「はぁ~…。」
「む?よもやよもや、久しぶりだな二郎丸!ため息とは珍しいな!」
炎柱邸の縁側で、足を投げ出して大の字に寝転びため息をつく二郎丸を見つけた。合うのは二週間ぶりであり、声をかけたが返事が無い。
「…二郎丸どうしたのだ?」
「…んぅ?あー、杏寿郎、実はねー。」
もう一度話しかけ、ようやく返事をする二郎丸、だがその声には元気がなかった。
こうなっているのには理由があり、約一ヶ月程前に遡る。
「…それは、柱をやめろということですか?」
「いや、そうではない。」
急に悲鳴嶼から『柱の任務を解く』と言われ、不安になる二郎丸だが、悲鳴嶼の返事を聞いてある程度安心する。
「では、次は僕に何をして欲しいんですか?」
そして、悲鳴嶼が説明する事が苦手である事を思い出し、言いたいであろう事を質問する。
「うむ…それはだな。」
そして、次の頼みとは
「一般隊士達の育成を頼みたい。」
「…はい。(うわぁ…)」
二郎丸はまた面倒な事を任されたと思った。
そして今に至る。
「成る程、道理で最近来てなかった訳だ。」
二郎丸の話を聞いた杏寿郎は、暫く来てなかった理由に納得した、と、同時に項垂れている理由も理解した。
本来、二郎丸の根本的な性質は『自由奔放』。何かしらに拘束される事をかなり嫌っているのだ。だが、それ以上にお人好しであり、結局殆どの頼み事を引き受けていた。
不満が無いと言えば嘘になり、その不満は疲労となるが、それらを表情に出すことが無い為気付かれることがなかった。
そして、それらを一番理解しているのは、幼馴染である杏寿郎だった。
「二郎丸、お前にも自分の都合がある筈だ、断る事は別に悪いことじゃない。」
そして聞かないだろうと思いながらも二郎丸に忠告する。
「…考えとく。」
「やる気はなさそうだな。」
二郎丸のこの返事は『行動に移す気はない』と言う意味もあり、杏寿郎は半ば諦めるのだった。
「そう言えば、隊士達の指導はどうだ?」
少しして、杏寿郎は少し気になっていた隊士達の指導の状況を聞くことにした。が、
「全然駄目だね。」
「む?」
急に二郎丸の表情が険しくなった。
話を聞けば、隊士達を自分の屋敷に迎え入れて指導しているのだが、隊士達は筋力、体力の水準が低く、剣術や戦闘技術以前の話らしい。やる気の無い隊士達も多く覚えの悪いのが殆どだった。
「む、むう…俺がいうのも何だが、少し厳しいのではないか?」
「え?体力向上の為の走り込みは十キロを二回の合計十キロにして真剣じゃなくて木刀で百回の素振を合計五回で筋力向上の為の訓練は一キロの重石を両手足に括り着けるだけにおさえてて訓練の時間に関しては隊士達に極力会わせてるんだけど?」
「二郎丸、それは流石に甘いのではないか?」
「だよね!?」
どうやら相当鬱憤が溜まっていたようだ、それからも、やれやれ妬むくらいなら素振りをしろ、やれ蜜璃の方が実力がある、やれまだ常中をに習得していない、やれ簡単に根を上げてうるさい等、愚痴がどんどん出てきていた。だが杏寿郎は普段不満を言わない二郎丸が珍しく愚痴を言っている為、甘んじて聞いてやる事にしたのだった。
「師範~、ただいま戻りました!」
「ん?」
玄関の方から聞き慣れた声が聞こえてきた、声の主は杏寿郎の継子であり二郎丸の弟子でもある甘露寺蜜璃であった。そして今更ながら炎柱邸に蜜璃が居なかったことに二郎丸は気付いた。
「おぉ蜜璃!戻って来たか!」
杏寿郎は嬉しそうに声をあげると、直ぐに玄関に走って行く、そして二郎丸も不思議そうに思いながらも杏寿郎の後を追う、そして二人は玄関にたどり着く前に廊下で蜜璃と鉢合わせた。
「蜜璃、よく戻ってきた!」
「はい。あ、二郎丸さん!来てくれたんですね!」
二郎丸を見つけた蜜璃は嬉しそうに駆け寄ってきた。が、蜜璃の着ている服はいつも稽古の時に着ている道着だが、擦れた跡や鋭利な物できられた傷があり、蜜璃自信も擦り傷や切り傷、そしてそれらを手当した跡があったり、包帯を腕や額に巻き付けていた。
「だ、大丈夫!?」
それを見た二郎丸は蜜璃以上の速さで蜜璃の目の前に駆け寄った。
「ふぇ!?」
「…骨折とかはしていないみたいだね、怪我も今見える範囲だけみたいだし…ならば良し…なのか?」
「あ…はい//」
「?」
蜜璃は嬉しそうな、恥ずかしそうな様子で顔を染めて俯いてしまうが、二郎丸にはその表情は見えず頭に疑問符を浮かべていた。
「…あー二郎丸、ちょっと来てくれ。」
「え?」
何かしらを察した杏寿郎は二郎丸を呼ぶ。
「蜜璃、もう部屋に戻っていいぞ。」
そう蜜璃に声をかけた後、二郎丸を連れて自分の部屋に入っていった。
「さて二郎丸、杏寿郎は何の日かわかるか?」
自室に入って直ぐ、杏寿郎は二郎丸に対してそう訪ねた。
「え、何の日って?」
「やはり、忘れていたか…。」
が、二郎丸はわからない様で、その様子に杏寿郎は頭を抱えた。
(不味い、よく分からないけど何かやらかしたのは分かる。)
そう思った二郎丸は何が悪かったのか考える。そして、不意にあることを思い出した。
(…まてよ?そう言えば一週間前って確か。)
その、二郎丸が思い出したあることとは
「…最終選別。」
「なんと、思い出したか!」
どうやら正解の様だ。
「え、じゃああの怪我って。」
「うむ、もしかしなくても最終選別で出来た怪我だな。」
「成る程」
そう言って今度は二郎丸が頭を抱えた。
「俺は今の今まで蜜璃が最終選別から帰ってくるからこっちに来たと思ってたぞ。蜜璃も恐らく…いやあの様子だと絶対にそう思ってるな。お前が来てない間はそれでだいぶ拗ねてたから、今日来てくれた事が余計嬉しかったんだろう。」
「…そっかぁ。」
「取り敢えず、今まで来れなかった理由は言っておいた方が良いぞ。」
「分かった、そうするよ。ありがとう杏寿郎。」
そう言って二郎丸は部屋を出て蜜璃の部屋に向かうのだった。
「おーい、着替えとか終わった?入っていい?」
蜜璃の部屋の前で声をかけると襖が開き、蜜璃が現れた
「どうしたんですか?二郎丸さん。」
不思議そうに小首を傾げる蜜璃を前にして何と言うべきか少し悩む。
「えーと、最終選別合格おめでとう!」
「あ、ありがとうございます!」
蜜璃のその言葉を聞いて、間違いではなかったと安心する。が、不意に蜜璃があることを聞いてきた。
「そう言えば、この一ヶ月間何をしてたんですか?」
「…あー、」
取り敢えず二郎丸は、ここ一ヶ月間の事を全て話した。
「そうだったんですね、お疲れ様です。」
文句の一つでも言われることは覚悟していたが、その反応は割と淡白であり、それどころか労いの言葉を掛けられた。
「え、怒ったりしないの?」
拍子抜けした二郎丸は、そう蜜璃に訪ねた。
「はい、柱の方達が忙しいというのは師範の事を見て分かっていたので。」
「あ、そうなんだね。」
「ですけどね、寂しかったんですよ?」
そう言うと、少し拗ねた表情をした。
「…ごめんね」
「そしてすごく不安でした。」
「…う~ん、僕は柱だからそうそう死ぬ事は無いと思うけど?」
「そういう問題じゃ無いんですよ。」
「あ、うん。」
「後、今日までの事は怒ってはいませんが許した訳じゃ無いですよ」
そう言うと蜜璃は頬を膨らませそっぽを向いた。
「えぇ…。」
蜜璃にこのような態度をとられたのは初めての事であり、どうすれば良いか分からずオロオロし始めた。
「じ、じゃあどうすれば許してくれる?」
結局、考えた所で何も思い浮かばなかった為、素直に聞くことにした。
「…そうですね~」
蜜璃は少し考える動作をした後、再びこちらに振り向いた。
4
「なら近いうちに一緒に出掛けましょ。」
「え?そんな事でいいの?」
た
「そんな事じゃないですよ。二郎丸さんとのお出掛けする日はいつも楽しみにしてたんですよ?」
「そうだったんだね。分かった、今度一緒に出掛けよ。」
「はい!」
蜜璃は嬉しそうにした。
「あ、後、音信不通になるのは不安になるので週に一度はお手紙を下さい。」
「…考えとくよ。」
「行動に移して下さい。」
「ア、ハイ。」
「約束ですよ?」
「…うん、分かった。」
「そうですか、なら許してあげます。」
そう言って何時も通りの笑顔を向ける。
「そう、なら良かった。」
そんな蜜璃の様子に安心して、二郎丸も柔らかい微笑を浮かべた。
「話は終わった様だな。」
「「え?」」
二人が振り向いた先には杏寿郎が立っていた。
「どうしたの?」
「うむ、先ほど父上に蜜璃が合格した事を話したらな、祝いも兼ねて年の近い三人で食べに言ったらどうだといわれたのだ。」
「成る程。」
「と言う訳なのだが、二郎丸も大丈夫だよな?」
「あ、うん、まぁ、疲労が貯まること以外は今は毎日休暇みたいなものだからね。」
「そうか、ならば行くぞ!」
「え、今から?」
「うむ!」
「あ!師範待ってください!」
そう言って玄関に掛けて行き、その後を蜜璃が追いかける。
「…は!ちょっと二人共待って!」
そして、出遅れた二郎丸も慌てて二人の後を追いかけるのだった。
※家族がいなくなった二郎丸にとって、炎柱邸は第二の実家の様になっています。なので蜜璃が杏寿郎の継子になる前から結構炎柱邸に入り浸っており、自分の屋敷には服の洗濯や屋敷の掃除以外で殆ど帰っていません。
その為、一般隊士や隠達には『影柱に用がある場合は炎柱邸に行け』と言う認識が広まっています。
番外編はどれを読みたいですか?
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隊士訓練で二郎丸が不在時の炎と恋の話
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スケベ隊服について
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炎蛇影の合同任務
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どうせなら全部書いて