インフィニット・ストラトス~死神と呼ばれるIS~リメイク   作:神喰いの王

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他人の試合を邪魔する奴は死神に狩られて死んでしまう

五月

一夏と鈴が喧嘩して、数週間がたったが、一向に仲直りする気配はない。

デュオもこればっかりは当人同士の問題であるため、口出しはせず静観していたのだが、つい先日リーグマッチのための最後の練習の時、一夏は鈴に禁句を行ってしまったのだ。

 

『貧乳』

 

と。

これを聞いた鈴の怒りは天元突破してしまったのである。

この時、デュオは楯無と一緒に生徒会の仕事を手伝っていたため、後からその事を聞いたら取り敢えず一夏を殴ってしまった。

 

 

 

 

 

 

そして、迎えたクラス対抗戦当日。

 

「おーおー。殺気立ってんねぇ~」

 

アリーナ中央で一定の距離で向かい合っている二人、特に鈴の様子をピットのリアルモニターで見ながらデュオは他人事のようにつぶやいた。

 

「マックスウェルさん。実際のところこの試合、どう見ますの?」

 

「あん?一夏が勝つとは思わないのか?」

 

セシリアの質問にデュオは意外そうに視線を彼女の方に移した。

 

「もちろん思っていますが、貴方の意見が聞きたいのですわ」

 

「・・・・ま。まともにやったら十回中九回は負けるだろうな。白式のスペックがいくら高かろうが、幾ら何でも高々一ヶ月ちょいの訓練で代表候補生に勝てるなんざ、無理な話だ」

 

勝つ見込みが薄いとオブラートに包んで話すデュオに、セシリアと隣で聞いていた箒は若干表情が沈んでしまった。

 

「でもま、十回中九回は負けるが、姉御から教わったあの技が上手く決まれば勝ちは拾えるだろうな。アレは奇襲にはもってこいな技だし、零落白夜との相性もいいからな」

 

ま、後はアイツの腕次第だけどな~っと言いながらデュオは一夏の試合を眺める。

箒とセシリアもそれに倣ってアリーナの方に向き直る。

試合は今、開始されようとしていた。

 

 

 

 

 

試合は鈴の専用機、第三世代機『甲龍(シェンロン)』の特殊兵装、衝撃砲『龍砲』の見えない砲身と砲弾によって翻弄され、防戦一方であったのだが、一夏は千冬から伝授された瞬時加速(イグニッション・ブースト)による奇襲をしようとしたのだが・・・・・・。

 

 

ズドオォォォォンッ!!!!!!

 

 

アリーナの遮断シールドを貫き衝撃と共にそいつ等はやってきた。

爆炎のと共にアリーナ中央にやってきた三機のIS。

まず、乱入してきたISは三機とも『全身装甲』であった。

最初の一機は黒をメインカラーとして全体的に鋭角なフォルムをしており、肘部分や頭部装甲が鋭角になっていた。

二機目は一機目と同色だが対照的に全体的に丸みを帯びており、特に両肩のパーツは頭部装甲よりも大きい。

最後の一機は他二機と違い灰色がメインであり、前の二機とはあまりデザインが似ていない。

突然の爆発と現れた謎のIS。ロックされ、開かない扉。誰もが予想出来なかった事態にアリーナに集まっている生徒たちはパニックが起きるのも仕方がないことであった。

 

「チッ!!」

 

「あ、マックスウェルさん!?どちらへ――――-」

 

「お、おい!マックスウェル!?」

 

苛立たし気に舌打ちしたデュオは箒とセシリアの静止を無視し、アリーナへ走っていった。アリーナへと続く廊下を走ると中、携帯に着信が入いった。

 

「楯無か!?」

 

『ええ、デュオくん。状況は理解しているわね?』

 

「ああ。こっちからも確認できてる」

 

『完全にしてやられたわ。現在、アリーナの遮断シールドはレベル4。更に扉が全てロックされて干渉できない状態よ』

 

「クソッ!完全に後手に回ったってことか!」

 

悪態をつきながらデュオは最初にロックされている扉に到着し、通話と並行して扉のロックを解除し始めた。

 

『現在、三年生と『更識』の者を中心にシステムのクラッキング作業をしているんだけど、異常な程強固で苦戦しているわ』

 

「だろうな。コイツは国防総省本部(ペンタゴン)のセキュリティより上なんじゃねぇか?」

 

デュオは自身のISの右腕部分を部分展開して、ロックの解除作業をしながらそう愚痴った。

 

『・・・貴方なら、このロックを解くのにどれくらいかかる?』

 

「・・・扉一つ開けるくらいなら、一分もかからないが、アリーナ全てのロックを解除するとなるとどれくらいになるかわからねぇな」

 

ガチャン・・・と一つ目の扉を解除したデュオの答えに楯無は、

 

『・・・そう。じゃあ、貴方はアリーナで暴れているあの三機をお願い。私は生徒たちの避難誘導をするわ』

 

「確かに現状、それが最良の手か・・・了解だ。どの道、あの人形もどきが出た以上、俺のほうが適任だしな」

 

『ええ。頼りにしているわよ、死神クン?』

 

「おうさ。期待していてくれよ、会長サマ」

 

お互い軽愚痴を言うと、通信を切った。

 

「さあ、久しぶりに派手に暴れようぜ、相棒!!」

 

デュオの呼びかけに呼応するように首に下がっている髑髏と鎌のネックレスが黒く輝きデュオの全身を包み、輝きが止むとそこには誰もいなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

「所で、オルコット。マックスウェルはどうした?一緒ではないのか?」

 

「い、いえ・・・。先程までいらっしゃったのですが、急に何処かへと走り去ってしまいまして・・・」

 

千冬の質問にセシリアは先ほど千冬の八つ当たりの如き、指導もあり弱々しく言葉に窮した。

 

「チッ!あのバカが、こんな時に何処をほっつき歩いている。こんな時にこそアイツのクラッキングが役に立つというのに・・・」

 

千冬は忌々しげに舌打ちしながらこの場にいないデュオに悪態をついた。

 

「え?あの、織斑先生。幾らなんでも三年の精鋭たちが悪戦苦闘するほどのロックをマックスウェルくん一人ではどうにもならないんじゃ――――-」

 

「どうにか出来るからこうして苛立っているのですよ、山田先生。アイツはことセキュリティ破りに関して世界でもトップ3に入るほどだ。これぐらいのロックなら三十分としない内に破ることが――――-ん?」

 

さらりととんでもない事を暴露する千冬だが、胸ポケットにしまってあった携帯が震え、確認すると、先ほどの苛立ちが嘘のように消えフッと微笑した。

 

「山田くん、済まないがコーヒーを入れて来てくれないか?」

 

「へ!?あ、あの・・・織斑先生?今はそれどころじゃあ・・・」

 

「何どうやら、あの乱入者たちは死神に目をつけられたようだ。自体が沈静化するのも時間の問題だろう」

 

「あの・・・死神って・・・?」

 

真耶の疑問に千冬は答えることなく、黙ってリアルモニターを眺めていた。

 

 

 

 

 

 

「ああ、もう!またアイツね!」

 

「落ち着けよ、鈴!」

 

「わかってるわよ!!」

 

一方、三機の謎のISを相手にしている一夏と鈴はかなり危ない状況であった。

突然現れた乱入者三機は問答無用で二人にビーム砲を撃ってきて、二人は真耶の静止を無視し、立ち向かっていったのだが・・・・・

 

「ああもう!なんなのよ、あの三個の円盤わ!!」

 

「また鈴の衝撃砲を防ぎやがった!」

 

三機の絶え間ないビーム砲の嵐に遠距離武器のない白式を操る一夏は近づくことができず、衝撃砲を持つ鈴は回避しながら龍砲を撃つが、ずんぐりとしたIS《ビルゴ》に搭載されている三個の円盤“プラネイトディフェンサー”によって、完全に防がれてしまう。

 

「クソッ!鈴!こうなったら俺がもう一度――――-」

 

「ダメよ!またあの灰色の奴に防がれるし、何よりアンタシールドエネルギーがもう残り少ないでしょ!?」

 

先ほど、一夏は瞬時加速を用いて三機の内の一機、ビルゴに切りかかっていったのだが、刃が届く瞬間、灰色のISに防がれた後、殴り飛ばされてしまったのだ。

 

「でも、ダメージは通ってるはずだ。実際、あのISはさっきから左腕が動いていない」

 

一夏の言うとおり灰色のISは左腕の装甲に亀裂が入っており時々亀裂周辺から火花が上がっていた。

 

「仮に運良く一機を倒せても後二機いんのよ?狙い撃ちにされるわ」

 

「ウッ・・・」

 

「ったく、アタシに落ち着けって言いながらアンタも焦ってんじゃない」

 

鈴の言うとおり、好転しない自体に自分は焦っていたようだと一夏は内心で反省しながらふとある事に気づいた。

 

「なあ、鈴。あのIS達、なんかおかしくないか?」

 

「なんかって何?」

 

「いや、機械じみているっていうか・・・」

 

「ISは機械よ」

 

今更何言ってんの?という鈴に一夏は首を振る。

 

「いやそういうんじゃなくって。・・・あれって本当に人が乗ってるのか?」

 

「ハァっ?ISは人が乗らなきゃ動かな――――-」

 

そこまで言って鈴はあることに気づいた。

 

「そう言えばアレ。私たちが会話している時にあんまり攻撃してこないわね。まるで興味があるみたいに聞いているような・・・」

 

鈴の言う通り、三機はフォーメーションを組んで銃口を向けたままこちらの様子を伺っていた。

 

「ううん。でもありえないわ。ISは人が乗らないと絶対に動かないもの。そういうものなのよ」

 

鈴がそう言いいきり、一夏が何か言おうとした時、ふたりの会話を聞いていた三機が展開して二人に向けて銃口を向けてきた。

 

「一夏ぁっ!!」

 

銃口にエネルギーが収束している途中、突然アリーナのスピーカーから大声が上がった。

一夏たちが声のした方向――中継室に目を向けると、箒が立っていた。

 

「男なら・・・・男ならそのくらいの敵に勝てなくてどうする!!」

 

キーンッとハウリングが起きる。箒的には苦戦している一夏に喝を入れに来たのだろうが、位置が最悪であった。

何故なら、そのすぐ傍には箒に背を向け一夏達に銃口を向けているトーラスがいるのだから・・・。

 

「・・・・」

 

ピピピッと電子音と共にトーラスの一つ目のモノアイが光だし、中継室にいる箒の方に向き直った。

 

「箒、逃げ――――-」

 

一夏が言い終わる前に残りの二機が二人に向けて攻撃を開始した。

 

「クソッ!!」

 

「邪魔よ!!」

 

二人は何とか攻撃をかいくぐって箒の元へ向かおうとするが、如何せん二機の攻勢が激しいため近づくことも出来ず、そればかりか離れる一方であった。

そして、トーラスが箒を確認すると銃口を箒に向けた。

 

「箒ーーーーーー!!!」

 

銃口にエネルギーが収束しトーラスが引き金を引こうとした瞬間、

 

ピッ・・・・・。

 

突然、トーラスが動きを止めた。同時に収束していたエネルギーも消え去ってしまった。

 

「?」

 

「何?どうしたの?」

 

攻撃していた二機も攻撃を中断して、トーラスの方へ向き直り、一夏たちも不審気にトーラスを見た。

すると・・・・。

 

ズズズ・・・・

 

「なっ!?」

 

「うそっ!?」

 

トーラスの機体が斜めにズレて始め、爆発した後そのまま真っ二つになって墜落していった。

 

「おいおい、一夏。ちゃんとお姫様は守っとかないといけないぜ?じゃないと・・・」

 

トーラスが居た場所が蜃気楼のように揺らめき始め、そこから聴き慣れた声が聞こえてきた。

 

「死神が横から掻っ攫っちまうぜぇ!!」

 

死神の大鎌(ビームサイズ)を振り下ろした状態で死神(タナトス)を纏ったデュオが姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

(フゥ~。アブねぇ・・・なんとか間に合ったぜ・・・)

 

デュオは内心で冷や汗を流しながらそんな事は臆面にも出さずにビームサイズを肩に担ぎ黒と灰色の二機を目で牽制しながら、一夏達にプライベートチャンネルを開いた。

 

「一夏、鳳。こいつらは俺が相手するからお前らは撤退しな」

 

『なっ!?撤退って・・・お前一人で相手すんのか!?』

 

『二対一なんて無茶よ!数的にはこっちの方が有利になったんだから、あたし達も戦うわよ!』

 

「あ~・・・気持ちは嬉しいが、お前らもうシールドエネルギーはほとんど残ってないだろう?こう言っちゃ悪いが、今のお前らは邪魔だ」

 

“邪魔”その言葉が二人に重くのしかかった。実際デュオの言うとおり二人のエネルギーは殆ど残っておらず、一撃でも被弾したら終わりといった状況であった。

 

「ま、後は俺に任せときな。灰色のはともかく、黒いのとは何度かやりあった経験があるから安心しな。その代わり篠ノ之をちゃんと守ってやれよ?」

 

ちょっと言いすぎたか?と思いつつ撤退していく二人を見送りながら、その二人の背中に銃口を向けようとしているビルゴに瞬時加速で一気に近づき、ビームサイズを振り下ろした。

 

「!?」

 

「おいおい、野暮なことすんなよ!お前らの相手は俺だぜ!!」

 

ビルゴは間一髪で恐ろしい速度で振り下ろされたビームサイズを躱し、距離を取ろうとする。

 

「ハッ!死神から逃げられると思うなよ!!」

 

追撃しようとするデュオに灰色のISが行手を遮るようにセシリアのレーザー兵器よりも威力が高いレーザーを撃ちはなった。

 

「微温いぜぇ!!」

 

しかしデュオはレーザーの間を縫うように躱し、真っ直ぐビルゴへと向かっていった。

対するビルゴも灰色のISの牽制射撃を受け躱しながら自身へと向かってくるデュオとの間に一定の距離が空いたため、主兵装のビームキャノンを執拗なビーム砲擊を躱しこちらに向かってくるデュオに向けて構え、最大出力で撃ち放った。

放たれた特大のビームは真っ直ぐにデュオに向けて直進し、直撃コース確実であった。

特大のビーム砲はデュオを体を貫通し、アリーナのシールドにあたり爆発した。

 

「デュオ!?」

 

普通、あれほどの高出力のビーム砲をまともに喰らえばいかなISの絶対防御であってもひとたまりもない。

そう――――-

 

「あ、あれ・・・?」

 

まともに喰らえばの話だが・・・・・

 

ヴヴヴ、ヴヴヴ・・・・。

 

ビーム砲が通過した場所、そこにデュオは健在だった。いや、少し違った。確かに五体満足であるし、生きてはいる。だが、彼の体は壊れたテレビのように歪み、透けていき・・・・。

 

「き、消えた・・・?」

 

「ど、どうなってんのよ!?」

 

消えてしまった。

一夏達は突然霞の如く消えてしまったデュオに驚き、無人機たちは頭部装甲のモノアイを光らせどこかに潜んでいるであろうデュオを索敵しているが、一向に捉えることができない。

 

「言っただろ?」

 

「!?」

 

突然、ビルゴの背後からデュオの声が聞こえた。

 

「!」

 

ビルゴはビーム砲を振りかぶり背後に居るであろうデュオに向かって殴りつけようとしたが、

 

「死神からは逃げられねぇってなぁ!!」

 

ザンッ!!

 

ビルゴは胴体を真っ二つにされ飛ばれた上半身をアリーナの壁へと激突した後、爆散。下半身はそのまま地表へと落ちていった。

 

「!!」

 

最後の一機となった灰色のISは仲間であった二機の仇を撃つかのように両手のビーム砲を乱射した。

砲撃の嵐をデュオは軽やかな機動で躱し、灰色のISへ迫った。

 

「オラァッ!!」

 

「!」

 

振り下ろされたビームサイズを灰色のISは拳で迎え撃った。

 

ズバッ!!

 

「!?」

 

「ハッ!そんなんで俺の相棒のビームサイズを受け止められると思うなよ!!」

 

振り下ろされたビームサイズは灰色のISの拳から肘までを真ん中から切り裂き、返す刀で左腕を肘から断ち切った。

これで灰色のISの残った武装は両肩のビーム砲のみとなった。

 

「オラオラ!死神様のお通りだぁ!!」

 

灰色のISは後退しながらも両肩のビーム砲を放つがデュオは意に介さず紙一重で躱し、右肩をバスターシールドで打ち抜き体勢が崩れ無防備な胴に向かってビームサイズをすれ違いざまになぎ払った。

上半身と下半身を断たれ二個の塊となって堕ちていくISを眺めならデュオはビームサイズを数回回転させた後肩に担いだ。

 

「フゥッ一丁上がりっと!」

 

「おーい、デュオー!」

 

声の方をしたほうを見ると、一夏と鈴がデュオの方へと向かってきた。

手を振ってこちらに向かってくる一夏達に向かってデュオもおうっと返事をしながら手を振り返した。

だが・・・

 

「ッ!?一夏、鈴!後ろだ!!」

 

デュオの警告の叫びが響いたのと同時に彼等の後方、最初に倒したはずのトーラスが一夏達に向かってビームカノンの引き金を引いた。

トーラスはビーム砲の威力に耐え切れず自壊し、発射元のビームカノンは壊れても撃ちはなったビームは生きており真っ直ぐに一番近い鈴に向かっていった。

デュオは二人の特に鈴との位置がかなり離れていたためいち早く気づいても距離的には間に合わず、鈴は完全に虚を突かれ回避できずにいた。

 

「鈴!!」

 

ビーム砲が鈴に当たる直前、一夏は咄嗟に鈴を押しのけ、身を呈して鈴を庇った。

そして、

 

ドガァァァァンッ!!!

 

「一夏ぁ!!」

 

「こんちくしょがァ!!」

 

ビーム砲の直撃を受けた一夏は力なく地面へと落下していった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様、デュオくん」

 

「・・・おう」

 

暖かく迎える楯無にデュオは若干沈んだ表情で返事を返した。

時刻は夕方、現在学園では襲撃事件の後始末が行われていた。

 

「さっきの事、まだ気に病んでいるの?」

 

楯無の言うさっきとは、トーラスが最後に放った一撃が鈴を庇った一夏に直撃したことだ。

幸い、一夏は爆発の見た目ほどそこまでダメージは受けておらず、軽い脳震盪ですんだようだ。

 

「ん~・・・ああ。やっぱりカンが鈍ったかな~ってな・・・」

 

「でも、あの状態で反撃できるとは思わないでしょ、普通?だからデュオくんが気に病むことはないわよ」

 

楯無の言うとおり体の半分以上を失ってもまだ反撃できた、いくら無人機であれ予想できないであろう。

 

「そういうもんかね~」

 

デュオは後頭部をポリポリ掻きながら納得がいかないのか唇を尖らせている。

 

「そういうものよ。それより、織斑くんのお見舞いにはいかないの?」

 

「ああ。生憎と馬に蹴られて死にたくないんでね」

 

楯無の質問にデュオは呆れたように肩をすくめる。それだけで楯無は理解したのか、バッと扇子を開いた。

因みにそこには『青春謳歌』と書かれていた。

 

「ま、そんな所だ。所で俺達は何処に向かってんだよ?」

 

「フフッ・・・まあ、黙って付いてらっしゃいな」

 

扇子で口元を隠しながら笑う楯無にデュオは仕方なく黙ってついて行く。

やがて、二人は学園の地下五十メートル、レベル4権限を持つ者にしか入ることを許されない隠された空間へと足を運んだ。

 

「おいおい。学園の地下にこんな所があるなんてな・・・・流石に驚いたぜ」

 

「でしょ?しかもここは学園でも限られた人しか来ることを許されいのよ?」

 

デュオが素直に驚きそんなデュオを背に楯無はある一室に到着すると中に入った。

 

「失礼します、織斑先生」

 

室内は薄暗く、ディスプレイの光がそこにいる人物たちを照らす。

 

「お、姉御に真耶ちゃんじゃねぇか」

 

「織斑先生、だ。馬鹿者」

 

「ま、真耶ちゃんですか・・・?」

 

室内にいたのは千冬と真耶であった。

 

「ご苦労だったな、更識。それと生徒の避難誘導も」

 

「いえいえ。生徒会長として当然の事をしたまでです」

 

千冬の労いの言葉に楯無は扇子を開いて口元を隠した。

 

「フッ・・・そうか。で、マックスウェル。貴様を呼んだのは他でもない。あの三機の無人機についてだ」

 

「・・・断っておくが、あの灰色の奴については何も知らねぇぜ?残りの二機については多少なりとも知ってはいるが、それだって完璧じゃねぇんだ。それでもいいか?」

 

「構わん」

 

即断で答える千冬にデュオはあいよっと返事をして、懐からUSBメモリーを取り出し備え付けのデスク型端末に差し込む。

そして、コンソールを操作して大型のディスプレイにそれを映し出した。

 

「!コレは・・・?」

 

「まずコレだけは言わせてもらうぜ。灰色のやつはどうか知らないが、黒い二機は“ISじゃねぇ”」

 

デュオの宣言にその場にいた教師陣が驚愕した。

 

「なんだと?」

 

「そ、そんなありえません!!」

 

「・・・・やっぱりね」

 

「あ~落ち着けって。今からその理由を話すから」

 

デュオは一旦咳払いをして話を続けた。

 

「まず、あの黒い奴、角張った方が『トーラス』丸みを帯びた方が『ビルゴ』だ」

 

コンソールを操作するとディスプレイに先ほどの二機の設計図が映し出された。

 

「コイツは俺がある仕事中にある製造プラントを見つけそこであの二機の設計図を手に入れた。これを見て気づいたことはないかい真耶ちゃん?」

 

「え?え、えっと・・・あれ?」

 

いきなりデュオに指名され若干慌てながら二機の設計図をみるとある事に気づいた。

 

「ISのコアを置く部分がない?」

 

「ご名答。その通りだ」

 

デュオの回答に千冬と楯無は瞳を鋭くした。

 

「で、でも!それじゃあ、どうやって動いていたんですか!?」

 

「さあ?」

 

あっけらかんと言ってのけるデュオに真耶は軽く肩透かしをくらいずり落ちかけた眼鏡を直す。

 

「ただ、アレは遠隔操作(リモートコントロール)独立稼働(スタンドアローン)で動いていることは間違いねぇ。真耶ちゃんの言うとおりこいつらにはISコアを置く場所がない以前に人が乗るように設計されてないからな。ただ人が乗ってないからこいつらは正確な射撃と人間じゃ耐え切れない程の加速ができるから並みの奴ならかなりキツイだろうな。俺等はこれを『無限の人形兵(インフィニット・ドールズ)』、略してIDって呼んでいる」

 

「『無限の人形兵(インフィニット・ドールズ)』、略してID・・・か。更識、お前はこの事を知っていたのか?」

 

突然、話を振られた楯無は若干驚くも直ぐに笑みを浮かべてええ、と肯定した。

 

「ちょうど一年ぐらい前に更識の仕事でトーラスと交戦しました。数は多かったですがデュオくんと共同戦線を敷いていたため事なきを得ましたけど・・・」

 

「その時の敵の規模は?」

 

「ざっと12機ですね。それにあの生産速度を考えると一個大隊規模は生産できると思います」

 

軍隊で言うところの一個分隊規模の戦力である。自体を重く見た千冬と真耶は表情を暗くした。

 

「安心しなって、確かにこの人形もどきは厄介かもしれないが、言っちゃ悪いが所詮機械だ。戦術プログラム通りにしか動けないから対処しやすいぜ。な、楯無?」

 

デュオの言葉通り、先刻の襲撃の際にはトーラスとビルゴを圧倒している。

 

「ええ。確かに最初は戸惑ったけど、動きが完璧すぎて読みやすいわ」

 

「なる程な。確かに数で来られたら厄介だが、単機ならば熟練のIS操者にとってはそこまで驚異ではない。か・・・」

 

「だな。所で灰色のISについては何かわかったのか?」

 

「・・・目下調査中だ。何かわかれば知らせる。二人共、今日はご苦労だったな。もう帰っていいぞ」

 

「・・・・へ~い」

 

「わかりました」

 

恐らく何か隠しているであろうが、あえて言及せずデュオと楯無はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

帰り道にて。

 

「あ~・・・ったく。今日は色々あり過ぎて流石に疲れたな」

 

「フフッ今日はデュオくん、大活躍だったものね~」

 

「っつーか、今の時間食堂開いてんのか?」

 

「残念。ちょうど閉まっちゃう時間帯ね」

 

「ウヘ~マジかよ・・・」

 

ガックシと肩を落とすデュオに楯無が大丈夫よ~と笑いかける。

 

「代わりに私が何か作ってあげるから♫」

 

「マジで!?」

 

「マジマジ。大マジよ」

 

バッと開かれた扇子には『御褒美』と書かれていた。

 

「今日頑張ってくれたデュオくんにおねーさん頑張って美味しいもの作っちゃうわね♪」

 

「サンキュー!楯無!!助かるぜ~」

 

 

 

 

こうして、激動の一日は静かに幕を閉じた。が、この事件は始まりに過ぎない。これから先、更なる事件が彼らを待っているが、それはまだ、誰も知らない。

 

 

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