Fate/Grand Order 亜種特異点OOO:欲望解放領域 オーズ   作:banjo-da

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プリヤの重大なネタバレが含まれています、ご注意を。(今更)



幕間の物語2【世界の破壊者が語る過去】

 

「……ここ、は…?」

 

「奇妙な空間だな…。」

 

美遊とアタランテは、気付けば不可思議な空間に居た。

確か、映司とアタランテが契約を交わした後───簡単なミーティングの後、全員消耗が激しかった為休息を取る事となった筈だ。

本来サーヴァントに食事も睡眠も必要無い。

だが、魔力を大きく消費し、霊基にもかなりの損傷を負った彼等は、回復に努めるべく交代で休んでいた。

 

にも関わらず、彼女達が立っているのは明らかにアジトの事務所でも、その隣の廃工場でもない。───というより、この世の何処へ行っても見られそうも無い。

まるでオーロラ(・・・・)の如く、波打つ様に屈折した光で包まれた空間。彼女達の足元はただ真っ白で、地に足を着けている感覚こそ有るが…何の上に立って居るのかは全く分からない。

少なくとも現代日本とはかけ離れた、魔術的な神秘に満ちた空間が広がっていた。

 

「ここは…私達の夢の中…?」

 

「それが最も可能性は高い。が…そもそも違う時代を生きたサーヴァントである我々が、同じ夢を見るなど……。」

 

「─────来たか。漸くお目覚めか?"夢の世界"で"お目覚め"ってのも妙な話だがな。」

 

聞き覚えの無い男性の声に、二人は揃って振り返る。

黒くスッキリとしたシルエットのパンツ。鮮やかなショッキングピンクのシャツの上には、パンツ同様真っ黒なジャケットを羽織った長身の青年。

年頃は映司と同じか、少し上だろうか。首からトイカメラを提げている以外、かなりの美形だが普通の一般男性にしか見えない。

 

けれど、彼女らはこんな男に見覚えが無い。

自分達の記憶の中の人物で無いのなら、この男は何らかの力で二人をこの空間に引き込んだ張本人…という可能性大だ。

 

「貴方は誰?ここは何処?夢の世界…って言ってたけど、マーリンみたいに私達の夢に入り込んだの?」

 

「汝の目的は何だ。返答次第では、ここでやり合うのも吝かでは無いぞ。」

 

警戒心剥き出しの彼女達に、然し青年は臆する事無く嘆息する。

 

「……ったく、随分血の気の多い連中だ。悪魔呼ばわりされてた頃に戻ったかと思ったぞ。」

 

マイペースにトイカメラを操作しつつ青年はぼやく。

───パシャリ。小気味良い音が辺りに響いた。

 

「勝手に撮るな!?というか、質問に答えぬか!」

 

「────騒ぐな。心配せずとも、お前達の聞きたい事は大体分かってる。」

 

「……それは、もう聞いた後なんだから普通なんじゃ。」

 

どうにもペースを掻き乱される。目の前の男に不信感が高まる一方、ここまでのやり取りから敵では無いという印象も受けた───無論、油断は禁物だが。

 

「そこのお前、俺がマーリンみたいな存在かと言ったな?だが…生憎俺は魔術師の類じゃあない。」

 

そう言うと、ピンク───ではなくマゼンタの塗装が施された奇妙な機械を取り出す青年。ベルトのバックルの様なそれは、形状こそ違うが…。

 

「マスターの…オーズのベルトに近い印象を受ける。汝も、オーズやグリードに近しい存在なのか?」

 

「半分正解で半分不正解だ。力の根底は、オーズと俺とでは別物。……だが、俺達の力には共通項が有る─────俺達は"仮面ライダー"だ。」

 

仮面ライダー。

聞き覚えの無い言葉に、美遊もアタランテも首を傾げる。

 

「その、"仮面ライダー"ってのは何?」

 

「人類の自由と平和の為に戦う連中だ。」

 

青年が片手を翳し、軽く振ると、辺りの景色が一変する。

 

 

 

『だから見てて下さい!俺の!変身!!』

 

 

 

最初に現れたのは燃え盛る教会。一人の青年が、異形の怪物と殴り合いながら姿を変え────。

 

 

 

「仮面ライダークウガ。もっと前から仮面ライダー自体は存在したが…ま、オーズと近しい存在って意味じゃ、分かり易い一号はコイツだな。」

 

言葉と共に青年は片手を挙げる。すると教会も怪物もクウガも消え、まるでコマ送りの映像の様に様々な景色と仮面ライダーが入れ替わり立ち替わり浮かび上がる。

 

神から授けられた力で天使と戦う金色の戦士。

鏡の中の世界で行われたデスゲームを止めるべく奔走する龍の戦士。

太古から存在する魔物を鎮める鬼の戦士。

人々の心の音楽を守る為に自らの運命と向き合った蝙蝠の戦士。

街を泣かせる悪と戦う二人で一人の戦士。

他にも大勢の戦士達が、人に仇成す存在と戦って居た───彼等こそ、青年の言う仮面ライダーなのだろう。

 

「大体分かったか?俺達仮面ライダーは、その力そのものはまるで別物だ。───だが、敵と同じ力から生まれながらも、人々を守る為にそれを使う存在だ。」

 

何時の間にか仮面ライダー達の姿は消え、幾つもの地球が彼等を取り巻く様に浮かんでいる。

それらを見渡しながら、青年は言葉を続けた。

 

「分かりやすく言えば…一般人には単なる"魔術"としか思えなくても、一つ一つはやれ時計塔だ、やれアトラス院だと違うだろう。そういうモンだ。」

 

「それは何か違う気がするけど…。」

 

控え目な美遊の突っ込みも何処吹く風。青年は気にせず、浮かんだ地球の一つに歩み寄る。

 

「俺達はそもそも異なる世界に存在し、互いに干渉し合う事は無い。─────世界を渡り歩く、この俺を除いてな。」

 

「それって……。」

 

「お前とイリヤスフィールみたいなモンだ。衛宮美遊…いや、朔月美遊(・・・・)と言った方が良いか?」

 

「──────ッ!」

 

軽い調子で言う青年。だが、彼は本来知り得ない筈の美遊の秘密を知っている。

彼女が警戒を跳ね上げ、構えを取るのも当然だった。

 

「落ち着け。そうカッカしてても良い事は無いぞ?それより、だ。俺が態々ここまで足を運んだ理由は、これから伝える事だ───聞かずにやり合うつもりなら、俺は別にそれでも構わないが…な?」

 

先程取り出したバックルを再びちらつかせる青年。

飄々とした雰囲気だが、その姿からは歴戦の戦士の風格が漂っている。彼もまた仮面ライダーだというのなら、恐らく映司と同格以上の力を有しているだろう。

それに、未だ彼が語っていないという情報…十中八九、映司に関する事だろう。

であれば、聞かないワケにはいかない。

 

映司を救う手立てが見付かるかもしれない───そう思えば、自身の内に湧き上がった敵意も何とか抑えられた。

 

「……続けて。」

 

「それで良い。話を戻すぞ…俺達仮面ライダーは、異なる並行世界の存在だ。お前達も知っての通り、並行世界ってのは可能性の数だけ存在する…だが、大きな歴史の流れ自体は変わりはしない。」

 

人理定礎───今の人類史のを決定付けたターニングポイントとなる出来事。

立香達が戦った魔術王は、この七つの人理定礎を特異点と化した。人類のターニングポイントであり、"この戦争が終わらなかったら""この航海が成功しなかったら""この発明が間違っていたら""この国が独立できなかったら”そういった現在の人類を決定づけた究極の選択点。それが特異点とされ崩されるということは、人類史の土台が崩れることに等しい。

だが逆に言えば、そのターニングポイントが有る限り大きな歴史の流れは変わらない。

例えば戦争の起きた過去に行く事が出来たとして、一人二人は救えたとしても…その全てを救う事は出来ないのだ。

 

「それが人理定礎と特異点、お前達が知っての通りだ。そしてそれ以外の特異点とは、人理定礎程大きな影響力ではないが…下手打てば、人類史を変える可能性の有る物だ。大抵は歴史の修復力で勝手に消えるがな。」

 

「知ってる…この特異点もそう。それがどうしたの。」

 

「この特異点には、火野映司が大きく関わっている。」

 

当然の様に言い放つ青年。だが、その言葉は美遊とアタランテを絶句させるのには充分過ぎた。

 

「馬鹿な!つまりそれは、マスターがこの特異点を生み出したという事か!?グリードを蘇らせたのも、あの真木を操っているのもマスターだと!?」

 

「そこまでは言ってない。未だこの特異点には分からない事が多過ぎる……だが、奴の事を知っておいて損は無い。

そこで───だ。お前達を選んだのは、アイツの異常性に最も近付いた奴等だからな。」

 

言うと、青年は先程近付いた地球に触れ。その地球が眩い輝きを放ち始める。

 

「プライバシーはこの際無視だ。その上で──お前達に、火野映司の真実を覗く覚悟は有るか?」

 

僅かに低くなる青年の声。

きっと、知れば後には退けなくなるのだろう。───それでも。

 

「…無論だ。」

 

「私も…知りたい。」

 

覚悟の籠った二人の答えに、青年は満足そうに口角吊り上げると。

光輝く地球は、より強い光を放ち。その光が彼等を包み込み、新たな世界へと誘った─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に彼女達が意識を取り戻したのは、砂漠の中にひっそり佇む集落だった。

恐らく何処か中東の国と思われるこの地で、二人は互いに顔を見合わせる。

 

「ここは…?」

 

「分からん…マスターは日本人の筈だが、この風景と一体何の関係が…。」

 

「ここは火野映司の"過去の世界"。オーズのビギンズナイト…とでも言うべき場所だ。」

 

突然現れた青年に二人揃って驚くも、直ぐに気を取り直して辺りを見渡す。

 

「ビギンズ…何だって?」

 

「要するに、アイツが今の火野映司に成る切っ掛けとなった記憶だ。ほれ、見てみろ。」

 

そう言って彼が指差す先には、笑顔で集落の人々と語り合う映司の姿。小さな少女の頭を撫でる彼は、端から見ても分かる様な心からの笑顔を浮かべている。

幸せそうな空間。だが、その中にチラホラ武装した人間が居た事に、美遊もアタランテも気付いていた。

 

「───アイツは元々世界を良くするため、様々な国に多額の寄付を行っていた…アイツは政治家の息子、ボンボンってワケだ。そして寄付だけに止まらず、奴自身もまた世界を旅し、支援活動に励んでいた。」

 

「映司さんが…。」

 

他人の為に身を粉にする性格は、この頃から既に根付いていたという事。その点は納得出来たものの…どうにも腑に落ちない。

 

「マスター…立派な人間だったという事か。その点は、彼と契約したサーヴァントとして誇らしく思う。……だが。これで終わりでは無いのだろう?」

 

「……何でそう思う。」

 

「決まっている。この光景、過去のマスターは満ち足りている(・・・・・・・)。寄付で助かった国が有る…ボランティアで救われた人々が居る。事実がどうあれ、少なくともそんな優しい世界しか知らない人間が…あそこまで力に飢えるものか。」

 

────そうだ。

"自分の行いが人を救った"、そう信じている人間なら…何処までも届く腕なんて求めたりはしない。

人間に見えるのは、自分の周りの世界だけ。そこが満ち足りているのなら、その先に目を向ける機会なんてそうはないのだから。

 

「…映司さんは、"もう後悔したくない"って言ってた…それってつまり、ここで何か有った。…そうでしょ?」

 

「……中々鋭いじゃないか。その通りだ。」

 

青年が手を振れば、辺りの景色が一変した。

降り注ぐ爆撃。響き渡る銃声。

幸せだった集落は焼け落ち、あちこちで炎と白煙が上がっている。

 

「アイツが世界を良くする為に寄付していた金は、内戦の軍事資金として使われていた。良かれと思ってやった事が、結果として戦争の過激化を招いた。そして───。」

 

青年の指差す先、燃え盛る戦場の真っ只中。

涙ながらに助けを求める少女と、必死に手を伸ばす映司の姿。

祈りを、助けたいという想いを胸に伸ばした彼の手は。

 

───けれど、少女には届かなかった。

 

 

「……そん、な…!」

 

「…何時の世も、人の争いの醜さというのは変わらないものか。だが…これは余りに惨い…!」

 

つい先程まで少女の立っていた場所。そこから空高く上がる炎を茫然と見詰め、悲痛に満ちた声を漏らす二人。

だが、悲劇はそこで終わらない。

 

テロリストらしき者達のアジトに囚われる映司。

彼以外にも集落で目にした人物がチラホラ居た他、多くの人間が捕らえられている。

 

飛行機の中、虚ろな目をしている映司。

彼を気遣う様なスーツ姿の人間は数人居たものの、アジトに囚われていた人々は一人として居なかった。

 

記者会見だろうか。満面の笑みを浮かべ自慢気に何かを語り、しきりに映司の肩を叩く男性。顔付きから映司の家族である事は容易に想像出来るが、欲にまみれた意地汚い笑みは、隣で死んだ様に虚ろな表情を浮かべる映司とは対照的だった───────。

 

 

 

 

 

「これが…アイツの原点だ。アイツの信じた正義は独り善がりに過ぎず、肝心な所で他人を救う力を持たなかった。…結果皮肉にも自分一人が助かり、政治家の親に美談の種として利用されるオマケ付きだ。」

 

気付けば、彼等は元居た不思議な空間に戻って居た。

だが、美遊もアタランテもその表情は暗く、重苦しい。当然だろう。地獄と言っても過言ではない、映司がずっと一人で抱えてきた闇を目にしたのだから。

 

「……マスターが…暴走してまで力を求めた理由が分かった。マスターは…もう自分の命については、どうとも思っていないのだな。」

 

「映司さんは、誰かを救えない事を恐れてる…けど、それを恐れるあまり、自分を救う事が抜け落ちてる。それはまるで…」

 

「真っ当な人とは言えない───だろ?よく分かってるじゃないか。奴は言うなれば、サバイバーズギルト…みたいなモンだ。罪悪感と無力感が一周回って、"助かってしまった自分は他人を救わなければならない"とでも感じてる…そんな事、死んでいった連中が本当に望んでるかどうかなんて分かる筈も無いのにな。」

 

敢えて突き放す様な、何処か他人事の様な青年の物言いに、二人は彼を睨み付ける。

けれど青年は、二人の刺す様な視線を受けても平気な様子で、手元のトイカメラを弄くり回していた。

 

「俺に当たってどうする。俺はお前達に見せるべき物は見せた…どうするかはお前達次第だ。」

 

「もし…マスターが本当に黒幕だとしたら…。」

 

「さあな。さっきも言ったが、そこまでは分からん。真相はお前達で突き止めろ…俺は俺で、他にもやるべき事が有るんで…な。」

 

苦しそうに目を伏せるアタランテ。

対して青年は呆れた様に言うと、二人に背を向け歩き始めて───ピタリ、一度その足を止めると、振り返る事無く問い掛ける。

 

「仮に、アイツが全ての元凶かもしれない。全く無関係かもしれない。どちらに転ぶ可能性だって有る。なら───お前達はどうする?」

 

問い掛けられ、言葉に詰まる二人。

暫しの沈黙の後…「それでも」と呟いた声に、青年は振り向く。

 

「私は…映司さんを助けたい。映司さんがこの特異点の元凶かどうかは分からない…でも、どちらにしても。このままじゃ、あの人は救われない…!」

 

「ああ…同感だ。私はマスターを、あの男の善性を信じる。信じた上で、彼奴もまた幸せになれる道を共に行きたい…サーヴァントとして彼に出来る、せめてもの恩返しだからな。」

 

真っ直ぐに青年を見詰める二人の少女。その視線を受け感心した様に吐息漏らすと、青年は小さく笑う。

 

「……そうか。なら、それで良い…お前達が、奴の手を掴んでやれ。」

 

そう言い残し、今度こそ二人に背を向け歩みを進める青年。

彼が遠ざかるのに比例して、空間が段々と歪み、崩れ始める。恐らく、ここが完全に消滅した時二人は目を覚ますのだろう──そんな予感が有った。

ならばせめて、最後に聞いておかねばならない。彼は何故、ここに来たのか…何故こうも様々な事を知っているのか。

 

そもそも、彼は何者なのか。

 

「待て!…汝は…一体何なんだ…!?」

 

遠ざかる背にアタランテは呼び掛ける。

だが、今度はもう立ち止まる事も振り返る事も無く。

 

 

 

「─────通りすがりの仮面ライダーだ。」

 

それだけ言い残した彼の姿が見えなくなったと思えば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ…おはよう二人とも。何かうなされてたみたいだけど…大丈夫?」

 

どうやら元の世界へと戻されたらしい。彼女らを心配そうに覗き込む映司を前に、美遊とアタランテは距離感を測り損ね…困った様に互いに顔を見合わせるのだった───。

 

 




キラキラのアーチャー、真名はキラメイジャーだと予想します。
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