インフィニット・ストラトス~死神と呼ばれるIS~リメイク 作:神喰いの王
死神はエジプトからIS学園へ・・・
~某国 某所~
「さあ~てと、ここら一帯は片付いたか・・・」
そう言って少年は自身のISを解除する。
その少年は腰まである茶髪を三つ編みにし、黒い服を身にまっとている。
少年の周りは何かの研究施設だったらしいが、今はその面影すら無い。あたり一面破壊しつくされ、今でも偶に爆発音が聞こえる。
「さっさとトンずらするか・・・っと、その前に・・・あ、“カトル“か?こっちは終わったぜ!」
『ああ、“デュオ”ですか。御無事そうでなによりです・・・・それでどうでしたか?』
お下げの少年は通信機で自身の仲間に通信を送るとかえってきたのは少年の声が聞こえた。通信越しの少年は三つ編みの少年の無事に安堵すると、直ぐに調査の結果を聞いてきた。
「ダメだ。どうやらはめられたみたいだぜ、待っていたのは例の人形モドキが20機、そう簡単に尻尾を掴ませてくれねえ見てぇだ」
お陰で施設もズタボロだ、とおどけた風に言った三つ編みの少年の顔は心底残念そうであった。
『そうですか・・・残念です』
通信越しの少年もとても残念そうな声で落ち込んでしまった。
「ま、まあ!今回ダメでも次があるって!!な!?」
そんな少年の様子にお下げの少年は慌てて励ました。
『フフ、ありがとうございます、デュオ。それでは一度戻ってきてください。また新しい任務です』
そんなお下げの少年に励まされたのかカトルと呼ばれた少年は微笑しながら帰還命令を出した。
「うっへ~また任務かよ。あ~わかった、わかった。今からそっちに戻るよ!!それにそろそろこの国の軍の奴らが来たしな」
『ええ、では待っています』
そう言って通信が切れると三つ編みの少年はため息をついた。
「ハア~まったくカトルの野郎、少しは休ませろってんだ。っといけね。こんなことやっている前にさっさと逃げねえと」
遠くの方から数機のISがこちらに向かってくるのが見えたのを確認すると三つ編みの少年『デュオ・マックスウェル』は自身の首に下げている黒いロザリオに手を当てて、
「じゃあ捕まる前にとっととトンズラするとしますかね相棒!」
黒い粒子が少年を包み込む。そして、粒子の放流が終わるとデュオの姿は何処にもなかった。
IS、正式名称<インフィニット・ストラトス> 宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツ。総機体数は世界で467機。 とある事件を切欠に「パワードスーツ」として軍事転用が始まり、各国の抑止力の要がISに移っていった。十年経った現在では世界各国の軍に第2世代機が標準配備され、第3・第4世代機の研究開発が進んでいる。
その戦闘能力はそれまでの主力であった戦闘機や戦車をも凌ぎ、世界そのものを変貌させた。
しかし、そのISの唯一の欠点、それは女性にしか扱えない事。これにより緩やかに男尊女卑から男女平等に変わっていた世界は急激に女尊男卑が当たり前となった。
エジプト、カイロ国際空港
「まったく、嫌な世の中になったぜ」
空港に着いたデュオの第一声がこれだ。このエジプトの地でもその女尊男卑の影響がでている。今ではISを使ったテロ等、結構耳にしている。
「ま、俺には関係ないけどね~。んな事よりあちい~。三月なのに干物になっちまうぜ」
エジプトの本日の気温は近年の温暖化の影響で29℃となっておりかなり暑い。そんな炎天下の中、全身黒ずくめでいる方がどうかしているが、デュオはそんな事はお構いなしで額に着いた汗をぬぐった。
「迎えはっと・・・いたいた」
ゲートとより少し離れた所にシルバーのリムジンが止めてあった。デュオはそのリムジンの中に乗り込むとリムジンは音もなく発進した。
ウィナー財団本社~副社長室~
広い副社長室の大きな机で金髪の少年がパソコンを操作しながら事務をやっていた。
事務仕事が一段落し、金髪の少年が椅子に寄りかかるとノックがして間もなく、
「カトル~今帰ったぜ~」
重厚な扉を開けデュオは疲れたように部屋の主、カトルに帰還したことを告げた。
「おかえりなさい、デュオ。長旅御苦労さまでした」
「まったくだぜ、アイツ等がカナダにいるって情報つかんで行ってみたら待っていたのは例の人形モドキだけ、やってらんねぇっての」
そういいながらデュオは部屋に備え付けられている高級そうなソファーにドカッと座ると疲れたようにもたれかかった。
「お疲れ様です。今飲み物を入れますね?」
「カトル様、それはわたくしめが・・・」
「ありがとう、ラシード。デュオは紅茶でよかったよね?」
「さっすが親友、よくわかっていんぜ!」
「フフ、ありがとう。ラシード、紅茶を二つ」
「ハッ」
カトルの傍に控えていた屈強な男、ラシードが慣れた手つきで紅茶を入れカトルとデュオにそれぞれ配った。
二人はラシード入れた紅茶を飲み一息つく。
「で?一体次の任務ってのは何なんだ?」
前置きなしでデュオはカトルに尋ねた。カトルは紅茶をテーブルに置き、
「その話をする前に、ラシード」
「ハッ、これを・・・」
そう言ってラシードはデュオに新聞を渡した。
「ん?なんだよ一週間前の新聞じゃねぇか。・・・なになに、『世界で唯一ISを使える男、織斑一夏』だと?おいおい、コイツは・・・」
「ええ、詳しい原因は分かりません。貴方がカナダへ行っている間、貴方とは違いますが男でありながらISを使える存在が現れました」
自分と違って天然物の男性IS操縦者の顔写真を見ながらデュオはある事に気付いた。
「『織斑』って千冬の姉御の弟か、こいつ?」
「ええ、ご存知でしたか?」
「ああ、姉御に弟がいるってっ話し聞いてたからな・・・そう言えば同い年だっけ?」
「そうです。そしてあのモンド・グロッソの時の事を覚えていますか?」
「・・・・忘れるかよ」
あの時のことを思い出し次第にデュオの顔が険しくなる。
「あの時だったな姉御とあったのは・・」
「フフッそうですね。あの時はまさかあんなに早く貴方のことがばれるとは思いませんでした」
「笑い事じゃねぇって、あん時はかなり冷や汗掻いたんだぜ?」
「フフッごめんなさい」
「で?あの事件がどうしたんだよ?」
「その時、僕の他にもう一人攫われたのを覚えていますか?」
「っ!?そういやぁ、あん時攫われたのは姉御の弟、つまりコイツだったけ」
「ええ。そして、今その一夏くんがISを動かした。これは偶然でしょうかね?」
カトルの話を聞いてデュオは確かにおかしいと考えた。
「なるほど、つまり俺にこの織斑一夏って奴を探る、は無いにしろ護衛か?」
「察しがよくて、助かります」
「だけどよぉ~俺たちとその織斑一夏ってのとは、なんの関係もないんだぜ?唯一あるのは千冬の姉御の弟ってだけじゃねぇか」
「その千冬さんから直々の依頼なんですよ」
カトルの言葉にデュオは成程ねっと思った。
「流石の姉御も弟が可愛いか・・・・」
「まあ、唯一の肉親ですからね」
「んじゃあ、今回の依頼は織斑一夏の護衛って事でいいんだな?」
「ええ。後のことはIS学園の方の指示を聞いてください」
「りょ~かい。んで、任期は?」
「卒業するまでです」
「え゛?マジで?半年や一年って訳じゃなくて?」
「どこの世界に高校生を半年や一年で卒業させる学校があるんですか?」
思わず聞き返したデュオにカトルは呆れながら答えた。
「ハア!?卒業までってことは三年間もか!?」
「ええ」
笑顔で言ったカトルにデュオは驚愕した。
「いやいや、俺が日本に行ったらお前の警護とかはどうすんだよ!?」
「ラシードやマグアナック隊の皆が守ってくれますし」
「まてまて!それよりも奴らの情報だって未だつかめてねえってのに・・・」
「だからです」
デュオの言葉にカトルは真剣な顔になり続けて、
「ここの所デュオ、君は働きすぎです。奴等の行方がつかめないで焦る気持ちは分かります。ですが、その所為で君が体を壊すような事はやめてください。これを期に体を休めてください。それにこれはチャンスです」
「チャンス?」
「ええ。一夏くんと言う世界的に初の男性IS操縦者が出てくれたおかげで世界の目は彼に集まっています。そこに二人目のIS操縦者があられたとしても不思議じゃないでしょう?」
「確かにな・・・」
カトルの説明にデュオは顎に手を添えて考える。
「筋書きとしてはこうです。貴方は一夏くんの次にISを発動し、元々の所属である我々ウィナー社が保護。そして、実験を兼ねて元々我々が開発していた専用機を貴方に与え見事、第一形態(ファーストシフト)に成功。天性的なIS操縦技術でエジプトの代表候補生に抜擢。そのままIS学園に向かうと言う訳です」
「おいおい。そんなんで世間の目が騙せんのかよ?」
「問題ありませんよ。エジプト政府もこの筋書きで問題無いと言ってますし」
「・・・・ったく、わーったよ。しょうがねぇから行ってやる!」
観念したように頭をかきながらデュオは了承する。ぶっちゃけ、ラシードの顔が怖すぎた方が強いが、まあ、あえて理由は語るまい。
「それで、何時日本に行けばいいのだ?」
「はい!一月後の日本行きの便で発ってください。その間はハワード博士が例の強化パッケージの開発を手伝う様にと言伝を預かっています。」
「ハワードが?ってか事後承諾かよ。もし断ったらどうすんだよ?」
「でも、断らなかったでしょ?」
「うっ・・・」
カトルの一言にデュオは言葉に詰まり半ばやけくそ気味に
「あーもう!負けだ、負けだ!!ちっくしょ~」
そう叫びながら、手をひらひらと振りながら部屋を出ようとすると、
「向こうには千冬さん以外にも“楯無さん”もいるから会ったらよろしく言っといてくださいね?」
『楯無』という単語にデュオは固まりギギギッ、と壊れた玩具の様に首を回しカトルの方に振り向く。
「え?た、楯無?楯無ってあの“更識楯無”?アイツが?いるのか?IS学園に?」
「はい」
その言葉にデュオはサアッと顔を青ざめ、ガタガタと震え全身から嫌な脂汗が湧き出てきた。
「か、カトル?まさかと思うけどアイツに俺が行くって伝えたりは・・・」
「安心してください」
デュオはカトルのその笑みに安堵する。流石は親友、俺の事はよくわかっていんぜ。そう言おうとしたデュオ
にカトルは、
「もう連絡しましたから」
「!!?」
ダッ!!
ガシイィ!!!
脱兎の如く逃げようとするデュオにラシード他数名のマグアナック隊が取り押さえる。
「い、嫌だー!!」
「ええい!大人しくしろデュオ!!」
「お前らアイツに会ったことねぇから、ンな事いえんだよ!!アイツに会ったら・・・」
ジタバタともがいていたデュオは突然、止まるとガタガタと震えだした。どうやら過去に何かあったらしい。
「大丈夫ですよ、デュオ。向こうには千冬さんもいますし、襲われる事はないと思います(多分)」
「確かにそうだが・・・・・それなら・・・いやいや、アイツならそれすらかいくぐる可能性が・・・」
片手で顔を覆いブツブツと今までの経験をもとに導き出される答えを出していると、カトルが呆れたように、
「何でそんなに嫌がるのですか?嫌いなんですか?楯無さんの事」
「いや、別に嫌いってわけじゃねえし。むしろ好きだぜ?だけど・・・」
「だけど?」
「アイツが俺を見る目が偶に肉食獣のそれに変わっていて、な?」
「なら大丈夫ですね。ラシード」
「ちょ!?オイ、離せ!カトル!!断然大丈夫じゃねえ!!」
「あ、因みに入試については安心してください。千冬さんと楯無さんから推薦状を貰いましたので即入学ですから試験は受けなくてもいいですよ」
「そういう問題じゃな~い!!」
そのままデュオはラシード達に引きずられて部屋を後にした。
「フゥ」
デュオが出ていったドアを見つめた後、カトルはため息をつきソファーにもたれかかった。
本当は自分もデュオと一緒に学校に通いたかった。しかし、彼はIS操縦者で自分のボディーガード。自分はISの適性が無く大財閥の跡取り、身分差は誰が見ても明らかだ。しかし、あの黒衣の少年、デュオはそんな自分に普通の友達の様に接してくれる。
普通なら許されないが、カトルはデュオの明け透けな態度がとても心地よかった。何より自分の事を親友と呼んでくれる事が何よりも嬉しかった。
だから、いつも自分を守るために傷ついているデュオに少しでも楽をさせようと、自分なりに頑張っていた。しかし、デュオは戦う事を止めない。自分が頑張れば頑張るほど彼も必死に戦うだろう。だから、偶には彼に戦闘とは無縁の学園生活をプレゼントしても罰は当たらないだろう。
自分は彼の上司で親友だから。
「ん?」
ふと時計を見ると結構時間が立っていた。空も日が沈み始めてきた。どうやら、結構な時間物思いに耽っていたようだ。
「さって、残りの仕事を片付けよう!!」
そう自分を奮起し、カトルは仕事に取り掛かった。