墨影二郎丸は影柱(仮)に就任しました   作:トライオ

2 / 24
プロローグ
就任、影柱(仮) 前編


某柱合裁判の約三年前

 

とある日の産屋敷、お館様こと当主・産屋敷耀哉の元に、一人の隊士が呼び出されていた。

 

「二郎丸、頭を上げてくれるかい。」

 

「はっ!」

 

お館様にそう言われ、跪いていた隊士は頭を上げる。

 

雪の様に白い髪に宝玉を埋め込んだかのような翡翠色の瞳、そして隊服の上から頭巾のついた漆黒の外套を羽織っていた。

彼の名は墨影二郎丸、影の呼吸を扱う十八才の階級乙の隊士だ。

 

「今日は来てくれてありがとう、急に呼び出して悪かったね。」

 

「いえいえ、お気に為さらないで下さい。」

 

二郎丸はお館様の鎹烏により直々に呼び出され産屋敷に足を運んでいたのだ。

 

「それで、君を呼び出した理由だけど、」

 

「はい…。」

 

二郎丸はその言葉の続きを固唾をのんで待つ、そして御方様の口から出た言葉は、

 

「二郎丸、君を特例として十人目の柱、“影柱”に任命したいんだ、席がないから“仮の柱”としてだけどね、それでも引き受けてくれるかい?」

 

「……え?」

 

まさかの柱の任命だった、そしてそれを聞いた二郎丸は呆けてしまった。

 

「お、お待ち下さいお館様。」

 

「なんだい?」

 

「僕…私はまだ柱となる条件を満たしていないのですが。」

 

柱になる条件は『階級甲であり十二鬼月を討伐している。』又は『階級甲であり鬼を五十体を討伐している。』なのだが、そもそも二郎丸は階級乙であるためどちらの条件も満たせていない。

因にだか、二郎丸がこれまで任務で鬼を討伐した数は二十五体だ。

 

「確かにそうだね、」

 

その後だけどねと続ける。

 

「君は任務外でも鬼を討伐していたんだよね?」

 

「…はい?」

 

そう、この男、任務でなくても鬼をバッサバッサと討伐していたのだ。その討伐した数は任務時の倍近くあり、任務時合計すれば七十体を越えているのだ。

 

「それに、十二鬼月を二体討伐しているよね。」

 

「…いや、それは複数人の隊として討伐したのですが。」

 

「話を聞けば君が他の隊士を庇いながら殆ど戦っていたみたいだね。」

 

「…あー。」

 

「あと、剣の腕も杏寿郎と同等だと本人から聞いているよ。」

 

「…」

 

この時、二郎丸は金髪の目をかっ開いた一つ下の幼馴染の顔を思い出していた。

 

「二郎丸、君は既に柱になれる筈だったんだ、だからこそ私は仮としてでも柱として任命したいんだ。」

 

「…」

 

そう言いお館様は二郎丸を説得するが当の本人は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(不味い、どうすれば柱に成ることを断れるんだ!?)

 

こればかり考えていた。

 

何故そう考えるのか、その理由は“立場に縛られたくない”ただそれだけである。

 

二郎丸の趣味は旅である、寝泊まりは宿や藤の家紋の家を使用すれば良い。任務は鎹烏が伝えてくれる、更に報酬も届けてくれる。着替えなどは藤の家紋の家や訪れた川で出来る。

鬼殺隊の立場を利用しての旅は、案外不自由がないため二郎丸は今の状況を気に入っていた。

 

だが柱となればそれはそれが出来ないと考えていた。たかがそれしき、責任感はないのか、等と思われるかもしれない、ただ彼にとっては唯一の、それでいて最大の趣味であるためどうしてもやめたくない。それに任務でなくとも鬼を討伐すれば誰かの助けになれるとも考えていた。(ただ、任務時の倍近い数の鬼を討伐することになるとは思っていなかったが)

 

以上のことから二郎丸は柱(仮)の任命を断ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お館様。」

 

二郎丸が重い口を開いた。

 

「確かに仰る通りかもしれません、ですが私はまだ階級は乙です、柱になるにはにはまず階級甲にならなければなりません。それで私か柱(仮)となれば多くの者から反感を買うかもしれません。私はそれは避けたいです、なので今は柱になることは出来ません。」

 

様は今の階級を盾に断ろうとしていた。

 

「…確かにそうだ、ごめんね。わかった、今回の話は保留にしよう。」

 

だがその後あっさりと引き下がってくれた、二郎丸にとっては喜ばしいことなのだが、お館様のひどく申し訳なさそうな顔を見ると自身の良心がえぐられるような気がした。

 

「そ…それでは私はこれで…、」

 

「あぁ、二郎丸、少し間ってくれるかい?もう一つ話があるんだ。」

 

話を聞くと、とある森で鬼が出たらしく何人もの隊士が討伐に向かったが未だに討伐出来ておらず更に近くの村にも被害が出てきているらしい。柱に頼もうにも今は全員忙しくすぐに向かうことが出来ない、そこで現柱に匹敵する実力を持つ(と言われた)二郎丸にその討伐を頼みたいとのことだった。

 

「二郎丸、引き受けてくれるかい?」

 

「御意。」

 

元々断る理由も無いが、柱(仮)の任命を断ったこともあるため、その任務を引き受けることにした。

 

「ありがとう、すごく頼もしいよ。任務が終わったら私に直接報告してほしい。」

 

「承知しました、では私はこれで失礼します。」

 

そう言ってお館様の元を去るとすぐさま目的地へと向かっていった。

 

 

 

 

番外編はどれを読みたいですか?

  • 隊士訓練で二郎丸が不在時の炎と恋の話
  • スケベ隊服について
  • 炎蛇影の合同任務
  • どうせなら全部書いて
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。