Fate/Grand Order 亜種特異点OOO:欲望解放領域 オーズ 作:banjo-da
ハピバースーデーイ!!(支離滅裂な言動)
カルデアから2011年の日本へレイシフトした、藤丸立香とサーヴァント達。
そんな彼等の前に立ち塞がったのは、まるでミイラの様な姿の怪物。その力こそ微弱なものだったが、まるで攻撃の効かないこの敵に、立香達の脳裏に『撤退』の二文字が過る。
───────だが。そんな彼等の前に現れた、色とりどりの姿をした一人の戦士。彼は瞬く間にミイラもどきを撃破し─────今、物語が動き始める。
◆
「いやー、無事で良かった!にしても君達何者?何か揃って変わった力使ってたけど……あ!もしかして鴻上会長に呼ばれた助っ人とか?あの人、こんな小さい女の子まで巻き込むなんて…後でしっかり文句言わないとな!」
全くもう…とでも言いたげに、腕を組んで何度も頷く異形の戦士。
敵とは思えぬ言動ではあるが…当然、立香達が警戒を解ける筈も無い。
「ちょっと、何一人で納得してんのよ信号機男。アンタ何者?敵なの?」
カルデア陣営で真っ先に口を開いたのは、矢張りというか何と言うか…ジャンヌ・オルタだった。先程の怪物を一撃で葬った相手であっても、一切怯まず噛み付く彼女。
そんな彼女の言葉に、「え?」と呆けた様子の戦士。
……実際の所、表情は一切変化が無いので読めないのだが。何と無く立ち居振舞いから彼の困惑が伝わって来る。
「し、信号機男……流石にその呼ばれ方は初めてだな…。──────って!そっかそっか、こんな姿じゃそりゃ警戒もするよね。ゴメンゴメン!」
目の前の異形はポン、と手を叩きながら納得した様な姿を見せると。
腰に身に付けたベルト……そこに備わった奇妙な形状のバックルから、三枚のメダルを抜き取る。
すると、彼の身体は眩い光に包まれ─────。
「えーっと…これなら大丈夫、かな?」
光が収まると。そこにはエスニック風の衣装に身を包んだ、人の良さそうな青年が立っていた。
◆
「ふむ……どうやら、これといった異変は無し。────かに見えて、着実に異変は起こっている様ですな。」
人っ子一人居ない薄暗い路地裏。立香らと別行動を取っていたハサンは、この時代で仕入れた情報を整理していた。
一見、特に異常は見られぬ穏やかな世界。
だが、間違い無く何かがおかしい。
「メダルの怪物…ミイラの様な化物……魔獣の跋扈する神秘に満ちた時代なら兎も角、魔術が秘匿されているこの地で自然発生するとは考えにくい。間違い無く、それを裏で操る黒幕が居る。」
それに、とハサンは懐から一枚の
諜報活動を行う中で、偶然手に入れた物だ。
銀色に輝くそれは、一見何の変哲も無いメダルでしかない。
だが、
「間違い無く、これはこの地の異変に関わりの深い物でしょうな。……もう少し探ってみるとしますか。」
ハサンは溜め息を吐きながらメダルを再び懐へ仕舞い込むと、路地裏の闇へと消えた。
◆
「それじゃ改めて。俺は火野映司。世界中を旅して回ってるんだ。」
「火野…映司さん。」
場所を移し、手近なファミレスへと足を運んだ一行。
互いの情報を共有する会議と、戦闘でお腹が空いただろうという映司の気遣いである。
「というか…俺達お金持って無いんですけど…。」
「そうなの?…よし、ならここは俺が持つよ。」
「ええっ!?い、いや…そういうワケには…!」
「良いって。お金持って無いって聞かずにファミレス選んだのは俺なんだし。君達とは、さっきからの長い付き合いだしね!」
「──────マスターちゃん、間違い無くコイツ馬鹿よ。でも使える馬鹿だわ。」
ニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべる映司。
流石に申し訳無いと断ろうとする立香に、オルタはヒソヒソと意地悪な笑みを浮かべて耳打ちする。
「ちょっ…!オルタちゃん、それは失れ……」
流石に看過するワケにもいかず、立香はオルタへ視線を向け……既に開かれたメニュー、そのデザートのページを上機嫌な様子で眺める彼女に言葉を詰まらせた。
見れば、イリヤと美遊も目を輝かせて同じページを開いている。
「……すみません映司さん。それじゃ、お言葉に甘えて…。」
「うん、構わないよ。」
我ながら、何だかんだ甘いな…立香は苦笑しながら溜め息を漏らした。
「───────成程。特異点にレイシフト……何と無く分かったよ。君達は、この世界の異変を正す為に未来から来たんだね?」
「信じて貰えるんですか?」
「勿論。非現実的な事なら、もう何度も経験済みだからね。それに…立香君と一緒に居る君達がサーヴァントだって言うなら、さっきの戦闘も
突拍子も無い内容故にどこまで話すのか思案していた立香だったが…結局全てを打ち明け、信じて貰えた事に安堵する。
だが、そこに待ったを掛ける者達。
「……その言い方だと、サーヴァントが何かを知ってる…って事になる。貴方は何者?」
『私もそれは気になったな。それに、さっきの不思議な姿は何だい?映司君…君は魔術師なのかな?』
つい先程まで幸せそうにイチゴパフェを頬張っていた美遊が、手を止めその顔に明らかな警戒心を浮かべる。
そして彼女の言葉に続く様に、カルデアからもダヴィンチちゃんの通信が入った。
「え?何、声!?どこ!?」
『おっと、これは失礼。私はレオナルド・ダ・ヴィンチ……まぁ、気軽にダヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ。
今、私は藤丸君の話にあったカルデアから、直接通信で君達に語り掛けているのさ。』
「へぇー…未来の技術って凄いなぁ。」
感心した様に腕を組んで辺りを見渡す映司。
だが、当然それで和んで終わりにして良い内容では無い。
『そんな未来のビックリ技術はさておき、だ。……君は何故サーヴァントを知っている?君のあの姿、それにあのミイラみたいな怪物は何だい?
──────君は何を知っている?』
珍しく真剣な声音で問うダヴィンチちゃんに、立香も思わずゴクリと唾を飲み込む。
「そうですね…元々、俺もこっちの状況は伝えるつもりだったし。」
コホン、と一度咳払いすると。先程までのマイペースな空気を引っ込め、真剣な表情を浮かべながら映司は語り始めた。
「まずあのミイラみたいな奴…あれはヤミー。セルメダルから生まれた怪人だ。」
「セルメダル…?」
不思議そうに首を傾げるイリヤ。
そんな彼女に微笑み掛けながら、映司は銀色のメダルを一枚取り出して見せる。
「これがセルメダル。メダルにも種類があってね…。」
そう言うと、今度は赤いメダルを一枚取り出す映司。
「こっちがコアメダル。さっきのヤミーってのは、簡単に言えばセルメダルの塊。」
「……なら、そのコアメダルの塊の怪物も居るという事?」
「おっ、美遊ちゃん察しが良いね。……その通り。奴等の名はグリード。こいつらが、ヤミーを生み出してセルメダルを集めている。」
「集める?」
映司の言葉に引っ掛かりを覚える立香。セルメダルを用いて生まれるのなら、寧ろヤミーを生み出す度にメダルは減りそうなものだが…。
「このメダルはね。"人の欲望"…その具現化なんだ。」
「人の欲望…!?」
「そ。……サーヴァントの君達や、こっちを見てるカルデアの人なら分かると思うけど…このメダル、どう思う?」
突然切り替わった話に着いていけない立香。だがそれは仕方の無い事だ。
元々彼は、
だが、他の者達にはその意味が理解出来た。このメダルは……。
『…驚いた。こーーーんな小さなメダルだが、それは凄まじい魔力を秘めてる。』
「そういう事。──────人の欲望ってさ、凄い力を持ってるんだ。
理想を叶えたい、或いは自分の利益が欲しい…そんな欲望は戦争すら起こす。
欲って言うとネガティブなイメージが付き物だけど…欲望ってのは、誰もが持ってて…どんな小さな一歩も、どんな大きな偉業も。その根源は人の持つ欲望だ。」
『…成程ね。欲望を物質化させる…なんて技術の突拍子の無さはさておきだ。それを具現化させたメダルなら、確かに大きな力を持っていても可笑しくはない。』
「じゃ、そのメダルを集めるってのは…。」
「グリードは、器になる人間にセルメダルを入れてヤミーを生み出す。ヤミーは宿主の欲望を汲み取って、それを満たそうとする。そうやって満たされた欲は、もっと…って新しい欲望を生み出す。その繰り返しでヤミーはメダルを増やしていくんだ。人の欲望って、基本際限無いからね。」
映司の話に、その場の全員が絶句する。
『それは…その、とても危険な存在では無いでしょうか。』
「ん?新しい声?」
『ハッ!失礼しました…私は、マシュ・キリエライトと言います。ダヴィンチちゃんと共に、カルデアから先輩をサポートしています。』
再び辺りを見渡す映司と、慌てて自己紹介するマシュ。お陰で幾分か雰囲気は和らいだものの。やはり想像以上に大きな話に、全員の表情は厳しい。
『それで…その、例えば危険な欲望を持つ人物が、そのヤミーの宿主に選ばれたら…。』
「そうだね。間違い無く危険だ。それに…そうでなくとも欲望を無理矢理叶えて、もっともっとって繰り返させるのはそもそも危ない。」
『極論、食欲や性欲や睡眠欲だって欲望と言えるからね。それを無理に叶えさせ続ければ…。』
「そ。何時かはパンクする。俺が昔戦ったヤミーの宿主も、満腹なのに食欲が抑えられなくなって…あと少し遅ければ手遅れになってたかもしれない。」
ここまでの話を聞けば、ダヴィンチちゃんや映司の言う状況は想像に難くない。
ヤミーという存在が、どれ程危険な物なのかは全員が理解出来た。
「そんな事をして…グリードって奴等は何がしたいのよ。そのセルメダル集めて、何の得が有るわけ?そいつらはコアメダルとか言う別のメダルの塊なんでしょ?」
小学生女子二人とマスターの手前、格好を付けてコーヒーゼリーを注文したオルタが、結局苦くて食べられなかったそれをスプーンでつつきながら言う。……無論、その場の全員がそこには突っ込まずにいてあげたが。
確かにオルタの言う事は最もだ。コアメダルの塊なら、同じ方法でコアメダルを増やせば良さそうなものだと立香も感じた。
「厳密に言うと、グリードはコアメダルだけの塊じゃない。『
「コアと…セル…。」
「俺の知り合いの言葉を借りるなら、コアメダルはアイスキャンディーの棒。セルメダルは周りのアイス。
ヤミーは棒無しのアイスキャンディーで、グリードは棒付きのアイスキャンディー。」
「どんな例えよそれ……。」
呆れた顔のオルタと、あれ?と首を傾げる映司。
立香は割としっくりきたが、イリヤも美遊も頭上にクエスチョンマークを浮かべていたので黙っていた。
「ま、まあ、それはさておき。コアメダルは800年前の錬金術で作られた物でね。セルメダルと違ってグリード自身がそれを増やす事は出来ない。
そして一番重要なのが…グリードは常に満たされない、って事。」
800年前、とある国の錬金術師が生み出したコアメダル。
鳥、虫、猫系動物、水棲生物、重量系動物。この五つの属性を持つコアメダルは、元々各属性十枚ずつ存在していた。
だが、そこから一枚ずつ抜き取った事で事態は急変する。
一枚『足りなく』なったメダル達は、その不足を……『渇き』を覚えた。
その渇きを『満たす』為に、彼等はセルメダルを取り込んだ。
だが。セルメダルを幾ら取り込もうが、失われたコアメダルの代わりになる事は無かった。
「それがグリード…奴等は常に、失くした一枚の渇きを感じて満たされない。その渇きを少しでも満たす為に、より多くのセルメダルを集める。その繰り返しだよ。」
『ほうほう…つまり、本質的にはグリードもヤミーの宿主にされた人間と同じという事か。成程ねぇ…では、君の変身していたあの姿もグリードみたいなものかい?私の記憶が確かなら、ベルトのバックル部分にコアメダルが入っていたみたいだけど。』
通信越しに納得した様子のダヴィンチちゃん。彼女から投げ掛けられた疑問に、映司は先程のバックルを取り出して答える。
「あれはオーズ。グリードを生み出した錬金術師の居た国の王が、メダルと同じ様に作らせたものだよ。
このベルトに、三枚のコアメダルを入れて使えば…そのメダルの力を引き出せる。……色々あって、今は俺がその力を使ってるって事。」
『では、火野さんがそのグリード達から人々を守っている。そしてこの特異点の異常というのは、グリードやヤミーの事でしょうか。』
マシュの言葉に頷く立香。確かに、ここまでの話ならそう考えても可笑しくは無い。
─────だが。
「あれ?でもそれじゃ…。」
「そう……それだけなら、貴方がサーヴァントを知っている理由にはならない。」
「内容的に、さっきダヴィンチが言ってたみたいにアンタが魔術師…って事も考えられるけど。その辺どうなのよ。」
あまりの内容に、すっかり立香の頭から抜け落ちていたもう一つの疑問点。
確かに突拍子も無い話で、魔術的な要素も含まれてはいるが…映司の話にはサーヴァントと関連する部分は一切含まれてはいない。
「その理由…多分、特異点の異変ってやつもこれのせいじゃないかと俺は睨んでるんだけど。
今、この街で起こってるんだよ。」
「起こってる?」
何が、と続けようとした立香は、映司から返ってきた答えに思わず言葉を失った。
「うん。この街で起こってる出来事。」
───────聖杯戦争だよ。
前回の話でもっともらしい理由つけましたけど、ぶっちゃけサーヴァントの人選は私の趣味だ。
正直エミヤも大好きだけど、映司君と絡ませるのは危険な気がしてならないので留守番してもらいました。(UBWを観ながら)