定食屋『満福』
都会の大通りから少し外れた小道に隣接する定食屋。
早い・旨い・安いを標語としており、どの料理も値段も安いが、非常に美味しいと評判であり、立地の割には非常に賑わっている。
二郎丸と杏寿郎は、柱になる前からこの店に通っており、店主とも親しくなっていた。
「頼もう!」
「ごめん下さーい。」
「いらっしゃい…あ!二郎丸君に杏寿郎君!久しぶりね!あら、その子は?」
「俺の継子の蜜璃だ!」
「はじめまして!」
「あらそうなの?すごい別嬪さんね~。」
「べっ!?」
今やすっかり親しくなった店主の奥さんに案内され、板前で蜜璃を挟んで三人横並びで座る。
「二人はいつもので良いかい?」
「はい。」
「勿論!」
「え、何ですかそれは?」
「む、気になるのか?」
「はい。」
「そうか、俺達がいつも頼んでいるのはあれだ。」
そう言って一つの掛札を指差した。蜜璃が見た先には、
『満福限定!満足特盛定食』
と書いてあった。
「私も同じ物をお願いします!」
「え!?」
驚く店主、対して蜜璃は目をキラキラと輝かせていた。
「だ、大丈夫なのかい、お嬢ちゃん?」
「はいっ!食べることは好きなので!」
「店主、今している心配はしなくても大丈夫だと思うが。」
心配する店主だが、杏寿郎は不要だと言う。
「なら、いつものを三人前で良いかい?」
「うむ、よろしく頼む!」
「…そうかい、分かった!」
店主はそう言ってニッと笑うと厨房へ引っ込んで行った。
二郎丸は席に着いてから悲鳴嶼から出された課題の事で黙って悩んでいた。本来じっとして物を考える事は性に合わないのだが、そんな事を気にしている暇はないと思い、こうして悩んでいたのだ。
心配してか、二人が話しかけてきた為、その事を話すと、蜜璃はある程度納得したが、二郎丸の性を知っている杏寿郎は、「不思議なこともあるものだ」と呟いた。
それからも少し考えていたが、三人分の定食が運ばれて来たため、考える事は一端中断することにした。
「「「いただきます!」」」
三人で声を揃えた後、二郎丸は煮物を箸で一つ摘まみ口に含む。やっぱりいつ食べても美味しい、と、顔を綻ばせながらそう思った。
「ん~、美味しい!」
ふと、蜜璃の方を見ると、かなりの速さで料理を食べ進めている。
ただ、料理を口に含む度に幸せそうに顔を綻ばせていた。
「二郎丸さん、どうしたんですか?」
二郎丸の目線に気づいたのか、蜜璃が二郎丸の方に振り向く。
「いや、幸せそうな顔をするな~と思ってね。」
「え、どういう事ですか?」
二郎丸はそう言うが、蜜璃はその言葉に疑問を持った様だ、どうすれば伝えられるか二郎丸は少し考え、出てきた答えは、
「可愛い笑顔だな…て、」
あ、間違えた。
二郎丸は直感でそう思った。
「へ!?///」
その言葉を聞いた蜜璃は一気に顔が赤くなりワタワタし始めた。
「…はぁ~~…。」
対して二郎丸はまたもや冷や汗を流しはじめ、大きくため息をつき頭を抱えてしまった。
「美味い!美味い!」
そしてそんな二人を他所に、二郎丸は料理を食べ進めていた。
「そういえば、何か一つでも戦闘技術は思い付いてあるのか?」
炎柱邸への帰り道で、杏寿郎がそう聞いてきた。
「うん、あるにはあるよ。」
「なんと!是非見せてくれぬか?」
伊黒も同じ様な事を言ってたなと思いながら、二郎丸はそれは没にしたと伝えたが、
「構わん!見せてくれ!」
そう言ってきたのだ。それを聞いた二郎丸は仕方ないと思いながら、杏寿郎達にも見せることにした。
炎柱邸に戻った後、二郎丸はその戦闘技術を二人の前で扱った。木刀の起動に添って抉れた跡が出来た丸太を見て、蜜璃は杏寿郎の様に目をかっ開いて驚いていた。
そして、その戦闘技術の欠点を伝えたが、
「二郎丸、その戦闘技術は使えるかも知れぬぞ。」
そう言ったの、どうやら杏寿郎には考えがあるようだ。
「え、でも」
「両手で構えればその危険性はいくらか軽減出来るのではないか?」
「あ、そうか!」
確かにその通りだった、だがそうすれば新たな問題が出てきた。
「でも、そうすれば、可動域がより狭くなる。」
二郎丸でさえ片手でも関節の可動域が足りないのだ、両手で扱えば、より制限されてしまう。
「確かにそうだ、男である俺達ではな。」
「?」
一瞬、二郎丸は疑問に思ったが、その言葉の意味を直ぐに理解した。
「…女性隊士に」
「その通り!」
確かに女は男に比べれば関節の可動域はかなり広いと聞いたことがある。であれば、両手であっても扱えるかもしれない。
「成る程、参考になったよ杏寿郎。」
「いや、礼はいらぬぞ二郎丸!だからその戦闘技術を
是非蜜璃に教えてやってほしい!」
…ん?
「蜜璃は男達と比べても力が非常に強いのだ。だがな、太刀筋が遅いんだ。どうすれば良いか悩んでいたのだが、その戦闘技術を扱える様になれば…ん?どうした二郎丸。」
「…。」
二郎丸は頭を抱えていた、これでは断ろうにも断れなくなったと。
思い返せば、柱(仮)に就任する時も御館様に言いくるめられて、今回の課題についても悲鳴嶼さんに言いくるめられてた様な気がする。
「大丈夫か、二郎丸。」
杏寿郎は心配してか、顔を除き込みながら尋ねてきた。
「……うん。」
「そうか、なら良かった!蜜璃!今日から二郎丸もお前の師範になるぞ!」
「え!本当ですか!?」
「え?」
違った、どうやら先程の問いは蜜璃にあの戦闘技術を教えるか否かの確認だったようだ。ここまで幼馴染と意志疎通が出来ないことは初めてであった。
「という訳だ!頼むぞ二郎丸!」
「改めてよろしくお願いします!二郎丸さん!」
と、笑顔で二人は言ってきた。
「………うん、よろしく。」
どうやら断れそうにないらしい、そう考えて天を仰ぐ二郎丸。
ただ、明るい笑顔を見せる蜜璃を見た時、これも悪くないかなと思うのだった。
※二郎丸は頼み事に対して、嫌だと思っても明確に断る理由が無ければそのまま受けてしまうところがあります。
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隊士訓練で二郎丸が不在時の炎と恋の話
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スケベ隊服について
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炎蛇影の合同任務
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どうせなら全部書いて