一匹の猪が森のなかを必死に走っている、そしてその後を金髪の目をかっ開いた少年が刀を構えながら追っている。そう、猪はこの少年から逃げているのだ。
「そっちに行ったぞ!二郎丸!」
「了解!」
その掛け声と同時に、先に生えた木の上から白髪の少年が飛び降りてきた。
「全集中 影の呼吸 陸ノ型 『御影石』!!」
そのまま落下の勢いも乗せて二本の脇差を振り下ろし、猪の頭を切り落とした。
獲物を探して小一時間、遂に見つけた大物を仕留めてホクホク顔の二人、猪を担いだ二人の足取りは非常に軽かった。森を抜け、先程の川岸には伊黒がいた。
「遅いぞ、一体何をしてい、た…。」
二人を見た伊黒は絶句する、それもそのはず二人の服には担いだ猪の血がべっとりと張り付いており、伊黒はそれを見て大怪我をしたと勘違いしたのだ。
「ど、どうした!?貴様ら!」
「ん?あぁ、これ全部猪の返り血だから。」
「心配無用だ!」
「…は?」
呆れる伊黒を無視して二人は猪を切り分けて肉を焼く、その間に川へ飛び込み服に付いた血と汗を洗い流す、そして焼けたのを見て川から上がり肉にかぶりつく。
その味は
「「臭い、硬い、不味い。」」
「馬鹿なのか?貴様らは。」
それはそれはひどいものだった、本来革を剥いだり血を抜いたり内臓を取り除いたりしなければいけないのだが、空腹だった二人ではそこまで考えることは出来なかった。
だが、だからと言って残すのは御法度、二人はそれらを我慢して猪を食べきった。
「「ごちそうさまでした!」」
「…あれを全部喰ったのか。」
一部始終を見ていた伊黒は驚いていた。
「あれ、伊黒も食べたかった?」
「違う、そうじゃない。」
因にこの日の夜は、鬼の襲撃は無かった。
「そういえば」
「む、どうした?」
「なんで伊黒がいるの?」
「…悪いか。」
── 三日目 ──
「よし!今日も狩りをするぞ!」
「応!」
「貴様らは何をしにここにに居るんだ?」
今日も狩りをする為に森の中にいる、今回は伊黒もついて来ていた。何故かと聞けば二人が何を仕出かすか分からないから監視のためと言った。
解せぬ
一時間後、兎を三羽と鹿を狩ることができた、特に兎はすばしっこく動く為、追いかけるだけでそれなりの鍛練になった。
きちんと下処理をして焼いた肉は何とか食えるものとなっていた、因に兎は結構美味いと三人は思った。
── 四日目 ──
「おい、墨影はどうした?」
「すまん、見失った!」
「何をしているんだ。」
今日も狩りをしていたのだが、途中で二郎丸とはぐれてしまった。
「全く、さっさと二郎丸を探し出すぞ。」
「誰を探すって?」
「「うおっ!?」」
だが心配する必要は無く、いつの間にか戻って来ていた。
二人の人間を担いだ状態で、
「二郎丸、その二人は誰だ?」
「知らない。」
「そうか!」
「違う、そうじゃないだろ。」
微妙に噛み合わない会話をする二人の間に伊黒が割り込む。
「ん?あぁ、ぶっ倒れてたから連れてきた。」
「…それだけか?」
「うん。」
伊黒は頭をおさえた。
「墨影、お人好しが過ぎるぞ。」
「良いじゃん、助けない理由も無いんだし、それにお人好しなのは伊黒もでしょ。」
「なんだと?」
「二人共、話は後にしないか?」
杏寿郎がそう言った為、一旦戻ることにした。助けた二人はどちらとも男であり、どちらとも気を失っていた。一人は腕に引っ掛かれたような切り傷があり、もう一人は怪我こそ無いものの、かなり衰弱しているようだった。
二人が目覚めたのは陽が完全に沈み、月が空に昇り始めた時だった。
「無様にも程があるぞ貴様ら。」
「「はい…」」
「伊黒、そこまでにしてやったらどうだ?」
「いや、ダメだ。」
あれから伊黒は一時間以上も二人に説教をしていた、杏寿郎が止めようとしても、やめることはなかった。
怪我をしていた男の名は齊藤、森の中で鬼に襲われたが、日の出が近かった為、何とか助かったらしい。
怪我をしていなかった男の名は山本、空腹で倒れ込んでしまい、気を失っていたようだ。
「全く、あまりにも不甲斐無い。本来であれば死んでいてもおかしくなかったんだが。」
「す、すみません、」
「謝罪はいい、寧ろ貴様らを助けた墨影に感謝すべきだ。」
「は、はい!」
「墨影さん、助けていただきありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
「いえ、別に良いですよ。」
この日は三匹の鬼が襲撃してきた。
そして、最終選別五日目の朝を迎えた。
※伊黒はネチネチ言ってますが、本当は心配性で仲間思いな人だと思っています。
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隊士訓練で二郎丸が不在時の炎と恋の話
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スケベ隊服について
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炎蛇影の合同任務
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どうせなら全部書いて