インフィニット・ストラトス~死神と呼ばれるIS~リメイク 作:神喰いの王
「遅い!!」
一夏がアリーナへと着いた瞬間、千冬の怒声が響き渡った。
「すいません!」
一夏は頭を下げると列の一番端に並んだ。
「ずいぶん遅かったじゃない」
一夏の後ろに並んでいた鈴が声をかけた。
「道が混んでいたんだよ」
「嘘おっしゃい。マックスウェルさんとデュノアさんは間に合ってましたわよ」
今度は横にいるセシリアが声をかけてきた。
「あの二人に置いてかれたんだって」
キッと一夏はセシリアの横に居る二人(というよりもデュオ)を睨むとシャルルは申し訳なさそうに頭を下げ、デュオは明後日の方向を向いてまま口笛を吹いている。
「どうだか。大方何かなさったんでしょう?今朝のように」
「なに?アンタまた何かやったの?」
「こちらの一夏さん。今日来た転校生の女子に叩かれましたの」
「はぁ!?一夏、アンタなんでそう馬鹿なの!?」
「――――安心しろ。馬鹿なら私の前に二人いる」
ビシリッと鈴とセシリアの二人が固まり、ギギギっと壊れた機械のように振り向くと千冬が出席簿片手に立っていた。次いで響く炸裂音にセシリアの隣にいたシャルルは若干引きつった。
「ね、ねぇデュオ。こういうのってよくある事なの?」
「ん~・・・まぁな。割と理不尽に殴られる時があるからお前も気をつけろよ?」
デュオの忠告にシャルルは一瞬ブルっと背筋を震わせるとコクリと頷いた。
「では、本日より格闘及び射撃を含む実践訓練を開始する!」
「はい!」
一組と二組の合同演習の上、いつもより気合が入っているためにかなり大きい返事が返ってきた。
「くうう・・・何かとというと人の頭をポンポンと・・・」
「一夏のせい一夏のせい一夏のせい・・・」
そんな中、叩かれた頭を押さえながらセシリアと鈴の二人は涙目になりながらも恨み言を呟いていた。
「今日は戦闘を実演してもらおう。ちょうど活力が溢れんばかりの十代女子もいることだしな。――――凰!オルコット!」
巻き込まれた形のセシリアは文句を言うも専用機持ちは準備に手間取らないからだろうという千冬の発言に、二人は不承不承といった表情で前に出た。
そんな二人の耳元に千冬は顔を近づけて何かを呟くと二人の様子が・・・。
「やはりここはイギリス代表候補生。わたくしセシリア・オルコットの出番ですわね!」
「まあ、実力の違いを見せるいい機会よね!専用機持ちの!」
あら不思議。二人のやる気が急上昇した。
「ねえ、デュオ。二人共急にどうしたのかな?」
「・・・まあ。姉御が言った内容は大体予想がつくな」
あからさまな二人の態度にデュオは呆れながら一夏の方に視線を向けると、それだけでシャルルは理解し、逆に視線を向けられた一夏は訳がわからないと首をかしげた。
「なんだよ、デュオ?」
「ハァ~・・・(コイツ、その内刺されんじゃねぇの?)」
その異常な鈍感さで泣かせた女に近い将来刺されるのじゃないかと危惧しながらデュオは視線を戻す。
「それでお相手はどちらに?わたくしは鈴さんでも構いませんが?」
「ふふん。こっちの台詞。返り討ちよ」
「慌てるな馬鹿共。対戦相手は――――」
キィィィィンッ・・・・。
唐突に風切り音が響き、それも徐々に大きくなって言っている。
不審に思いデュオが視線を上げると、
「ああああーッ!ど、どいてくださあ~~いっ!!」
訓練用IS『打鉄』を纏った真耶がデュオたちのいる方へと一直線に落ちてきた。
デュオとシャルルを始めとした一夏以外の生徒は一斉にその場を離れ、反応の遅れた一夏はそのまま真耶と衝突した。
「吃驚したぜ。無事か、シャル?」
「う、うん。っていうよりも織斑くんは大丈夫なの?衝突コースだったような――――-」
「あ~・・・まあ。大丈夫だろ、咄嗟に白式を展開したようだしな・・・・って」
土埃が晴れると白式を纏った一夏と真耶がいた。そこまではいい。だが、二人の状態にデュオは言葉を失った。
何故なら、どうやったのか何故か一夏が真耶に馬乗りになり剰え彼女の学園随一の巨乳を揉みしだいているのだから!
「な、なんつう羨ましい野郎だ!ラッキースケベにも程g「デュオ・・・?」ア、イエナンデモアリナイッス、シャルサン」
自身の隣から途轍もない殺気と冷気と威圧感を感じたデュオは滝のような冷や汗を流しカタコトにならながらもシャルルに謝った。
「次はないから、ね?」
「リョウカイッス」
何やら一夏たちの方でもいい感じに修羅場っているのだが、デュオはそれを楽しむ余裕もなく只管にシャルルに謝るのであった。
そして、一夏の首を狙った(二重の意味で怒髪天状態の)鈴の『双天牙月』を真耶が華麗に撃ち落とし、真耶対鈴・セシリアタッグの模擬戦が行われた。
~原作通りなので割愛~
「ねえ、デュオ。今の試合どうみる?」
「どうもなにも、見たまんまだろ?折角二対一の状況なのに連携もせず一対一でやるわ、ただ相手に当てることだけしか考えていない二人に真耶ちゃん先生は冷静に二人の攻撃をかわし射撃で誘導してグレネードで二人まとめてドカン。技量の高さはさっきの一連の動作で大体解ってたはずなのにあれじゃあ、負けんのは当たり前だっての・・・」
何やってんだか、と頭を抱えるデュオにシャルルは苦笑するしかなかった。
デュオの言うとおり三人の模擬戦は一方的であった。
二対一という本来なら有利な状況にも関わらず、それも相手は訓練機で性能差でも有利だったのに、鈴とセシリアは個人が個人で勝手に動き、そこをつかれて二人まとめて撃破されたのだ。
苦笑するシャルルの視線の先には未だに言い争っている鈴とセシリアがいた。
そんな二人を見てシャルルは苦笑するしかなかった。
「さて、これで諸君にもIS学園教諭の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」
(いや~確かに実力は大体わかったけど、普段の真耶ちゃん先生を見ているとどうもな~)
デュオは普段からぽやぽやしている真耶の態度を見ているとそう簡単に切り替われないだろうと内心で思った。
「専用機持ちは織斑、オルコット、デュノア、マックスウェル、ボーデヴィッヒ、凰だな。では九人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやる事。いいな?では、分かれろ」
千冬が言い終わるや否や、一組と二組の女子が一気にデュオたちを取り囲んだ。
「織斑くん、一緒に頑張ろー!」
「マックスウェルくん、手とり足とり教えて!!」
「デュノアくんの操縦技術みたいな~」
「ね、ね、私もいいよね?同じグループに入れて!」
何というか、あまりに予想通りかつ大盛況っぷりに一夏とシャルルはどうしていいか分からず、デュオでさえ顔が引きつっていた。
そんな状態を見た千冬は自分の浅慮に嫌気がさしたのか、面倒臭そうに額を指で押さえながら低い声で告げる。
「この馬鹿共が・・・・。出席番号順に一人ずつ各グループに入れ!順番はさっき言ったとおり。次にもたつくなら今日はISを背負ってグランド百週させるからな!」
千冬の鶴の一声によって先程まで三人に集まっていた女子たちは蜘蛛の子を散らす勢いで各グループに並び始め、あっと今に専用機グループが出来上がった。
「最初からそうしろ。馬鹿共が」
ふうっとため息を吐く千冬に気づかれないように各班の女子たちはボソボソとおしゃべりをし始めた。
「・・・やったぁ。織斑くんと同じ班っ。名字のおかげねっ・・・・」
「・・・うーセシリアかぁ・・・。さっきボロ負けしたし。はぁ・・・」
「・・・・凰さん、よろしくね。後で織斑くんのお話聞かせてよっ・・・」
「・・・よっしっ。マックスウェルくんと同じ班。今日の私はついてるぅっ・・・・」
「・・・デュノアくん!分からないことがあったらなんでも聞いてね。ちなみに私はフリーだよ!・・・」
「・・・・・・」
因みに最後の無言の班は言うまでもなくラウラの班である。
真耶が訓練機の台数の説明を終え、各グループが作業に取り掛かかった。
授業中、一夏のグループがISをしゃがませるのを忘れその次の女子をお姫様抱っこして運ぶというハプニングが起き、便乗するようにシャルルの班も巻き添えになったが、デュオの班だけはそういう自体には陥らなかった。
理由は・・・・推して知るべし。
sideデュオ
「・・・どういうことだ?」
「ん?」
実習が終わったあと、一夏が妙にシャルルと一緒に着替えようとするのをなんとか躱した俺とシャルルは一夏に誘われて屋上で飯を食うことになった。
その時、気付くべきだった。絶対にこうなるってことに・・・・。
「天気がいいから屋上で食べるって話だったろ?」
「・・・そういう事ではなくてだな」
わかる、分かるぞ篠ノ之。お前の気持ちはよぉーく分かる。だからそう恨みがましくこっちを睨まないでくれよ?
人でも殺しかねない目でこっちを見る篠ノ之の視線から逃れるように顔を背けると、隣に座っていたシャルが小声で話しかけてきた
「(ねぇデュオ。もしかって篠ノ之さんって・・・)」
「(あ、わかった?篠ノ之だけじゃなく、凰とオルコットもあのバカに惚れてんだよ)」
そう言いながら視線を戻すと一夏が鈴とオルコットから酢豚が入ったタッパーとサンドイッチが入ったバスケットを渡されていた。
「(因みに間違ってもオルコットのサンドイッチを食うなよ?ヤバイから)」
「(や、ヤバイの・・・?)」
真剣な表情でシャルに忠告するとシャルは冷や汗を流しながら聞き返してきた。
ああ、ヤバイ。以前、一口食った一夏の顔色が急激に青くなり冷や汗がダラダラと流れていくのを目の当たりにしちまったからな~・・・。
「え、え~と。本当に僕たちが同席してよかったのかな?」
俺が遠い目で黄昏ているとシャルが冷や汗を流しながら一夏たちに訪ねた。
一応、篠ノ之達に気を使っての発言だったのだが、この唐変木は・・・
「いやいや、同じ男同士仲良くしようぜ。デュノア」
「あ、僕のことはシャルルでいいよ」
「おう。んじゃあこっちも一夏でいいぜ。色々不便もあるだろうが協力し合っていこう。わからないことがあったらなんでも聞いてくれ――――-デュオに」
「うぉい!?人任せかよ!」
余りにも情けない一夏の発言に思わずツッコミを入れる。
隣のシャルは可笑しそうに笑い、篠ノ之達は呆れていた。
この後、一夏達がラブコメか、と突っ込みたくなるようなやり取りがあるのだが、ムカつくので説明は省く。
「そういやさ、デュオとシャルルって知り合いなのか?」
(ついにきやがった・・・)
昼食を済ませ食後のお茶を飲んでいる時、急に一夏がこっちにとって聞かれたくない質問をしてきやがった。
「そういえばそうね、アンタ達ってなんか昔ながらの友達って感じがするんだけど・・・」
「確かに、それに今朝のHRでもマックスウェルさんのあの態度は異常でしたわ」
「で、実際どうなのだ?」
「え、ええと・・・」
四人の視線にシャルがどうしよう!?と目で訴えてきたので俺は頭を掻きながら溜息を吐く。
「あ~別に大したことじゃねぇよ。俺とシャルは幼馴染だからな、一夏風に言えばファースト幼馴染って奴?」
「あれ?でもマックスウェルさんは確か生まれはアメリカではなかったのですか?」
恐らく代表候補生とオルコット家の情報網で調べたであろうオルコットの質問に俺は肩をすくめて答えた。
「ああ、あれ。あれは半分ホントで半分嘘だ」
「どういうこと?」
「別に対した理由じゃねぇよ。ただ俺はアメリカ系の血が流れているってだけで本当は何処で生まれたのかすら分かんねぇしな」
「え?どういうことだよ?」
「どうもこうも、生まれた瞬間に捨てられて親の顔すら知らねぇんだぜ?で、たまたま捨てられた場所がアメリカの路地裏ってだけだしな~その時、偶然孤児院の神父が来てくれなかったらここにはいなかったけどな~」
いや~自分で言うのもなんだが結構シビアな人生を送ってるよな~俺。
そう染み染み思っていると周りの雰囲気がかなり暗くなっていることに気づいた。
あ、あれ?ど、どうしたんだよ??っていうか、事情を知っているシャルも暗くなってんだけど!?
「お、お~い・・・どうしたんだよ、急に暗くなっちまって」
「え、いや・・・」
「何というか・・・」
「その、ね・・・?」
「ええと・・・」
「お、おいおい。何しんみりしてんだよ、気にすんなって!別に大したことじゃねぇから!」
「大したことじゃないって、結構へヴィーな事、サラッといったぞ?」
「いや、大した事ないだろ?親がいないとか、お前らだって似たようなもんじゃん」
「うっ」
一夏、幼い頃両親が蒸発。
「むっ」
箒、保護観察プログラムにより現在家族離れ離れ。
「そ、それは・・・」
セシリア、幼い頃、両親を事故で失う。
「え、え~と・・・」
鈴、両親離婚につき現在父親の居場所は不明。
「あ、あはは~・・・」
シャルル、?
「なっ?全体から見たら大したことねぇって。それに向こうじゃあファザーやシスターヒルデなんかに良くして貰っててたしな。で、話を戻すけどその拾ってくれた神父、ファザー・マックスウェルはフランスの教会兼孤児院の経営者をやっててな、そこで七年ぐらい住んでてその時にシャルにあったんだな」
「へ~そうなのか。あれ?でもデュオってエジプトのウィナー社所属じゃなかったっけ?」
「ん、ああ。七歳になった時にウィナー社所属のあるジジイが俺を引き取って行ったんだよ。シャルとはそれっきりだったんだよな?」
なっ?とシャルの方を見るとコクコクと頷いた。
「だからあんなに驚いたんですの?」
「・・・・ん~まあな。今度の夏休み頃にフランスに行こうかと考えていた矢先のことだったからな」
俺の発言になにやら篠ノ之と鈴の二人は思うことがあったのか一夏の方を見つめていた。
まあ大体察しがつくので何も言わないでおいてやろう。
ふと、時計を見ると少しやばいな・・・。
「さって、そろそろ教室に戻ろうぜ。早くしねぇと次の授業に遅れちまう」
俺の言葉を合図に一夏達も後片付けを始め教室へと戻っていった。
sideout
「・・・・・」
「・・・・・」
夜、夕食を終えたデュオとシャルルは自室で無言のまま向かい合っていた。
因みに誰がシャルルと同室になるかという話はデュオと一夏でジャンケンで決めることになり、結果は見ての通りである。
余談だが、一人部屋になった一夏は現在一人部屋にて寛ぎ中だが、今はまったくもって関係ない話である。
「とりあえずよ、シャワー浴びてこいよ。キツいだろ?」
「う、うん・・・」
デュオに施されてシャルルは着替えを持ってシャワールームに入っていった。
シャルルがシャワールームに入っていくのを確認したデュオはココアでも淹れるかとキッチンへと入っていった。
「お待たせ・・・・デュオ?」
シャワーから上がり寝巻きに”彼女”はベッドにデュオがいない事に気づき辺りを見回す。
「お、もう上がったのか?ホレ」
キッチンから出てきたデュオは二つのマグカップを持って一つをシャルルに渡した。
「あ、ありがとう」
デュオはマグカップをシャルルに渡すと自身も向かい合うように椅子に座った。
「あ、美味しい」
ココアを一口飲んだシャルルは意外そうに感想を述べた。
「だろ?カトルの奴に教えて貰ったんだよ。市販のものだけどよやり方次第で美味しくなるもんだぜ?あ、カトルっていうのは今俺が所属しているウィナー社の御曹司で一夏風に言うならセカンド幼馴染って奴か?」
「そうなんだ・・・」
シャルルは微笑ましそうに笑うとデュオは照れくさそうに頭を掻きながらマグカップをテーブルに置いた。
「さって、んじゃあ話してもらってもいいかシャル。なんで女のお前が態々男装してまで入学してきたのか?」
「う、うん」
シャルはポツポツと事情を話し始めた。
まず、デュオがウィナー社に行ってから六年後に彼女の母親が病死し、その時に自分がデュノア社社長の愛人の子であることを知った。そして、そこで高いIS適性を持つことが分かった途端にIS開発の道具として使われてきた。男性としてIS学園へ転入したのも、世間へのアピールと、同じ男性IS操縦者である一夏やデュオとそのISのデータを盗むためだった。
「なる程な。確かにフランスは欧州連合の統合防衛計画『イグニッション・プラン』からも除名されちまったんだろ?第三世代の開発は急務。それで俺の相棒と一夏の白式のデータが欲しいってわけか」
「・・・うん。それにこのまま行けば、ISの開発ライセンスも剥奪されちゃうかもしれないから・・・」
それだけでなく会社の存続すら危うくなってしまう。だから起死回生の一手を打つためにシャルルを利用したのだろう。
そこまで考えたデュオは徐ろに席を立つとシャルルの傍まで行きそっと抱きしめた。
「え・・・・あ、デュオ・・・?」
突然抱きしめられたシャルルは目を白黒させながらデュオに尋ねるがデュオはただギュッと抱きしめるだけだった。
「悪かったな、お前がそんな大変な時に傍にいてやれなくって・・・」
「あ・・・・」
親が子をあやす様に優しく抱きしめるデュオにシャルルは段々と瞳から涙が溢れ出してきた。
「ヒッグ・・・ウ、ウ~~~!!」
彼女はスッとデュオの背中に手を回し抱きしめ返し彼の胸元に顔を押し付け声を押し殺して泣き出した。
デュオはそんな彼女の頭を優しく撫でるのであった。