これからもよろしくお願いします。
(不味いな、隙が全くないんだけど。)
悲鳴嶼との試合を開始したのだが、二郎丸は防戦一方、隙を見て攻撃するも届く前に殆ど捌かれ、仮にその防御を掻い潜ったとしても、その巨体からは想像もつかない程身軽に動くため、あっさり避けられてしまっていた。
そもそも、二郎丸が悲鳴嶼に勝る点が無いに等しい。
二郎丸の身長は六尺弱(180cm)と一般男性と比べても非常に背が高いのだが、悲鳴嶼と比べると頭頂が肩の高さにも及んでないのだ、そしてこの身長差は筋肉量や攻撃範囲の差に直結する。
背が高ければその分筋肉を増やせる為より力強くなり、手足も長くなる為より遠くまで攻撃が届く。
更に悲鳴嶼は既に六年もの間柱として在任しており、より強い鬼と何度も戦闘を行っている、対して二郎丸は鬼殺隊に入隊して四年で昨日影柱(仮)になったばかり、つまり経験の差もあったのだ。
そしてお互いに二刀流であり、恐らく技能でも負けている。
(だけど、けして勝てない訳じゃない。)
こんな絶望的な状況であるが、二郎丸はけして諦めてはいなかった。
「…よし。」
悲鳴嶼の攻撃を捌き後方へと大きく飛び退くと、木刀を上段で大振りに構え、すぐさま悲鳴嶼に向かって飛び出した。悲鳴嶼はそれを弾き返そうと木刀を振るうが、二郎丸にとってそれは好都合だった。
「があぁぁぁぁ!!」
「む?」
二郎丸の振るった木刀は空を切り裂く程の速度で振るわれ、逆に悲鳴嶼の攻撃を弾き返した。
「なっ、悲鳴嶼さんの攻撃を弾き返しただと!?」
それを見ていた宇随は非常に驚いていた。いや、宇随だけではなく他の者も驚いていた。が、杏寿郎、義勇、伊黒は他とは違いニヤリと笑みを見せていた。
「義勇君、何か知っているの?」
その様子に気付いた胡蝶は不思議に思い義勇に問う。
「あぁ。二郎丸は、全てを同時に動かしている。」
「え?どういうこと?」
「む?そのままの意味だが?」
だが口数が少なく、且口下手な義勇が人に説明するなど、余りにも無謀なことだった。
「それでは誰もわからんだろう、俺が説明する。」
それを聞いて呆れた伊黒が、代わりに説明することになった。
ーーーー
二郎丸は趣味の旅で鍛えられた脚力は秀でているが、腕力は幼馴染である杏寿郎には劣る。だが二人が刀で打ち合った場合、必ずと言っていい程二郎丸が打ち勝つのだ。その理由は二郎丸の体の動かし方にあった。
二郎丸は刀を振る為の筋肉を全て同時に動かすことができる。
一見簡単なように思えるかもしれないが、そんな事は一切無い。ただ刀を降るにしても、無意識で肩から肘へと動きが開始、そして完結してしまう。また、どちらかを一切動かさないという事もある為、非常に難しいことなのだ。
だが仮に同時に動かすことができれば、それ以上の速度と力で刀を振ることができるのだ。
更に二郎丸は手首、腰、腹筋、背筋と、上半身の全てを駆使するため、振るう刀は空を切り裂く音がする程の速度になり、その速さが乗った攻撃は、本来二郎丸が持つ力以上の威力を発揮できるのだ。
ただ、それを無意識で行うのは二郎丸でさえも不可能なことであり、扱うには高い集中力を必要とする。更に体への負荷も大きいため、痛に対する耐性が非常に高い二郎丸でない限り、長時間使用することは厳しいものだった。
ーーーー
「それがあのタネだ。因みに墨影はこれを『連結動作』と言ってたな。」
「そういうことだ。」
「黙れ冨岡。」
「…ありがとう、理屈はわかったわ。」
「けどよ、本当にそれを実現させてしまうなんてな。」
伊黒の話を聞いた胡蝶と宇随は未だに信じられないようだった。特に胡蝶は強いという事は分かってはいたが、ここまでとは想像していなかった。
「確かに信じられぬかもしれん。だが、それをやってのけるのが二郎丸と言う男だ。」
「煉獄、お前も似たようなものだぞ。」
「何と!」
「…その通りだな。」
「お前もだ冨岡。」
「(心外!)」
「何だその腹立つ顔は。」
「…まぁ、あいつが想像以上にド派手な奴だったのはわかったぜ。」
たまにあらぬ方向に飛ぶ話をしながら、中々に面白い奴が現れたと、宇随はそう思うのだった。
(…いける!)
一方、これを好機と見た二郎丸は反撃に出る。連結動作を駆使して速さと威力を増した連撃を繰り出し続けた。それに対して悲鳴嶼は防御するが二郎丸の攻撃に圧されてどんどん後退りする、攻守逆転した瞬間だった。
「せいっ!やあぁ!!」
「ぬぅ!ふんっ!」
しばらく攻防を繰り返す中、ふと悲鳴嶼が呟いた。
「成る程、素晴らしい技術だ。であれば、私も本気を出そう。」
「……え?」
そして打ち合った瞬間、二郎丸は吹き飛んでいった。
「なぁ!?」
一瞬、何が起こったのか理解できなかったが、吹き飛ばされたことに気づくと空中で体制を整えて着地する、が
「まだだ。」
「のわ!?」
既に目の前には悲鳴嶼がおり、間髪入れずに攻撃を仕掛けてくる。咄嗟に防御するが、それも叶わず再び吹き飛ばされてしまった。
(ま、まだ)
「終わりだ。」
「」
浮遊する二郎丸の頭上には、何故か悲鳴嶼がいる、二郎丸を吹き飛ばしたと同時に、止めをさすために自分自身も飛び上がっていたようだ。
「南無!!」
「がっ!?」
無防備な状況で木刀を振り下ろされ、地面に叩き付けられたと同時に二郎丸の意識も吹き飛んでしまった。
「…んぬ?」
しばらくして、縁側に寝かされていた二郎丸は目を覚ました。
「良かった、目が覚めたのね。」
二郎丸の近くには胡蝶が腰かけており、
「…南無阿弥陀仏。」
悲鳴嶼が涙を流しながら見下ろしていた。
「うわっ、悲鳴嶼さん!?」
「あ!急に動いちゃダメよ。」
悲鳴嶼に驚いた二郎丸は飛び退こうとしたが、その前に胡蝶に押さえられてしまった。
「…すまなかった。」
「え?」
少しして、急に悲鳴嶼が謝ってきた。
「え?あぁ、謝らないで下さいよ!寧ろいい稽古になりました。」
「それもあるが、今はそうじゃない。初めて会ったときに、怖がらせてしまったな。」
「え?」
何故そんな昔のことを話すのかと疑問に思う、すると悲鳴嶼は自分の過去を語りだした。
当時は寺で子供達と暮らしていたが、ある日言いつけを守らずに夜になっても帰らなかった子供が鬼に唆され藤の香を消して寺を襲わせたこと、
自分の言うことを聞かずに外に飛び出した子供達は鬼に殺され、唯一助けられた子には人殺し扱いされて死刑囚になったこと、
それ以来、子供を信用出来なくなってしまったこと、
悲鳴嶼から聞いた話はかなり鬱なものであった。
「…成る程、だからだったんですね。」
二郎丸は、当時自分に向けられた嫌悪感の意味を理解した。
「あの時は仕方のない事だとは分かっていた、そしてお前が優しく正直であることも零郎殿から聞かされていた。だが、それでも割り切れない自分がいる。だが、」
すると、膝を折って二郎丸の目線に合わせると、頭の上に大きな手を乗せてきた。
「そなたは全うに育ったようだな、零郎殿の言ったことは本当であった。あの時、疑ってしまって本当にすまなかった。」
そう言って優しく微笑んだ。
「悲鳴嶼さん、
子供扱いしないで下さいよ、僕はもう十八才ですよ。」
「墨影君、気持ちは分かるけど言うべきことはそれじゃないと思うわ。」
膨れる二郎丸に対して胡蝶がツッコミを入れる。
「そうか、もうそんなに経っていたか。だが子供扱いされていると思う辺り、まだ自分が子供であることを自覚しているようだな。まずはそこを直すべきだな。」
「なっ///」
「フフフッ♪」
「何笑ってるの胡蝶さん?」
「あら、ごめんなさいね♪」
色々と脱線したが、こうして二郎丸は数年後しに悲鳴嶼との隔たりを取り払うことができたのだった。
※この後悲鳴嶼さんは二郎丸から連結動作の詳細を聞いて、一年後に使いこなせるようになります。
※本来は試合を通して和解しようとしていましたが、うっかり気絶させてしまいカナエさんに怒られました。
番外編はどれを読みたいですか?
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隊士訓練で二郎丸が不在時の炎と恋の話
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スケベ隊服について
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炎蛇影の合同任務
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どうせなら全部書いて