呼び出されたからには仕方ない。しかも、比企谷先輩を人質にされては行かない訳がない。
部室の扉の前に立ち、深呼吸をしてからノックをする。中から雪ノ下先輩の『どうぞ』と言う声。
『失礼します』と言って中に入ると、雪ノ下先輩が椅子に座り、比企谷先輩がその前で正座させられている。
しかも、何故か二人の顔がほのかに赤いのは気のせいだろうか…。
「比企谷君、人と話す時は目を見るものよ」
「いや、しかしだな…」
うつむいていた比企谷先輩が顔を上げると、僅かに雪ノ下先輩の口角が上がり、足を組み換える。すると、比企谷先輩が下を向く。
「比企谷君、下を向いてはダメよ」
「だから…」
比企谷先輩が顔を上げると、また雪ノ下先輩が足を組み換える。比企谷先輩が下を向く…。
「ヒッキー、ちゃんと話してよ!」
「そうですよ、先輩!」
あれ?この二人、気がついてない?
「雪ノ下先輩、足を組み換えるとスカートの中、見えますよ」
「!!」
雪ノ下先輩が視線を反らす。
「ヒッキー!マジキモイ!」
「先輩~!」
二人は気がついてないけど…。
「雪ノ下先輩、わざとやってませんでしたか?」
「なっ!わ、私が比企谷君に、す、スカートの中を見せるなんて…、や、やるわけが…」
「ゆ、ゆきのん、ズルイ!わ、私だって…やっぱ無理!!」
由比ヶ浜先輩、スカートの裾持って、何を言ってるんですか?
…一色会長、背中向けて、スカートの中を確認しないでください。
わ、私は…、うん、大丈夫。今日は可愛いのにしてきた…。はず…。
じゃなくて!!
「と、とりあえず、比企谷先輩、立ってください」
「藤沢、すまん」
比企谷先輩に手を貸す。
「うわっ!」
「きゃっ!」
足が痺れていたのだろうか、バランスを崩して転んでしまった。手を貸していたので引きずられるカタチで比企谷先輩の上に倒れてしまった。
「痛ってぇ。藤沢、すまん。大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
こ、この体勢は…。モブ子ちゃんが読んでた雑誌に載ってた、き、き、き、騎乗位…。今日は可愛いの着けてるはずだし、比企谷先輩になら…って、違う!!雪ノ下先輩のアピールを見てから思考がおかした方向行ってる!!
「比企谷君…」
「ヒッキー…」
「先輩…」
「いや、違う。これは事故だ!な、藤沢?」
「は、はい」
何とか、その場はしのぎ、やっと椅子に座ることが出来た。
「比企谷君、藤沢さん。昨日のことを説明してもらおうかしら」
「まぁ、藤沢の友達に『近づくな』って言われて、斜め下な方法で解決しようとしたのは知ってるよな」
「うん」
「そうですね」
「そうね。でも、その方法はやめなさい」
「善処します」
それ、やらない人の回答ですよ、比企谷先輩。
「それを友人から聞いた私が比企谷先輩にやめさせる為に、奉仕部に来たんです」
「以上。終わり」
「それで、終われると思うのかしら?」
「ですよね…」
「頭を撫でたのと、手を繋いで帰ったことの説明は?」
「あれは、お兄ちゃんスキルだ。手を繋いだのは、逃げる為だ!」
「何故、逃げる必要があったのかしら?ヤマシイことがなければ、逃げなくていいはずよ」
「だって、お前ら恐いんだもん…」
比企谷先輩、言い訳がヘタ過ぎ…。ここは私が助け船を…。
「あの…質問なんですが…」
「なに?書記ちゃん?」
「み、みなさんは、比企谷先輩のことをどう思ってるんですか?」
「なっ!」
「ふぇっ!」
「へっ!」
何この反応…。
「そ、それは、あの…、私のことを知ってくれて、今は比企谷君のことも少しずつ知ってきて…」
「ヒッキーは、サブレを助けてくれて、ひねくれてるけど優しくて…」
「先輩は、頼りになるというか、甘えてしまって…」
うわぁ、思った以上に比企谷先輩のこと好き過ぎ…。私も頑張らなきゃ!
「わ、私は…、あの、その…比企谷先輩のことを…」
やっぱり、みんなの前で言うなんて恥ずかしい!!
「ねぇ、俺帰っていい?」
「「「「ダメ!!」」」」
みんなでモジモジしたまま時間切れになり、最終的に5人でドーナツ屋さんへ行くことになりました。比企谷先輩のオゴリで。
「なんで、こうなるんだ…」
「比企谷先輩が、はっきりしないからですよ」
ちょっと、イジワルしようかな…。比企谷先輩に耳打ちをする。
「雪ノ下先輩、何色だったんですか?」
「なっ!み、み、見てないぞ!」
「嘘です。あの角度は見えますよ。何色だったんですか?」
「し、白…でした…」
「ふ~ん、私はピンクですよ」
「えっ!あっ!なっ!」
焦った比企谷先輩って、なんか可愛い。
あんまり、イジワルすると可哀想だから、お詫びに…。
「今度は二人でドーナツ食べましょうね」
ウインクしたら、比企谷先輩は真っ赤になりました。あざとかったかな?一色会長には敵わないけど。