「という訳でございます。」
「報告ありがとう、助かったよ。」
後日、二郎丸は産屋敷を訪れ、任務の報告をしていた。
「まさか一人で討伐してしまうとはね、見事だよ、二郎丸。」
「はっ、有り難きお言葉。」
このように、社交辞令紛いの言葉を投げ合った後、お館様が口を開く。
「これだけの武功を上げれば、文句無しに昇格出来る様になった、寧ろ昇格出来ない方が皆から文句を言われてしまうね。」
ん?今なんと?
御方様の言葉が頭のなかで反芻する、階級乙の隊士が昇格すれば階級はどうなるか。あ、そう言えば任務に行く前御方様と何を話したっけ…、
「二郎丸は階級甲になれるよ、これで柱になる条件を全て満たしたね。」
この言葉がとどめだった
──しまった、嵌められた!──
あの時の二郎丸は階級を盾に柱(仮)に成ることを断った。逆に言えば、それがどうにかなってしまえば断る理由が無くなる訳で、任務を与えることでやや強引に階級を上げたのだ。
しかも、本来柱を向かわせる筈だった任務を二郎丸が単独で引き受け、見事にその鬼を討伐した。これで柱に匹敵する実力が間接的にだが証明された、これにより一層断りづらくなってしまった。
もしかすると自分が断ることを見越していたのかもしれない、そう思わずにはいられない二郎丸だった。
「どうしたんだい?二郎丸。」
二郎丸は戦慄していた、御方様の策略に、そしてそれに気づけなかった自分の鈍感さに
「いえ、何でもありません、大丈夫です。」
「そうかい、ならいいんだけどね。」
二郎丸は焦っていた、このままだと柱(仮)に任命されるのは確実、断れば回りから顰蹙を買うのは間違いなかった。
「それで、任務前に「お待ち下さい御方様。」ん?なんだい。」
二郎丸はお館様の言葉を遮った。
「先日話していただいた柱(仮)への任命のことですが、引き受けましょう。ですが、私が柱(仮)なるに当たって一つ願いがあります。」
言い終えた後、二郎丸は後悔した。なんて自分勝手で傲慢なのだろうか、柱(仮だけども)に任命されることは鬼殺隊の隊士としての誉の筈、それを自分の都合で断ろうとしていて、今は柱(仮)に成ることを条件に自分の都合を押し付けようとしているのだから。
だがお館様は
「わかった、その願いを受けよう。」
「………え?」
その都合を聴くまでもなくあっさりと受け入れてくれたのだ。
「どうしたんだい?言ってご覧。」
「え、あっ。」
呆けていた二郎丸に対して優しく促す。
「わ、私は一ヶ所に留まることが無いのですが、その事を許していただければ…」
素直に『旅が趣味なのでそれを許してほしい』と言えば良いのだが、今さら怖じ気づいていた。
「そんなことか、いいよ。」
あっさりと許しをもらえた、その事実に二郎丸は呆けてしまった。
「そう言えば、二郎丸は旅が趣味なんだよね、だったらその新しい道具も揃えてあげよう。」
「え!?」
お館様の提案に二郎丸は驚いた。
「お、お館様!そこまでされなくても!」
「良いんだよ、柱になった子ども達には屋敷を用意してるからね、それくらい安いものだよ、もちろん二郎丸にも屋敷は用意するよ。」
「いや、私は柱ではなく柱(仮)の筈では、」
「あくまで席がないから柱(仮)としているだけだからね、待遇は他の柱と何もかわらないとよ。」
「…」
ここまで話して、二郎丸は一つの疑問が浮かんできた。
「お館様、何故ここまで良くして下さるのですか?」
その問に対してお館様は穏やかに答えた。
「柱の子ども達は他の子ども達よりも実力が高く強い、それゆえに鬼との戦いに明け暮れることが多いんだ、もちろんそれには他より大きな危険が伴う。だからせめて、戦いの場以外では不自由なく過ごしてほしいんだ、これでもまだまだ足りないだろうけどね。」
そして御館様は更に続ける。
「実を言うと、君の実力は前から知っていたんだ、柱合会議にも出ていたほどなんだよ。ただ階級が足りなかった、それで柱にはなりたがっていないと予測はしていたんだ。」
そしてその予測は当たっていたよと苦笑いする。
「正直柱に成ることは断ると初めから思っていたよ。ただ君はかなりのお人好しだからね、何か明確な理由がない限り断れない、だからこそ、断る理由を無くしてしまえば嫌でも引き受けてくれると思ったんだ、任務中では誰よりも危険に飛び込み、同じ隊の子ども達をも守ろうとして、任務外でも率先して悪鬼を討伐するような…そんなお人好しの君ならね。」
「…」
「柱に無理やり就任させようとして本当に申し訳ない。だけど、鬼殺隊には力が必要なんだ。
鬼を、
十二鬼月を、
上弦の鬼を…
鬼舞辻無惨を倒す力をね。
だけども私はそんな力を持っていない処か、呪いの影響で常人以上に非力だ、だからその力を持つ他の者達を頼るしかないないんだ、そして君にはその力がある。だからこそ、その力を捧げてほしい。」
そう言ってお館様は手を床に付き深々と頭を下げた、
それを見た二郎丸は、呆然として唯々涙を流していた。
お館様の人と成りを観た、願いと想いを聴いた、そして、悪鬼──鬼舞辻無惨への憎悪と鬼殺隊の当主としての偉大さを感じた。
それに比べて、自分はなんと浅はかなことか。
今すぐに土下座してでも謝りたいと思ったが、お館様はそんなことを聞きたい訳ではない筈。ならどうするべきか、それはもう決まっていた。
「お館様、どうかお顔を上げて下さい。」
お館様が顔を上げると二郎丸は姿勢を正しお館様の目を見る、そして
「お館様、あなたの願い、想い、確かに聴き入れました。お望み通り、この力を貴方に、鬼殺隊に捧げましょう!
必要となれば何時でもお呼び下さい、直ぐにでも駆けつけます。
お館様の願いを叶えるために、鬼に虐げられし弱き者達を守るために、そして鬼舞辻無惨を屠るために!この力を捧げます!!」
言い切った。
それを聴いたお館様は、少ししてから、ありがとうと呟いた。
「なら、引き受けてくれるかい?」
「勿論です!」
それならば、と、お館様が姿勢を改める。そして
「二郎丸、君を特例として十人目の柱“影柱”に任命する。席がないから仮の柱としてだけど、その力を鬼殺隊の為に捧げてほしい、よろしく頼むよ。」
「御意!!」
この日、墨影二郎丸は影柱(仮)に任命された。
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隊士訓練で二郎丸が不在時の炎と恋の話
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スケベ隊服について
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炎蛇影の合同任務
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どうせなら全部書いて