インフィニット・ストラトス~死神と呼ばれるIS~リメイク   作:神喰いの王

23 / 25
新年、明けましておめでようございます。
そして、ごめんなさい。2015年に福音編、終わらせるつもりでしたができませんでした。
でも、何とか1月中には終わらせていきたいです。
今年もよろしくお願いします


死神が眠る間・・・

某海域、深海600mの地点に一隻の潜水艦が潜行していた。

そして、その潜水艦の一つの船室に一人の男がベッドに横たわっていた。

腰まである長い金髪の二十代前半ほどの美丈夫が病衣を着て静かに眠っていた。ベッドの横の棚の上には罅の入った銀色の鉄仮面が置かれていた。

 

コンコン。

 

ドアをノックする音が聞こえると男は瞑っていた目を開け、ドアの方に顔だけ向ける。

 

「誰だ?」

 

「私です」

 

たったそれだけの会話で男は扉の向こうの相手が分かり、入出を許可した。

 

「ノインか・・・グッ」

 

「ゼクス!?まだ起きな上がらないでください」

 

男――――ゼクス・マーキス――――がベッドから体を起こそうとするが病衣の下にまかれた包帯の傷が痛むのか体がぐらつき、入出してきた女性―――ルクレツィア・ノイン―――が、慌てて助け起こす。

 

「フッ・・・すまない。無様な姿を見せる」

 

「無理をしないでください。重傷を負っているのですから」

 

「ああ。それで、どうした?」

 

ゼクスが尋ねるとノインは少し言い辛そうな表情をするが、すぐに普段通りの表情に戻り、

 

「はい。本部のトレーズ閣下から通信が入りまして、貴方に代わってほしい、と」

 

「閣下が?・・・わかった、すぐにモニターに出してくれ」

 

「はい」

 

ノインはブリッジに連絡し通信をこちらに回すよう指示する。すると、丁度ゼクスの正面にある空間投影ディスプレイに光が灯り、一人の人物が映し出される。短い茶髪後ろに撫でつけ画面越しでも並みの者など圧倒されてしまうほどの気品とオーラ、そしてカリスマが伝わってくる程の美丈夫――――トレーズ・クシュリナーダ―――が映っていた。

 

「閣下、お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ありません」

 

ノインと一緒に敬礼しながらゼクスは謝罪をするが、トレーズは申し訳なさそうに首を振る。

 

『いいのだ、ゼクス。それに私の方こそ済まない。本来ならゆっくりと療養してもらうつもりだったのだが・・・』

 

そこで、一旦言葉を切ったトレーズはまっすぐとゼクスの眼を見て、

 

『君がそこまでの手傷を負ったと訊いてね。直接たずねなければ、と考えたわけだ』

 

我ながら子供の様に落ち着きがないな・・・と自虐的に笑うトレーズだがその表情は土産話を聞きに来た子供の様であった

 

「申し訳ありません。閣下に頂いた機体をこのような形にしてしまい・・・」

 

そう言ってゼクスは棚の上に置いてあった罅の入った銀色の鉄仮面を手に取り謝罪した。

 

『何、君の命には代えられないさ。それに、元々、今回は君とアキレウスの慣熟訓練を兼ねた任務だ。こちらもかなり酷な任務を与えてしまったの反省しているのだ』

 

「いえ、お気になさらないでください。・・・・それで、閣下が態々通信をしてきた理由とは?」

 

『ああ、そうだった。何、君ほどの男がそれほどの手傷を受けたのが俄かに信じがたくてね。差支えなければ、君の口から直接話してくれないか?』

 

「それは・・・いえ、了解しました」

 

ゼクスは一瞬、自分の恥を聴かせるか迷ったがすぐに考えを改め、了承し話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~回想~

 

「俺と一緒に、地獄へ行こうぜぇっ!!」

 

ズドオオオオオオォォンッ!!!!

 

福音の砲撃を喰らったゼクスとデュオは大爆発によって二人を縛っていた拘束が解かれ、お互い吹き飛ばされた。

 

(グッ・・・ガッ・・・・ッ!?)

 

ゼクスは襲い掛かる衝撃と痛みによって意識が持ってかれそうになるが、歯を食いしばって何とか繋ぎ止める。が、デュオの方は完全に意識を失いタナトスの装甲の破片をまき散らしながら海面へと落下していった。

 

(クッ!?・・・・任務は福音か二人の男性IS操者の内の一人の回収・・・い、イカン!)

 

既に自身のシールドエネルギーの残量は100を切り、機体維持警告域(レッドゾーン)寸前にきている。福音の確保は諦め、瀕死のデュオだけでも回収しようと考えたゼクスはアキレウスを駆ろうとする。

が、

 

―――警告!上空にIS反応!!――――

 

「なに!?」

 

慌てて上空を確認すると一機のISが猛スピード降下してきていた。

青、白、赤の鮮やかなトリコロールのボディ。

非固定武装(アンロック・ユニット)に大型の翼を思わせるウイングスラスター。

そこまで見てアキレウスのデータベースから降下してくる機体のデータが見つかった。

 

――――形式番号 XXXG-01W――――

 

――――機体名『天空神(ウラノス)』――――

 

―――世代 第三世代――――

 

そこまで確認したゼクスは迎撃しようとするが、アキレウスの機体はスパークが発生し、機体が錆びついてしまった様に反応が鈍かった。

 

「・・・・・」

 

ウラノスはそんなゼクスを横を通り過ぎ、まっすぐデュオの元へと降下していった。

 

「La!」

 

それを見ていた福音がウラノスを追従しる。

それに気づいたウラノスは背後を振り返り、その手に長大なロングライフルを呼出(コール)し、そのまま降下しながら福音に銃口を向ける。

 

(あれは・・・マズイ!)

 

長年の兵士の感があれは危険だと告げたゼクスはなるべくあのライフルの射線上から退避しようと重い機体に鞭をうって移動する。

 

「ターゲット、ロックオン。・・・・破壊する」

 

チャージが完了しウラノスは引き金を引き、ロングライフルから山吹色の光線が放たれた。

 

「La!?」

 

「ヌッ!?」

 

余りの強大な光線にゼクスと福音は度肝を抜かれ、福音は何とか回避を試みるが掠ってしまい、ゼクスは余波によって大きく後ろへと飛ばされてしまう。

 

「L・・・・・A・・・・A・・・」

 

掠った福音は機体からスパークが迸り、とても戦闘が可能な状態とは言えなかった。ゼクスも、先ほどのライフルの威力に内心冷や汗が止まらなかった。

 

「・・・・・」

 

ウラヌスはそんな二機を一瞥した後、またデュオを加速しながら降下する。そして、海面ギリギリでデュオをキャッチするとそのまま旅館のある方角へと飛び立っていった。

それを見届けると福音はノロノロとウラノスとは別の方角へと飛び、ゼクスもこれ以上の戦闘継続は困難と考え、潜水艇へと帰還していった。

 

 

 

 

 

~回想終了~

 

 

 

 

 

『成程。・・・・それにしても死神(タナトス)天空神(ウラノス)か、更に君のアキレウスといい、君たちの機体の名付け親は随分と大仰な名を与えたものだ』

 

しかも、名前負けしていないところがまた怖い、と可笑しそうに笑うトレーズにゼクスは複雑な心境であった。正直、ウラノスについては見逃された感が強く、タナトスはあれが本来の実力ではないだろう。戦闘中、時折自分の感覚と体がかみ合っていなかったように見て取れた。

 

「閣下。次、機会があるのならばまた私を使っていただけないでしょうか?」

 

「ゼクス?!」

 

いきなりのゼクスの申し出に今まで沈黙していたノインは目を見開いて、ゼクスを見た。

 

『勿論、そのつもりだ。が――――』

 

ゼクスの申し出をトレーズは笑顔で答えるが、一旦言葉を切って彼の体、病衣の下に巻かれている包帯を見ると、

 

『まずは治療に専念したまえ。君もアキレウスもかなりの深手を負っている。まずはその傷を癒し、次に備えるべきだ。戦士にも休息は必要だからね』

 

養生したまえ、と言い残すと、トレーズは通信を切った。

 

「ゼクス。トレーズ閣下のおっしゃる通りです。今は体を休めてください」

 

ノインはゼクスを強制的にベッドに横にし、無理をするならベッドに縛り付けますからねと言い残して部屋を出ていった。

 

「フッ・・・・ああ。わかった」

 

怖い事を言う副官に苦笑しながらゼクスは眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼクスが急速についているころ、花月荘の作戦室では――――。

 

「・・・・・」

 

作戦開始から三時間以上が経った旅館の一室で千冬は今までで見た事がない程の険しい表情でとても近寄りがたい雰囲気を出していた。

 

「織斑先生・・・」

 

他の教師陣が近寄れない中、同僚の副担任である麻耶が千冬に声をかけた。

 

「山田先生・・・。二人の容体は?」

 

「はい。保険の稲干先生の診察によると織斑君は全身に軽度の火傷と打撲、それに爆発の衝撃で後頭部を強く打ったことによる脳震盪が目立ちますが、命に別状はないそうです」

 

「そうか。・・・・マックスウェルは?」

 

千冬が尋ねると麻耶は途端に表情を暗くし、戸惑いながら、

 

「マックスウェル君は・・・全身に打撲と火傷、特に右脇腹の火傷が酷く、更に肋骨の六番と七番、右腕の上腕骨に罅が入っています」

 

「・・・・・」

 

ギリッと千冬が組んでいた腕を音が出るほど強く握りしめた。

 

「あの・・・織斑先生・・・」

 

「なんだ、山田先生?」

 

麻耶は一瞬、躊躇したが意を決して千冬に進言した。

 

「マックスウェル君を病院に搬送した方がいいのではないでしょうか?彼は酷い重態です。病院でしっかりとした治療を受けさせた方が・・・・」

 

「私も、そうしたいのは山々なんだがな・・・・。そうもいかん」

 

千冬は忌々しげに窓の外に映る海面を睨みつけながら、言葉をつづけた。

 

「福音がマックスウェルのいた海域に態々出向いたことから推測するに福音はマックスウェルかアンノウン、あるいはその両方を狙っていたと考えられる。万が一、福音が搬送中のマックスウェルを狙って来たら・・・・そんな可能性が出てくる。だから、容易にマックスウェルを此処から出すことができん」

 

それに・・・と続け。

 

「例のアンノウンが単独犯とは考えにくい。もし病院関係者に変装している可能性も考えると・・・・」

 

「此処の方が関係者で固めていますからよっぽど危険が少なく安全・・・・ということですね」

 

「ああ」

 

そこで会話が途切れ、重い沈黙が流れる。それに耐えきれなくなったのか、麻耶が話題を変えた。

 

「それにしても・・・あの二機目のアンノウンは、いったい何者だったのでしょうか?あのアンノウンのお陰でマックスウェル君を回収できましたけど・・・・」

 

「さあな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~回想~

 

デュオとの通信が一方的に切られ、千冬たち作戦室は大いに焦った。が、デュオのバイタルデータとシールドエネルギーの残量は常に作戦室でモニタリングしており何か異変があればすぐにわかった。

更に、

 

(仮に今、あの混戦状態の他の専用機持ち達を行かせる事は得策ではない)

 

デュオと他の専用機持ち達、両方の命を危険に晒すことだと考えた千冬はデュオが無事に帰ってくることを祈りながらメインモニターで激しく動く三つの光点を睨みつけていた。

が、デュオとアンノウンの光点が重なった所で状況は更に悪化した。モニタリングされていたデュオのバイタルデータとシールドエネルギーの残量を移していたモニターが急に歪み、砂嵐が走った。そして、砂嵐が止むとデュオのシールドエネルギーの残量がレッドゾーンになり、バイタルデータもかなり危険な状態になっていた。

突然の事に教師陣は騒然となり、千冬は内心で舌打ちした。

恐らく、デュオは作戦が始まる前に作戦室のPCにハッキングし、自分のデータを偽造していたのだろう。

そんな事をした理由は恐らく・・・・。

 

(そこまで巻き込みたくなかったのか、馬鹿者が!)

 

千冬は自分の迂闊さとデュオの覚悟の重さを気づけなかった自分に腹が立ったが、今それよりもデュオの救出するのが先だと判断し、他の専用機持ち達に指示を出そうとした瞬間、

 

「た、大変です!織斑先生!!だ、第二のアンノウンが出現しました!」

 

「なんだと!?」

 

慌てて画面を見ると福音とアンノウン以外にもう一つの光点が出ていた。

第二のアンノウンが現れると、そのまま残りの二機の間を通り抜け、まっすぐこちらに向かっていった。同時にデュオのバイタル反応が第二のアンノウンと一緒に移動していることが分かった。

 

「これは・・・・山田先生、医療班を旅館前の砂浜に待機するよう指示してください」

 

「は、はい!」

 

「それと念の為、デュノア以外の専用機持ち達を旅館前の砂浜に待機させてください。ただし、こちらかの攻撃は禁ずる事」

 

「わかりました!」

 

麻耶に指示を出した後、千冬は現場に向かうため作戦室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、千冬が砂浜に到着すると同時に、第二のアンノウンが千冬の目の前へと舞い降りてきた。

青、白、赤の鮮やかなトリコロールカラーの機体に非固定武装(アンロック・ユニット)に大型の翼を思わせるウイングスラスター、顔の大半のを覆うバイザーの所為で顔は分からない。

 

(形状はどことなくデュオのタナトスに似ているな・・・)

 

第二のアンノウンを見て千冬はそんな感想を覚えるが、その手の中に抱えられている人物を見てそんな感想は吹き飛んだ。

 

「デュオ!?」

 

そこには血と火傷でボロボロの状態のデュオが抱きかかえられていた。

 

「・・・・」

 

第二のアンノウン――――ウラノスはデュオをそっと千冬に差し出す。

 

「クッ!?医療班!急げ!!」

 

「は、はい!」

 

千冬はデュオを受け取ると容体がかなり拙い事がすぐにわかり、医療班を怒鳴りつけるように急かす。

千冬からデュオを受け取った医療班はデュオを担架に乗せ、そのまま旅館へと向かっていった。

 

「任務、完了」

 

それを見届けたウラノスはそう呟くと砂埃を巻き上げあっという間に千冬たちの前から飛び去ってしまった。

 

 

 

 

 

~回想終了~

 

 

 

ウラノスとのことを考えていた千冬は今はそんな事を考えている場合ではないと頭を振って一旦リセットするように頭を振る。

 

「それよりも、デュノアの方はどうだ?」

 

話題を変えるため、ある意味、もう一人の重傷者の容体を尋ねた。

 

「大分落ち着いたようです。今はオルコットさんとボーデヴィッヒさんが付いています」

 

「そうか・・・」

 

千冬は重いため息を着いた。

そう、デュオの治療中、彼のボロボロの姿を見たシャルロットはそれもこちらが見ていて痛々しくなるほど錯乱した。暴れる彼女を自分と教師陣が取り押さえ鎮静剤をうって何とか落ち着かせることができた。その後、目を覚ました彼女はデュオの前で泣き崩れ、そんな彼女をラウラが慰めていた。

 

「デュノアさんとマックスウェル君は幼馴染でしたから・・・幼馴染があんなボロボロの姿で帰ってきたのだから錯乱してもしょうがないですね」

 

「・・・・ああ」

 

それだけでは無いだろうな・・・と千冬は考えながら、福音の探索を再開するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅館の一室、そこにベッドに横たわる一夏とその傍らで控えている箒がいた。

 

(私の所為だ・・・・)

 

戦闘中にリボンを無くし、普段まとめられている髪は今は力なく垂れていた。

 

(私がしっかりしないから、一夏がこんな目に・・・!!)

 

ギュッとスカートを握りしめる。その色が白く色を失うほど力強く握りしめた。

 

『作戦は失敗だ。以降、状況が変化すれば招集する。各自自室で待機していろ』

 

戦闘空域から何とか戻ってきた箒に待っていたのは、千冬のそんな言葉であった。そして、一夏の治療を指示してすぐさま作戦室に向かっていった。叱責されなかった事が箒には一層つらかった。

 

(私は・・・どうして、いつも・・・・力に流されたしまうんだ)

 

そして、箒は不意に作戦前にデュオに言われたことが脳裏によぎった。

 

『そーだ。もらったばっかの専用機、まともな実戦経験もない素人にこんな大事な作戦を任せられる訳ないだろ?機体は最強でもそれを操る操縦者が未熟だったら、意味ないだろうが』

 

『ああ、そーだね。少なくとも一夏の方が自分を未熟と思ってる分、数段マシだ。機体の力を自分の力と考えている勘違い女よりかは、な』

 

(全くその通りだ・・・!!)

 

そしてそんなデュオは自分のミスの所為でアンノウンと福音の二機を同時に戦い、重傷を負ってしまった。

 

『デュオ・・・?デュオ!?いや、いや――――イヤァ!!デュオーーーー!!?』

 

ボロボロのデュオの姿を見て錯乱したシャルロットの姿が今でも脳裏に焼き付いている。

 

(私は・・・もうISには・・・・)

 

箒が一つの決心を決めようとした瞬間、バンッ!と扉が勢いよく開いた。しかし、箒はそこに向く気力はない。

 

「あー、あー、分かりやすいわねぇ」

 

遠慮無く入ってきた少女――――鈴はうなだれる箒の隣までやってきた。

 

「・・・・・」

 

「あのさぁ・・・一夏やデュオがこうなったのってあんたの所為なんでしょ」

 

鈴の発言に箒の肩はビクッと震えた。

 

「・・・・・・」

 

「ったく、デュオの言ってたとおりじゃない。・・・・で?落ち込んでますってポーズ?――――ざっけんじゃないわよ!!」

 

突然烈火の如く怒りをあらわにした鈴は箒の胸倉をつかみ無理やり立たせた。

 

「やるべきところがあるでしょうが!今!戦わなくていつ戦うのよ!!」

 

「わ、私は・・・・もう、ISは・・・・使わない」

 

バシンッ!!

 

鈴の渾身のビンタが箒の頬に炸裂し、支えを失った箒は力なく倒れる。

 

「甘ったれてんじゃないわよ!専用機持ちっつーのわね、そういう我儘が許される立場じゃないのよ!それともアンタ――――」

 

鈴はグイッと箒を締め上げるように振り向かせ額同士がくっつく程、顔を近づけその熱く滾った闘志の瞳で箒の瞳を直視する。

 

「ただの臆病者なの?」

 

その言葉で、箒の燻っていた瞳に力が宿った。

 

「ど、どうしろというんだ!?もう敵の居場所もわからない!戦えるなら、私だって戦う!」

 

自分の意思で立ち上がった箒を見て鈴はふうっとため息を吐いた。

 

「やっとやる気になったわね。遅いのよ、まったく」

 

「な、なに?」

 

「場所ならわかるわ。今ラウラが―――」

 

言葉の途中でドアが開いた。そこに立っていたのは黒い軍服を着たラウラであった。

 

「出たぞ。此処から30キロ離れた沖合に目標を確認した。ステルスモードに入っていたが、どうも光学迷彩を持っていないようだ。更に衛星によっても駆使した結果、デュオと第二のアンノウンによってつけられた傷はまだ修復されていない。叩くなら今だ」

 

「さっすが、ドイツ特殊部隊。頼りになるわね」

 

「ふん。そう言うお前はどうなんだ?」

 

「当然、甲龍の攻撃特化パッケージはインストール済みよ」

 

「こちらも終わりましたわ!」

 

「・・・・・」

 

声高々と部屋に入ってきたのはセシリアとその後ろに続くようにシャルロットが立っていた。

 

「しゃ、シャルロット・・・・」

 

「・・・・・・」

 

箒は彼女を見た瞬間、先ほどの彼女の取り乱した姿が脳裏によぎり、先ほどまで瞳に滾っていた闘志の炎が一瞬で鎮火してしまった。

 

「・・・箒」

 

後退ろうとする箒を鈴は押し止め厳しい視線で彼女を見つめる。

その瞳は逃げるなっとただそれだけを語っていた。

その瞳を見た箒は少しの間、戸惑うが意を決して彼女に話しかける。

 

「シャ、シャルロット・・・・。その・・・・デュオの事は、その・・・すまなかった」

 

謝罪し深々と頭を下げる箒。だが、シャルロットは何の反応も示さない。疑問に思い顔をあげてみて彼女の顔を見た瞬間、後悔した。

何故なら前髪の隙間から見えた彼女の瞳は誰も映していないのだから。まるで底の見えない暗闇の様であった。その目を見た瞬間、箒は生まれて初めて本能的な恐怖を味わった。

 

「しゃ、シャルロット・・・?」

 

「だいじょうぶだよ」

 

不安になって箒は再度、シャルロットを呼ぶと。シャルロットは微笑みながら答えた。

 

「デュオは大丈夫。だってデュオは僕の大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な人だもの。あんな木偶人形なんかにつけられた傷なんてすぐに治るんだよ?でもでも、僕はデュオが傷つけた木偶人形を許しておけないんだ。許せるはずないよね?だからさ、僕もあの木偶に同じ事をするんだ。ううん、同じじゃないよねデュオが受けた痛み以上の事をやって造られたことを後悔するほどズタボロのスクラップに変えなきゃ。そうじゃないと不公平だよね。ね、箒」

 

「あ、ああ」

 

普段の彼女の向日葵の様な笑顔。しかし、どこか作り物めいた無機質さがあり、なにより目が一切笑っていなかった。何より細められた瞳には狂気の光とどす黒い殺意の闇が混ざっていた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。