インフィニット・ストラトス~死神と呼ばれるIS~リメイク 作:神喰いの王
「ご、ごめんねデュオ。服濡らしちゃって・・・」
あの後、泣き止んだシャルルは目を赤く腫らし、頬を赤く染めながら申し訳なさそうにデュオに謝った。
「あ~気にすんなって!第一、ガキの頃なんてしょっちゅう泣いてたじゃねぇか」
「も、も~!いつの頃の話をしてるの!?そ、それに大半はデュオのせいじゃないか!」
「そうだったけか?」
「そうだよ!」
「「・・・・プッアハハハハッ!!」」
戯けるデュオにシャルルは食ってかかるが次第にどちらかともなく笑いだした。
「あ~笑った。そんでシャル、これからどうすんだ?」
「う、うん・・・。本当なら本国に強制送還されて牢獄生活かな・・・」
「俺がそんなことさせると思ってんのか?第一、俺はお前がどうしたいか聞いてんだよ」
先程までの笑顔が嘘のように鳴りを潜め表情を暗くするシャルルをデュオは一蹴し厳しい表情でシャルルに尋ねる。
「え、僕がどうしたいかって、僕にそんな権利なんてないよ・・・」
本国に戻ったら国からの制裁は免れないし、かと言ってずっとここにいるのは不可能である。三年もすぎれば逃げ場はなくなる。遅いか早いかの違いである。
「権利云々じゃなくてよ、大事なのはお前の意志だろ?このまま会社の言いなりの人形になるか。それとも自分の意志で動くか決めるのはお前自身なんだぜ?」
「ぼ、僕の意思なんて・・・」
「無いなんて言わせないぜ?今日一日だけといってもお前は楽しそうに笑ってたじゃねぇか。あの笑顔が嘘なんて言わせないぜ。聞かせろよお前の意思を」
「ぼ、僕は・・・」
顔を伏せていたシャルルは顔を上げまた瞳を涙で滲ませながら真っ直ぐとデュオを見つめた。
「僕はもうあの冷たい場所に戻りたくないよ・・・助けて、デュオ・・・」
その言葉を待ってましたと言わんばかりにデュオは口角を釣り上げた。
「ほいきた。いいぜ、その願い。例え世界が聞き逃してもこの死神が聞き届けてやるよ」
「デュオ・・・」
「ったく、また泣きそうになってんじゃねぇか。泣き虫な所はちっとも変わらないな」
「ん・・・」
そっとデュオはシャルルの涙を指で拭ってあげた。
「で、でもデュオどうやって助けてくれるの?」
「な~に、安心しろって俺にいい考えがあるんだ」
「いい考え?」
「おうよ。お前の親父に死神を敵に回すってことがどんな事かきっちり教えてやらねぇとな・・・」
クックックッと邪悪な笑みを浮かべるデュオにシャルルは引き気味になりながらも、手荒なことはしちゃダメだよと釘を刺す。
「しねぇっての、取り敢えず、シャワー浴び直してこいって。結構ヒデー顔だぜ?」
「え?」
デュオの指摘にシャルルは慌てて洗面所に駆け込むと確かに涙で顔が酷いことになっていた。オマケに汗もかいているようであった。
「ちょ、ちょっともう一度シャワーを浴び直すね。・・・その、覗かないでよ?」
洗面所から顔を出したシャルルは、気恥ずかしいそうにそう言った。
「安心しろって、そんなことはしねぇよ。それに今更恥ずかしがることねぇーだろ?小さい頃、偶に一緒に入ったじゃん」
「もう!馬鹿!!」
「フゲッ!?」
シャルルが投げたバスタオルの塊がものすごい勢いでデュオの顔面にヒットした。
ベランダに出たデュオは痛む鼻を撫でながら携帯端末を取り出し、頼れる親友に連絡を入れた。
「あ、もしもしカトルか?」
『デュオ?どうしたんですか、この時間に電話なんて・・・何かあったんですか?』
「ま、あったちゃああったな。ちょっとお前に頼みたいことがあってな」
『本当に珍しいですね。デュオが僕に頼み事なんて・・・一体何があったんですか?』
「ああ。実はな・・・」
デュオは先ほどシャルルから聞いた事情と彼女を守るための自分の考えを伝えると、カトルは快く引き受けた。それから二三話し合うと通話を切り部屋に入った。
部屋に入るとジャージ姿のシャルルがベッドで寝息をかいていた。おそらく今夜の出来事で精神的に疲れがピークに達してしまったのだろう。デュオは昔より成長した寝顔をみながら布団をかけてシャワーを浴びて就寝した。
「いい夢見ろよ、シャル」
五日後の土曜日、デュオ達はアリーナにて特訓をしていた。
IS学園は土曜日にも授業があり午前中は理論学習、午後は完全にフリーになるためアリーナではその自由時間を使って他の生徒が訓練をしているが、それはデュオたちも同じである。
「えっとね、一夏がオルコットさんや凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握してないからだよ」
「そ、そうなのか?一応わかっているつもりなんだが・・・」
「お前のはあくまでつもりであって、把握しているって事にはなんねぇんだよ」
一夏がシャルルからレクチャーを受けている傍らで座っているデュオは携帯端末を操作しながらツッコミを入れてきた。
「うん。デュオの言い方は悪いけど確かにその通りだね。知識としてはしっているだけって感じかな。さっき僕と戦った時もほとんど間合いを詰められなかったよね」
「う・・・確かに。『瞬時加速』も読まれてたしな・・・」
「っつーか、お前は回避が下手すぎんだよ。あんなの銃口の向きと引き金を引くタイミングで大体予測できるだろ?それに機動も単純すぎる。あれじゃあ、狙ってくださいって言ってるようなものじゃねぇか」
手厳しいデュオの指摘に一夏は言い返そうにも正論のため言い返せず悔しさに打ち震えていた。
「それに『瞬時加速』。お前はあれを使えるようになっただけで完全に使いこなせていねぇ。姉御の『瞬時加速』はあんなもんじゃなかったぞ」
「もう、デュオ!さっきから言いすぎだよ?」
ワリィワリィと手を振りながら視線を携帯端末に向けたまま謝るデュオ。とても反省しているようには見えない。
「っていうか、アンタ。この五日間ほとんどそうやって携帯いじってるわね。何やってんの?」
シャルルと一夏の訓練を見ながら鈴はこの五日間の疑問を口にした。
鈴の言うとおり、この五日間デュオは授業と寝るとき以外、殆どの時間、携帯を操作していた。
「ん~・・・いや、別に大したことじゃねけよ。ウィナー社の仕事が入っちまってな。こうやって空いている時間にやんねぇと終わらないんだよ」
「なに?アンタそんなに仕事溜め込んでたの?」
「んな訳ねぇだろ。大掛かりの仕事が入ったんでな、俺の力を貸してくれっていうからやってんだよ」
「なに?お前はウィナー社の専属パイロットではなかったのか?」
横で話を聞いていた箒は疑問を口にした。
「いんや、ウィナー社の専属パイロットでありエジプトの代表候補でもあり、ウィナー社所属のプログラマーでもあるんだなコレが」
(まあ、ホントはハッキングとクラッキングの方が得意なんだけどな・・・)
内心でそう付け加えながらデュオは携帯をしまうとよっと立ち上がった。
「あら?もういいんですの?」
「まぁ~な。今日の分はある程度切りのいいところまで行ったし、残りは今夜だな」
デュオは歩きながらタナトスを纏いちょうど射撃訓練をしている一夏とシャルルの元へと向かった。
「よーう。やってるかー?」
「あ、デュオ。丁度いいところに来た」
「あん?」
一夏の後ろで射撃指導していたシャルルはデュオの方を振り返り、あることを訪ねた。
「一夏の事なんだけど、何で一夏に射撃を教えなかったの?」
「いやだって白式には射撃用のプログラムがないんだぜ?だったら、姉御のように剣を極めちまえばいいんじゃないかな~って思ってよ。丁度こっちには優秀な剣の先生もいたし」
そう言ってデュオはチラリと箒を見る。
「っで、それ以外は基礎の部分を徹底的に叩き込んでる最中なんだよ。なにせ一夏の奴は、土台となってる基礎がまだまだ危ういからな」
「なるほどね。だからさっきの模擬戦、やけに機体制御や通常飛行があんなに安定していたんだ。徹底的な基礎練習のお陰なんだね」
「そういうこと~」
デュオとシャルルがそんな会話をしていると急にアリーナ内がざわめきだした。
「ねえ、ちょっとアレ・・・」
「ウソ、ドイツの第三世代型だ」
「まだ本国のトライアル段階だって聞いたけど・・・」
デュオとシャルル、それに丁度射撃訓練をひと段落終えた一夏はざわめきの元へ視線を向けた。
「あれは・・・」
そこにはドイツの代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒがいた。
そして彼女が纏うのはドイツの第三世代IS『黒い雨シュヴァルツェア・レーゲン』である。
「おい」
ISのオープンチャンネルでラウラが一夏に話しかけてきた。
「・・・なんだよ」
(シャル・・・)
不穏な空気を感じ取ったデュオは隣のシャルルに目配せすると彼女はコクリと頷き、気づかれないように一夏の傍へと移動し始めた。
「貴様も専用機持ちのようだな。ならば話が早い。私と戦え」
「イヤだ。戦う理由がねぇよ」
「貴様にはなくても私にはある」
ラウラがここまで一夏に拘る理由。おそらく第二回『モンド・グロッソ』の件であろうとデュオは予測した。
あの大会で千冬は優勝間違いなしであったにも関わらず、決勝戦に現れず不戦敗となり二連覇の偉業を成し遂げ無かった。
勿論それには理由があり、決勝戦直前に大会を見に来た一夏が攫われ千冬は一夏を助け出すために決勝戦出場を辞退したのだ。
その時にドイツ軍に情報を渡された借りを返すために千冬は一時期、ドイツ軍に共感として身を置いていたとデュオは千冬から聞いたことがあった。
それと、家族を失う痛みに比べたら決勝を棄権したぐらい屁でもないとなんとも男らしい発言を酔った勢いで聞いたこともあった。
「貴様がいなければ教官が大会二連覇という偉業をなし得ていたというのは容易に想像できる。だから、私は貴様の――――-貴様の存在を認めない」
(おいおい。姉御の守りたい者を存在否定かよ・・・。こりゃあ、重症なほど姉御に盲信してるな・・・)
「また今度な」
(あ、バカっ!今の状態のアイツに背を向けるなんて、自殺行為だぞ!?)
デュオの予想通りラウラはISを戦闘状態に行こうし左肩に装備されている大型リボルバーカノンを一夏にむけて発射した。
「!」
ゴガギンッ!
「・・・こんな密着状態でいきなり戦闘を始めようとするなんてドイツ人は随分沸点が低いんだね。ビールだけでなく頭までホットなのかな?」
「貴様・・・」
横合いから一夏の前に出てシールドで実弾を弾き、同時に右手に六十一口径アサルトカノン『ガルム』を呼び出して重厚をラウラに向ける。
(おおぅ。シャル様が怒ってらっしゃる!クワバラクワバワ・・・)
(・・・デュオ、後でお仕置きするよ?)
(ハイ、スンマセンした~!)
プライベートチャンネルでちょっとしたお茶目をしたデュオだがシャルルの平坦な声にすぐさま謝罪した。
「フランスの第二世代型アンティークごときが私の前に立ちふさがるとはな」
「未だに量産化の目処が立ったないドイツの第三世代型ルーキーよりは動けるだろうからね」
互いに睨み合い、先にラウラが仕掛けよとした瞬間、突然彼女の首に死神の鎌が突きつけられた。
「ハ~イ、そこまでだぜ?」
「ッ!?・・・貴様」
突然、突き出されたビームサイズと横に現れたデュオにラウラは驚いたが、すぐに隣に現れたデュオを睨みつける。
「流石にこれ以上は見過ごせねぇな。今日のところは手を引けや」
「フン、中東の化石風情が私に命令するな」
「ハッ!その化石にあっさり接近されたのは何処のドイツ様だ?」
「貴様・・・」
『そこの生徒!何をしている!学年とクラス、出席番号を言え!』
デュオとラウラが一触即発の雰囲気を醸し出していると、突然アリーナにスピーカーからの声が響く。騒ぎを聞きつけてやってきた教師であろう。
デュオは慌ててビームサイズを収納しラウラは戦闘態勢を解除し背を向けて、
「・・・ふん。今日は引こう」
そう言い捨てるとアリーナゲートへと消えていった。
「一夏、大丈夫?」
「あ、ああ。悪い助かったよ」
「まったく、情けねぇ奴だな。アレぐらい反応してみろよ」
ラウラが完全に去るのを確認するとデュオとシャルルは一夏に声をかける。
「ウッ・・・デュオも助かった」
デュオのイヤミの篭った笑みを受け、一夏はバツが悪そうな顔をして礼を言った。
「はいよ。んじゃあ、今日はここまでにするか。なんか訓練やる気分でもないだろ?」
「そうだね。もう四時すぎだし、今日はもう終わりにしようか」
「おう。そうだな。あ、銃サンキュ。色々と参考になった」
「それなら良かった」
ニッコリと微笑むシャルルに一夏は妙に落ち着かない気分になり、デュオはシャルルの性別がバレるのでは?と気が気でない。取り敢えず、今彼女の性別がバレるのは困るのである。彼女自身の意思で打ち明けるというのもあるが、まだ、準備が出来ていないのだ。だから・・・
「えっと・・・・じゃあ、先に着替えてて」
「たまには一緒に着替えようぜ?」
「い、イヤ」
「つれないこと言うなよ」
「つれないっていうか、どうして一夏は僕と着替えたいの?」
「というかどうしてシャルルは俺と一緒に着替えたがらないんだ?」
質問を質問で返す一夏にシャルルは困ったようにデュオへと視線を向けた。
「そこまでにしとけって、ホラ行くぞ。一夏」
「グエッ!?ちょ、ちょっと待てよ、デュオ!?」
先程まで黙っていたデュオが一夏の首根っこを掴み引きずりながらアリーナゲートへと歩いていく。
去り際にシャルルの方を向きウィンクするとシャルルは安堵したように頷いた。
「ちょ、デュオ!離せって!?」
ゲート前まで引きずられていた一夏は耐え切れなくなりバシっとデュオの手を払う。
「っと、なんだよ?」
「なんだよ、はこっちのセリフだ!いきなり何すんだよ?」
「ンなもんお前がしつこいのが悪いんだろ?」
「え?何でだよ、ただ一緒に着替え用って誘っただけだぜ?」
デュオの指摘に本気でわからないっという一夏。
そんな一夏にデュオは溜息を吐いてジト目で睨む。
「あのなぁ。シャルは昔事故で背中に傷が出来てんだよ。それを人に見られたくねぇーの」
勿論嘘八百であるが何も事情を知らない一夏は、
「そ、そうなのか・・・。でも、俺は気にしないぜ?」
「お前が良くてもアイツが良くねぇんだよ。もうちょっとアイツの気持ちを察してやれ」
「・・・ん。そうだな」
納得し疑いもしない一夏にデュオは内心で罪悪感を感じつつも更衣室へと足を運んでいった。
「やっほー、デュオくん♪」
「・・・なんのようだよ、楯無」
一夏がまた箒達に絡まれ始めたのでデュオは巻き込まれる前に離脱し廊下を歩いていると楯無が現れた。
「あ、なによ~その顔。如何にも面倒臭いのが来た!って顔ね」
楯無はバッとセンスを開き『心外』と書かれていた。
「わかってんなら聞くなよ。・・・んで、なんのようだ?」
「アララ。随分とお疲れのようね。・・・・ま、いいわ。用というか、また随分と派手に動いてるわね」
「・・・アン?なんの事――――-」
「デュノア社」
しらばっくれようとしたデュオを楯無はバッサリと遮り話題の確信をいう。
「今はまだ相手は気づいていないみたいだけど、この五日間の内に徐々に、でも確実にデュノア社の所有する持ち株がダミー会社を通じてあるグループの手元に入っている。おまけに本丸デュノア社にも気づかれないよう慎重さと大胆さを兼ね合わせた手腕は名立たる企業の中でウィナー家、あなた達位でしょ?」
『まさに神業』と書かれた扇子を広げながら呆れる楯無。
「・・・全部お見通しってか?」
「勿論。だって私生徒会長だし」
『我生徒会長』と書かれた扇子を再度広げて微笑む楯無にデュオは観念したように肩を落とした。
「ったく、こっちは五日かけて念入りに準備してるってのにこうも早くばれるとはな・・・」
「デュノア社はいまだに気付いたそぶりは見せないけどね。・・・そこまでする理由はやっぱりデュノアちゃん?」
「・・・ま、そうだな」
楯無がシャルルの事情を知っていてもおかしい話ではない。何故なら過去、彼女の道場で修行の合間に自身の幼い頃、つまりはシャルの事を話したことがあるからだ。
因みに余談だが、そのことを楽しそうに話したデュオはその後の組手で楯無にボコボコにされたのは別の話。
「まったく、ここまで思われているデュノアちゃんにおねーさん妬いちゃうわ」
『嫉妬爆発』と書かれた扇子を広げてため息を吐く楯無。
「しようがねぇだろうが、事情が事情だ。黙ってるわけにもいかねぇだろ?つーか、シャルの正体や裏事情ぐらいとっくに調べがついてんだろ?」
「まあね。調べ終わったときは流石におねーさん、ちょっとムカついたけどね~」
軽い口調で言う楯無だがあれは結構ムカついているのは長い付き合いなのでデュオには容易に想像できた。
「で、結局何しに来たんだよ楯無?」
「あ、そうね。まあ、一言で言うなら忠告かしら」
「忠告?」
「ええ。今回のことでロームフェラ財団が警戒を強めるでしょう。気をつけなさい」
いつになく真剣な眼差しで見つめてくる楯無にデュオはおうと返事をした。
ロームフェラ財団。
欧州の王侯貴族が母体となり設立され、本来の結成目的は美しい自然や古き良き伝統の保護だった。しかし、その後、既得権益保護と拡大を目的とする色彩が極めて濃くなり最近ではかなり黒い噂が絶えないでいる。イギリス貴族であるオルコット家すらロームフェラ財団の傘下にある。
「ご忠告どうも。こっちもこっちでやれることはやるつもりだ」
「そ。何かあったらおねーさんに言いなさい?可能な限り手助けしてあげるわね」
「サンキュ」
楯無に礼を言うとデュオはその場を後にした。
「さ~て、すべての準備は整った。後は時が来るのを待つのみ・・・。俺の幼馴染を泣かせたこと、地獄で後悔させてやるぜ」