Fate/Grand Order 亜種特異点OOO:欲望解放領域 オーズ   作:banjo-da

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現実と軍議とそれぞれの思惑

「……君らのご主人、良い友達同士じゃねぇか。

こりゃ、俺の出る幕ねぇな。」

 

『そりゃあもう!イリヤさんと美遊さんは最☆強!無敵のコンビですから!クロさんも加わったら誰も太刀打ち出来ませんよ~!』

 

「そっかぁ……ところでクロちゃんって誰?猫?」

 

『伊達様。御本人が聞いたら憤慨しそうなので、今の発言は撤回された方が宜しいかと。』

 

イリヤと美遊が語り合う小部屋の外。扉一枚隔てた先で、彼女らのカレイドステッキと伊達が言葉を交わす。思い詰めた様子の美遊がイリヤと共に部屋へ入って行く様子を目撃した伊達が、心配に思って後を追ったのだが…どうやら杞憂に終わったようだ。

 

「少女の内緒話を盗み聞きか?快活な男だと思っていたが…存外、陰気な趣味の持ち主らしいな。」

 

そんな彼等へ歩み寄る三人。アタランテ、ハサン、そして後藤だ。

 

「ちょっ!アタランテさん誤解だって!ほら、俺ってこの中じゃ年長ポジじゃん?だからちょっとお悩み相談でもと……」

 

「伊達さん。気を付けないと…今の御時世、下手したら通報ものですよ。防犯ブサーとか、子供110番って知ってます?」

 

「…マジで?怖い世の中───って後藤ちゃんは俺の話聞いてくれよ!ホントのホント、何もやましい事は無いんだって!!」

 

アタランテと後藤のジト目を受け、慌てふためく伊達。そんなやり取りを見ながら、ハサンは楽しそうに小さく笑う。

 

「お二人とも、そのくらいに。決戦前という事を差し引いても、伊達殿も困っていらっしゃる。」

 

「ハサンさん!ステキ…惚れちゃう!」

 

「……伊達殿、その…申し訳無い。私にはその想いに応える事は…。」

 

「─────いや真面目かよ!?昔の後藤ちゃんじゃ無いんだから!」

 

「俺そこまでじゃなかったと思うんですけど!?伊達さん!?」

 

困った様に顔を逸らすハサンに伊達は盛大な突っ込みを入れ、そこに後藤が抗議する。アタランテはそんな彼等を呆れた様子で眺めていた。

 

「……ま、冗談はこの辺にしといてだ。魔法少女のお嬢ちゃん達が夢に向かって全力投球なら、俺らは大人として現実をしっかり見とかないとな?

────後藤ちゃん。率直に言って…火野の事、どう思うよ?」

 

気を取り直すべく咳払いして、真面目な表情浮かべた伊達が議題を投げ掛ける。

問われた後藤もかなり険しい顔を浮かべていた。

 

「正直、かなり不味いと思います。火野の危うさは前からでしたけど…あいつ、自分でも気付かない内に力への執着が大きくなってる。」

 

後藤にも伊達にも、聖杯というものがどういう存在かは何と無く理解出来た。その全てを把握は出来ずとも…持ち主の願いを受け、現実の事象を書き換える願望機。それが理解出来ていれば、先程見せられた真相と合わせて推測は難しくない。

 

「ざっくりとした認識ですけど…聖杯ってのは要するに所有者の望み、心に抱いた欲望を具現化するんですよね。火野と合流した時に聞いた、消滅した爬虫類系統のメダルの話は…多分、あいつが無意識に抱いていた優先順位みたいなものの結果だと思うんです。」

 

「……どういう事だ?」

 

後藤の言葉に、同じ結論に至っていたであろう伊達も深く頷く。対してアタランテとハサンはその意図が分からず困惑した。

 

「鳥類、猫科、昆虫、水棲生物、重量級動物。この五種のメダルは火野にとって、アンクと出会ってから戦ってきた日々の象徴…オーズの力の代名詞的な存在であり、アンク達グリードともイコールで結び付いている。だからこそ…そこからはみ出した爬虫類系統のメダルは、暴走して無意識に聖杯を起動した火野では完全に再現出来なかったんだと思うんです。

あいつが聖杯の使い方を理解して、ハッキリ意識が有る状態で使えば…多分、爬虫類の三種も問題無く復元出来るかと。」

 

「逆に言えば、そんな状態で無意識にでも爬虫類メダルを復元しかけた火野の状態は不味い。一番優先はアンコ、その次に他の四種…って優先してたにも関わらず、爬虫類のメダルやセルメダルまで生み出しちまってたんだ。お二人さんは知らねぇかもだけどさ、火野が爬虫類のメダルと接点有った機会なんてスゲー短い時間なんだぜ?

助けを求める時に、家族や友人と合わせて一度会っただけの他人まで呼び付けるみたいなモンだ。

力に見境無くなってんだよ、火野のヤツ。」

 

「なんと…それでは…。」

 

「マスターは真木の望む、暴走する器に確実に近付いている。このままではメダルの力に呑み込まれて、真木の思い通りに事が運んでしまう可能性が高い…という事だな。」

 

「そー言うこと。最悪ドクターを倒せたとしても…暴走したあいつが自分の聖杯と、ドクターの持ってる聖杯の両方取り込んじまったら、何が起こるか分かったモンじゃねぇ。

火野は俺らの最大戦力で、それ差し引いてもあいつを見捨てる選択肢は最初から俺達には無い。けど今のあいつが、ドクターと並んで危なっかしいってのも事実なワケよ。」

 

伊達はそう締め括ると、腕を組みながら深く溜め息を漏らす。

一方アタランテは、一縷の望みに縋る様に険しい顔で問い掛けた。

 

「……自分でも呆れる程楽観的な質問だとは分かってる。それでも、聞きたい…マスターをどうにか説得する事は出来ないだろうか。私だけなら難しいだろうが、汝らやあのアンクというグリードも手助けしてくれれば…。」

 

「残念ですが難しいでしょうな。」

 

その問いに答えたのは伊達でも後藤でもなく、ハサンだった。仮面の下の表情は窺えないが、その声音から彼自身にとっても不本意な…けれど断固たる自信が有る事は伝わってくる。

 

「アサシン…貴様…。」

 

険しい表情でハサンを睨み付けるアタランテ。しかしハサンは首を横に振りつつ、諭す様に言葉を続ける。

 

「誤解しないで頂きたい。私としても、かの御仁を救いたい気持ちは同じです。映司殿は気持ちの良い男だ…あれ程他者を思いやれる人間はそう多くない。」

 

暗殺者(アサシン)のクラスを冠してこそいるが、別にハサンは快楽殺人鬼ではない。寧ろ慎重に他人を見極め、守るべきものの為に手を下す…少なくとも、今のマスターの下ではそう動いている。彼個人は映司の人柄を好意的に感じているし、彼には力を貸して貰った恩も有る。それを蔑ろにする不義理はハサンにとって有り得ない。

だが、それはそれ。なにも映司を手にかけるかどうかの話では無く、現実的に彼の欲望を言葉一つで変えられるかと聞けば…曖昧に楽観的な事を言うべきではない、それをハサンは理解していた。

 

「映司殿は善き人だ。少なくとも私なんぞよりずっと…けれど、その善性と深く結び付いたあの欲望は簡単に解消する事など出来ない。それはアタランテ殿も気付いておいででしょう?

アタランテ殿が人理を守る英霊の役割を放棄してでもガメルに味方したように…彼の願い、そしてその願いに対する姿勢は、最早常人の在り方を越えている。死して尚、聖杯による奇跡を望む我等英霊と近い…そう評しても差し支え無いでしょうな。」

 

「……ま、俺もハサンさんに同感だ。言って聞くようなヤツなら、こんな状況になる前に後藤ちゃんや比柰ちゃんがとっくにどうにかしてるしな。」

 

「今の状況も良くない。仮に火野が力を捨てればどうにかなるという状況なら、まだ説得の余地もあるかもしれませんけど…現実は逆だ。何としてでも火野の聖杯もメダルも守り抜く必要が有る。」

 

ハサンの言葉に同意する伊達と後藤。アタランテよりも深い付き合いの彼等にまで否定的な意見を示されてしまえば、流石に彼女も引き下がるしかない。

 

「……すまない。私にだって分かっていたんだ。それでも……全く。これではいつぞやの召喚と何も変わっていないな…。」

 

棄てられた子供達に救いあれ。

そう願い、彼女等を消滅させた聖女に怒り狂った嘗ての"自分ではないアタランテ"。

本当はあの時も、子供達(ジャック)を真に救う為には聖女の言葉が正しいと理解していた。それでも、感情がそれを赦さなかった…結果、力に呑まれた。

 

どうやら、自分も映司の事を強くは言えない立場だったらしい。自嘲気味に苦笑するアタランテ。

 

「────はいはいはーい!しんみりタイムはそこまで!俺達は現実に向き合わなきゃいけない…それは事実だけどさ!」

 

そんな彼女の背中をバシッ、と叩く伊達。

突然の衝撃に驚き、何事かと抗議しようとした彼女が見たものは。

 

「……だがそれは、悲観的になって全てを諦めるという事じゃ無い。話してダメなら無理矢理にでも引っ張り出す…俺達皆で、火野の手を掴む。その為の話をする事だ───ですよね、伊達さん?」

 

「さっすが後藤ちゃん!俺の言いたい事、ちゃんと分かってるじゃないの!」

 

これ程困難な状況でも、強い決意を灯した瞳の伊達…そして後藤。

思えば、彼等は自分やカルデアの面々が合流するよりも前から火野映司という男に向き合ってきたのだ。そんな彼等が諦めていない…だというのに、あの男のサーヴァントである自分が見切りをつけるのは早過ぎる。

 

「……フフッ…そうだな。すまない、余計な手間を取らせた。

─────改めて、汝らの力を貸して欲しい。世界を…そして私のマスターを救う為に。」

 

「言われるまでもないっての!俺達、ダテにあいつのお節介焼いてきたワケじゃないからな!…伊達だけに。」

 

「───助けは欲しいが空気は読め。」

 

アタランテは冷めた目で伊達の軽口を一蹴する。

 

「………すみませんでした。」

 

ばつが悪そうな伊達の姿に、思わず三人は吹き出し。幾分か前向きな気持ちを取り戻した彼等は、決戦に向けて各々に出来る事を議論し始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事務所から離れ、破壊の跡が残る工場内。

藤丸立香と彼のサーヴァント達が、この特異点に来てから初めてグリードと戦闘を行った痕跡だ。

嘗てのメズール戦を思い出しながら、オルタは眼前の異形にふてぶてしく問い掛ける。

 

「────で?アンタ、一体どういうつもり?」

 

「どう、とはどういう意味だ。簡潔に言え。」

 

彼女が睨み付ける先に立つのは一体のグリード…緑のメダルを九枚持ち、完全体と化したウヴァだ。

こうして対峙して分かるのは、コアメダルが全て揃ったグリードの強さ。先のメズールやカザリはサーヴァントとしての能力も兼ね備えた強敵だったが…今なら分かる。間違い無く、彼等より今の状態のウヴァの方が強い。

仮にあのグリードサーヴァント達も完全にメダルを揃えきっていたとしたら…考えるまでも無く勝ち目は無かっただろう。

そんな相手の力量を慎重に測りつつも、あくまでオルタは不遜な態度を崩さない。

 

「お前さんはグリード。映司のあんちゃんは、そんなお前らグリードのコアメダルを破壊する力を持ってる。あのアンクってグリードに関しちゃ、これまでの話を軽く聞いてるからな…味方になっても別に何とも思わねぇよ。

けど、テメェはさっき見た過去でもオーズと敵対してたろ。何が目的で俺らの味方に付く?」

 

ウヴァを挟んでオルタの正面───二騎のサーヴァントで挟み撃ちに出来る位置へ立つのはランサーだ。

 

「ふん…下らん。そもそも俺が何時味方だと言った?手は貸す…だがそれは俺にもメリットがあるからだ。俺にとっては、お前らもオーズも利用するに過ぎん。」

 

「……完全復活を舐めるな!からの、誰かぁ…助けてくれぇ…だったくせに。」

 

「黙れ突撃女!!!あんなものは無効だ!!」

 

得体の知れぬ大物感を纏っていたが、オルタに煽られ即座に怒鳴って大物感を失うウヴァ。

苛立たしげに舌打ちすると、仕方無いとばかりに彼は自らの本心を語り始める。

 

「……いや、認めよう。忌々しいが、俺はドクターが恐ろしい。完全復活を果たした俺でもヤツには勝てない。あの男の手元に他のコアメダルが有る以上、抵抗しても同じ結末を辿るのは目に見えてる。

かといって逃げた所で、結局オーズがメダルの器として暴走すれば何処へ逃げても同じ事だ。」

 

「……成程。映司のあんちゃんが暴走しないように見張りつつ、手を組んで最大の障害である真木をぶっ倒そうっつー話か。確かに筋は通ってる。

─────けどその後はどうすんだ?特異点が解消されりゃ、恐らくアンタの復活も無かった事になる。あんな悲惨な最期を迎えたからには、今度は安らかに消えたい…ってなら文句は言わねぇがよ。」

 

無理矢理復活させられた以上、今度はせめて穏やかな終わりを迎えたい…という話なら理解は出来る。

だがそんなランサーの推測を、ウヴァは鼻で笑って切り捨てる。

 

「バカな事を抜かすな。俺はグリードだ…この世界の全てを欲し、食らい尽くす存在だ。だから消えたくない…その為にドクターを倒そうとしているのに、何故消える前提で動かなければならん。」

 

「ああそう、そういう事。アンタ始めから、オーズをぶっ倒す心算ってワケね。で、その聖杯奪って特異点を維持し続ける…と。」

 

要するにウヴァが行動を共にしているのは、メズール戦時のカザリと同じ。

共通の敵を前に利害が一致した。だからその敵を倒す為に力を貸す。それが終われば端から裏切るつもり。

否…元よりこのグリードは味方を名乗ってすらいない、単にアンクやディケイドとつるんでいただけ。裏切りですらない、元々一時的な共闘関係というつもりなのだろう。

 

「手は貸してやる。癪だが必要なら俺のコアも少しは貸して良い。俺一人が完全体でもヤツには勝てないからな…背に腹は変えられない、というやつだ。」

 

「で、あの終末眼鏡男をぶっ倒したら今度はこっちの番って話。…どうする?ここで消しとく?」

 

オルタは全身から魔力を放ちつつ、剣を抜刀し刃先をウヴァへと向ける。軽い調子で言葉を発し、しかし確かな殺意を漲らせる彼女に対してランサーは首を横に振った。

 

「止めとけ。こいつは強い…というか、強い弱い度外視しても、俺らじゃこいつは倒せねぇだろ。

昨日の敵は今日の友、ってこの国じゃ言うらしいけどな。そいつが更に明日の敵になるなんざ、戦場じゃよくある事だ。」

 

「ふぅん…まあ良いでしょう。スッキリはしないけど、アンタの言う事は分かるわ。」

 

敵対するのなら全力で潰す。オルタのそのスタンスは何ら変わりはしないが、ランサーの言葉は一理ある。そもそもこれから大ボス戦が控えているのに、態々今無駄な労力を割くのも本意では無い。

故に、特に拘りも無く彼女は剣を鞘へと戻す。

ただその瞳は、ウヴァを冷たく見据えていた。

 

「それに、分かりやすくてかえって良いんじゃねぇか?真木との戦闘中に虎視眈々と裏切る機会狙う輩だと一切信用ならねぇが、こいつはそのリスクを充分に理解してる。俺らと組んだ方が得、殺し合うのは終わった後───単純だがお互いその方が安心だろ。」

 

淡々と告げるランサーもまた、ウヴァへ向ける視線は冷めたものだ。失望や嘲笑の類ではない、純粋に冷静な敵対心を込めた視線。

両者からの冷ややかな視線を受け、その上でウヴァは二人の敵意を何ら意に介さず肩を竦めた。

 

「ハッ!良いだろう。お前達ごときが俺に勝てる前提で話してたのも、今はそれで良い。話が終わったのなら俺は行くぞ?」

 

「何処行く気だ?グリードがちょいとコンビニ、ってワケじゃねぇんだろ?」

 

話を切り上げ、二人に視線を向ける事すら無く立ち去ろうとするウヴァ。だがランサーの問い掛けに一度足を止めた彼は…僅かな沈黙の後、面倒臭いという感情を隠す事無く事実を述べる。

 

「……セルメダルの回収だ、オーズには黙っておけ。そもそもヤツの許可を取る必要は無いが…大事の前の少事だ。戦力補給の為のセルメダル集めを、あいつに咎められ噛み付かれても面倒だからな。」

 

そうして今度こそ止まる事無く、彼は工場を後にする。

 

「……見ていろドクター。このままでは済まさん…最後に生き残るのは俺だ…!」

 

決意と怒りを無機質な複眼の奥に宿し、昆虫の王は改めて復讐を誓うのだった。

 

 





ウヴァさんは特異点消滅したらどうなるのか知ってるパターンと、知らなくて「ウェ!?どういう事だぁ!?」ってなるパターンと迷った結果今回の形に落ち着きました。落とし穴にも落としたかったけどそれは断念。
爬虫類メダルも実は特に深く考えてなかったので、今回それっぽくなって安心したぜ!
伊達さんと後藤さんは清涼剤。一番爽やかな主人公が一番ヘヴィだから仕方無い。ちなみに二人がルビーとサファイアを珍しがってるけど、実はルビーもサファイアもバースドライバーに意思が宿ってるの気付いてる…という話も入れたかった。

次回『異世界転生ウヴァ!妖精國とモルガンと虫達の逆襲!』絶対見てくれよな!

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