輪廻変生   作:猗窩座ァ!

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十二鬼月

 

穢が鬼へと変じ、また他者を鬼へと変じさせ始めてからおおよそ九百年が経った。死した今なお穢に怨嗟よりも恐怖を抱かせる不世出の剣士・継国縁壱が死んだ後、穢は己が直接指揮統制する最精鋭の鬼を揃える事を計画した。名は十二鬼月(じゅうにきづき)。上弦六鬼と下弦六鬼の計十二体の鬼で、最強は上弦の壱、最弱は下弦の陸である。選考基準はただ一つ、実力のみ。

 

戦国の世より三百年。数多の鬼が生まれ、消えていったが、不動の最強たる黒死牟以外は十二鬼月もこまめに入れ替わる。それはより上位の鬼への挑戦権として用意した『入れ替わりの血戦』による下克上であったり、鬼殺隊による討伐作戦だったりした。現在の十二鬼月は、下弦はともかくとして上弦はかなり粒揃いなのではと穢は思っている。

 

上弦の壱、黒死牟。説明不要の最強の剣鬼。穢も黒死牟の能力は信用を置いている。どこぞの双子の弟みたいな、チートを通り越したバグが出てこない限りは単騎で葬られる事は決してあるまい。

 

上弦の弐、童磨(どうま)。鬼になる前となった後で性格的な違いが一切存在しない生粋のサイコパスな男鬼。鬼になれば何かしら性格が悪方向に歪むのは穢も知るところだが、変化がないところを見るに、変化する余地がない程性格が歪んでいたと判断すべきだろう。思考を覗けば快不快程度の感情しか窺えなかったので、虫みたいな奴だなと穢は内心思っている。

 

上弦の参、猗窩座(あかざ)。色々と癖の強い連中が揃う傾向にある上弦にあって、実直で忠実な性格な為に扱いやすい男鬼。力を渇望する鬼らしい性質も備えており、徒手空拳による小細工抜きの真向勝負を得意とするなど黒死牟と共通する点も多い。

 

上弦の肆、(あざみ)。藍色の髪の女鬼で、全力を出す為に事前準備が必要な血鬼術を持つ珍しい鬼。準備さえ整えてしまえば、ギミックを見破られない限りは最強と言ってもいいかもしれない。

 

上弦の伍、燐墓(りんぼ)。白髪の男鬼で、他者の悲嘆や苦悶を(よろこ)びとする性格の持ち主。人間の頃からさほど変わっていないので、童磨の同類と言えるかもしれない。その能力は一対多に長けており、性状を示すかのように面倒くさいものが目白押し。嫌がらせならば上弦でも頭一つ飛び抜けているだろう。

 

上弦の陸、堕姫(だき)。能力的には上弦に列するには弱い女鬼だが、融合しその体内で眠る兄鬼の妓夫太郎(ぎゅうたろう)が類稀な戦闘の才を持つ。さほど昔でもない時期に鬼となった兄妹だが、早期に力をつけて上弦に名を連ねた実力者でもある。童磨が自己判断で鬼にしてきた者なので、実は実際に会うまで穢が堕姫達の性格に不安を抱いていたのは秘密にしている。

 

いい加減ころころと人員が入れ替わるのは勘弁してほしい。この辺りでメンバーを固定して、各々に力をつけさせたい所である。この面々が次に入れ替わるのはいつだろうかと考えながら、穢は次の鬼を配置する地を選定し始めた。

 

 

 

 

 

幕末。明治維新と呼ばれる急速な近代化の直前────戊辰戦争の最中に、穢はある屋敷を訪れていた。中に踏み入れば、 屋敷のだだっ広い居間に布団を敷いて床に伏せっている男がいた。一人でぽつんとただ在るだけの様は、穢にかつての己を想起させた。

 

「────何者だ」

「ほう、そんな様でも感覚は鋭いか。………私の名は鬼舞辻穢。お前に聞きたいことがある」

 

誰何の声は鋭く、死を待つのみの身とは思えなかった。そうでなくては、と穢は内心で笑った。

 

「その病、治したくはないか?()()()()

 

男────沖田総司は力なく笑って言った。

 

「この病が治るものか」

「いいや、治るとも」

 

そう、治る。()()()()()、如何なる病も治るのだ。かつて穢がそうだったように。

 

「お前は病を治したいのだろう、沖田総司。病を治して、戦場へと赴きたいのだろう」

「………やめろ」

「お前はもう勝てないことが分かっている。それでも死地へと向かうのは、戦友達と共に死にたいからだ」

「やめろ」

「己を偽るな、心を隠すな。私には意味がない。私は全てを知っている。お前の秘めた内心すらも。死地へと赴きたいのだろう?戦友と肩を並べたいのだろう?そして彼らと共に死にたいのだろう?何を迷う、何を躊躇う。刻一刻と戦況は悪化するぞ、肩を並べる友がいなくなるぞ、死ぬと定めた死地を喪うぞ。お前に残された時間は少ない。さあ、私の手を────」

「やめろ!」

 

穢は口を噤んだ。沖田は息を荒らげ、汗をびっしょりとかいている。

 

「分かっている、分かっているんだ。私は死にたい。病床で果てるのではなく、苦楽を共にした友らと共に死にたい。もはや敵軍には勝てぬ、ならばいっそ死に場所と死に方位は選びたい」

 

それから二、三回深呼吸し、もごもごと口を動かしてから、頼む、とだけ語った。

血を入れんと沖田の首元に手を伸ばしながら、穢は思う。

 

まあ鬼へと変じれば全て忘れるのだが、と。

 

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