がっこうぐらし!ver2.0_RTA 『一人ぼっちの留年』ルート≪参考記録≫ 作:ゆキチ
この世には結果だけが残るRTA、はーじまーるよー!
(気絶していた間の)過程や……(私抜きで生き残った)方法など……(タイムが良ければ)どうでもよいのだぁぁ!
まあ、良くはないんですが(素)。
……結果的に全員生き残って、重傷だったのはショタだけ。
こう挙げれば――まあ、ベターベターのベトベターです。
どう生き残ったのか、聞いときたいですが――最早、タイムしか誇れるところが存在しなくなってきたこのRTAにおいて、それはロスですからねぇ!(自虐)
まあ、なんやかんやあってなんとかなったんでしょう。なんやかんやあって。
「…………」
「…………」
「…………」
「――やーくん、あーんっ」
あーん。
――八日目、朝。
部室での朝食の時間です。
……お通夜状態です。
カチャカチャと響く食器の音以外ほんと無音。
これじゃあ、りーさん謹製のカレーの味もわからないんだよなぁ……。
ゆきちゃんだけが心の拠り所やでぇ……。
「……くるみさんは」
「まだ寝たいって……まあ、しょうがないよ」
「できれば朝ごはんは食べてほしいけれど……」
「はい、やーくん。あーんっ、あぁーんっ」
あーん。
――正直、ちょっと由々しき事態です。
前にどこかでお話したと思いますが――朝食での皆の状態が、どのぐらい正気度が減っているかの目安として分かりやすいのです。
食べる量が減ってたり、やけに会話しなかったり――そもそも朝食の場に来なかったり。
「………………」
「………………」
「………………」
完璧に当てはまりますねぇ!
おっ、冷えてるかぁ~?(場の空気) ヒエテマスヨォー(エコー)
ヒール、ヒール!(世界観ガン無視)
「……昨日は大変だったもんね。疲れちゃうのはしょうがないよ。はい、あーん」
あーん。
……昨日の“あめのひ”が余程堪えたようですねぇ。
まあ、然もありなん。
二階を制圧してなかった事でかなり多くなった『かれら』の群れ。バリケード崩壊に、ショタの戦闘不能……不利な状況てんこ盛りでしたし。
必殺技のフラグとか、覚醒めぐねぇとか。
そういった有利な条件があったから、皆の頼れる私が居なくてもなんとかなりましたが――正気度減少は、想定より多くなっても不思議ではありません。
しょーじき。一人も怪我無く、それも脱落しなかったのが奇跡です。
めぐねぇあたりがポカやらかして一人脱落とか平気であるので、これは覚醒めぐねぇのせい……いや、おかげでしょうか。
バール窃盗犯ですが、恐らくは一連の流れの救世主です。感謝の祈りを捧げましょう。
アーメン……バールカエセーメン……(執念)
「りーさんのカレーおいしいね。あーんっ、あーんっ、ああーんっっ!」
あーん……って。
ていうか、ゆきちゃん。なんであーんばっかりしてくるのん?
こういった行動は好感度が高いなによりの証ですが、やけに多いような。
「だって、やーくん。頭怪我してるでしょ?病人なの!だから、私に任せて?はいっ、あーんっ!」
ああ、なるほ―あーん―ど。
ショタが怪我したせいでゆきちゃ―あーん―んの庇護欲を掻き立ててしまったようです。まあ、いいでしょう。
お互いの好感度が高い状態で“看護”されると、両方の好感度が上がりますし、正気度も少し―あーん―回復します。ゆきちゃんリカバーとして、為さ―あーん―れるままになっときます。
……他の連中にもリカバーを―あーん―しないとですね。
これで皆がわかりや―あーん―すい怪我でもしてば私も“看護”でいけ―あーん―るんですが。
うーん、ショタが―あーん―怪我してし―あーん―まった以上、他に―あーん―もリカ―あーん―バ…………ってちょっ、多すぎィ!?
ちょっとゆきちゃん、ペース!ペース早い!
ショタの小さな口にそんなの(大量のカレー)挿入らない!
はやくそんなもの(スプーンいっぱいのカレー)閉まって下さい……!
ちっ、近づけないで……(カレーの良い)匂いが……!!
「えー。いっぱい食べないと元気にならないよ」
不満そうにしな―あーん―言ってるそばから!
くっ、何故だ……!何故今回はこうも甲斐甲斐しい……!?好感度か?正気度か?ショタの怪我具合のせいか!?
くそっ、このゲームの高度なフラグ管理のせいで曖昧にしかわか―あーん―ちっ、窒息する……!この万寿柳がカレーで窒息死してしまう……!!
「……ふふふっ、美味しいですか?やなぎくん」
なにわろてんねん!
……たとえゆきちゃんにわんこソバよろしくされても美味しいですねぇ!当たり前だよなぁ!?(ゆきちゃんへの愛)
「気に入ってるからってそうがっつくなよ。喉詰まらすぞ」
「いっぱい食べてくれるのは嬉しいけど……たかえちゃんの言う通り――めっ、よ?なぎくん」
それ、ゆきちゃんに言ってくれませんかねぇ!?
「にへへ……あーんっ」
くそっ、可愛い許す!(これをゆきちゃん無罪と言います)
「じゃあ……私たちも食べちゃいましょうか」
「そうだな」
「ですね」
おや。
どうやら一連の流れで多少……ほんとに多少ですが、和やかな食事風景に戻りました。
これを不幸中の幸いと言います(正しい表現)。
やっぱりこういう時のゆきちゃんの空気清浄器っぷりは伊達ではありません。後でほっぺむにゅむにゅで労ってあげましょう。
さて。
ゆきちゃんにわんこカレーをされてる様を皆がほほえま~している間に――今日やるべき事を軽く説明しましょうか。
割りと窒息死の危機ではありますが。私がボタン連打すれば問題ありません(意地でもゆきちゃんを責めないスタイル)。
八日目は、中盤の鬼門たる七日目の“あめのひ”が終了した次の日――『かれら』によってメタクソになった安全圏の修復や、生存者の回復に勤しむ……そんな重要な一日になります。
これを怠れば、次の“あめのひ”かつ最終戦の十四日目を待たずに、『かれら』が入り込んでタイムロスの原因になりかねませんし、皆の正気度の具合によっては要らぬイベントが挟まり、これまたタイムロスに繋がります。
傷は、出来てすぐに処置をした方が悪化もしないし早く治るのは自明ですね?
今日はそんな一日なのです。
……本チャート通りで行っていれば、ここでエンディングに向けての下準備とかショッピングモール組の救出のフラグ建てとかもやる予定でした。でした!(苦渋の過去形)
ですが、周りの正気度の減少幅……特に此処に居ないゴリラはかなりヤバそうなので………そういったのは隙が空いた時に、振り分ける事にしましょう。
ショッピングモール組に関してはショタがこんな様なので……修正が必要だ……。
「……今日の事なんですが」
なんれふふぁ、めふねぇ(口に物を入れて喋るお行儀わる子)
「取りあえず、バリケードの修繕を。もう……入り込まないように」
「ええ、廊下も綺麗にしなきゃですし……その……」
「ああ、そうだな――
……三人は前向きに話を進めてますね。表情も良いものではないですが、悪いものでもないです。
一様に暗いですが、建設的な話ができているので――正気度的にはそれほど深刻にならなくてもいいでしょう。
後でハグでもして補強しつつ、それでも足りなさそうなら今日一緒に添い寝でもしとけば大丈夫です。
ショタであれば、体を売る事で異性を元気にさせる事ができます(悪意ある解釈)。
「うーん……やーくん。私たちはどーする?手伝う?」
いいえ。
ここでゆきちゃんに協力させてもそこまでの短縮にはなりません。ショタも怪我を負っているので、いつものスタミナバーギリギリ酷使走法は封じられてます。
今日のRTA的短縮ポイントは、いかに効率良く皆の正気度を一定水準に戻し、且つ安全圏を素早く確保するかに限ります。
ですので――とっとと、くるみのケツを蹴り上げて立ち直させましょう。
食事にすら来てないという分かりやすいほどイッてるので、色んな意味で急務です。
空気清浄器ゆきちゃんもいれば、正気度回復は確実。
学園生活部の力(直喩)が復帰すれば、後片付けも早く終わりますしね。
一石二鳥……ある意味、くるみがダウンしててありがたいですね!(屑)
じゃあ、ゆきちゃんにくるみを起こしに行く事を手伝って、とお願いしましょうか。
「わかったっ!じゃあ、寝坊助なくるみちゃんを起こしに行こう!おーっ!」
おーっ!(今のうちにゆきちゃんからスプーンを取り上げて、手の届かない所に置きます。お腹いっぱいでちっ!)
「あら、なぎくん。ふふ……お腹いっぱい?」
「……まあ、そんなに食えばな」
「でも、気持ちはわかるわ。ゆうりさん、ありがとうね?」
「いえいえ。昔からおんなじのを作ってますから……ねー?なぎくん?」
ねー……ぇ?えっ、なにがよ(ボタン連打で聞いてない)
まま、ええか。
んじゃあ、私――ちょっとナマケモノになったくるみを起こしに行ってきます。
その間、先に片付けてて?
「――駄目よ」
なんで?(半ギレ)
「一人じゃ危ないわ。そうね……じゃあ、私が付いてくから、二人は先にお願いしていい?」
「いや、胡桃と最後に話したのは私だし。私が行くよ」
「いいえ。私が付いてってあげます。なぎくんもその方がいいでしょ?」
「ダメ!だぅめぇ!やーくんとは私がいっしょに行くの!三人ともっ、カップリングは大事なんだよっ?寝取りいくない!」
まあ、なに言われてもゆきちゃん一択なんですけどね。
趣味も実益も兼ねた選択、イイゾ~これ(満悦)。
じゃあゆきちゃん行くよー。
「うん!いこいこっ!」
うきうきゆきちゃんカワユス。
じゃあ、ほな。ワシらはイチャイチャしながら行ってくるさかい。
そっちはそっちでたのんますわぁ――
「――あっ……えっ……」
「…………っ」
「――――」
――いや、無言はちょっと止めて!?
「やーくんとぉ~、二人っきりぃ~、ぬふふふん」
……あっけなく場面転換したけどほんと大丈夫なんですかねこれは。
まま、ええか(今回二回目)。
ご機嫌ゆきちゃんと一緒に向かうのは、くるみがいる寝室ですが――十中八九いません。
こういった場合、くるみは屋上で黄昏ています。
くるみが正気度減った状態でどっか消えたなら屋上を探せば問題ありません。
では、ちゃっちゃと屋上へ。行くゾー!
てってててて、かーん!ててっ――臭っ!?
「あっ……やなぎ……」
「むむっ……ちょっと焦げ臭いよ、くるみちゃん……」
思わずショタがのけ反りました。
(屋上へ来た途端、むわぁとした黒い煙が顔に直撃したら)そりゃそうよ。
焚き火の横でくるみが項垂れてます。……これはアレじゃな?旨いもん食わせた弊害じゃな?
で、くるみは何をしていたのですか(詰問)
「焼きいも、食べたくなって……やってみたんだけど……」
その手に持ってるのはなんですか(追求)
「焼きいも、の……つもり」
焼き炭の間違いでは?(揚げ足取り)
「…………」
勝ったな(なにがだ)。
……ふむ。
これは想定よりも早くくるみのゴリラ(比喩)を元気に出来そうですねぇ!
ちょうどいいバナナ的なアイテムが!
では、私が代わりに焼き芋焼いてあげます。ゆきちゃん手伝って下さい。
「はぁーい!じゃあじゃあくるみちゃん!ちょっと待っててね!」
「…………」
「美味しいの作るからねっ!……やーくんが!」
……まあ、ゆきちゃんは調理スキル壊滅的だからね、しょうがないね。
では、調理開始。
ここで一子相伝の秘伝の裏技テクニックをお教えしましょう。
焼きいもはね。火で焼くじゃない――
石焼き芋ってありますよね?あれは熱した石が放つ熱がじんわりと芋を温めるからとても美味しいのです。だから田舎を練り歩く屋台のジジィは大抵石焼きィ芋ォ~などと叫んでいる訳です。最近見なくなってとてもさみしいです。直火も電子レンジも駄目です。芋は一気に火を通すと固くなって風味が落ちてしまいます。ただの芋でも蜜を溢すほどうんまくするには、石焼きが強い。故に至高。異論はあんまり認めない。オーブンも美味しくなりますが風情ってものがないですよ風情ってやつが。石が無ければ、燃え尽きた灰の中でもいいじゃない。焚き火跡の土の中に入れるだけでもぜんぜ――なんか脇から腕が視点が浮いた抱き抱えられた髪に顔を埋められたぁ!?
わっ、私はただ美味しいやき芋講座を……!(趣旨を忘れる走者の屑)
「…………」
まあ、こうなるのは想定通り。
少し前に言った通り――ショタを抱くと気持ちいいですからね(意図的な切り取り)。
ともかく。
美味しい焼き芋が出来るまで、誰かの赤点用紙の灰をぐーるぐーる掻き回しながら――くるみの正気度回復を始めましょう。
とはいえ、難しくはありません。
くるみが欲しがってるのは、褒める事と愛する事。
承認欲求をこれでもかっと満たして、無償の愛を見せつけてやりましょう。これだけで問題ナッシング。
心の綺麗な私だからこそ出来る事ですね!
「なぁ……怒ってないか、私の事」
怒ってないですねぇ!
だって基本くるみが居ないと『かれら』相手はハードモードですから。主要キャラ全ての筋力値を足しても尚も上回る暴力の化身に対して、媚を売って靴を舐めて体を売って焼き芋を貢ぐのはともかく――怒る事はありえないですねぇ!
「だって……だって、私のせいで――!」
「――むぅ、ちょっとやーくん。私の事忘れてない?」
あっ、ごめんゆきちゃん。今忙しいからちょっと脇行ってて。
そこにいるだけでマイナスイオン出てるから。
「――――っ」
「むぅー!あーそうですかそうですか!いーですよーだ。やーくんのバカ!大好き!愛してる!」
可愛すぎか(鼻血)。
まあ、空気清浄器YUKIChanは稼働してもらっておいて。
呆然とするくるみに畳み掛けます。
くるみが居なければそもそもここまで来てない。くるみが居たから皆生き残れた。つまり、くるみ=希望なんだよなぁ。誇りに思って、どうぞ。
……ていうか、本編もくるみ居なかったら一巻辺りで全滅してそうだし。
「そうかな……?」
そうだよ(適当)
ゆきちゃんもそう思ってるって大丈夫だって安心しろよぉ~。
ふぅ……。
くるみの顔色もだいぶ良くなってます。
まあ、こんなかわゆいショタに慰められれば誰でも嬉しくなるってはっきりわかんだね。
焼き芋も良い感じに仕上がりました。ついでに他の三人分も見繕っといて、くるみに朝ごはんとしてこれを食わせましょう。
これでもう平気やろ。
「――
あん?
「――ゆきも……そう思って、くれる……かな」
だってよ、ゆきちゃん。
このゴリラに、慈悲深い御言葉を告げておやりなさい。
「つーん」
つーん、てかわいいかよ。
抵抗しないで言ってあげなさいって。
「……やーくんが言ってあげて」
なんで?(0ギレ)
「くるみちゃんはやーくんの口から聞きたがってるの」
…………。
いや、なんで?(0.0001ギレ)
「いいからっ。さん、はい!」
……うむぅ?ふむ……ふみゅぅ……(可愛げアッピル)
ゆきちゃんがここで渋る必要が――
「――ごっ、ごめん!変だよな、変だったよな……あっ、あはは。すまん、なんでもない忘れてくれ!バカだよな私。ほんと……ほんとにバカだ……」
うわわ!
不味い、せっかく戻ってきた正気度が……!
ええとええと、このゆきちゃんマイスターであるこの私が算出する、ここでのゆきちゃんの気持ち――!!
――
……どーよ。どーよ!
月刊『ゆきのきもち』を購読してた私に隙はない!
「……っ。ああ、ああ……!そうだよな、ゆきならそう言うかもな……!」
「そうだよ!くるみちゃん!私がくるみちゃんを嫌いになるわけないもん!大丈夫大丈夫!――元気出して?」
くるみ嗚咽、ゆきちゃんご満悦。
……完璧な仕事ですねクォレハァ。
「………………――よしっ!」
現場猫かな?
「くよくよすんの終わり!あたしのやる事はまだある!なら、じっとしてる訳にはいかないよな!」
おーし、よぉーし。
くるみ復帰ですね。流石ゆきちゃん。辛い空気も完璧浄化ですね。
これで問題ありません。
さぁ、くるみ。
この焼き芋を食って今日もRTAの為に馬車馬の如く働くのです。
「ああ!行ってくる!」
くるみは焼き芋咥えて屋上を出ていきました。
食パン咥えて走る女子高生かな?……女子高生だな。
「……良かったね。やーくん」
ほにほに。
ゆきちゃんもあんがとね。ほら、ほっぺふにふにしてしんぜよう。
「すぃー……」
何故避ける!?
……まあ、機嫌めっちゃ良さそうですから別にいいか。
さぁて。私たちも手に入れた焼き芋を他の三人にも渡して、正気度を回復させてやるとしましょう。
では、夜まで倍速でさくさくっと行きましょう。
前にもやったモップ持って廊下を綺麗にして、バリケードを作り直すだけの単純作業ですからね。時給は焼き芋半欠片!
……あれ?そういえばバサ杖さまは?決死の特攻を共にしてくれた私の戦友はぁ!?
でっ、出てこない。……まさか、『かれら』の誰かが持ってった?生前の癖とか習慣で行動しがちですからアイツら。
あちゃー。武器がまた無くなった。
……まあ、そこらへんのリカバーは……もう、ええか(投げ槍)
ショタ怪我しちったし。それも自然に治らない『脳震盪』だし。
完全に後方ムーヴに切り替えた方が良いでしょうね。切り替え切り替え。
「――このぐらいで、いいですかね」
っと。めぐねぇの一言でお掃除タイム、終わり!
そのまま場面はぁ……寝る頃合いになりました。
……マジで何もねぇ時何もねぇなこのゲーム(RTAの味方)
夜ご飯?……さつまいもカレーにでもなったんじゃないですかね。
では、いつもの雑魚寝ですが…………。
今日は正気度の兼ね合いもありますしぃ……安全策でめぐねぇあたりと――
「じゃあ、やなぎくん。私と寝ましょうか」
「やーくん――私とだよね」
「なぎくん、おいで」
「浮気はダメだよやーくん」
「……まあ、柳が来たいってなら、断る気は……」
「マスコミさんの前で土下座したい?いしゃりょうとるよ?私スーパー弁護士と知り合いだからね」
「やなぎを困らせるなって。ほら、やなぎ。こっちゃこいこい」
「……………………」
――ゆっ、ゆきちゃん一緒に寝ますっっ!正気度とか知ったことか!その前にniceboatになるわ!
みっ、皆そこで能面になってるゆきちゃんの前で良く誘えるな!?好感度高いと独占欲とか出るけど乙女ってほんと逞しすぎぃ!!
「そ、そうですか」
「………………」
「まっ、まあ柳がそう言う、なら」
「んじゃ、寝るかー。やなぎ――トイレとかは私を絶対起こせよ」
うん、わかった(起こすとは言ってない)。
「むふふっ……とーぜんだね」
恫喝で勝ち取った添い寝は気持ちいいか?
たぶん最高でしょうね。顔が言ってます。
電気を消して、横になります。
さて………………。今日の夜廻はどうしましょうか。
色々補完とかもしたいところですし……でも、怪我してるショタを野放しにしてはくれないとも思います。
怪我人が出てるとこういうのは気づかれやすいんですよねぇ……。
うーん。
うーん。
……試してみますか。大してロスでもないですし。
成功すればヨシッ!ってことで。
では、もう少しだけ時間を置く間に…………。
次に発生する直近のイベントの“
“おでかけ”は校内の物資が少なくなった時に発生し、そこから巡ヶ丘市全体マップから選択した所に向かうという内容です。
駅とか小学校とか警察署、製薬企業……それなりに選択肢はありますが――まあ、皆は大抵ショッピングモール行きますよね。
本編ではそこに向かってます。
物資も食料以外も入手は容易く、さらにはマジレスウーマン直樹美紀こと“みーくん”と癒しマスコット()“太郎丸”と合流出来ますし。
みーくんは学園の後輩で、主要キャラ屈指の頭脳派であり、方針の決定はもちろんのこと、探索もある程度はイケる良キャラ……本編でも人気があるので仲間にする人は多いんじゃないでしょうか。
しかし、それは軽く罠です。
少し前のマジレスウーマンが罠なのです。
みーくんはちょっと……そう、ちょっと思慮に欠ける言動が多くて。
ほら……たまにするりと正論を言われてカチンッと来る事ありません?
アレです。みーくんはアレです。……不和の呼び水としてはこれ以上にないでしょう。
その為、合流直後の状況によっては――敵対一歩手前まで行ってしまう事もあったりと割りととんでもないキャラです。
それが原因で全滅とかなったりする時もあるし、まさしくサークルクラッシャーウーマン、MIKI……!!
……そういうのを乗り越えると超絶有能なんですけどねぇ……。
そんなみーくんのストッパーとなってくれるのがけい。
ゆきちゃんがあだ名を付けるところによる“けーちゃん”です。
けーちゃんはみーくんの親友であり、みーくんのちょっとヤベェ言動を窘め、もっと柔い感じにしてくれ、チョーカーさんと同じく『話上手』を持ってたりと中間管理職として便利。
意外にありがたいキャラ…………なのですが。
私たち学園生活部が行く頃には、
化け物が徘徊する恐怖と何も変わらないのに減るものは減る現状に嫌気を差して、みーくんを振り切って外に飛び出しちゃってるんですよね。助けを呼びにいくって。
まあ、その……ね?
現実というものは残酷で――普通に行けば、『かれら』となったけーちゃんが学校に登校してくるようになるんですが。
ですので、仲間にするにはその前に救出する必要があります。
条件は『ラジオでけーちゃんの救難メッセージを拾う』・『駅に向かう』で、救出クエスト的なものが発生し、『かれら』のお仲間になる前に助ける事が出来るんですね。
……みーくんはともかく、けーちゃんは別にいてもいなくてもですが…………頭数を増やすという確固たるチャートは破りたくない今日この頃。
出来れば……出来れば、救出しましょうか。
なあに頑張りますよ――めぐねぇたちがなっ!
私?……ワタシ、ビョーニンヨッ!アンセイ、シナキャッ!オダイジニアボリジニ!
まあ、キーアイテムのラジオを入手せんことには話は始まりませんがね。
……?
ああ、太郎丸?
太郎丸は犬。骨あげると喜ぶ。ゆきちゃんの愛情を奪う末っ子。以上です。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
さて――そろそろ良い塩梅じゃないですかね。寝入ってしまえば、ゆきちゃんでも妨害できませんし。
では、行動開始――ほぼ寝てたショタを叩き起こします。
ふぅ~!ふらつく視界ぃ~!
ひょこりひょこりと廊下に出ましょう。
月の光に照らされて雅な廊下を歩いて向かうのは、部室です。
元・生徒会室なあそこにはラジオもありますし――今だに生にしがみついてる死に損ないもいます。さくさくっと処理しましょうか。
部室に入りました。
まずはラジオを……この棚に中確率だったですが………………おおっ!これはっ!
――広範囲アンテナ・高品質バッテリー・非常事態仕様のラジオ!
……くぅ、運が良い……道具類だけはすんなり手に入ってしまう……!(複雑)
非常事態仕様のラジオは、充電用の手回しハンドルと懐中電灯が備わった――まあ、災害用のやつです。ありがたし。
では…………奴を。
適当に放り込んでいた――マニュアルを取り出します。
こやつの命運も、本当に……そう、本当におしまいです。
コンロで灰塵に帰し、灰はトイレに流してやりましょう。ゴー・トゥ・ゲスイドー!
では、コンロを――付ける前に安全確認ッ!
私は最早過去の私ではありません。邪魔などもう二度とさせません。
部屋をかくにーん。扉も……ヨシッ!
上、ヨシッ!下、ヨシッ!左右……ヨシッ!
…………ヨシッ!じゃあマニュアルを燃や――
「――なにやってるの、やーくん」
にゅわぁぁぁあ!?なぁんでぇ!?
………………。
…………。
……。
――ほっとしたの。
鬱々とした朝の目覚め。悪夢のような現実の始まりで。
やなぎくんが――
夢中で食べるあの子を見て、ほっとしたの。
きっと、昨日の事は混乱して口走っただけの幻で――今日我に返ってくれて、現実を……受け止めてくれたんだって、思ったの。
『じゃあ、僕はくるみちゃんを起こしに行ってくるね』
そんな事ある訳ないのに。
『……?いや、
そう言って、手を繋いでるように部屋を出ていくあの子に私は何も言えなかった。
私の都合の良い、そんな甘い夢は跡形も無く砕け散った。
――そろりと、私たちを起こさないように、優しげに扉が閉まる。
ととと、と廊下を歩いていく音を聞いて――私たちは寝てる振りを止めて起き上がった。
「やっぱりか……」
そう呟くくるみさんの声は、諦めと――ほんのちょっとの悔しさが滲んでいるようにも聞こえた。
やなぎくん……とゆきちゃんのいない間を縫って、私たちはこれからを話し合った。
あの子は――壊れてしまっている。
ゆきちゃんがいると思い込んで、あの雨の日以前までの生活を続けてようとしている。
それを――
私たちは専門家ではないし、職員室に少ないながら置かれていた医学書にも精神の治療法なんてある訳がなかった。
なら――あの子に付き合うのか。
それとも――真実を告げるのか。
その二択が会話で浮かんだ時。
きっと私たちが思い浮かんだのは――やなぎくんの笑顔だったろう。
幸せそうに微笑む、あの子の。
それが脳内に浮かんでしまうと……後者を選ぶ事は、私たちにはどうしても出来なかった。
とはいえ、じゃああの子の甘い夢に寄り添い続けるのか、と聞かれれば否だ。
だから私たちは、あえてあの子を一人にした。
一人の時にゆきちゃんに会えるのか。どうなのか。
なんでもいいから。今のやなぎくんのことを知りたかった。
「行くか」
「ああ」
「…………ふぁい」
「――ええ、行きましょう」
私たちは頷きあって、廊下へと出る。
月の明かりに照らされたそこから、やなぎくんが部室へと入っていたのが見えた。
「……なんとか、してやりたいよな」
「当たり前だ。その為に、少しでも……くそっ……」
「しぇ……そう。たしゅけ、なきゃ……むにゃ……」
「……やなぎくん」
そうして私たちはひそひそと部室の前へと歩き出す。
目を反らしてはいけない。
これはきっと、
「うにゅ……ぬ、むぅ……」
…………………………。
「……むにゃ、むにゃ」
………………えっと。
「あの、ゆうりさん?流石に辛いなら明日教えるから寝てても……」
「――だめでふ……むにゃ、わたしゅはなぎくんの……だから、ぜんぶ知っておかないとだめ……だめ、だ……むぐっ……」
「あー、取り敢えず枕持ってくる。いつでも悠里が気絶出来るように」
「りーさん、寝付き異様に良いから辛いよなそりゃ」
……なんとも締まらない私たちは苦笑しあっていたけど――それでも。
ある事については、私たちの気持ちは一致していた。
職員室の……
たとえあの子が真実に向き合えたとしても――きっととても酷な事だから。
―――――――
な、なじぇゆきちゃんがここに!?自力で脱出を!?
「やーくん、なにしてるのって。聞いてるの」
えっと、その……あっと、そもそもどうやって部屋の中に……?
「やーくんの事で私に出来ない事はないの」
謎の説得力すげぇ……。
「……手に持ってるソレ、なあに?」
ん?非常事態用マニュ――あっ、いやなんでもない!なんでもないです!ただのゴミなんで!
「……じゃあ、私が捨ててあげるから貸して?」
いやぁ、流石にそんな事させられないっすよ、へへへ……。
さっ、ゆきの姉御。寝室に戻って、寝てしまってくだせ――
「――さけぶよ」
へっ?
「見せてくれないなら、さけぶ」
いっ、いやそれはぁ……。
「………………」
………………。
「――すぅ」
あー!わかった!わかったから!
だからめぐねぇたちを呼び寄せるのは止めて!ほんとにRTAおわっちゃーう!
「わかればいいの。…………」
あわわわっ……!(精一杯の可愛げ)
どっ、どうしてこんな事に……ちゃっ、ちゃんと部屋チェックしたのに……!
いっ、いやおちけつ!おちけつ!
ここまで来て退くのはチルドレンの恥……!長時間RTAでの不慮の事故は必定……大事なのはリカバー力……!!
こうなったら……!
「ねぇ、やーくん。これって――」
なんやかんやして、なんやかんやするしかない……!(ノープラン)
(本人にとっては)必死の(無駄な)抵抗が今、始まる……!