絞り硬直から逃れ、咄嗟にガメルを突き飛ばす。

突き飛ばしたガメルに構っている時間は無い。直ぐ様振り向き、オーズ目掛け矢を放つアタランテ。

その技量、俊敏さは流石神話に名を残すだけの事はある。───けれど、それで止まる様な敵でない事は他ならぬ彼女自身が一番理解していた。

 

「─────!ウォォォォ!!」

 

「効かぬ…いや、元よりダメージ程度で止まるという選択肢すら無いのか!」

 

あれはまるでバーサーカー。それもかなりの狂化ランクを有するそれと何ら変わらない。

あっという間に目前へと迫ったオーズに舌打ちしつつ、側面へと回り込みながら矢を番えるアタランテ。

狙うは、がら空きの脇腹。オーズが身を翻すより先に、彼女の放った一撃が彼に届く。

吹き飛ばされ、受身も取れずにオーズの体が地を転がった。

 

「出し惜しみする余裕等、有る筈も無い───!

"訴状の矢文(ポイポス・カタストロフェ)"!」

 

魔力の涸渇は問題だが、消滅しては元も子も無い。そう判断し、彼女はオーズが起き上がるよりも早く再び宝具を起動する。

天へと打ち上げられる祈りの矢。それが再び二大神に届けば、オーズの元へ裁きの矢が放たれる。

嵐を思わせる勢いで降り注ぐ天からの狙撃。それを前にして、身を起こしたオーズは一際大きく咆哮した。

 

「ウォォォ!!!」

 

『スキャニングチャージ!』

 

バックルにオースキャナーを滑らせるオーズ。次の瞬間には、彼の姿は矢の雨に包まれ見えなくなる。

 

「ガメル…済まない、許せ。」

 

「大丈夫…アタランテ、オーズ倒した…?」

 

「さあな…。だが如何に奴と言えど、これを受けて無傷とは…。」

 

復帰し、近寄ってきたガメルと言葉を交わすアタランテ。先の状況で見失ったハサンに注意を払いながら、彼女等が視線を向けるは無論オーズだ。

警戒を怠る事無く、注意深く土煙の中を注視し───。

 

「…氷?」

 

違和感に気付くと同時に、アタランテの獣の勘が最大限の危険信号を飛ばす。

直後、何かが炸裂する。衝撃は土煙を吹き飛ばし、平気な様子で立つオーズ(・・・・・・・・・・・)の姿が現れた。

 

「馬鹿な…!」

 

無傷ではない。寧ろ、彼の紫のボディは所々に傷を負い、先の宝具が確実にオーズへ痛手を負わせた事を示している。

───だが、彼は耐え抜いた。

そもそも、今の姿へ変身するより前から彼は限界だった筈だ。

だというのに、衰える事の無い闘志と殺気を撒き散らして佇む彼は、最早神話の大英雄達と比較しても遜色無い。

 

「ガメル、一旦退くぞ!この場でどうこう出来る相手では…」

 

「オオォォォ!!!」

 

即座に的確な判断を下したアタランテの身が竦む。

彼女の視線の先には、雄叫びを上げながら大地へ片腕を突っ込む(・・・・・・・・・・)オーズの姿。

彼がその腕を引き抜けば、手に握られているのは恐竜の頭部を象った戦斧。

目にしただけで本能的な畏れを呼び覚ますそれは、プトティラコンボの専用武器・メダガブリュー。

逃げる事は許さないとばかりに、メダガブリューを携えたオーズが再び彼女等目掛けて走り出す。

 

「オーズゥゥ…!アタランテを虐めるなぁー!!」

 

「ガメル!?馬鹿…止せ!」

 

アタランテを庇う様に飛び出したガメルは、アタランテの制止も無視してオーズに殴り掛かる。

然しそれを片腕で受け止め、オーズは躊躇無く彼の胴へとメダガブリューを振るった。

 

「ガッ…!う、ぐぅぅ…!」

 

切り裂かれたボディから溢れ落ちるセルメダル。

グリードですら耐え難い激痛に、呻きながら鑪を踏むガメルへ、オーズは何度も何度もその手の斧を振り下ろす。

 

「止めろ───!」

 

彼を止めるべく、アタランテがオーズへ矢を放つ。

手数では止まらない事を見越し、一撃に魔力を限界まで溜めての狙撃は、オーズの脇腹をライフル弾の如く削り取った。

一撃の重さに流石の彼もよろめき、ガメルへの攻撃を中断する。攻撃の手が止まった事に、アタランテも僅かに安堵した。

─────のも束の間。

 

「ウオオ!!」

 

「────ッ!やはり…そう来るか…!」

 

オーズは満身創痍のガメルを蹴り飛ばし、攻撃の矛先をアタランテへと切り換えた。

最早限界の近いアタランテに更なる反撃の隙を与えず、一気に縮まる二人の距離。

メダガブリューを振り上げながら眼前に迫る彼を躱し、アタランテは再度彼の側面へと潜り込む。───だが、オーズはそれを見切っていた。

一度縦に振り下ろしたメダガブリューを、力ずくで横凪ぎに振り抜く。

 

「ぐあぁッ…!」

 

今の彼に、相手が女性であろうが区別するだけの理性等有る筈も無い。胴体を切り裂かれ、血と魔力を撒き散らしながらアタランテは成す術無く弾き飛ばされた。

 

「化…物め…!これ程とは……!」

 

息は荒く、掠れた声で呻くアタランテ。ガメルも既に限界、このままでは二人共滅ぼされるのは時間の問題だろう。

せめてガメルだけでも──彼女の強い意志とは裏腹に、指一本動かす事すらままならぬ自身に苛立ちを抑え切れない。

 

そんな彼女の内心など知る由もない───そもそも、そんな事を汲み取る思考など、今の彼が持ち合わせている筈も無く。手にしたメダガブリューを戦斧から銃へと変形させたオーズは、そのセルメダルを恐竜の顎を象ったクランチガルバイダーへと投入する。

 

『ガブッ!ゴックン…!』

 

クランチガルバイダーがセルメダルを噛み砕く。流れる音声のコミカルさと裏腹に。砲身には凄まじいエネルギーが収束し、これから放たれる一撃は到底アタランテに防ぎようの無いものだと示していた。

 

「……ここまでか…!」

 

無念と後悔に打ちのめされながら,アタランテはそっと目を閉じる。

 

 

 

──────だが、待てども何の衝撃も襲っては来ず。その事に疑問を抱きつつ、彼女は訝しげに目を開いてみる。

 

「グ……オオッ…!」

 

「映司さん…止まって!」

 

アタランテの目に映ったのは、見知らぬ少女の姿。彼女の放つ魔力、明らかに一般人とは異なる装束から、サーヴァントである事は疑いようがない。

少女はアタランテを庇う様に、オーズの目の前に立ち塞がって居る。

先程までの彼なら躊躇無く攻撃していた筈だが…何故だか、少女を前にしたオーズは引き金を引けずにいた。

 

「どう…いう事だ…?」

 

困惑するアタランテの前で、苦しそうに唸り続けたオーズは。軈て手にしたメダガブリューを落とし、力無くその場に崩れ落ちる。

それと同時に変身が解除され、破壊の化身は火野映司の姿を取り戻した。

 

 

 

 

 

 

 

巨大な旗を横凪ぎに振るうオルタ。それをバックステップで躱し、恐竜グリードは魔力で編まれた紫の光弾を放つ。

 

「チッ…!」

 

舌打ち交じりにオルタは咄嗟に旗を投げ捨て、炎を纏った剣で光弾を斬り伏せた。

だが、そこで生じる僅かな隙に、グリードはより巨大な魔力弾を生成。オルタ目掛けてそれを放とうと───。

 

「させない…!」

 

「私達も居るんだから──!」

 

グリードを挟み左右から放たれる魔力の斬撃(シュナイデン)。タイミングは完璧ながら、然しそれを前にしてもグリードは動じない。

片方の斬撃に魔力弾をぶつけて相殺。もう片方に至っては空いた手を伸ばし、文字通り片手で受け止めてみせる。

 

「そんな!?嘘でしょー!?」

 

「───驚く事では有りません。言った筈です…君達では私には勝てない、と。」

 

悲痛な叫びをあげるイリヤに目もくれず、淡々とした口調で告げる恐竜グリード。

"殺す気は無い"という言葉に嘘は無いのか、先程から彼は圧倒的な力量の差を見せ付けながらも、積極的に立香達を排除する様な動きは見せていない。だがそれでも、目の前の敵はこの場のメンバーを全滅させられるだけの力を有している…というのは明白。せめて映司か、或いはクー・フーリンの加勢無しでは撃退すら難しいだろう。

 

「さて。未だ続けますか?これ以上は私としても面倒なので、もう少し痛い目を見せて無理矢理大人しくさせる…という手段を取らざるを得ませんが。」

 

「クソ…なら、一かバチか…!」

 

敵は未だ全力を出していない。その油断に付け込み、令呪を用いた最大火力をぶつける───それしか勝機は無い。

そう判断した立香は、令呪を用いようとして─────

周囲の景色に違和感を抱く。

 

「迷宮が…乱れてる?」

 

先程までこの激しい戦闘を前に傷一つ付かなかった迷宮が、まるで壊れたテレビの画面さながらに。乱れ、時に霞み、時折外界の景色すら見え隠れしている。

グリードもまた、その異変に気付いたのだろう。

周囲を見渡し小首を傾げていた。

 

「ふむ…どうやら、宝具が解除されつつある。それはつまり、使用者であるアステリオス君が限界という事。」

 

「てことは…映司さんやハサンがやってくれた…!」

 

その事実に、僅かながらも気持ちを持ち直す立香。

 

「……殿。………師殿。───魔術師殿!」

 

迷宮の縛りが弱まった影響だろう───ハサンからの念話が届いたのも、それと同時だった。

 

「ハサン!良かった、無事で!」

 

遮断されていた意志疎通が回復し、思わず立香の声が弾む。

だが───返ってきた内容はそう易々と喜べるものでも無く。

 

「─────え?映司さんが…オーズが、暴走…!?」

 

彼の漏らした一言に、反射的に美遊が振り向く。

一瞬にして不安を滲ませたマスターの表情に、彼女は嫌な予感を覚え戦線から離脱する。

 

「ちょ…!?アンタ何してんのよ!?」

 

「美遊!?」

 

オルタとイリヤからの呼び掛けも耳に入らない。今の美遊を突き動かしているのは、理屈では無い単なる直感。けれど、その直感を無視すれば取り返しの付かない事態にまで発展するかもしれない…そんな確信が彼女には有った。

 

「───マスター!私を、映司さんの所に!」

 

「え?だ、だけど…。」

 

「お願い…!早くッ!」

 

藤丸立香は一流の魔術師では無い。

けれど、仲間を信じられるマスターであった。

そんな彼が、今の美遊を目にすればどうなるか。

 

「───分かった!ハサン、こっちで手伝って!代わりに映司さんは美遊に任せる!」

 

無論、彼女を信じる。

それは魔術師としては未熟な彼が、人理を修復する程のマスターに登り詰めるまで、ずっと変わらず貫いてきた信念なのだから。

 

「美遊、頼んだ!」

 

迷宮が綻び、外界との境界が曖昧になった今だからこそ。

立香は礼装に刻まれた転移魔術(オーダーチェンジ)を起動。魔力経路(パス)の繋がりから捉えたハサンの居場所と、目の前の美遊とを入れ替えた─────。

 

 

 

 

 

「!────寒い…?それより映司さんは…。」

 

オーダーチェンジで移転させられた美遊が目にしたのは、苛烈な戦闘の痕跡の数々だった。

 

「アタ…ランテぇ……!」

 

すぐ近くから聞こえた弱々しい呻き声。警戒しつつ視線をそちらへ向ければ、地に這いつくばる異形の怪物───写真で見たグリード・ガメルの姿がそこに在った。

ガメルが力無き声をあげながら視線を向ける方向へ、彼女もまた目を向ければ。

 

「グオオオ!!!!」

 

緑衣に身を包んだアーチャーと思しきサーヴァント…恐らくアタランテだろう。彼女の姿と、それを一方的に蹂躙する紫の異形。美遊の知らぬ姿ではあったが、紫色の怪物がオーズだと理解する事は難しく無かった。

 

「あれが……映司さん…!?」

 

危うい所が有る事は薄々感じていた。けれど、ここまでとは思ってもみなかった。

今の彼は無慈悲に敵を叩きのめしている。だが、その動きからは敵に対する憎しみや怒り、況して見下す様な感情はまるで感じられない。それどころか、そもそも感情らしいものが見当たらない───唯、目の前の敵を淡々と破壊する装置と化している。

 

不意に、メズール戦の前に自身が抱いた思いが蘇る。

 

"何処までも届く腕、誰もを助けられるだけの力と。それを一人で背負い、振るうだけの都合の良い神様(・・・・・・・)みたいな存在"。

 

多分、今のオーズは映司の理想が行き着く先の姿だ。そして彼はきっと、それを理解した上で受け入れている。

その事が、何故だか美遊には無性に悔しく、哀しさと腹立たしさを覚えた。

 

『ガブ!ゴックン…!』

 

「────!いけない…!」

 

手にした戦斧を銃器へ変形させたオーズが、アタランテへとその照準を向ける。

───恐らく状況から見て、彼女は敵だ。今オーズが彼女を仕留めれば、恐らくこの特異点における戦況は良くなるだろう。

 

……それでも。

今、オーズが彼女に手を掛けてしまえば、きっと映司は後戻り出来なくなる。

それだけは、止めなければいけない─────。

 

「映司さん…!」

 

気付けば美遊は駆け出していた。勝算も、理屈も何も無い。

───昔、大切な友達(イリヤ)が、お兄ちゃん(エミヤシロウ)が。

 

 

 

自身を救う為に駆け付けてくれた時の様に。

 

 

 

彼女は自分を突き動かす衝動に身を任せ、オーズとアタランテの間に割り込む。

 

「映司さん…止まって!」

 

ハッキリ言って部の悪い賭けだ。この惨状を見るに、今の彼が止まる可能性は限り無く低い。

───それでも。彼女は真っ正面から彼を見詰め、呼び掛けた。

 

 

─────そして。

 

 

「うっ……。ここ、は…?」

 

崩れ落ちるオーズ。地に膝を着きながら、彼は"火野映司"の姿を取り戻す。

辺りを見渡した彼は美遊を見付け、申し訳無さそうに苦笑しつつ頭を下げた。

 

「……ゴメン!迷惑掛けちゃったみたいだな…。美遊ちゃんが止めてくれたのか───ありがとね。」

 

「……どうして…。」

 

「え?」

 

彼女の小さな呟きが聞き取れず、首を傾げる映司。

 

「…ううん。何でも無い…です。」

 

けれど彼女は、俯き気味に首を横に振った。

 

 

 

 

 

どうして。

彼はきっと、あの力の危険性を理解していた筈だ。

それを知ってなお、どうして戦えるのか。

 

─────どうして、そこまで力に執着するのか。

 

恐らく彼女だけが気付いているであろう、火野映司という善良な人間の異常性。

 

『美遊様……。』

 

気遣う様なサファイアの声に、今の美遊は笑顔で応える事は出来なかった。

 

 

 




礼装連発ドブガチャって醜くないか?
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