インフィニット・ストラトス~死神と呼ばれるIS~リメイク 作:神喰いの王
「ごめんね。手伝ってもらっちゃって」
「気にすんなって、好きでやってることなんだしさ」
放課後、赤い夕日が差し込む廊下をデュオとシャルロットは並んで歩いていた。
二人ともその手には、今月の学校行事・臨海学校について書かれたプリントを持っていた。
「でもよかったの?今日は一夏達の訓練を見る日じゃあ・・・」
「いーんだよ。ンなことより、お前といるほうがずっと大事だしな」
「・・・・え?」
一瞬、シャルロットはデュオの言った言葉に思考が停止しかけたが、すぐに再起動し(それでも顔は真っ赤のまま)、
「も、も~!!またそうやって、冗談で言う!いい加減にしないと本気にしちゃうよ?」
「いいぜ、本気にしてもよ」
「・・・・えぇ!?」
仕返しとばかりにからかい返したシャルロットだが、まさかのカウンター返し。
ボンッとシャルの顔は煙を吹いたように真っ赤になり気恥ずかしさから、後ずさってしまう。
「あ、あの・・・・その・・・」
「どうした?どうして後ろに下がんだよ?」
デュオが一歩詰め寄れば、シャルは二歩下がり。デュオが二歩詰め寄れば、シャルが三歩下がろうとして壁にぶつかった。
「追い詰めたぜ、シャル」
壁に追い詰めたデュオはシャルの顔の横に左手を置き、壁ドンの体勢になるとドンドン顔を彼女の顔へと近づけていく。
(え、ええ~~~!!こ、これって、そ、そう言うことだよね!?)
デュオの顔が近づくにつれ、シャルは覚悟を決め目をつむりその瑞々しい唇を突き出す。
彼と彼女の唇が触れる距離まで、あと5㎝。
4㎝。
3㎝。
2㎝。
1㎝。
0せ・・・・・・・・・・・・・・。
(・・・・・あれ?)
何時までたっても彼の唇が触れないので不審に思って目を開けてみると、そこには・・・・・。
見慣れた部屋の天井があった。
「・・・・・・・・・・・」
思考停止中・・・・・。
「・・・・なんだ、夢か~~~~」
思考が再起動したと同時に、シャルは心底がっかりな声と共にため息をこぼした。
(そうだよね。大体デュオはあんな事やんないし、やったとしても、な~んてな!って具合にからかうにきまってるよね!・・・・ハァ)
「せめて夢なら、もう少し後に覚めてほしかったなぁ~」
はぁぁぁぁぁぁぁっと先ほどよりさらに深いため息をこぼし、ハッと気づく。
先日、自分が女だということを学校に打ち明け、部屋替えをすることになったシャルロット。
現在は違うのだがどうしても隣に幼馴染の彼が寝ている隣のベッドの方を向いてしまう。
「あれ?」
隣のベッドに新しいルームメイトの姿がいない。
「・・・・まあ、いいや。」
なんとなく、幼馴染の彼が被害にあうだろうな~と思いながら夢の続きを見るために彼女は再び、眠りについた。
その際、今度はちょっとエッチな夢を見れたらいいな~っと考えてしまい赤面してしまったのはご愛嬌だ。
(ン・・・・)
目を開けるとデュオは青々とした草原の真っ只中に立っていた。
「また、ここか・・・・」
いきなりの光景だが、デュオは全く動揺しなかった。
なにせ、ここに来るのは初めてではないのだから。一度目は初めてISに触れた時、二度目はこの機体を受け取った夜。
そして今回が三度目。
(アン?・・・・あんなもん前回はなかったが・・・)
見渡す限り大草原と青い空。しかし、そこにポツンと前回来た時にはなかった教会があった。
「つくづく俺は教会に縁があるらしいな」
自嘲気味に呟くと、デュオは教会へと足を進めた。
ガコンッ・・・・・。
「・・・・・・」
教会に入ると、礼拝堂の十字架の前で一人、祈りを捧げている人物がいた。
後姿かしか見えないが、全身黒づくめで傍らに身の丈ほどの大きな鎌が置いてあった。
「教会の礼拝堂に死神たぁ、結構洒落がきいてるじゃねぇか」
そう感想を漏らすとデュオは何の迷いもなく、死神へと歩いてゆく。
そして、あと数歩で死神の元へと近寄れる距離になった時、
「ようやく、こうして会えましたねデュオ」
そう透き通った女性の声で話かけると、祈りを捧げていた死神が大鎌を手に立ち上がりゆっくりと振り返った。
死神は顔半分を黒いフードで覆っていて素顔はわからなかったが、それ以外、特に黒衣の上からでもわかる自己主張した胸とか、くびれた腰とか、張りのある尻とかが。
(う~む・・・顔はわからんが、楯無。いや、姉御以上のナイスバディだ)
「あの・・・デュオ?」
「ン・・・コホンッああ、悪いな」
不安げに話しかけてくる死神にデュオは咳払いをして謝罪した。
「改めまして、私は「あ~いいよいいよ。お前の事は大体わかってる。
「ま、その姿を見ればな。幾らなんでも分かるって相棒」
‶相棒‶という言葉に、死神---タナトスは嬉しそうに口元を綻ばせた。
「んで?なんだって、現れたんだ?なんか理由があんだろ?」
デュオの問いかけにタナトスは薄く笑みを浮かべると持っていた大鎌の矛先をデュオに向けた。
「・・・・近々、試練があなた達に降りかかるでしょう」
(あなた‶達‶?)
「その試練にあなたはどう相対するのか、あなたの覚悟を、決意を私に示してください。そして、私がそれらを認めることができた時」
「できた時?」
「私は私の全ての力を、あなたに授けましょう」
「・・・おいおい。今までの力はお前の全てじゃなかったのかよ」
流石に何年も共に戦ってきた相棒が自分を認めていない事実にショックを隠せないデュオ。
「勘違いしないでください。あなたの事は半分だけ認めています」
「は、半分だけかよ・・・」
全く認めていない訳ではないのはわかったが、それでも微妙に悲しさを覚える。
「あなたも気づいているでしょうが、我が力はその気になれば世界を簡単に牛耳ることができるもの。それ故に私も慎重に見極める事が必要だったのです」
「ま、そういう事なら納得はいかないまでも、理解はしてやんよ」
「感謝します」
「そんじゃまぁ、さくっとその試練を乗り越えて、お前を認めさせて本当の相棒にしてやんよ」
デュオは不敵に笑うと、踵を返して礼拝堂の出口へと歩いて行った。
「楽しみにしています。相棒」
礼拝堂を出る瞬間、タナトスの期待のこもった声が聞こえた気がした。
「んぁっ・・・・」
デュオが目を覚ますと、そこは見慣れた部屋の天井だった。
のっそりと起き上がりポリポリと頭をかきながら、首にかけてある待機状態の相棒を持ち上げると、
「楽しみにしとけよ、相棒」
そう言って、笑いかけた。
そこで、何やら隣でゴソゴソと物音がするので何気なく隣のベッドを見ると、
「なに、やってんだ・・・・お前ら?」
何故か全裸のラウラが一夏とキスをしようとしていた(しかも一夏は無抵抗)。
「デュ、デュオ!?い、いや、これはチガクてだな!!?」
「むう。タイミングの悪い奴め。もう少しのところで・・・」
ポク、ポク、ポク・・・・チーン。
「・・・なるほどな。そういう事か」
「お、おいデュオ?」
戸惑う一夏をデュオは無視し、ラウラに向けてイイ笑顔で、
「ボーデヴィッヒ。とりあえず一時間ぐらい外すから、それまでに食っちまいな(性的な意味で)」
「ちょっ!?」
「うむ。何やら意味が分からぬが、気を使ってもらって悪いな」
一夏の抗議を無視し、デュオはごゆっくり~と言いながら部屋を出ようと足を進めた瞬間、
「入るぞ、一夏。早く起きて支度を――――」
「「げ」」
「む」
道着姿の箒が部屋に入ってきた瞬間、空気が凍った。
「ちぇ・・・」
「ちぇ?」
「チェストォォォォ―――!!!!」
「ぐげっ!?」
「デュオ!?って、うわああぁぁっ!?」
気合一括。乾坤一擲の気合いと共に
「一夏、おとなしく死ね!!」
「何言ってんのかわかってんのか!?っていうか、デュオは生きてんのか!?」
「人の嫁に手を出すとは不躾な」
一夏のベッドで仁義なき修羅場が展開する中、一人箒によって壁にめり込んだ(比喩なく)デュオは痛みに震えながら、
「と、とりあえず・・・・お前ら後で覚えてろよ・・・」
死神は受けた借りは倍返しにするんだぜ・・・と呟きながらカクンッと意識を失った。
「な、なあ、デュオ?いい加減、機嫌治せって」
「・・・・・(ムシャムシャ)」
「デュ、デュオ。その、すまなかった。何分頭に血が上って、我を忘れていたんだ」
「・・・・・(ガツガツ)」
「うぅ・・・」
「むぅ・・・」
時間は過ぎ、場所は変わり、一年寮食堂。額に包帯を巻き頬にガーゼを張ったデュオはいかにも不機嫌ですっといった表情で朝食を食べていた。
その席で一夏、箒、ラウラは肩身の狭い思いで自分たちの朝食を食べながらデュオに謝罪していた。
あの後、騒ぎを聞きつけた千冬の手で事態は収束したが、その際に壁に埋まって気を失ってるデュオと破壊された一夏のベッド周辺を見て大激怒。三人は放課後、反省文と部屋の修復の手伝いをやらされる羽目になった。
因みに、デュオは咄嗟に絶対防御を張ったため軽い打ち身ですんだが、それでも軽い脳震盪をおこしたため後で検査する様にと治療した真耶に言われた。
一方、さすがに悪い事をしてしまったと自覚する一夏達三人だが、実を言うとデュオはそこまで怒っていなかった。
確かに、箒の一撃は効いたが、あれは避けきれなかった自分が悪い。何より前々から思っていたがこの学園に来てから体が鈍っていると感じていた。
(事件があるっつっても、そこまで極限状態じゃねぇし。模擬戦をやろうにも俺とガチで戦えるのは姉御と楯無ぐらい・・・・。しかも、そのどちらも忙しい身の上に立場もあるから気軽に戦えねぇ)
そこまで考えながらデュオは味噌汁を啜りながら、チラリと先ほどから肩を寄せ合ってコソコソしている三人の内、ラウラを盗み見た。
(今のところ、一年の専用機持ちで相手になんのはボーデヴィッヒ位か。それでも相手になる程度・・・。いや、シャルと組ませて二対一の状況で模擬戦をやるか?・・・いやいや、それで二人のISぶっ壊したら、カトルやドイツ政府に何言われるかわかったもんじゃねぇ)
せめて簪の専用機が完成していたらなぁ~っと何故か自分を避けている少女の事を思いガックリと肩を落とすデュオ。
そんなデュオに一夏達三人はコソコソと身を寄せ合い相談していた。
「(嫁よ。ここは日本男児に古くから伝わる謝罪方法、ハラキリをするべきではないか?)」
「(なんでだよ!?今朝も思ったけど、お前に間違った日本知識を教え込んだのは誰だ?ちょっとそいつと日本文化について話さなきゃなんねぇよ!)」
「(何を言う、日本の男子は謝罪する時は腹を切って詫びるのが一般的なのだろう?クラリッサがそういっていたぞ)」
「(それは江戸時代までの話だ!第一、そんな事をしたら一夏が死んでしまうだろう!)」
「(箒さん。貴女さっき、死ね!っていってましたよねぇ!!・・・っていうか、デュオのあの怪我は箒が原因だろ?なら、箒がきちんと誤れば済むんじゃね?)」
「(何を言うか!あれは元々・・・お前が――――)」
と、三人がコソコソしながらヒートアップしているなか、デュオはどーしたもんかと頭を悩ませていると、
「わああっ!ち、遅刻、遅刻する・・・!」
珍しい声が食堂に響いた。
三人が振り返ると、シャルロットがバタバタと食堂に駆け込んできて余っている定食から、手近にあるものをとっているところであった。
「よ、シャルロット」
「あ、一夏。ラウラに箒もおはよう。・・・・って、デュオ!?ど、どどどどーしたの、そんなに傷だらけで!?」
「う‶」
シャルが慌てて食器を置きデュオに詰め寄り、そんなシャルに箒は咽喉を詰まらせたようなうめき声をあげた。
「・・・・ん?おーう、シャル。お前にしては随分と遅いお目覚めじゃねぇか。そっちこそなんかあったのか?」
「はうっ!え、えっと・・・そのぅ・・・ちょ、ちょっと寝坊で・・・」
顔を真っ赤にしながら消え入りそうなシャルの声にデュオは意外な表情になり、
「珍しいじゃねぇか、お前が寝坊なんて。二度寝でもしたのか?」
「へうっ!・・・え、えっと、その、ね・・・・ってそれよりもデュオだよ!どうして朝からそんな怪我してるの?痛く無いの?」
「へーきへーき。ちょっと、軽い打撲に脳震盪起こしたくらいだからな。今日明日には治るよ」
「それ大丈夫なの!?っていうか、今日明日で治るってすごい回復力だね!!」
「まーなー」
シャルのツッコミにデュオはおちゃらけて返事をした。
「(・・・・おい。どうやら、機嫌が直ったのではないか?)」
「(だな。デュオの事はシャルロットに任せた方が安心みたいだ)」
(むう・・・・)
そんな二人のやり取りを見て一夏とラウラは安堵し、箒は目の前の幼馴染の二人のやり取りを見てうらやましいと感じていた。
(わ、私と一夏だって、あの二人のように幼馴染の関係なのに、何が違うのだろうか・・・?)
と、箒が考えていると、
キーンコーンカーンコーン。
「う、うわあっ!い、今の予冷だぞ、急げ!―――って、あれ?!」
一夏は予冷の音を聞き慌てて立ち上がるが、テーブルにいるのは一夏のみ。
デュオも箒もラウラも、遅れて食べていたシャルロットさえ既に食堂から出て猛ダッシュしていた。
「お、置いていくな!今日は確か、千冬姉の――――じゃなくて、織斑先生のSHRだぞ!」
遅刻=死である。
「私はまだ死にたくない」←箒。
「右に同じく」←ラウラ。
「ごめんね。一夏」←シャルロット。
「つーわけで、骨は拾ってやるから安心して死んで来い」←デュオ。
そうして、四人はあっさりと一夏を見捨てて教室へと走り去っていった。
その日、IS学園のSHR。1年1組の教室で織斑先生の出席簿が一人の生徒の頭に炸裂したのは言うまでもない。
放課後、デュオは一人屋上で夕日をバックにある情報を見ていた。
(ロームフェラ財団、やっぱり動いてきたか。取り敢えず今のところ問題はなさそうだが、近々こっちにもアクションがありそうだな)
その情報はカトルからの送られてきた、フランスにおけるロームフェラの破壊工作の情報であり、どれも未然に防いだことが書いてあった。
そして、そうなると・・・・。
(臨海学校・・・・。恐らくこの日に何かしら仕掛けてくるな)
左手に持った臨海学校のしおりの表紙を見ながらどーしたもんか、と頭を捻っていると、
「あ、デュオ。こんな所にいたんだ」
屋上の入り口からシャルロットが現れた。シャルの姿を見た瞬間、デュオは右手に持ってる情報端末を自然な動作でポケットにしまった。
「よ、シャル。どうしたんだ?」
デュオがシャルロットの方に近づくとシャルロットは戸惑っているのか、視線を忙しなく泳がせていた。
そして、決心したように上目使いでデュオを見つめると
「あ、あのね!僕、この学園に来るとき男としてきたでしょ?だ、だから、水着とか用意してなくて・・・その、今度の週末!一緒に買い物に行かないかな!!」
「お、おう。いいぞ」
話しているうちにドンドンと顔を近づけ彼女の気迫に押され、のけ反りながら承諾するデュオ。
「ほ、本当に!?」
さらに顔を近づけるシャルロット。
「お、おう!本当の本当だ!!」
それに合わせて限界までのけ反るデュオ。
「よ、よかった~」
安堵のため息をつくシャルロットにデュオはそろそろ限界なのでシャルロットに進言した。
「だ、だからよ。そろそろ退いてくんね?」
「へ?」
そこでシャルロットはようやく自分の現状を把握した。
あと数センチ動けばお互いの顔がくっつく距離、さらに言えばお互いの呼吸が相手にあたり距離、さらに言えばキスまであと数センチの距離である。
「う、うわぁぁぁっ!?」
ドンッ!
あまりの事態にシャルロットは恥ずかしさのあまり両手でデュオを力一杯押した。
「ぐへっ!」
元々、限界まで状態をのけ反らせていたのでシャルロットの一押しにデュオはあっさり背中を地面に打ち付け倒れた。
「ああああっ!!ご、ごめん!デュオ、大丈夫?」
「きょ、今日は厄日か・・・・」
慌てて駆け寄るシャルロットにデュオは今日一日ついてないと嘆いた。