墨影二郎丸は影柱(仮)に就任しました   作:トライオ

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遅れてしまいすみませんでした。今回の話は今までよりも長くなっています。

六話を新しく書き変えたので、そちらの方もよろしくお願いします。




最終選別 後編 壱

ーー 七日目 ーー

 

「遅い、余りにも遅すぎる!あいつらは一体何をしているんだ?」

 

伊黒が腹ただしげに呟く、今回は二郎丸と杏寿郎、伊黒と齊藤と山本で別れて狩りをしていたのだが、今日は日が沈んで、それからしばらく経っても二郎丸と杏寿郎が戻ってきていないのだ。

 

「やはり一緒にすべきではなかった!…仕方ない。齊藤、山本、俺は今から「伊黒!齊藤殿!山本殿!」ん?」

 

二人を探しに再び森の中に入ろうとした時、焦った様子で杏寿郎が三人の元へと駆けてきた。

 

「遅いぞ煉獄!それと墨影はどうした?」

 

「それはすまなかった!だがそれどころではないんだ!」

 

「何?」

 

「今までの鬼とは比べ物にならない程デカイ鬼が現れた!二郎丸が戦っている筈だから今すぐ俺についてきてほしい!」

 

「…は?」

 

「「え!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早く戻らないと。」

 

「そうだな!さすがに夢中になりすぎてしまった!」

 

今日の二人の狩りの成果は、猪二匹、鹿三匹、雉二羽、兎六羽、という大量だった。だが余りにも夢中になりすぎていたため、下処理等を終わらせた時には既に日が沈んでしまっていたのだ。

 

「伊黒に怒られてしまうかもしれぬな!」

 

「けど、これだけ肉をもって帰れば許してくれるかもよ?」

 

「そうだな!であれば、早く戻るぞ!」

 

「そうだね!」

 

急いで戻ろうとした時、更に辺りが暗くなった。

 

「「ん?」」

 

そして、嫌な気配を感じ、背負った肉を捨て去り慌てて飛び退けば、そこに巨大な物体が落ちてきた。

 

「ほぉ、今のを避けるとはなぁ。」

 

その物体が喋りだしたかと思えば、モゾモゾと動いた後、すくりと立ち上がった。

 

二メートルは越すであろう巨体と見るからにぶよぶよの肌、巨体の割には比較的細い腕脚に、それには不釣り合いな程の大きな楓の葉のような手足、そして飛び出る程に大きな目玉に、無数の牙が並び、長い舌が伸びたこれまた大きな口。

 

かなり異形ではあるが、鬼であることは間違いない、さながら“蛙鬼”と呼べる鬼だった。

 

「ほぉ、今のを避けるとはなぁ。」

 

振り返った蛙鬼がニヤリと笑う。

 

「久しぶりに起きてみれば、活きの良いガキが二人、中々ついてるじゃねぇかぁ!」

 

がっはっはと蛙鬼のさが豪快に笑う、対して二郎丸と杏寿郎はかなり焦っていた。

 

「杏寿郎、どうする?」

 

「そうだな…。」

 

「「…よし。」」

 

二人で暫く考え、刀を抜いて構えをとる。

 

「ほぉ、この俺に掛かってくるかぁ。」

 

蛙鬼がまたもニヤリと笑う。対して二人は

 

「「…三十六計逃げるに如かず!」」

 

そう叫び、反対方向へと走り出した。

 

「…は?」

 

蛙鬼は少しの間呆気に取られたが、

 

「逃がすかぁ!!」

 

直ぐに舌を二人に向かって勢いよく伸ばした。

 

「二郎丸!」

 

「任せて! 全集中 影の呼吸 惨の型 『餓乱洞』!!」

 

だが二人は追撃も予想しており、二郎丸が伸びてきた舌を回転によって切り刻む。

 

「よし!」

 

「二郎丸、危ない!」

 

「え?ぬあ!?」

 

だが安心するのもつかの間、蛙鬼がこちらに向かって蛙鬼が跳んできており、二郎丸はそれに気付けなかった。

だが杏寿郎が二郎丸に突進して一緒に飛び退いた事で、寸での所で回避することが出来た。

 

「まだまだぁ!」

 

「炎の呼吸 弐の型 『昇り炎天』!!」

 

今度は大きな手を振り下ろしてくるが、杏寿郎が腕ごと斬り落とすことでそれを回避する。

 

「痛ぇ!?くそっ!何度も斬り裂きやがってぇ!!」

 

「行くぞ!」

 

「うん!」

 

蛙鬼が怯んだ隙に二人は森の中へと逃げ込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこにいるぅ!?さっさと出てこいぃ!!」

 

「不味いね。」

 

「うむ、そうだな。」

 

木々をなぎ倒しながら蛙鬼が二人を探している。森の中に逃げ込んで暫くたったが未だ二人は逃げられず、そして倒せずにいた。

 

だが、二人はただ逃げていた訳ではない、

手足は細いが木々をなぎ倒せる程の怪力、けして身のこなしが速い訳ではなく寧ろ遅い方だが、それを補えるほどの跳躍力と素早い舌の動き、だがこれ血気術を使えるわけではない。そして、頚が非常に硬かった。

 

これが今まで分かった蛙鬼の性能だった、だがそれがわかっただけではこの状況を切り抜けることが出来る訳ではなかった。

 

「…杏寿郎。」

 

「む?どうした。」

 

暫く考え、二郎丸は一つの提案をする。

 

「僕が劣りになる。」

 

「…なんだと?」

 

杏寿郎は驚いた。

 

「お前を置いて逃げろというのか!?」

 

「違う。」

 

「なら!」

 

「助けを呼んで来てほしいんだ。」

 

「…伊黒か?」

 

「そう。」

 

「見つけたぞぉ!」

 

「「あ。」」

 

振り下ろされた蛙鬼の手を二人は避ける。

 

「全集中 影の呼吸 肆の型 『畝り黒潮』!!」

 

「全集中 炎の呼吸 惨の型 『炎渦竜巻』!!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁ!?」

 

蛙鬼の頚は硬いがそれ以外は他の雑魚鬼より上程度、放たれた風の刃と炎の渦は蛙鬼の顔を容赦なく切り刻んだ。

 

「今の内に!」

 

「だが!」

 

「大丈夫、勝てはせずとも負けはしないから。」

 

「…死ぬなよ!」

 

「もちろん。」

 

そして杏寿郎はこの場から離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二郎丸ー!どこにいるー!」

 

「墨影!返事をしろ!」

 

「墨影さーん!」

 

四人は杏寿郎と二郎丸が別れた場所までやって来たのだが、二郎丸も蛙鬼の姿も見えず現在進行形で探している真っ最中だった。

 

「お前らは何故ここにいる?」

 

そして伊黒は齊藤と山本には待機しておく様に言っていたが、何故か二人とも付いてきていた。

 

「いや貴方達といた方が安全ですから!」

 

「一昨日みたいに襲撃されたら寧ろ私達だけでは間違いなく死にますから!」

 

これが二人の言い分だった。

 

「あ!皆さん!来て下さい!」

 

山本が全員を呼ぶ声が聞こえた。そして向かってみれば、

 

「なんと!」

 

「…これは。」

 

「まさか。」

 

急に森が開けており、その先は傾斜のある崖、更にその近くには崩れた跡があった。

 

「す、墨影さんは、鬼と一緒に落ちたんじゃ。」

 

「かもしれぬな。」

 

「どうする?」

 

「「「…」」」

 

「…、はあ!」

 

「「「え?」」」

 

どうするべきか悩む中、なんと齊藤が崖の傾斜飛び降り器用に滑り降りていった。

 

「齊藤殿!」

 

「齊藤さん!」

 

「あの馬鹿!おい、さっさと降りられる場所を見つけて追いかけるぞ!」

 

「うむ!」

 

「わかりました!」

 

残された三人は慌てて追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、崖から落ちた二郎丸は気絶していた。

 

「……ぐぅ。」

 

が、ようやく目覚めたようで非常に痛む体を何とか起こし、立ち上がる。

すると、少し離れた場所の瓦礫の山が音を立てて崩れ落ち、中から蛙鬼が這いて出てきた。

 

「…随分と、舐めた真似をしてくれたじゃ…ねぇかぁ。」

 

暫く交戦した後、二郎丸は例の崖際まで追い込まれてしまっていた。そして勝ち誇ったかの様に嘲笑う蛙鬼がゆっくりと近づいて来たとき、二人がいた地面が崩れてしまい、瓦礫と共に落ちてしまったのだ。

 

絶体絶命の中、二郎丸は驚くほど冷静だった。

 

落ちる中で蛙鬼に器用に近づくと先ずは腕脚を切り落とし、馬乗りになった。そしてそのまま力を込めて頚を叩き斬ろうとしたのだが、その前に地面に到達してしまい、そのまま投げ出されてしまったのだ。

蛙鬼の体を盾にして、落ちた衝撃は幾らか吸収出来たが、それでも強い衝撃であったことには変わりはなく、瓦礫に埋もれていく蛙鬼を見ながら二郎丸は意識を失ったのだ。

 

「…お前が馬鹿なだけじゃないの?」

 

軽口を叩いているが、二郎丸は非常に焦っていた。

痛みからして、左腕とあばら骨数本が折れてしまっている、辛うじて肺には刺さってないようだが、無理に動けばそうなるのも時間の問題である。そんな中で自分一人だけであり、誰の助けも借りることができない。正に絶体絶命であり、二郎丸は既に死を覚悟していた。

 

「はんっ、お前は今の状況を分かってんのか…よぉ!!」

 

「がぁ!!」

 

勢いよく薙ぎ払われた腕により二郎丸は吹き飛ばされる、が、二郎丸は直ぐに立ち上がっていた。

 

「ほぉ、まだ立ち上がれるかぁ。」

 

全身に激痛が走る中で、二郎丸が立ち上がれるのか、それは彼自信が『自分の苦痛を一切苦と思わない』からである。

だがそれでも、怪我をしている事には変わりはなく、無理は出来ないことは二郎丸もわかっていた。

 

「ぐぅ…!」

 

蛙鬼に体を握られ、骨の軋む嫌な音がする。振り払おうにも力が強いため、それはできなかった。

 

「ガハハハ!いぃ顔じゃねぇかぁ!」

 

顔を歪める二郎丸を見て大笑いする蛙鬼、そして二郎丸を喰おうと大きく口を開けたとき

 

「うおおおおお!!!」

 

「…あぁ?」

 

頭上から唸り声が聞こえてきた。声のする方向を見れば、何かが崖の傾斜を滑り降りていた。

 

そしてその正体は。

 

「さ、齊藤さん!?」

 

そう、齊藤であった。

 

「墨影さんから、離れろぉぉ!!」

 

崖から跳び上がり、蛙鬼に向かって刀を振り下ろす。

 

「ふん、邪魔だぁ!」

 

「ぐぁ!?」

 

「あぁ!」

 

だが、その刃は届くことはなく、そのまま薙ぎ払われてしまった。

 

「くそ!まだだ!!」

 

だがそれでも立ち上がり、蛙鬼へと向かって行く。

 

「ふんっ!」

 

「がぁ!!」

 

だがまたしても、薙ぎ払われてしまう。

 

だがしかし

 

「まだだ!!」

 

それでも

 

「まだまだぁ!!」

 

何度も

 

「はあ゛ぁぁぁ!」

 

立ち上がり

 

「だぁっ!」

 

立ち向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

「ふん、まだ立ち上がるかぁ。」

 

既に齊藤は立ち上がる事がやっとの状態であった。

 

「齊藤さん!もう辞めてください!死んでしまいますよ!」

 

今にも倒れそうな齊藤に辞めるように懇願するが、

 

「…構わないでですよ。」

 

「え?」

 

齊藤は遠回しにそれを否定した

「貴方に救われたこの命、貴方を助けて死ぬのであれば…それは寧ろ、本望だ!!」

 

「下らん。」

 

「がぁ!」

 

未だに立っている齊藤に対して舌を伸ばして振り払う。

 

「お前はもういぃ、死ね。」

 

「齊藤さん!」

 

そして倒れた齊藤を殺さんと、再び舌を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全集中 炎の呼吸 肆の型 『盛炎のうねり』!!」

 

「え?」

 

「なんだと!?」

 

だが齊藤に届くことはなく、突如現れた炎の壁によって阻まれた。

 

「全集中 蛇の呼吸 壱の型 『委蛇斬り』。」

 

「グァ!?」

 

だが驚くのも束の間、二郎丸を掴んでいた腕を斬り落とされ、その影響てバランスを崩し、そのまま倒れてしまった。

 

「遅れてすまぬ!」

 

「待たせたな。」

 

「杏寿郎!伊黒!」

 

そう、二人が助けに来たのだ!

 

「齊藤殿、大丈夫…ではないな!」

 

「…はい。」

 

「二郎丸は?」

 

「大丈夫!」

 

「なら良し!」

 

「んな訳ないだろ。」

 

「おぃ、何を無視してるんだぁ?」

 

「「ん?」」

 

振り向けば、蛙鬼が怒りの表情を露にしていた。

 

「さっきからこの俺を苛つかせる様なことばかりしやがってぇ…、どうなるか分かってるんだろうなぁ!?」

 

「ふん、貴様が怒る等、とんだ検討違いだ。むしろ、今まで喰って来た者達の怒りを受けるべきだ。」

 

「その通り!そして俺たちも今正に怒っている!」

 

「そういう事、それもお前の比じゃないからね。」

 

「お、俺だって!「「「大人しくして(ろ)(くれぬか)(下さい)。」」」あ、はい。」

 

一度離れはしたものの、今再び、炎蛇影が集った。

 

四人の反撃が今始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、待って下さい…、速すぎますよ…。」

 

いや五人だった。




関係無い話ですが、シリアスを書くのは苦手だと感じました。

※齊藤のそれは火事場の馬鹿力です。
炎の呼吸 惨の型は捏造したものです。

番外編はどれを読みたいですか?

  • 隊士訓練で二郎丸が不在時の炎と恋の話
  • スケベ隊服について
  • 炎蛇影の合同任務
  • どうせなら全部書いて
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