Fate/Grand Order 亜種特異点OOO:欲望解放領域 オーズ   作:banjo-da

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タイトルちょっと変えました。


子供と巨獣と守るもの

「─────そう言えば。」

 

ガメルの根城へと向かう道中、思い出したかの様にオルタが言う。

 

「あのランサー、何で居ないのよ。」

 

映司と共に留守番していた彼女は、立香達がどの様に合流したのか知らない。

その事実が面白く無いのか、彼女は拗ねた子供の様に唇を尖らせていた。

 

「ああ!えっとね、クーなら"まだやる事が有るから後で合流する"…って。」

 

「はぁ!?ったく…良い御身分だこと。」

 

────まったく…気に入らないわね。

けどまぁ良いわ。人員が少ないという事は、その分私がマスターちゃんに頼られる場面も増えるという事。

なんなら寧ろもっと減らないかしら。上手くいけば…ふ、ふ、二人きりになったりなんかして…。

 

『─────そしたら、私の魅力でマスターちゃんもイチコロに…キャー!』

 

「気色の悪い心の声を捏造すんな。アンタもしかして杖のクセに自殺志願者なのかしら?」

 

『ひ、ひぃ!?オルタさん物騒過ぎますよ~!自分がされて嫌な事は、人にしちゃいけないって御存知ですか!?』

 

「だからアンタ人じゃなくて杖でしょうが。」

 

「何やってるのルビー……。」

 

何処からどう見てもコントでしかない。

これから戦場へ赴くというのに緊張感皆無な一行。然し映司はそれをニコニコしながら眺めていた。

 

「仲良いなぁ。うん、緊張し過ぎて変に強張ってるよりその方が良い。」

 

「……これ、そういう問題?」

 

一人で満足そうに頷いている映司へ、美遊は控え目にツッコミを入れる。

屈託の無い映司の笑顔は、それだけを見れば唯の好青年だ。

─────けれど。

 

「…映司…さん。」

 

「ん?」

 

美遊は聞かずにはいられなかった。

 

「……イリヤが聞いた欲望。あれはどういう意味?」

 

「?どういう意味って…言葉通りの……。」

 

「なら聞き方を変える。

どうして────その欲望を持つようになったの(・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

問われ───表情を強張らせ、言葉に詰まる映司。

暫し無言になった後、取り繕った様な苦笑浮かべて彼は答える。

 

「……昔、色々あってね。思い知ったんだ…人が人を助けて良いのは、その人の手が届く範囲だけなんだ…って。」

 

あからさまに言葉を濁す。けれどきっと、ここで引けば二度とその先を彼が語る事は無い────美遊は直感的にそう感じ取った。

 

「……だから、手の届く範囲そのものを広げる…それが貴方の望みなの?」

 

物怖じする事が殆ど無い自分の性格に感謝しながら、美遊はもう一歩先へと踏み込む。

 

「…そうだよ。何処までも届く俺の腕、力…もう二度と、"この手が届けば"って思いはしたくないんだ。」

 

「───────その為に、映司さん自身が犠牲になる事が有っても?」

 

瞬間、映司の動きがピタリと止まる。

それは語り過ぎたという後悔か、或いは見透かされた事への動揺か。

 

「……やだなぁ。俺だって、死にたくはないよ?そこまでじゃ…。」

 

「嘘。」

 

あまりにも不自然な笑顔を浮かべ、煙に巻こうとする彼を、美遊は一蹴する。

 

「貴方の言動は、所々だけど…自分への執着が薄過ぎる。」

 

まるで、昔の自分の様だ───その言葉は口に出さず、唯、事実のみを突き付ける美遊。

嘗て、絶望の果てこの世全てへの諦観へ至った自分の様に。彼は何処かで、自分自身を救うという事を諦めている。けれど、以前の美遊との違いが有るすれば…彼はそうなって尚、"誰かを救う"という事を諦めていない。

人によっては、それは自分を省みない尊い自己犠牲だと言うかもしれない。

だが、美遊に言わせればそれは自己犠牲なんてものではない───そもそも、自分の事を勘定に入れていないのだから。

 

自分を救おうとせず、自分以外の為に動くだけの存在。今の映司を例えるなら────必死に人間の振りをしているロボットの様だ。

 

「…美遊ちゃん、本当に小学生?いや…子供だからこそ感受性が強い…のかな。」

 

"敵わないな"と苦笑しながらも、彼はまたしても明言を避け話題を逸らそうとする。

飄々とした彼の態度は、気付けば誰もが心を許し、のらりくらりと信頼の輪に入り込む力を持っているが…同時に、映司自身の深い所へ入り込む事を拒む。

その時、美遊の抱いた感情は───────。

 

『きゃぁぁぁぁ!!!!』

 

突如響き渡る悲鳴に、美遊の思考は遮断される。

 

「な、何!?」

 

「近いな…行こう!」

 

「あ、映司さん!……俺達も行こう!」

 

躊躇無く駆け出した映司に続く様に、立香達も悲鳴の出所目掛けて走り出す。

 

「……自分じゃない誰かの為なら、そんなに必死になるのに…。」

 

『美遊様…気持ちは分かりますが、今は…。』

 

「分かってる。……サファイア、有難う。防音の結界、張ってくれてたんだよね。」

 

美遊の様子にただならぬ物を感じたサファイアは、密かに結界を生成し、映司との会話を漏らさぬ様にしてくれていた。それに気付いていた美遊は、自身の相棒へ感謝の念を告げる。

恐らくルビーやカルデアで観測していたダヴィンチちゃんにはバレているだろうが…そこはどうとでもなる。

 

『気付かれていましたか…いえ、それよりも今は目の前の事を対処すべきかと。』

 

「うん…大丈夫。行こう、サファイア。」

 

映司の遠回しな拒絶。その事に美遊は瞳に悔しさを滲ませながらも、立香達を追い走り出した。

 

 

 

 

 

 

「これは…!」

 

足を止めた映司達が目にしたのは、一人の女性が怪物に襲われている状況。

見れば、彼女の足元には他にも数人女性が倒れている。

頭部と肩部にそれぞれ牡牛を思わせる二本角を有するその怪物は、がっしりとした体躯で逃げようとする女性の行く手を阻んでいる。

 

「嫌…止めて!」

 

「メズール…どこぉ…?メズールぅ…。」

 

目に涙を浮かべながら必死で抵抗する女性。

然し彼女の言葉は全く届いていないのか、怪物はひたすら"メズール"と譫言の様に繰り返しながら女性へと迫る。

 

「ガメルのヤミーか!このままじゃ危ない!」

 

オーズドライバーを装着しながら、怪物目掛けて再び駆け出す映司。走りながらメダルをドライバーへと差し込み、そのままオースキャナーをバックル表面へと滑らせる。

 

「変身!」

 

『タカ!ウナギ!バッタ!』

 

変身完了と同時に、ウナギコアの力で手にした鞭『ウナギウィップ』を振るうオーズ。勢い良く伸びたそれは、女性目掛けて伸ばされたヤミーの腕へと絡み付き、間一髪の所でヤミーの動きを止めさせる。

 

「むー…?」

 

「う……おりゃぁぁぁ!!!」

 

「ん?え、あ、うわぁ~!?」

 

ヤミーが訝しげに振り返った瞬間。バッタレッグの脚力を発揮させたオーズは背後へと飛び───ウナギウィップが絡まったままのヤミーもそれに引き摺られ、バランスを崩して盛大に尻餅を着いた。

 

「いてて…。むー…お前、オーズだな~!」

 

「流石に重いか…確かコイツはバイソンのヤミーだったな。引っ張るだけで精一杯だ…!」

 

これが単なる鞭なら、それだけでは足りない───だが。デンキウナギの力を宿すウナギウィップの前では、それで充分だ。

 

「うおぉぉ!!!」

 

オーズがウナギコアの力を解放すれば、手にしたウナギウィップへ電流が奔る。迸る雷撃は鞭を伝い、バイソンヤミーの巨大な体躯へと流れ込んだ。

 

「ぐ、がぁぁぁ!?」

 

堪らず身を捩り、絡み付いた鞭を解こうとするヤミー。

流石に重量級なだけあり、その膂力は凄まじい。拘束は簡単には解けないものの、下手をすれば逆に自分の体が持って行かれる───そう判断したオーズは即座にウィップを手放し、すかさずドライバーのメダルを二枚入れ換える。

 

『タカ!ゴリラ!タコ!』

 

姿を変えたオーズは、拘束から解かれたバイソンヤミーの元へと駆け寄り、ゴリラの剛腕で抑え込む。

 

「む、むー!?は、離せ~!」

 

「立香君!彼女達を安全な所へ!」

 

ヤミーを抑えながら叫ぶオーズ。彼の言葉に頷くと、立香は倒れている女性を抱き起こし、肩を貸す。

 

「皆、映司さんの言う通りだ!まずはこの人達を!」

 

立香の号令にイリヤや美遊は勿論、オルタですら渋々といった様子で動き出す。そんな彼等の動きに安心感を抱きながら、オーズは抑え込んでいたヤミーを突き飛ばし、よろめいた隙を突いて思い切り拳を叩き込んだ。

 

「がぁあ…!むー…お前、怒ったぞ!」

 

殴り飛ばされ後方へと弾かれたヤミーは、気の抜けた口調とは裏腹に敵意剥き出しでオーズを睨み付ける。

体勢を立て直すと、オーズ目掛けて走り出そうとするヤミー。───そんな彼の視界が闇に覆われた。

 

「これだけの巨体、その鈍重な動き…触れる事は容易い。─────苦悶を零せ、"妄想心音(ザバーニーヤ)"」

 

否。それは闇では無く、暗殺者(アサシン)の黒装束。

ヤミーとオーズの間に割り込む形で接近したハサンは、精霊シャイターンの腕を解放し、その異形の右腕でヤミーへと触れる。すると、シャイターンの手の中に疑似心臓が出現。それを握り潰せば、呪いによってヤミーの本物の心臓も破壊される。

─────筈だった。

 

「……ッ!やはり…サーヴァントと一体化したグリードは兎も角、ヤミーには効かぬか…!」

 

元々彼の宝具は心臓の無い者や、心臓を潰されて平気な者には通じない。また、人やその要素を含まぬ者にも効果が薄い為、駄目元での宝具発動だったのだが…。

結果は悪い意味で予想通り。その精霊の手が再現したのは敵の心臓ではなく、一枚のセルメダル。

恐らくメダルの塊たるヤミーは、これが心臓代わりなのだろう。反撃を警戒し距離を取りながら、試しに潰そうとしてみるが全く壊れる気配は無い。

けれど、彼は一流の暗殺者。そこで悔やみ、投げやりになる様な真似はしない。

 

「であれば、私は映司殿の援護に回る他有るまい。」

 

ハサンは即座に方針を切り替え、愛用の短剣をヤミー目掛けて投擲。

大したダメージにならないのは明白だが、お陰でヤミーの注意を自分へ向けさせる事が出来た。

 

「真っ黒…なんだ、お前?」

 

「生憎名乗る程の者でも無ければ、敵に名乗る暗殺者等二流以下よ。

────映司殿、今です!」

 

「ハサンさん、ナイス!」

 

『スキャニングチャージ!』

 

ハサンの作った隙を逃さず、オーズは両腕をヤミーへ向け構える。タコレッグの吸着力を十二分に引き出して大地を踏み締めた彼は、反動を一切気にせずフルパワーでゴリバゴーンを射出した。

 

「行けえぇぇ!!!」

 

ロケット砲を思わせる程の勢いで放たれるゴリバゴーン。その両拳は狙い違わず、バイソンヤミーの巨体を撃ち抜く。

 

「め…メズー…ルぅ…!うわぁぁぁ!!!」

 

断末魔を上げながら、爆散するヤミー。

燃え上がる炎の中から、一枚のセルメダルがオーズの足元へと転がった。

 

「お見事です、映司殿。…然し…あの巨体の割に、メダルは一枚とは。些か拍子抜けというか、何と言うか…。」

 

「ガメルのヤミーは基本そうなんです。アイツは他のグリードと違って、自分の欲望を糧にヤミーを作る。その欲望も、何て言うか…アイツの精神に反映されて、小さい欲望で。しかも能力発揮にセルを消費するから、見掛け程メダルは溜まらないらしいんですよ。」

 

さて、と変身を解こうとドライバーのメダルへ手を伸ばしかけ─────不意に感じ取った殺気に、オーズは咄嗟にその場から飛び退く。

直後、間一髪で彼の立っていた場所へと矢が突き刺さる。

 

「何奴!」

 

矢の放たれた方向目掛け、ハサンが短剣を放つ。だが、そこに割り込んだ影が、投擲されたそれを全て叩き落とした。

 

「オーズぅ…!メズールを返せ…ッ!」

 

「────ッ!ガメル…!」

 

短剣を防いだ影の正体は。先のバイソンヤミーの親にして、重量級生物の王・ガメル。

ガメルは威嚇する様に両腕を振り上げ、怒りに身を震わせていた。

 

「映司殿…彼奴が標的の?」

 

「ええ…グリードの一人、ガメルです。けど奴に矢を放つ能力なんて…。」

 

「─────それは私だ。」

 

響き渡る、凛とした声。

気付けば、ガメルの影から一人の女性が現れていた。

腰まで届く長髪も魅力的ではあるものの。目を引くのはその腰から伸びた尻尾と、頭部にピンと立つ獣耳。

深緑の衣装に身を包んだ、凛々しくも何処か野性の雰囲気を醸し出す女性。

手にした弓が示す通り、クラスは弓兵───彼女の真名は…。

 

「アタランテ殿…!」

 

油断無く短剣を構えながら、呻く様に言うハサン。

対する彼女は表情一つ変えず、小さく鼻を鳴らしながらハサンを見据える。

 

「成程。名も知らぬアサシン、どうやらそちらにも私が居る様だな。だが、知っての通り私は私。汝や、人類最後のマスターが知る"私"とは別物だ。」

 

「……心得ております。だが、一つ聞きたい。

───貴女は何故、そのグリードと共に?」

 

問われ、暫し目を閉じて沈黙した後。

─────カッと目を見開けば、彼女は目にも止まらぬ速度で矢を番え、ハサンとオーズ目掛けて矢の雨を降らせる。

咄嗟に退避するハサンと、ゴリラアームで身を守るオーズ。けれど、退避したハサンは兎も角、オーズの咄嗟の行動はアタランテにとって的でしかない。

外れた矢がアスファルトの地面を砕き、辺り一面に土煙が舞わせながらも、オーズへ集中的に撃ち込まれる矢。

暫し無言で連射を続けていたアタランテだったが、軈て一分を過ぎようという頃。漸く彼女は手を止め、弓を下ろす。

だが、無論彼女もこれだけで仕留められる等とは微塵も考えてはいない。土煙が晴れれば彼女の想定通り、オーズがその中心で、真っ直ぐ彼女を見詰めていた。

 

「……元より倒し切れるとは思っていなかったが…どうやら、これは想定していたより余程手強い敵らしい。

───ガメル、私は汝に力を貸そう。だからお前も、私に力を貸してくれるか?」

 

呆れた様に嘆息するも、すぐに切り替え表情を引き締めた彼女は、傍のガメルへ問い掛ける。

一方問われたガメルもまた、彼女を見詰めながら力強く首を縦に振った。

 

「うん!アタランテ…俺、頑張る!オーズ、倒す!」

 

「アタランテ殿…何故!矢張り貴女も、そのグリードに霊基を乗っ取られているのですか!?」

 

純真無垢なガメルに微笑み掛けるアタランテとは対照的に 、困惑を隠せぬハサン。

アタランテは微笑みを一瞬で引っ込めれば、ハサンへ厳しい視線を向けつつ言葉を紡ぐ。

 

「……勘違いをしているようだが、私はガメルに何もされてはいない。彼と結び付いたサーヴァントは他に居る(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。」

 

「……それってつまり、貴女は自分の意思でガメルに協力してる…って事ですね。」

 

「察しが良いな、オーズ。その通りだ。……私は本来、英霊としてこの地に呼ばれた以上、人類最後のマスターに力を貸すべきなのだろう。」

 

"だが"と一度言葉を区切り、再び弓を構えるアタランテ。

今度は不意討ちではない。けれど、強い意思の籠った表情浮かべながら、彼女は躊躇無くオーズへと狙いを付ける。

 

「例え本来在るべき姿から外れようとも。私は…全ての子供達の幸福を望む。例え人ならざる、メダルの化身だとしても───だ。一心不乱に(メズール)を求めるこの子の力になる事は、私にとって何より大切な事なのだから。…笑いたければ笑うが良いさ。」

 

「─────笑ったりしませんよ。それが、アタランテさんの欲望なんですよね。だったら、それをどうするかは貴女次第だ。」

 

言いながら、オーズもメダジャリバーを構える。

 

「けど、俺はそれを全力で止めます。ガメルを…グリードを倒して、世界中の皆を守れる力を手に入れる。それが俺の欲望だから!

……笑っても、良いですよ?」

 

向かい合う両者。アタランテは構えを解く事無く、矢を番えながら僅かに表情を緩める。

 

「笑ったりはしないさ。全く…惜しいな。状況が違えば、汝との徒競走なら受けてやっても良い…そう思える程、面白い男だ。」

 

「徒競走?」

 

首を傾げたオーズに一瞬だけ苦笑見せるも、直ぐに表情を引き締める彼女。

彼女の放つ殺気に、オーズもまた警戒を引き上げる。

 

「なに、敵として申し分無い…という話だ。オーズ、汝に恨みは無いが…ガメルの為に、その命取らせて貰う!」

 

その言葉と共に、神速の如き矢を放つアタランテ。

 

今、戦いの火蓋は切って落とされた─────。

 

 

 




???「あのアーチャー、リンゴが弱点なんだって?っしゃあ!ここからは俺のステージだ!」
???「フン…はしゃぐな。リンゴと言えばここは俺の出番だろう。貴様は引っ込んでいろ!」

次回!『競争!足元に金のリンゴ!』
お楽しみに!

???「みんな…疲れているのか?」
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