Fate/Grand Order 亜種特異点OOO:欲望解放領域 オーズ   作:banjo-da

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最初に言っておく。
甘酸っぱい空気にはならない!あと、侑斗をよろしく!




幕間の物語1【映司とジャンヌ・オルタ】

「───────ん…ここは?」

 

目を覚ました映司の視界に映ったのは、見知らぬ天井。

どうやら先の戦いの後、気を失ってしまったらしい。

全身に奔る激痛を堪え、ゆっくりと起き上がる。

 

「あら、目を覚ましたのね。流石グリードもどき、しぶといじゃない。」

 

「オルタちゃん…。」

 

「オルタちゃん言うな。」

 

狭い部屋の隅、パイプ椅子に腰掛けていたオルタが開口一番皮肉を飛ばす。

苦笑しながら映司が辺りを見渡すと、どうやら今居るのが何処かの事務所らしい事は理解出来た。彼が寝かされていたのもソファーの様だ。

 

「じゃあ…ジャンヌちゃん。ここは?」

 

「オルタちゃんで良いから二度とその呼び方するんじゃ無いわよ。次言ったら燃やします。─────ここは、さっきの廃工場に併設されてた事務所みたいね。誰も居ないから当面の拠点にするんですと。」

 

心底嫌そうに表情を歪めながら答えるオルタ。……そんなに嫌だったのだろうか。

 

「そ、そっか…うん、分かった。皆は?」

 

燃やされては堪らないと、映司は慌てて話題を逸らす。

その問いにオルタはフンッと鼻を鳴らしつつ、面倒臭そうに答えた。

 

「マスターちゃんと幼女共は出てるわよ。別行動してた他の連中と合流して、今後の方針を話し合うらしいわ。」

 

面倒臭そうにしながらも答えてくれる辺り、この子実は律儀だな…というか、会ってからの言動見る限り、多分根っこは良い子だよね?

 

思いながらも当然口にはしない映司。燃やされたくは無いから。

 

「てことは…ゴメン、俺が足引っ張っちゃったな。オルタちゃんに留守番してもらった…って事だよね。」

 

「ええ、全くもってその通り…良い迷惑だわ。───ま、今回はマスターちゃんが『ここを拠点にする為に、頼れるオルタちゃんに守ってて欲しい』って言ったから見逃してあげるけど。…ったく、面倒ったら無いわね。」

 

聞いて無い事まで全部話してくれた。嬉しさと不満の入り交じったその表情は…多分頼りにされた事への誇らしさと、立香君の護衛じゃなくて留守番にされた事への苛立ちだろう。推測でしかないけれど。

…やっぱりこの子本当は良い子だよね?

 

「……何よ、その不愉快なニヤケ面。死にたいの?」

 

どうやら全部顔に出てたらしい。映司は慌てて顔を逸らすと、態とらしく咳払いした。

 

 

 

そこから暫く無言の時間が続く。

映司としては…正直気不味い。

そんな状況を打破しようにも、中々良い話題も見付からず途方に暮れる映司。世界中を旅して、多くの人々と触れ合ってきた映司がこうなるのは重症と言えるだろう。

 

不意に、必死に話題を探していた映司の脳裏に一つの疑問が浮かんだ───浮かんだが、果たしてそれを口にして自分は生きていられるのだろうか。

とは言え、今の状況は映司にとっても中々にキツイ。一人旅をしてきたので一人の時間は嫌いでは無かったが…今のこれは状況が違う。

結局沈黙に耐えかねた映司は、それを聞く事に決めた。

 

「オルタちゃん。」

 

「何よ。」

 

「えっと…あ、先に言っとくけど、もし気に障ったらゴメン!決して不快な想いをさせたいワケじゃないから、どうか燃やすのは勘弁して欲しいんだけど…。」

 

「まどろっこしいわね!言いたい事有るなら言いなさいよ!燃やすわよ!?」

 

決めたが、映司と言えど言い辛い事は言い辛い。

手が届くなら手を伸ばす事を躊躇ったりはしないが、言い辛い事を聞く時には躊躇だってしてしまうのだ。

 

「それじゃ…えっと、さっき"ジャンヌちゃん"って言ったら凄く嫌そうにしてたろ?何でかな…って。」

 

瞬間、聞かなきゃ良かったと後悔した。

オルタは不快感を隠しもせず、映司を睨み付ける。

 

「あ、えっとゴメン!怒ったよね…ごめん忘れて!」

 

「別に、怒ってません。ヘラヘラした奴だと思っていましたが…本当にデリカシー無いと知って感心しただけです。」

 

「それ怒ってるんじゃ…。」

 

「あ"?」

 

どうやら地雷を踏み抜いたらしい。流石の彼も震え上がり、咄嗟に目を逸らす。

永遠にも思える耐え難い沈黙。どうするべきかと映司が思考をフル稼働させていると、やがてオルタは呆れた様に盛大な溜め息を吐いた。

 

「……何て事は無いわよ。その呼び方は、私とあのお綺麗な聖女サマを同一視したみたいで心底ムカつく…それだけです。」

 

「…お綺麗な…聖女サマ?」

 

「救国の聖女、ジャンヌ・ダルクよ。」

 

きょとん、と問う映司に、腹立たしげに答えるオルタ。

その名は映司にも覚えが有った…というより、程度の差はあれど知らない人間の方が少ないだろう。

 

「そう言えば、オルタちゃんの名前って…ジャンヌ・オルタだよね?確か…サーヴァントは同じ英霊を元にしても、別の側面が別のサーヴァントとして呼ばれる事があるんだよね。そういう感じ?」

 

通常、英霊とは人が使い魔(サーヴァント)として扱うには過ぎた存在。故に彼等そのものをまるごと召喚する事など、人の手では不可能だ。

故に、彼等は通常『クラス』と呼ばれる器に、一つの側面を切り取り収る事で漸く召喚が可能となる。そこには厳しい選定基準が有る為、通常一人のサーヴァントが該当するクラスは一つなのだが、中には複数のクラスに該当する者も居るらしい。てっきり彼女もそういう類なのかと映司は解釈していたが…。

 

 

「あら、意外と博識ね。けど違うわ…私は元々、ジャンヌ・ダルクの紛い物(オルタナティブ)。」

 

「紛い物…?」

 

「贋作よ、が・ん・さ・く。アンタ、ジャンヌ・ダルクの最期は知ってる?」

 

オルタに問われ、映司は言葉を詰まらせる。

無論知っている…フランスを救った救国の聖女は、最期は彼女を恐れ者達によって"魔女"の烙印を押され火炙りにされた。

 

「……その顔を見るに、やっぱ知ってるわね。私は、その最期に怒りと憎悪を抱きながら散った復讐の魔女。ジャンヌ・ダルクの真の姿。

─────って設定で生み出されたサーヴァントよ。」

 

「設定…?」

 

「そ。厳密には設定って言うか、生みの親の思い描いたジャンヌ・ダルク像だけど。本物の聖女サマはこれっぽっちも恨んで無いんですって。……良い子ちゃん通り越して異常よ、異常。」

 

呆れた様に吐き捨てるオルタ。その言葉に、映司も漸く合点がいった。

 

「……ゴメンね。だから君は…ジャンヌ・ダルクと同一視されるのを嫌がったって事か。」

 

「別に、もうどうでも良いわよ。─────けどま、精々後ろに気を付ける事ね?私は、言ってみれば憎悪の塊。本物は持ってすら居なかった、この世の全てに対する復讐の感情が常に有るのですから。」

 

けらけらと意地の悪い笑みを浮かべるオルタ。

けれど。

 

「うん、分かった。まあ、心配はしてないけど…オルタちゃんがそう言うなら。忠告ありがとね。」

 

と、ニコニコ微笑みながら告げる映司に彼女の表情は一転。正気を疑う様な、なんとも形容し難いオルタの表情に、逆に映司が不思議そうな顔を浮かべた。

 

「ん?あれ、俺変な事言った?」

 

「言ったしその顔も謎よ。何で今の聞いてニコニコしてるわけ?アンタ、人の不幸話聞いて喜ぶタイプのサイコパスなの?」

 

彼女自身、割と人の不幸を喜ぶ一面も有るがそこは棚上げし。呆れながら問い掛けてみれば、映司は腕を組んで「うーん」と考えこむ。

 

「別に俺にそういう変な趣味は無いけど…仮に俺がそうだとしても、多分今のは喜ばないよ。」

 

「……その根拠は?」

 

内心「変な趣味で悪かったわね」と毒づきながら、オルタは問い掛ける。

 

「─────だって、オルタちゃん別に自分の事を"不幸"だなんて思って無いだろ?」

 

───────瞬間、オルタの中で何かが弾けた。

 

気付けば彼女は映司の傍へ詰め寄り、その手に剣を出現させていた。

 

「……分かった様な口を利くと、私はアンタに自殺願望が有るって取るわよ。今日会ったばかりの、何も知らないクセに…!」

 

ありったけの憎しみを込めて映司を睨み付けるオルタ。

けれど彼は、怯む様子など全く見せず。ただ、小さく頭を下げた。

 

「気に障ったならゴメン。確かに俺は君達の事をまだ何も知らない。…でも、今日一日の長い付き合いだからね。何となくは分かるよ。」

 

「またそれ?今日一日が長いって、アンタ時間の感覚どうなってるのよ。カバか何か?」

 

オルタの悪態にも気を悪くした様子も無く、愉快そうに笑う映司。その姿が、一層オルタの苛立ちを煽る。

 

「…何が可笑しいワケ?」

 

「いやぁ…カバは流石に初めて言われたからさ。つい面白くて。

────それはさておき…俺、世界中を旅して回ってたからさ。やっぱり治安の悪い所も、戦争してる所も有った。」

 

何処か懐かしそうに、けれど少し切なげに映司は語る。

 

「そういう所だと、さっきまで楽しく話してた人だって…数分後には死んでしまってるかもしれない。だけどそんな状況でも、直ぐに打ち解け合える人達だって居る。

"そんなに短くて浅い付き合いなのに、どうしてそこまでその人を大事に出来るのか"って聞かれた事も有るけど…俺はそうは思わない。人と人との繋がりって、時間の長さだけじゃない…って思ってるから。」

 

だから、と続けながら映司はオルタに向け微笑んだ。

 

「俺にとって、"今会ったばかり"の次は、もう"長い付き合い"だ!」

 

嬉しそうに語る映司を見詰めるオルタ。渋い顔をしているが、映司にはその表情から彼女の感情までは読み取れなかった。

暫く沈黙した後。面倒臭そうに嘆息したオルタは、その手に剣を握ったまま映司へ問う。

 

「……アンタと私は価値観違う…ってのは分かったわ。───で?その"長い付き合い"で、アンタに私の何が分かったのかしら。」

 

問われた映司は、穏やかながらも至極真面目な表情で、彼女の目を真っ直ぐに見詰め返す。

 

「勿論、昔のオルタちゃんがどうだったのかは分からないけど…少なくとも今の君は、自分の存在を受け入れてる。他人(ジャンヌ・ダルク)を模した偽物としてしゃなく、一人の"個"として認めて前に進もうとしてる。…俺はそう感じたよ。」

 

迷い無く言い切った映司。

オルタは彼を数秒じっと見詰めた後───手にした剣の切っ先を向ける。

 

「……ええ。そうよ。私はジルに作られた偽りの存在。───けど、そこで終わるつもりは毛頭無いわ。

例えこの身を焦がす憎悪の炎が、有りもしない架空のものだったとしても。

 

─────それが何よ。そんな都合知ったこっちゃ無いわ。

私は私…私の霊基に刻まれた復讐の炎だけは、誰にも偽物だなんて言わせない。聖女サマがどうだろうが、私が憎いと感じたものは憎いのだから。」

 

吐き出す様に言い切った彼女は、剣先を映司に向けたままニヤリと悪い笑みを浮かべる。

 

「───で?そこまで分かった気分はどう?作り物の憎悪に縛られた哀れな小娘に、同情や嫌悪感でも抱いたのかしら?」

 

ニタニタと意地悪く笑いながら、嘲る様にオルタは問う。

けれど映司は、再びキョトンとした顔をしながら首を傾げ、その反応に今度はオルタが困惑する。

 

「……何よ、その顔。」

 

「いや…だって別に同情とか嫌悪感とか…抱く所無くて不思議だったから。

いや、"大変だろうな"とか"凄いなぁ"とは思うけどさ?」

 

映司の答えにますます困惑するオルタ。

ワケが分からない…何故、今の話を聞いて"凄い"なんて感想が出て来るのだろうか。

 

「…話聞いてた?察しの悪い貴方にも分かる様に説明してあげると、私は復讐者(アヴェンジャー)。何をどう取り繕おうが、結局私は私の抱く憎悪…復讐心から逃れられない。だけどそもそも、その復讐心は本来存在し得ないモノ。───有りもしないものに踊らされて、そこから逃れられず世界を憎み続ける魔女よ?」

 

ここまで言えば分かるだろう、そんなオルタの思惑とは裏腹に映司は首を横に振る。

 

「……分かってるよ。けど、それはそれで仕方無い事じゃない?寧ろ俺は、それを分かっていながらも受け入れて進んでる君が…凄いと思った。それは誰にでも出来る事じゃない。」

 

そこまで言うと映司はオルタを見詰め。

オルタは無言で続きを促す。

 

"仕方無い"───そんな風に言う人間は今まで居なかった。

藤丸立香(マスター)は全て理解した上で彼女を受け入れているが…彼はそもそも、オルレアンの特異点からずっと彼女の事を見てきた者だ。

それを差し引いても、映司はオルタという存在を一人の個として認め。認めた上で立香やあの聖女とは違う受け入れ方をしている…正直、オルタ自身困惑していた。

 

「憎しみ、復讐心が君の根底に在って、そこから逃れられない。オルタちゃんがそういう存在なのは分かったよ。……けど、ならそういうモノなんだ。俺からしたら、そこで変な同情とか、そこに嫌悪感抱いたりする方が不思議なんだよな…。

だって、それを言ったら人間もそうだろ?望む、望まないに関わらず…結局皆大なり小なりそういう部分は有る。凄く落ち込んで食欲湧かないと思っててもお腹は空くし…失恋してこの世の終わりみたいに思っても、また恋をする人も居る。」

 

「……食欲やら色恋沙汰と一緒にされるのは、非常に不愉快なのですが。」

 

「あはは…ごめんごめん、物の例えだよ。けど、そういうものじゃない?」

 

不愉快そうに顔を歪める彼女に。映司は「たはは」と笑い、言葉を続ける。

 

「だから、それ自体は仕方無いよ。冷たい言い方かもしれないけど…俺からしたらそこまでだ。

─────大事なのは、その先。何をしたか…俺はそう思うんだ。オルタちゃんは、その復讐心を自分の一部と受け入れてるけど…そこと正面から向き合った上で、それに溺れる事無くちゃんと付き合ってる。

だから俺は凄いと思ったよ。」

 

「大事なのは、何をしたか…。」

 

ぽつり、映司の言葉を小さく繰り返すオルタ。

気付けば、彼に向けていた筈の剣は手元から消えていた。どうやら、彼女自身無意識の内に剣を仕舞っていたようだ。

 

「……もし、私がアンタの言うような人物じゃなかったらどうするつもりよ。この憎悪に流され、世界を滅ぼそうとする女だったら。」

 

「そうはならないと思うけど…その時はきっと、立香君が止めてくれるよ。オルタちゃんが道を間違えそうになったら、その手を握ってくれる…彼はそういう人だと思うな。」

 

「勿論、手が届く限り俺も止めるけどね。」───そう言うと映司は大きく伸びをした後、オルタに片手を差し出した。

 

「…あっそ。ま、期待せずに居ます。けどそう言ったからには、何時"その時"が来ても止められるよう…精々背後に気を付ける事ね?」

 

オルタはぷい、と顔を背け、差し出された手にも無反応を貫く。そんな彼女にも映司は特に気を悪くした様子も無く、ニコニコとまた人の良い笑みを浮かべている。

 

───────やっぱり、コイツは馬鹿だ。

 

その判断は変わらない。

……でも、ただの馬鹿ではない事は分かった。

 

オルタの中で火野映司という人間の評価が、ほんの少しだけ変わった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うーん…そういえば、お腹空いたな…。オルタちゃんは?」

 

「別に。サーヴァントですから。」

 

「あっ、そっか!いやぁ…コーヒーゼリー食べられなくてお腹空いてたんじゃないかと思ったんだけど…。

あ、次は素直に甘い物頼んだら?揚げ饅頭とか!」

 

「アンタ喧嘩売ってんの!?」

 

────やっぱりただの馬鹿なのかもしれない。




「そういえば、アンタの言ってた聖女サマの別側面…それはそれで別に居るわよ。」
「え?どんなの!?」
「『私がお姉ちゃんですよ』って連呼しながらイルカを駆る頭沸いた水着アーチャー。」
「ごめんちょっと何言ってるか分からない。」


だが星5だ (重要)
そして可愛い(超重要)
勿論オルタも可愛い(世界の真理)

そして映司くん、割とドライな所有るんすよね…それも良いけど!
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