やはり俺のボーダーでの短編集は間違っていない。   作:ハーマィア

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【悲報】メインヒロイン、存在感が消失。


誤字報告ありがとうございました。


一度きりのバレンタイン②

 

 何か変だ。

 

 なんで俺、出水に敬語使ってんの?

 

 それに。

 

 今この瞬間、隣にいるはずの出水は、なんであんなに遠くから手を振ってるの? 彼岸に立つ死人に向かって手を振るかのような、苦い笑みを浮かべて。

 

 ちょっとこっち来なさいよ、そっちは地獄——

 

 ぴろりん。

 

「ん……?」

 

 メールの着信音。誰から……出水? ……!

 

 

 

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from : 出水公平

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title : お前の面倒を見る部隊について

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今週から俺達の予定だったが、二宮隊がお前の面倒を今日から見てくれるらしい。

ということで、お前の部屋は二宮隊に移す事になった。

 

冥福を祈る。今までありがとう。

 

 

 

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 ……なにこれ?

 

 どうして二宮隊が俺の面倒を見ることに、というか何故二宮さんが俺と接触を図ろうとするんだ……? バレてるはずないのに。

 

 それに、健闘を祈るじゃなくて冥福をお祈りされてる辺り、俺の死亡確定なんだが……あ、いやちょっと待て。

 

 出水は向こうにいて、俺の隣に座ってるのは出水じゃない。

 

 でも、この話に乗ってきそうなのって出水か太刀川さんくらいだし、あとは当事者の二宮隊くらいか。

 

 ん? 二宮隊——

 

 

 

 ————あぁ。

 

 

 

「……………………あの」

 

「……なんだ」

 

「……色々ありましたけど、これから暫くは一緒に行動をする訳ですし、今までのことは水に流して——」

 

「御託はいい。さっさとランク戦ブースに入れ。話はそれからだ」

 

 絶対ボコボコにされるやつですやん……。

 

「い……いや、俺ほらS級ですし? B級でしかも中学生の部隊に本気になっちゃうような人達を相手になんてしてられない……というか」

 

 肩に手を置かれた。目の前の二宮さんじゃない…………氷見?

 

「言ってくれるわね比企谷くん。それじゃあ、対戦ルームに行こっか!」

 

 もうすんげぇ笑顔でサムズアップしながら白い歯を見せてくる氷見。めちゃ怖い。

 

「……この後飯食いに行きたいんで、一戦だけですよ」

 

「うん、いいよ。私達が勝ったら寿寿苑奢ってもらおうかな」

 

 綾辻みたいな明るい笑みを浮かべてて、すごく優しそうですごく怖い。帰りたい。

 

「俺が勝ったらそっちが奢れよ……?」

 

 そう言った途端、俺が見た限りで最高の笑みを氷見は見せた。雪ノ下とかがしたら顎外れそう……。

 

「もちろん。ただし——」

 

「?」

 

 含み笑いが気になりますね。なんだか寒気がいたしまする。

 

()るのは私たち全員と、だけどね?」

 

「……は?」

 

 ——おい、おい。

 

 氷見の言葉と同時、そいつらは一斉に顔を見せた。

 

「いよう、比企谷。国近のゲーム機ぶっ壊したの、お前だってな」

 

「そういえばそんなことも言ってた……うげえ、すんませっ……ゆ、うさっ……!」

 

「隠蔽協力の恨み〜!」

 

 A級1位、太刀川隊の太刀川さんとさっきいなくなった出水と泣きながら出水の首を絞めてるオペレーターの国近先輩。

 

「真木に俺たちの遊びの予定バラしたのお前だってな、比企谷ァ……」

 

「お陰で東さんの焼き肉行けなくなっただろァ……」

 

 チンピラみたいになってるおっさんとリーゼントヤンキーが、A級2位部隊の冬島隊隊長の冬島さんと当真先輩。オペレーターの真木はいないようだ。

 

「比企谷くんっ!? どうして奏太達がトリガーを持っていたの!?」

 

 A級3位、風間隊オペレーターの三上。

 

 あれー。お姉ちゃんには内緒にしとけって言ってあったのに、……何故にバレたのか。

 

「危うく三上が隊務規定違反でボーダーをクビになるところだった。覚悟はできているんだろうな?」

 

 自称社会人、他称小学生。風間隊の隊長である風間さん。B級の東さんとか冬島さんに次ぐ年長組ってマジですかその童顔で。

 

 その他に風間隊で俺を睨んでいるのは、歌川と菊地原。菊池原だっけ?

 

 その他にも、草壁隊、加古隊、片桐隊などのさまざまな面々が俺を取り囲むようにして睨んでいた。色々バレてるやんけ。

 

 嵐山隊はいないようだと安堵しつつ(自覚があるやらかしの中では嵐山隊が一番やばい)、どうやって逃げようかと逃走に使用できそうな経路の確認をしていると。

 

「……? ……でていいっすか」

 

 誰かからの着信。林藤さんにもらった通信機器だけど、使い方はまだよくわからん。通話をする・切るのボタンは覚えた。嘘だけど。

 

 氷見の獰猛な笑みの許可の下に通話ボタンを押す。——すると、電話の主は最近まで面倒を見てもらっていた嵐山隊の綾辻だった。

 

『もしもし、比企谷くん?』

 

「なんだ? 用事があるなら言ってくれ、すぐにでも向かう」

 

 この場から逃げるには、もう綾辻の用件に賭けるしかない。A級が複数いるだけでもしんどいのにそれ以上なんて、やってられるか!

 

 そんな意気込みで電話口に語りかけると、綾辻は何故か「……よし」と、暗殺者が獲物を仕留めた時に溢す確認のように暗い声を出した。え、なに?

 

『えっと、訓練室1を予約できたから、そこに来てね?』

 

 意味がわからない。どういうことだろう。

 

「訓練室? 何か頼んでたか?」

 

『うん』

 

 しかし俺は、この時問いかけたりせずに横の窓を割って外に逃げれば良かった、と思うことになる。

 

『A級部隊と模擬戦やるんでしょ? 私たちが時間と場所を抑えといたから、ゆっくりとできるけどなるべく早く来てね。比企谷くんがウチの隊にいる間に仕上げたここ1週間分の広報資料の行方も一緒に訊きたいからさ』

 

 いかん、バレてらっしゃる。

 

 どうするべきか。模擬戦になったら多分勝てない。

 

 ふーむ……。よし。

 

「……か」

 

『か? どうしたの?』

 

「カメレオン……!」

 

 ケータイ切って隠密トリガーを起動。オペレーターもいるし、流石に今この状態でトリオン体のやつなんて——

 

「スタアメーカーは付けてるぞ」

 

 ……え?

 

 冬島さんが、何か言った。そして、俺の体には撃ち込んだ場所から信号を発信するスタアメーカーの印が、……ああ!?

 

「……真木がこの場所にいないのって、まさか……!」

 

 くそ! カメレオンを使う意味が無くなってしまった……!

 

「万が一にでも比企谷先輩を逃がさない為ですよ、勿論」

 

 黒江……!

 

 加古隊の攻撃手、黒江双葉がトリガーを起動した状態で俺の前に立ち塞がった。

 

「××××されたくなければ素直に言うことを聞いてください」

 

 いかん、コイツだけ明らかに犯罪目的だ。目の色が違う……っ!

 

「イィィィヤァぁぁ!! 誰かたすけてっ、俺に何のメリットが——」

 

「……先輩、わたしのTシャツで顔拭いてたじゃないですか。あれってわたしに興奮してた、ってことですよね」

 

「…………」

 

 そういえばありましたねそんなことも。今忘れたからもうわかりませんしもうというか最初からですし最初というかそもそも記憶していないのでわかりかねますが。

 

「……誰がそんな嘘を信じると思う?」

 

「じゃー信じる」「信じる」「信じる」「信じるに一票」「信じるわ」「信じよう」「信じてる」「信じてるよ」「信じないわけがない」「信じるだろ」「信じないと思っているのか?」「信じますよ」「信じます」「信じてるよ」「信じるー」「信じる」

 

 なんか周囲からの視線がちべたい。

 

「……か、仮に信じる奴がいたとしてもだ。その証拠をどうやってでっち上げる?「これが証拠です。思いっきり拭ってるでしょ」悪いが『おぉ……』世間ではそれをハメ撮りと言うんだ未成年!!」

 

 運動終わりにタオルくれたかと思ったら感触違うし、最近の中学生ってえげつねぇなって思ったら『八幡先輩だけだよ双葉がおかしくなるの』って緑川に言われるし……。

 

 …………。

 

「……黒江」

 

 深呼吸して、黒江の名を呼ぶ。もう仕方ないか。

 

「はい?」

 

 仕方ない仕方ない。——けど、諦めるわけじゃない。

 

 ——黒トリガー、オン。

 

「『あっち向いて——』」

 

「……! 比企谷を取り押さえ——!」

 

 素早っ。風間さんがいち早く予兆を察知して、俺に襲いかかってくる。

 

 けども。

 

 こちらの方が一手早い。

 

「『ほいっ』」

 

 黒江は右を向いた。しかし、それを確認した時には風間さんのスコーピオンはもう眼前で。

 

 ……し・か・し!

 

 すかっ。……風間さんの攻撃は俺の体をすり抜け、氷見に当たる前に二宮さんのシールドに受け止められた。って、何気に全員トリオン体じゃないですかやだー。

 

「……すり抜けた? ホログラムのようなトリガー、か……?」

 

 ——転移完了。

 

『メイン戦力が殆どこっちに回ってくれたおかげで、逆に好きに動き回れました。ホント作戦の隙のなさに感謝してますよ、風間さん』

 

「……貴様」

 

『どうせ日浦関連で近々何か起こしそうボーダー基地の外に出そうって迅さんに言われたんでしょうけど、悪いが俺とこの黒トリガーの相性は最悪なんでね。バレないうちに逃げさせてもらいました』

 

「……てめぇ、今何処にいやがる」

 

 あらいやだ。いずみん勘づいてる?

 

『そんなの教える訳ないだろ出水。ま、ボーダー基地の外か中のどっちかだ。……ざ、ザザ……と、そろそろ範囲外で通信切れそうなんで……それじゃあ、ごきげんよう?』

 

 ッヅ。通信が切れた。風間さんがホログラムの核を切ったりしたのかな。どうでもいいか。

 

 伸びをして、トリガーを解除し、正面の街を見据えた。

 

 商店街とやらは、あちらの世界とは違って夜でもキラキラと輝いている。王族でもなければこんなに明るいとこに住めないだろうな、あっちの世界なら。

 

「……さて、と。久々のシャバって奴を堪能させてもらうとしますかねー」

 

 そんな暇ないけど。急いで日浦を探さなければ。

 

 建前をこぼしつつ、俺は久しぶりに警戒区域の外に出た。

 

 あ、スタアメーカーは外しました。




設定

A級番外部隊
部隊として黒トリガーに匹敵する、あるいは黒トリガーを超える戦力として新たに新設された部隊。ランク付けされておらず、現在二部隊存在する。

葉山隊
葉山隼人……隊長。銃手。
三浦優美子……完璧万能手。レイジさんの弟子
戸部翔……攻撃手。
一色いろは……狙撃手。旧ボーダー時代からボーダーに在籍。小南のちょっと後くらい。
海老名姫奈……オペレーター。

雪ノ下隊
雪ノ下陽乃……隊長。攻撃手。『人の警戒してない所が強調して視える』サイドエフェクト持ち。
雪ノ下雪乃……攻撃手。『人に注目されている場所がわかる』サイドエフェクト持ち。
由比ヶ浜結衣……銃手。ゾエさんの弟子。『嗅覚が警察犬以上に効く』サイドエフェクト持ち。
城廻めぐり……オペレーター。『他人に好かれやすい言葉がわかる』サイドエフェクト持ち。

八幡使用黒トリガー『オルタナティブ』
ワープ、ダミー、光学迷彩等の支援系能力を得意とする黒トリガー。カメレオン・バッグワーム・ダミービーコン・テレポーターは八幡の黒トリガーを元に開発された。能力を合成して使用することが可能だが、消費トリオンの量が跳ね上がる上に一定時間後に能力は分離する。

ここに書いた設定は他の話でも使うかも。
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