やはり俺のボーダーでの短編集は間違っていない。   作:ハーマィア

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大変長らくお待たせいたしました。

みかみかでございます。


書いてたら思ったのと違う感じになってしまったので、また後日別のみかみかを出すかもしれません。とりあえず次は日浦茜隊員ですが。


フレンチキス=ディープキスだと思ってなくてマジで勘違いしてました。エロ知識ちょっと蓄え直してきます。


みかみかのシアワセな生活

 好き。

 

 大好き。

 

 愛してる。

 

 彼と一緒に居るのが好き。

 

 彼と話せたりするともっと幸せだ。

 

 触ってみたい。

 

 彼の胸に顔をうずめてぎゅっとして貰いたい。

 

 抱きしめて、抱きしめ返されたい。

 

「ただいま」って、言われたい。

 

「おかえり」って、言ってあげたい。

 

 他の人じゃだめ。彼とがいい。

 

 彼との結婚も、彼との子供を授かるのだって、わたしだけが独り占めにしたい。

 

 毎朝早起きして、朝が苦手な彼の頬にキスをして起こしてあげたい。

 

 彼がその日一番に目にするものが、わたしでありたい……というのは、少し欲張り過ぎだ。

 

 でも、それくらいにどうしようもない。

 

 わたしは。

 

 あのヒトに、恋をしている。

 

 わたしの恋は〝病〟ではない。

 

 病気はいずれ治るもの。わたしの恋は、永久不治だ。

 

 だからこの感情は、〝恋〟と名付けられて然るべきものだろう。

 

 わたし、三上歌歩は、比企谷八幡くんに恋をしている————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初めてその感情を自覚したのは、もう半年も前のこと。

 

 彼と出会ったのは、それよりもさらに一年前の、雪の日。高校一年生の冬休み。仕事から帰っている途中のことだった。

 

 ……わたしが、不良に絡まれていたのだ。

 

『ねーねー、そこの君っ! 俺と一緒に遊ばないかい?』

 

 その『不良』は金髪、イヤリングにブレザーの制服を着崩した、似非ホストのような格好をしていた。

 

『え……』

 

 いきなり肩に手をかけられて、その人の表情は何かわからないけど多分笑みを浮かべていた気がする。

 

『そう、君。今暇してない? 奢るからさ、ゲーセンとかカラオケとか、もしよかったら……』

 

『あ……えっと……』

 

 正直、いきなり肩を触ってきたその不良のはとても怖かった。

 

 ただ。その怖さは未知のものから来る恐怖ではなくて、無理やり違う大きさの額縁を壁にはめ込んだかのような、歪みとか亀裂とかが生じている違和感から来る恐怖。

 

 表情が、自然じゃない。

 

『ん? なんだ——何かな?』

 

 でも、だからかな。その「怖さ」以外に何もなかったから逆に、その時に浮かんできた言葉がそのまま口から出ちゃったんだ。

 

『……どうして、そんなに嘘をついてるの?』

 

『……嘘?』

 

 被っていたお面にヒビが入る。そんなイメージが見えた。

 

『だってあなた、言葉も、表情も、嘘をついてる。顔に出てるよ』

 

『……は? ……そう、か』

 

 わたしの言葉に、わざわざ自分の顔に触れて確認するような仕草をする不良。

 

 あまりお喋りなわたしではなかったけど、その不良が作った間に耐えきれずについ、わたしから話しかけてしまった。

 

『……あの、その制服、ウチの……高校です、よね』

 

『……え、は——ああ、そうそう。そうだよ。総武高校一年生。今年二年生。もしかしたら同じ学年かもしれないねっ』

 

 助け舟だったのだろうか。水を得た魚のように、表情とお喋りに潤いが戻る。

 

 先に言っておくと、その不良とのやり取りに耐えかねたわけではない。

 

 不良から視線を逸らした先で目に止まったものがあったからだ。

 

『同じ……わたしも今年で二年生です……『わあ、やった!』あ、でもわたしが言いたいのはそういうことではなくてですね……』

 

『?』

 

 恐る恐る、不良の背後を指差す。

 

『……後ろについて来てる、あの人たち……は……?』

 

 不良の背後には、不良よりも数倍怪しい格好をした人達が遠巻きにこちらの様子を伺っていたのだ。

 

 全員がマスクにサングラス。とても怪しくて、わたしの注意はその不良よりも背後の集団にいきかけていた、その時。

 

『……あいつら……』

 

『え……』

 

 わたしにかけてきた時とは随分違う機嫌の悪そうな音程の低い声色で、不良は背後の人たちを睨み付けていた。

 

 わたしが声の違いに驚いていると、不良はハッとして、

 

『……あー、うん、いーやー。ゴメンねー。俺ちょっと用事思い出しちゃってサ。怖がらせちゃったらゴメンね——って事で、これで美味しいものでも食べてよ。それじゃ!』

 

 捲し立てるように喋った後、財布から取り出した千円札をわたしの手に載せて、そのまま背後の人達とは逆方向に走っていった。

 

 彼が走り出すと、不審者の人達も彼を追いかけて走り始めた。

 

 お尋ね者なのかな。

 

 昔の映画でこういうシーンがあったような気もするけど、よく思い出せない。

 

 そんなぶっきらぼうな感想で、わたしと、わたしの愛しい彼——比企谷八幡の出会いは締め括られる。

 

 あのとき八幡くんがあの時不良に扮していたのは、罰ゲームの『クラスの女子にナンパする』を実行していたから、らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——つまり、あの時のセリフは八幡くんが自分で考えたオリジナルらしいんだけど、ものすごく恥ずかしかったんだって」

 

 興奮しながら身振り手振りを交えて力説する歌歩に、それを聞きながらニマニマと笑みを浮かべているのは彼女の同級生、宇佐美栞。

 

 彼らが所属する組織『ボーダー』の、任務と任務の合間に不意にできた、安らかなひと時。カフェテリアにて彼女らは英気を養っていた。

 

「…………ふむふむほーほー。それで?」

 

「思い出してみれば、もうあの時八幡くんの顔が真っ赤で、表情作ってる中で耳赤くして照れてるのがほんとうに可愛いなあって」

 

「なるほどなるほど」

 

 主に、歌歩の彼氏についての惚気話を二人は楽しんでいた。

 

 話を聞くだけでも楽しいのか、宇佐美は笑顔を浮かべている。

 

「……本当に大好きなんだねえ。比企谷くんのことが」

 

「……迷惑になっちゃうから、普段はあまり言えないんだけどね。栞に言えて少しスッキリしたかな」

 

 それまで適当な相槌を打ちながら話を聞いていた宇佐美は、不意に視線を横に逸らす。

 

 歌歩から、歌歩の右隣へ。

 

 歌歩もつられて自分の隣、4人席の誰もいない空席に目を向けるものの、誰もいないので歌歩は首を傾げるばかり。

 

 しかし。

 

「彼女さんの愛が溢れてますけど、そのへん、おとなりの彼氏さんはいかがなのかなー?」

 

「…………え?」

 

 宇佐美の言葉と同時、歌歩の右隣にノイズが走った。……そして。

 

 宇佐美の手によって光学迷彩が解除され、とある少年が姿を露わにする。

 

「…………え」

 

 歌歩とは反対側に顔を向け、机に突っ伏す歌歩の想いびと——比企谷八幡が、耳まで真っ赤にした状態で歌歩の隣にいた。

 

「——はい! という訳で!」

 

 いきなり、宇佐美が立ち上がった。

 

 そして、カフェテリア内のあちこちからパチパチ、と拍手の音が響き始める。

 

「罰ゲーム『恋人の思いの丈を全て聴く』! ミッションコンプリーっ!」

 

 直後、どこにそこまで出す要素があるんだと聞きたくなるような歓声が、カフェテリアを埋め尽くした。

 

「……八幡くん?」

 

 一方の歌歩は、そんな歓声には耳を貸さずに席を立って八幡の正面に回り込む。

 

 歌歩にとって大切な人の1人である八幡の方が心配だったからだ。

 

「だいじょ、……あっ」

 

 しかし、八幡は歌歩から逃げるように、顔を反対側に向けた。

 

「…………」

 

 ところで。

 

 わかりやすさ全開な上に固まってしまった八幡に比べて歌歩が表情の変化も少なく動けたのは、あくまで「八幡を心配していた」からであり、全く恥ずかしくないという訳ではない。

 

 加えて歌歩は(八幡と付き合い始めてからであるが)その身に羞恥心を自覚した時、それを誤魔化そうとするのか、八幡に対するしぎゃ——イタズラ心を目覚める、という人に言うにはあまりにも憚られてしまうような悪癖を身につけてしまっていた。

 

「……ねぇ、八幡くん」

 

 八幡が顔を向けている方に回り込むようなことはせず、肩に手を置いて顔を近づける。

 

「……!?」

 

 ぴく、と八幡が肩を揺らせてこちらに振り向く。

 

「……ひょっとして、こんなにたくさんの人の中で」

 

 しかし、歌歩は振り向こうとする八幡の動きを止めた。

 

「こんなに恥ずかしいことを私に言わせて」

 

 息を呑む音が聞こえる。八幡か、歌歩か。

 

「……あ、……い、いや、みか——」

 

「……ひどいなぁ、八幡くん。……反省しなさい?」

 

 さあっ、と八幡の顔から血の気がひいた。

 

「ば、ばつげーむだったんだ。宇佐美に脅されて、しかたなく……ほんとはこんな事やりたくなかったん、だ……」

 

 言い訳を口にしている途中で、八幡は気付く。

 

 周囲には、宇佐美や他の客どころか、店員すら誰一人として居ない事に。

 

 この罰ゲームは、既にお茶目で済まされるような限度を超えているという事に。

 

 否。ここからが、本当の罰ゲームなのだ。

 

「わかってるよ。八幡くんはやらなきゃいけないことをしただけ。悪くないもんね。……だから、わたしの〝おしおき〟も仕方ないよね?」

 

 自分のネクタイを解き、八幡の首に腕を回して抱き寄せる歌歩。普段の彼女からすれば到底考えられない大胆さだが、それも彼女の精神がハイになっているからなのか。

 

「お……おい、まさか、ここで……っ!?」

 

 妖しく笑む彼女を、八幡は一瞬でも可愛いと思ってしまった。

 

 そのせいで——彼女がしようとしている事を察していたものの、八幡の行動に一瞬の隙が生まれた。

 

 その瞬間にも歌歩は迫っていて。

 

「んっ————!」

 

 隙が生むのは、唇と唇が重なるだけの優しいキス。

 

 性に関してそこまで関心のない歌歩は、これ以上の事をしない。抱きしめたり、頬にキスをしたりする程度だ。

 

「……っ、……っは! ……はぁ、はぁっ……!」

 

「次はもっ……あ、う……!」

 

「……!? よ、よし……!」

 

 歌歩が羞恥心を取り戻し、顔を赤くして八幡から離れる。それと同時に、姿を消していた店員や客達が名残惜しそうな表情のまま、姿を現し始めた。

 

 あとで全員復讐しちゃる……! と勝手に思い込みつつ、八幡は歌歩に振り向く。

 

 今日は両親が妹を連れて何故か一泊二日の旅行に行っていたり、歌歩も誰か友達の家にお泊まりでもするかのような荷物を仕事場に持ってきていたりしている。

 

 一方通行でしかも右に左に自由に行けないレールの上を走らされているような気がしなくもないが、歌歩が羞恥心を取り戻した今となっては、多分気のせいだ。

 

 しかし。

 

「……続きは、帰ってからね?」

 

 歌歩に宿った妖しげな瞳の光は、消えていない。

 

「————」

 

 もう大丈夫——そう思っているのは、八幡だけかもしれない。

 

 八幡の顔を覗き込む歌歩の目を見て、八幡はその考えに対する自信を失った。

 

 ぞわぞわぞわ——!





恥ずかしいです……。 ◯ァギナとか◯ァージンとか知ってんのにフレンチキスの意味を知らなかったのが。
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