Over the aurora《完結》   作:田島

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(1)海東大樹

 大粒の雨がアスファルトを叩いている。

 公園の鉄柵からも、雫が止めどなく流れ落ちて、ぬかるみに打ち付けられている。

 海東大樹は左手のビニール傘で雨をしのぎながら、すぐ側のコンビニで購入した肉まんを右手だけで器用に紙包みから半分出し、口をつけようとした。

 口をつけようとして、自分に注がれている視線に気づく。

 彼は傘もささず、ベンチで雨に打たれていた。

 歳の頃は大樹と同じか少し下。細身で、背は大分高く、長身の大樹よりも上背はあるかもしれない。意志の強そうな、素直に頷く事を知らなさそうな強い目線がじっと大樹を捕らえていた。ウールのコートと黒いタートルネックのセーターにマフラーを引っ掛け、趣味があまり良くないマゼンタのトイカメラを首から提げている。カメラは水に濡らして大丈夫なのか、どうでもいい心配が頭を掠めた。

「何か用?」

「別に用なんかない」

 落ち着かないので声をかけたが、青年の答えはにべもなかった。

 じゃあ何で、と言いかけて、大樹には大体理解出来た気がした。

 知らない人間をそんなに必死に見つめる用事なんて、そうそう多くはない。

「君、もしかして、お腹空いてるのかい」

「悪いか」

「悪いなんて言ってないよ。僕にはどうでもいい事だもの」

 言うなり大樹は、右手の肉まんにかぶりついた。伺うと、青年の目はぎょろりと見開かれ、一直線に肉まんを見つめていた。

「僕、そういう顔を見るのが好きなんだ。実においしいよ、このあったかい肉まん」

「……お前、最悪に性格が歪んでるな」

「そうでもないよ。自分の気持に素直だもの」

 言って肉まんをもう一口頬張る。青年は、はぁ、という落胆の溜息を漏らして目を伏せた。

「お前の言う通り、お前には何の関わりもない事だ。それ早く食ってとっととどっか行け」

「言われなくてもそうするけど、君もこんな所で濡れ鼠になってないで、早く帰りたまえ。風邪を引くだろう」

「残念だが、何処に帰ればいいのか皆目見当がつかん」

 大樹がやや訝しげに首を捻ると、青年は明後日の方向を見つめたまま、独り言のように呟いた。

「何でこんな所に座ってるのか、自分が一体何処の誰で、今まで何をしていたのかも分からんのに、どうやって帰れっていうんだ」

 記憶喪失。

 大樹も、流れ流れの(自称)トレジャーハンター稼業を始めて大分経つが、こんな漫画のように見事に記憶を失った人間を見るのは初めてだった。

「可哀相だが僕には何ら関係ない。警察にでも行くんだな」

「それもそうだな、俺もそれを考えていた。だが、お前の言う通りに行動するのは癪に障るから、それはやめる事に今決めた」

 その答えを聞いて大樹は呆れて溜息をつき、同時に目の前の青年に強い興味を覚えた。

 普通ならば、本当に何一つ記憶がないのならば、ここまで意地を張れるものではない。不安でたまらなくなり、気弱になって助けを乞うのが当たり前の反応だ。目の前のこの青年は何故こうも、強気のままで、大樹に助けを乞うのが屈する事だとでも言わんばかりなのか?

「君、本当に何一つ覚えている事はないのか」

「名前だけ覚えている。門矢、士だ」

「ふうん、士、ねえ」

 名前を聞くと大樹は口の右端を上げて、何か悪戯でも思いついたような楽しげな笑いを浮かべて、半分残った肉まんを門矢士に差し出した。

「……何のつもりだ」

「行くあてがないのは僕も同じだけど、雨をしのげる場所の紹介くらいは出来るよ。どうする?」

 にやにやとさも面白そうな笑みを浮かべた大樹を睨みつけて、門矢士は立ち上がり、狭いビニール傘に肩を入れて、大樹の右手の肉まんをひったくり奪った。

「お前がどうしてもって言うなら仕方がない、着いていってやる」

「だから、僕はどうでもいいんだけど。僕と一緒にいると、君みたいな普通の人は厄介事を抱える事になるかもしれないしね」

「ほうひうひみら」

 残り半分の肉まんを一口で頬張りながら士が尋ねた。

「意味は、あんまり知らない方がいいよ。僕も話したくない。それでも、不安でどうしようもないので連れて行ってくださいというなら考えなくもない」

「ほざいてろ」

 口で悪態をつきつつ、歩き出した大樹に合わせて士も足を踏み出した。

 

***

 

 これは、単なる大樹の気まぐれだった。

 旅は道連れというし(世は情け、の部分は趣味じゃないから省くとして)、今までずっと一人で気楽にやってきたけど、たまには行きずりの同道者がいるというのも悪くないんじゃないだろうか。

 そんな軽い気持ちだった。

 ねぐらとして抑えてある、誰も使っていない倉庫の二階に士を案内し、雨が止んだら大樹は、この世界に来た目的であるお宝の情報を集める為に外に出た。

 士は、大樹がいない間あちこちを歩き回り、写真を撮っているようだった。

 どうやってか金を稼いできて現像もしているようなので、一度見せてもらおうとしたが、彼は頑としてそれを拒んだ。大樹も元々そんなに興味があったわけではないので、あっさりと引き下がった。

 倉庫は電気もガスも水道も止まっている。士が金を稼いでいるようなので基本的には放置しているが、大樹は気まぐれに時折彼を食事に連れ出した。士は何故か料理の味にやたらうるさかった。一度中華料理に連れていった際に、高級食材である干しナマコを口にした途端に、口を抑えてトイレに駆け込んだ時には、大樹はその様を眺めて、心ゆくまで笑い転げる事ができた。記憶喪失にも屈しない彼も、ナマコにだけは勝てないのだ。

 付かず離れずのこの状態も、大樹が目当てのお宝を手に入れてこの世界を離れるまでだ。それを大樹は知っているから、士の意地でも下風に立とうとしない傍若無人な物言いを面白がる事ができた。

 お宝を手にするまでは、海東大樹も、今回記憶喪失の青年を助けた事は、単純に気まぐれ故の行動であったと思っている事ができた。

 

 彼がお宝――この世界で狙っていたのは、沖縄に流れ着いたオーパーツの部品だった――を手に入れた時思ったのは、一言ぐらい別れの挨拶をしてからこの世界を離れるか、という事だった。

 自分らしくないとは思ったが、大樹は、誰にも媚びず誰をも顧みない、傲岸不遜な門矢士という青年を、自分が思っているより気に入っているようだった。

 今日も、いつもと同じく特に何も告げずにねぐらを出てきた。士は心配などしないだろうが、案外生真面目なところもあるので、大樹の帰りを待ち続けるかもしれなかった。

 もう夜も更けているので、何か置き手紙でも残せばいい。

 大樹はねぐらへの道を辿ったが、倉庫の前に、人影があった。

 いや、それは、人影と形容するには異様すぎた。

 大樹はよく見慣れている。月明かりに浮かぶ黄金のマスク。マントを纏い剣を履いた堂々たる威容。彼こそ、大ショッカー幹部・ジャーク将軍だった。

「こんな所まで追いかけてくるなんて、君達って本当にしつこいよね」

「今日は貴様などに用はない。大切なものを取り戻しに来ただけだ」

「大切なものって、これじゃないの?」

 吐き捨てて海東は、腰のディエンドライバーを取り出して示した。ジャークの鉄面皮に動きはない。

「それはいつでも取り返せる。貴様ごとき抹殺する事など、赤子の手を捻るより容易い」

「ならやってみたまえ」

「どうでもいいのだよ、貴様のような鼠は」

 ジャーク将軍が踵を返し、倉庫へと歩みを進めていく。

 大樹がねぐらとしていた倉庫。あの中には何もないのはよく確かめてある。何かあるような危ない場所などねぐらとしては利用しない。

 だとしたら、奴は何を回収するのだろう?

 あの中には何もないが、士はいる。

「…………まさか」

 ジャークの後を追って駆け出しながら、ディエンドライバーにカメンライドカードをセットし、引き金を引く。次元を超えシアンの装甲が大樹の体躯を包み、彼を仮面ライダーディエンドへと変貌させた。

 悠々と歩くジャークの背に威嚇射撃を浴びせながら、大樹は勢いを付けて、彼の頭を飛び越し、倉庫の二階の窓を破って中へと飛び込んだ。

 ここは士が寝ている部屋の筈だった。

 士はいた。まだ眠っていないようだった。突然の出来事に呆然として、闖入者を凝視している。

「士、何だか知らないが、君は狙われているみたいだ。逃げたまえ」

「……は? その声、海東か? 何だよそれ」

「つべこべ言わず、早く!」

「誰が俺を狙うっていうんだ、そいつ、俺の事何か知ってるのか」

「そんな事僕が知るわけないだろう!」

 言い争っている間はない。ディエンドは士の腕を掴み、ドアを蹴破って通路へと飛び出した。

「飛ぶぞ、捕まっていたまえ」

「……は? 飛ぶって何…………うわっ‼」

 反論を許さず、ディエンドは士の腰を小脇に抱えて、手すりを飛び越えて階下へと降り立ち、その勢いで、入ってきたのとは反対の窓へ一気に駆け込み、飛び込んだ。

「ちょ、ちょっと、待て!」

「うるさいな、今は君のいちゃもんを聞いている暇はないんだよ。いいから振り落とされないようにしっかり捕まっていたまえ!」

「ムチャクチャすぎるだろう! 何がそんなに怖いんだよ!」

 それには答えず、大樹は士を脇に抱えて走り続けた。士が長身の為バランスは取りづらいが、それでも手を引いて走るよりはずっと速い。

 ライダーシステムを装着している時の走力は、常人を遥かに超える。そしてディエンドには、いざとなれば奥の手があった。

 だが、ディエンドは突然立ち止まらざるを得なかった。あまりのスピードに目を瞑っていた士が、不審げに目を開け、眼前を見やると、そこにはまさに異形が数体立ちはだかり、行く手を塞いでいた。

 虫、鳥、蛇、何かをモチーフにしているのだろうが、彼らはいずれも二足歩行の生き物だった。体躯は二メートルを楽に超えているだろう。鋭い牙や爪、硬そうな皮膚は、月明かりでも楽に識別できた。

「何なんだ、あれ」

「君は知らない方が良かったんだけどね。大ショッカーって、悪の秘密結社があるのさ」

「……そうか、大体分かった」

 何が分かったのかは分からないが、口の減らない士を脇から下ろし、ディエンドは銃を構えた。

 後ろにはジャーク将軍がそろそろ現れるはずだ。

 ディエンド一人ならこの場を切り抜ける事など造作も無い。だが、士がいては。

「お前はどうでもいい、そのお方を渡してもらおう」

「俺は、お前らみたいな知り合いを持った覚えはない」

「覚えていないんだろう」

 怪人の一人が発した言葉に、士が反駁し、ディエンドが呆れ半分でツッコんだ。

 ここで彼を守って戦う事は、ディエンドに何のメリットも齎さない。それは明らかだった。だが、何故、士が大ショッカーに「そのお方」と呼ばれて狙われる?

「渡してもいいけど、こいつは一体何なんだい」

「おい、お前……」

「悪いけどここまでだ。君を守って戦っても僕に何の得もないし、多勢に無勢だ」

 ぎろりと大樹を睨みつけて、しかし士は、それもそうかと呟くと、ふっと眉を緩めて眼前の怪人達を見つめた。

 遠い目をしていた。何もかもを諦めた目だ。

 記憶がないとはいっても、執着がなさすぎじゃないだろうか。

 大樹がそう考えた時、後ろから声がかかった。

「そのお方がいれば、お前はいらない。お前のディエンドは機能の欠損した不良品に過ぎん。そのお方さえ帰ってくれば、我が大ショッカーが全世界を掌握出来る」

「……あれか。ディエンドライバーの横にあった」

「察しのいい事だ」

 大樹はその時、興味を惹かれたディエンドライバーだけを持ち去ったが、その横には、ディエンドライバーよりもさらに厳重に、幾重もの警備システムで守られたバックルが置かれていた。

「つまり、君が、大ショッカーの大首領というわけか」

 士を見て呟く。士には勿論分からないだろう。戸惑った顔をしていた。

「大体分かったよ。君を生かしておいたら、この世界が滅ぶんだろうね。でも僕には、それもどうでもいい事だ」

「何言ってるんだ? 話が全然見えないぞ」

「君が、世界を壊すのさ」

 言うなりディエンドは、まだ何か言おうとする士を見つめたまま、カードをディエンドライバーにセットした。

『Attack Ride Invisible』

 電子音声が響き、ディエンドの姿は、その場から掻き消えた。残されたのは、呆然と何もない場所を見つめる門矢士と、大ショッカー幹部達だけとなった。

 

***

 

 大樹が次に士と出会ったのは、それから暫くしてからの事だった。

 山中にいた大樹を取り囲むように現れた大ショッカー幹部数名、その奥に、ディエンドとよく似た外観の仮面の戦士が立っていた。

 色はマゼンタ。ライトグリーンの複眼が大樹を見据えていた。

 そして腰には、あの日大樹が警備の厳しさから諦めたバックルが装着されている。

「雁首揃えてぞろぞろと、僕一人に大げさじゃないのか」

 相手は答えなかったし、大樹の出方を伺っているのか、動く様子もなかった。

「その奥の人は新顔だけど、士かい」

 ゆっくり、一つ一つの音を噛みしめるように、大樹は呼びかけた。

 それは決して、士への感傷からではないが。

 そもそも大樹が人気のない山の中にいたのは、あるものの到来を待っていたからだ。それがもうすぐ来る。

「やれやれ、久しぶりに会ったのに無視とは酷いんじゃないか」

「黙れ、このお方は貴様と利くような口は持ち合わせておらん。分を弁えろ」

「そんなの、僕には関係ないよ。君達の都合だろ」

 大樹はディエンドライバーを取り出し、銃口を士と思しき奥の人物に向けて、狙いを定めた。

 幹部達は色めき立ち、大樹に飛びかかろうとしたが、それを奥の人物は、手で制した。

「ねえ士。記憶は戻ったかい。そして君は、世界を破壊するのか」

「何を言っているのか分からないが。俺は世界を救う。その為には、お前達仮面ライダーの存在が邪魔だ」

「君もライダーだろう」

 答えず士は、何か文庫本のようなものが鞘部に取り付けられた剣を構えた。それに倣い幹部達も、大樹を標的に定めて各々構えをとった。

 引き伸ばしも限界かもしれない。だが大樹は、出来る限りいざこざは避けて通りたい。あと少しこの時間を引き伸ばせばいい。

 森の中にいる筈なのに、先程から虫の音もしない。風も流れていない。生温い空気がぴんと張り詰めている。

 目の前にいる士だった者の実力は未知数。力が論理となる大ショッカーで(どんな事情かは知らないが)大首領と呼ばれているのであれば、決して侮らない方がいいだろう。

「まさかとは思うが、仮面ライダーの存在が世界を融合させている、なんて吹き込まれたんじゃないだろうね」

「それが真実だろう」

「何も知らないのかい。おめでたくて羨ましいよ」

 大樹がにやりと口を歪めたのを合図に、士は右足を僅かに後ろに、力を込めて摺り、次の刹那、真っ直ぐに駆け出した。

「何が真実か、お前ら仮面ライダーを全員倒せば分かる事だ!」

 大樹を囲む形で待機していた幹部達が包囲網を狭めたのと、大樹がバックステップを踏みつつ銃口を上に向け、予めカメンライドカードの装填してあったディエンドライバーを起動したのが同時。

 ディエンドのスーツを纏った大樹は、後ろに迫っていた幹部怪人の肩に手をかけ、そのままバック転の要領で後ろをとり、すぐに振り向いて駆け出した。

「逃がすかっ!」

 続いて士が、大樹が飛び越した怪人の脇をすり抜け、後を追う。

 インビジブルのカードを使ってもいいが、もうすぐだ。眼前のあそこに駆け込めば。

 そう思った刹那、視界を銀色のオーロラが覆った。ディエンドはそこへ躊躇なく駆け込んだ。

 このオーロラは異なる世界への入り口。まだ、いつ何処に現れるのかが分かるだけで、完全には制御できないが、ディエンドの力なら自由自在に出現させられるようになるとも聞いた。

 飛び込んで、うまくいけばオーロラは大ショッカーが侵入する前に消える。追ってこられたとしても、インビジブルのカードを使えば追跡は不可能の筈だった。

 オーロラは暫く進み、唐突に止まった。ディエンドは『向こうの世界』から、追ってくる大ショッカーを見やった。

 後続の怪人達は間に合わないが、士が、消えかかるオーロラに足を踏み入れた。

 その時、ディエンド自身も予想だにしなかった結果が、士を襲っていた。

「ぐあっ、ああああああっ!」

 何故か士は苦しそうな呻き声を上げ、その場に立ち止まっていた。

 立ち止まっている、というのは正確ではないだろう。前に進もうとしているのに拒まれている、そう見えた。

 ばち、ばち、と、火花の爆ぜる音が聞こえる。

 思いもよらない結果にディエンドが動けずにいると、オーロラは士を捉えたまま、ふっと消えた。

 オーロラが消えた視界にはもう大ショッカーはいない。切り崩された岩山が横たわっているだけだ。

 ――この世界が、士を、拒んだ?

 ジャークは、ディエンドは士が纏っていたスーツの出来損ないと言った。それならば、ディエンドが備えている『世界を渡る力』を、あのマゼンタも備えていなければおかしい筈なのだ。

「ディケイドがいる限り、世界の崩壊は終わらないだろう」

 振り向くと、そこにはクロッシェ帽にトレンチコート、黒縁眼鏡の中年の男性が佇んでいた。

「あなたいつも現れ方が唐突すぎるよ、鳴滝さん」

「奴は悪魔だ。倒さない限り君がいつか滅ぼされるだろう」

「ふうん、あいつ、ディケイドっていうのか」

 鳴滝の発言の中身には興味がなさそうに、大樹は呟いた。

 実際に、彼は世界の崩壊などどうでもいい。彼は信じるべき正義も守るべき者も失ったのだから、後は死ぬまで、大好きなお宝を集めて楽しくやるだけだと思っていた。

「そのディエンドライバーは、ディケイドを倒す為に作られたもの。君もいつか自分の本当の使命を思い出して欲しい」

「そうだな、気が向いたらね」

 鳴滝に笑いかけると、鳴滝の背後から銀色のオーロラが現れ、彼を飲み込んで消えた。

 彼は、自分の世界で行き場がなくなっていた大樹を大ショッカー本部まで導き、奪ったディエンドライバーの使い方を教えてくれた人だった。

 神出鬼没、いつも言いたい事を一人で言って消えてしまう。

 大樹にとっては、鳴滝の思惑など考えるにも値しなかった。成り立ちがどうあれ、ディエンドライバーは今は大樹のものだ。

 この力は、僕が使いたいように使う。何かの為になんて、縛られるのはもうやめだ。

「さて、この世界は何の世界かな。レアなお宝があるといいけど」

 努めて楽天的に独りごちて、大樹は山を下ると思しき方角へと歩き出した。


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