がっこうぐらし!ver2.0_RTA 『一人ぼっちの留年』ルート≪参考記録≫ 作:ゆキチ
ピンチをチャンスに、チャンスを短縮に変えるRTA、はーじまーるよー!!
皆さん、不測の事態ってぇ……ありますよね?
例えば…そう。
電車が遅延で行き先に間に合わなくなってしまう……だとか。
行こうと思っていた店が突然閉店してがっかり……だとか。
そのまま行けば、最悪の最悪。一日、気分ダウン。もうマヂムリ……リスカシヨ……ってなっちゃうでしょう。
ですが、そこでこそ視点を変えるのです。
――電車が遅延なら、路線を変えればいつもより早く行けるかもしれない。
――店なら他にもあるじゃない……違う店を探せば、面白い発見があるかもしれない。
即ち、ピンチをピンチとして受け止め、諦めるのではなく。
ピンチを新たなチャンスと見るのです。
我らが父祖は、こう……おっしゃられました。
『RTAとは最速のみに在らず――走り抜け、それを形にし、世に放ったものこそがRTA』だと。
つまり――ガバはガバじゃない!まだイケるッ!ってことなんだよっ!(史学家特有の歪曲展開)
はい!言い訳終わりッ!(正直)
今は、目の前の事態に集中しましょう……!(現実直視)
「………………」
ああ……熟読されてる……完璧に網羅されてしまっているぅ……!
どうしてこうなった!ちゃんと見たのに!現場猫風に茶化したけど、ちゃんと見たのは確かなのにぃ!
ふぅ……ふぅ……!(瀕死)
……ここで、常時赤点獲得大天使であるゆきちゃんに、こんな小難しいもの理解出来るはずがない!……と期待してはいけません。
今読まれている緊急避難用マニュアルは、悪魔の書。
開いた者に正気度を犠牲に、地下への道を教えます――強制的に。その為、これを漢字が読めない小学生が読んでも理解できます。
必要なのは
「…………」
ひぃ……ひぃ……ふぅ……!(全集中・苦悩を逃がす呼吸)
さて――問題はここから。
マニュアルを読んだ主要キャラは、正気度減少後に――二種類の行動に別れます。
即ち、
丹念に正気度管理していれば、がくんと下がってもまだポジティブ――問題ありますが、問題ありません(矛盾)。
運が良ければ何も無く、不眠になったり嘔吐したり一人になる事に怯えたり……と軽傷なので――まだリカバーが可能です。
しかし、ネガティブは……もう無理です。
錯乱・発狂・自殺はまだマシ。
好感度が高ければ絶望して無理心中、これを隠そうとしたショタが黒幕なんじゃないかと勘違いされての拷問・監禁は勿論――皆大好き『ゆきちゃん化』の可能性も浮上します。
それほどまでに、マニュアルによる正気度減少幅はとんでもないんです。
まあ、数週間はイケる豊富な物資と、一度だけ感染を防げる『抗ウィルス剤』が手に入るようになるのもそうですし――書いてある内容が、マジで地獄な現実そのものですから残当なんですけど。(精神)こわれる~。
「ねぇ、やーくん。これって――」
ここに至っては祈るほかありません。ゆきちゃんへの愛を示す時が来ましたね……!(ちがう)
信じろ……日頃、ゆきちゃんを真綿で包むように慈しんできた私とゆきちゃんのほっぺを信じろぉ……!!
ポジティブならセーフ、ネガティブでもぉ…………『ゆきちゃん化』以外ならまだセーフって事にしたいぃ……!(自分に甘い走者の屑)
お願い、ゆきちゃん!耐えて!
「――やーくん、これってとっても大切なものじゃんっ!なんで捨てようとしたの?」
おっ……?
「た、しかに。辛いものだけど……目を背けたいけど、必要な物があるのに……」
これはぁ……ポジティブやな?
それも表向き変化の無い、軽いものも軽いバカ軽の!
「むぅ、やーくん。聞いてるの?」
やった!やりました!
日々、ほっぺをむにゅった甲斐がありましたね!
むにゅりも積もればリカバーになる――至言です。
メモ帳に記して、後世に残しましょう。千年後の史学者もびっくりするぞっ!
いやぁ……よかった。これならまだ何とかなります。
誰も死んでないので『ゆきちゃん化』はないだろうとは思ってはいましたが、不安なものは不安ですからね。
……誰かが死んでるとマニュアルで大抵、ゴートゥお花畑しますし。
――『ゆきちゃん化』は誰が成ってもロスです。
その場合は、諦めて再走――こればっかりはしょうがないです。不確定要素だらけになっちゃうんで。……通常プレイだと結構スリリングで楽しいんですが。
…………。
……『ゆきちゃん化』したゆきちゃんも、かわいいんですけどねぇ……(RTAに私情を持ち出す走者の屑)。
―――――――
これは絶望と苦難と、そして希望の本編……(唐突な語り)
唯一心から信じられる対象だっためぐねぇを失った事を信じられなくて――
それでも頭の冷静な部分はしっかりしているのか――
そして、妄想を尊い思い出として昇華し――
―――――――
ああ~、最高や。たまらねぇぜ……!(ゆきちゃんガチ勢)
このRTA終わったら、また『ゆきちゃん化』したゆきちゃんと遊ぼう、そうしよう。ずっといっしょだよっ!(お花畑疾走)
「……もう!なんで黙ってるの!やーくん、誤魔化しは……めっ!なんだからねっ!」
おっ、とっと。
黙ってたら良い物も悪くなってしまいます。難関は越えました。さくっと行きましょう。
言い訳という名の説得を行ないます。
ゆきちゃんを言いくるめるのは簡単です。ゆきちゃんマイスターの私にかかれば余裕のよっちゃんイカです。
華麗にケリをつけてやります――いざっ!
――いや、だってこれ皆に知られちゃいけない事だし(RTA的に)
「でも、学校の見取り図とか地下のこととか。みんなに教えたほうが生活が楽になるとおもうよ?」
――……いや、でもウィルスの事はちょっと皆にはキツいじゃん?(正気度的に)
「……でも、みんなならきっと受け止められるんじゃないかな。やーくんがいたら、大丈夫だよ」
――おっ……?おっ、おぅ!?(語彙紛失)
「ねぇ、やーくん。不安なのはしょうがないよ。でもね?抱え込んじゃったらツラいのはやーくんなんだよ?……わたしは、やーくんがツラいのはやだな……」
――なんか正論で諭された!?さらに情で訴えられて倍プッシュやんけ!
ゆきちゃんはこんな頭の良い事しないっ!()
おっ、おっ、どうすんだこれ。説得できねぇ。
正論だもん。正気度ブッ飛ぶけど知っといた方がいい情報の方が多いもん。ウィルスの事とかこの学校の事とか。
「……やーくん」
でもさ……でもさ。
後顧の憂いっていうのがありまして……。
最終的には、私が感染状態のままでなくちゃいけないので……。
だから『抗ウィルス剤』が邪魔でして……。
好感度高いとみんな聖人君主様々で脱出前でも取ってきて自分が感染してても私に使ってくるので……(これを大きなお世話と言います。最低ですね)。
ここは一つ。
好感度でゴリ押し――情で訴えます!(土下座外交)
ゆきちゃんならいける……いける……!
――それでも……みんなには言いたくないかなぁって。
「…………むぅ」
大丈夫、私はゆきちゃんを信じています。
好感度が高い状態だと――理屈より情を選ぶゆきちゃんをな!(大人の汚さ)
へへへっ、そこが可愛いぜっ!(きたない)
「――わかった。ナイショにする。でも、捨てるのは駄目。私がぼっしゅーします」
――っしゃ、おらぁ!(体育会系)
なんとかなりました。
処分できないのは…………まあ、折衷案としてまだマシ。「大人のめぐねぇには見せとこ?」と言われないだけマシです。
……まあ、今回のゆきちゃんバレは、今の今まで処理できなかった私への戒めにしましょうか。
他走者の皆さんにタイム短縮の余地を与えるのもチルドレンの定めです(これを、論点のすり替えと言います)。
――マニュアル、ちゃんと隠してね?
「だいじょーぶっ。誰もわからない場所知ってるからっ!」
……例の仕掛け棚だな(本編でのマニュアルの隠し場所)。
アレならめぐねぇとゆきちゃん以外知らないし、めぐねぇもマニュアルのことがなければ開けないので大丈夫ですね。
オーキードーキー。
ふぅ……(余韻)。
とりあえず、最悪の事態は避けられました。
大量の物資もそうですし――『抗ウィルス剤』を周知される訳には行きませんからね。
「ね、ね。やーくん」
おや。
どうしたの、ゆきちゃん。
「この――『抗ウィルス剤』ってなあに?」
あー。どうやら、興味をそそられてしまったようですね。
…………ただのビタミン剤って嘘つく――のは止めますか。下手に嘘ついて、やっぱやーめた!って言われるのは勘弁です。
――『抗ウィルス剤』はワクチン的なサムシング。
名前の通り、ウィルスを抑制するお薬……まあ、ヤクって言っても差し支えないヤバイクスリです。
医薬部外品……ぷくくっ……!(上手い事言ったつもり)。
「ふぅん。治せるんだね。すごいや」
うーん……感染直後ではまあその通りなんですが。
ゲーム内では、『感染者を治療できる。発症者の場合、日数によって確率が変動する』って感じで。
感染直後は100%治療出来ますが、感染から日にちが経っていくと成功確率が下がっていって――七日を過ぎると使用しても治療出来なくなるっていう仕様です。
まあ、基本。噛まれて発症する間ぐらいにしか使う暇ないのでこのデメリットは無いに等しいですね。
『かれら』になったらデストローイ。これ鉄則。本編でもそう記されている。
「あっ……エレベーターもあるんだね……知らなかったよ」
……エレベーター?
あっ、三階から地下まで行ける、マニュアルで示されている職員避難用のやつの事か。一般生徒にはわからないように壁の中に偽装されています。
まあ、知っていたとしても――アウトブレイク直後に地下からロックが掛かるのでこちら側からは使えません。
RPGとかでよくあるステージ間のショートカットのようなものです。(基本使わ)ないです。存在を忘れる空気そのものです。
「…………やーくん。やっぱりみんなに――」
――いやです……ずぇったぁいにぃやだぁ……!!(終盤、土壇場で持ってこられて皆に抑えつけられて無理くり使われたのを思い出している)
「――そっか」
…………くそぅ。
大人しく寝てればこんな事には……(オリチャーいくない、はっきりわかんだね)。
ふぅ……もう、ふて寝しましょう。敗残兵はさっさと寝床へゴーホーム。
とほほ……もうガバはこりごりなん……。
「あっ…………ね、ねぇ。やーくん?」
なんだい、ゆきちゃん。
私もう寝たいんですけど。
「あのねっ……その、えっとぉ……」
……おや?
ゆきちゃんの様子が……。
「ちょっと、職員室まで一緒に行かない?……ほっ、ほらこの本隠さないといけないし、えっと……それにね?――」
――頬の赤らみ(かわいい)。
――もじもじと擦り合わせる太もも(せくしー……)。
――マニュアルで顔を隠しながら流し目チラチラ(えろいっ)。
そして――まるで往年のラブストーリーによくある、月だけが私たちを見ている夜の学校!(いんもらるっ!)
これはぁ……アレじゃな?
「――渡したいものがあるの。……だめ?」
――信頼イベントキタァー!
やった、これはありがたい!やっぱ今までのマニュアルの下りガバじゃないわ!これが出たならガバではないです!
信頼イベントは、ちょっと前のチョーカーさんにもあった一定条件を達成した際に起こるイベントで――“おくりもの”が入手できる良イベ!
特にゆきちゃんの“おくりもの”はなっかなかに有用です。欲しい欲しいっ!
――行かない手はぬぇ!
……あん?やること済んだから寝たい?
…………誰ですかそんな事抜かしたチャランポランなアンポンタンは。
「そっ、そっか!んじゃ、いこ!」
ははは。嬉しいからってそんなあわて――引っ張る力がつよいっ!(くそ雑魚ショタ)
病人!私まだ病人だから!
て、そうだ。
職員室まで、まあまあ距離ありますな。ゆきちゃん歩幅に合わせるので。
ですのでここは――み な さ ま の た め に ~――ではなくて。
せっかく手にいれたラジオを使って、けーちゃんの救難放送を拾っちゃいましょうか(オリチャー補完)。
私が聞いてさえいれば、後は駅に向かわせるだけで救出条件満たせるガバガバ仕様なので。
……そこまで期待はできませんが。
ラジオは、周波数がわかってないと――ランダムで適当に繋がります。繋がった放送はブクマされて、次からは選択できるようになる感じですね。
聞ける放送は六種類……けーちゃんの放送が出る確率は六分の一といったとこでしょうか。
当たりは一つ――大外れも一つ。……なるべく外れ来る前に聞いときたいですね。ラジオ壊れるかもしれないので。
では……ちぇけらっ!
―…ザッ……ザザッ……―
「……ラジオ?……むぅ、やーくんやーくんやーくん」
なんだい、ゆきちゃんや。
「デートの時はスマホ見ちゃしつれーです」
これはラジオです(屁理屈)
「むっ……それは、たしかにそうだけど……むにゅ」
……これで丸め込めれるのに、なんでさっきは出来なかったんだろうか……コレガワカラナイ。
―ザッ……『――かれらをおそれてはいけません』……『かれらは未来です。クラウドです』……―
あら、残念。
クラウドおじさんに繋がっちゃいましたね。
―……『クラウド、わかりますか』……―
すまねぇ。英語はさっぱりなんだ(赤点ショタ)。
―『データをネットワークで薄く薄く遠くまで広げることです』……『人間の心もデータですから薄く薄く遠くまで、広げることができます』……―
クラウドおじさんは、本編でもよくわかってない謎のおじさんで――こうしてよくわからない妄言を垂れ流しています。
ちょっと宗教っぽい感じですよね。
―……『かれらにとって、心は一つの肉体に収まるものではないのです』……『かれら全体の中に薄く遠く広がっているのです』……―
自衛隊駐屯地とかで電波傍受して場所を特定しても、この放送のメモがあるだけ、という実にミステリアスなおじさんです。
ゲーム内で言えば、感染者ルートでは聞いといた方が有用だったりします。
今回は特に使わないので、ほんとにただの妄言垂れ流しおじさんです。
―……『かれらを迎えましょう。クラウドを迎え』……ザ……ザザッ……―
はい、次~。……距離的に聞けるのはあと二つぐらいですかね。
「さっきの……なんだろうね。やーくん」
ねー。
邪淫おじさん並みに意味不明な存在だよね。
邪淫について……お話しします……(全省略)
―……ザ……ザザッ……『圭で』……『こえてますか?』……『駅の北口』……『駅長室』……――
おっ!圭――けーちゃんの放送です!
よかった……ギリギリ聞こえましたね。
―……『足を怪我して、噛まれてはないと思うけど、うまく動けない』……『結構、痛くて』……『聞いてる人、もしいたら来てください』……『水が少な』……――
――フラグがたちました。
後は、駅に行けば救出できるようになります。
……まあ、たぶん私は連れてって貰えないでしょうけど。……でしょうけど!(苦渋)
ですので、くるみ達には――駅前のマックで月見バーガー買ってきて、とか適当言って行ってもらいましょうか。
マックのバーガーは一ヶ月経ってもさほどカビは生えないらしいからイケるイケる。
――……『あと』……『ショッピングモールの最上階』……『女の子』……ザ、ザザッ……―
(みーくんの事は知らなくても助けられるから)キャンセルだ。
必要なことだけ聞く……まるでRTAみたいだぁ……。
「……やーくん?」
っとと。
けーちゃんの放送に集中しちゃって足を止めちゃいました。
……止まるんじゃねぇぞ……(団長並感)
「…………ねぇ、私もラジオつかっていい?」
うん、どうぞ。
…………あれ?わかりやすい救難放送を聞いて、ゆきちゃんが何も言わない?……途切れ途切れだったから?
うーん?
―ザ……ザザザッ……『当社では、新たな世界にふさわしい……未来を担う人材を募集しています!』……―
げっ。
―……『あなたも私達の元で、新たな未来を作ってみませんか?』……『いつでもお待ちしています!』……―
あーっと。この放送は大外れです。不味い。
…………いや、ゆきちゃんに限ってはないか。流石に大丈夫なはず。
―……『よりよい未来をお届けする――ランダル・コーポレーションよりお知ら』―
「…………ッ!!」
――ガッシャンッ!!
――ゆきちゃぁぁん!?
ええ!?ゆきちゃんでもやるのぉ!?
あー……ラジオが叩きつけられて大破しました。……これはぁ、修理しないともう使えないですね。
「……っ、っ……!」
えー。
ゆきちゃんには似つかわしくない暴力的側面が出た理由を説明します。
まずマニュアルには、この騒動の事実が記されています。
――
アウトブレイク時の避難方法、待機方法、処理のやり方。何もかも、今の状況が想定されていたのです。
そしてこれを主導したのが――ランダル・コーポレーションである事も。
この会社……まあ、製薬企業なんですが。
ウィルスウィルス言ってる中で『製薬』という名で大体わかる通り――このゲームにおける黒幕です。
コイツらのせいで――巡ヶ丘市に『かれら』が発生するようになりました。
ですので。
マニュアルを読むとそれが理解できちゃう為――主要キャラのランダル・コーポレーションに対する敵意が跳ね上がります。
もうそれは殺意と言っても過言じゃないほど。
……でも、ゆきちゃんが読んでもここまでになる事は無かったんですが……。
正気度が高い弊害?私しか居ないから?
うーん?うーん?
「――あっ」
おっ、我に返ったなゆきちゃん。
「ごっ、ごめんなさい!ラジオ壊しちゃって……あっと、えっとね」
かまへんかまへん。
ラジオはもう用済みだったからねっ!
……正直、一緒にくっついてた懐中電灯とかクラシック兄貴姉貴とかがかーなぁり惜しいですが、ゆきちゃんは悪くありませぇん!(意地でも非を認めないモンペの鑑)
ほらほら、職員室着いたよ。ゆきちゃん気にしない気にしない。
「うー……ほんとにごめんね?」
ええんやで(やさしいせかい)。
「ふっふっふ、みてみてやーくん。ここを押すとね……じゃぁーん!隠しスペースになってるのだっ!」
知ってる。
「あっ、このちっちゃな金庫はめぐねぇのだよ!大事なものはここに閉まってるんだって」
知ってる。
「――てぇ、えへへ。やーくんも一緒に見てたから知ってるか……」
知って――えっ、そうなん?
じゃあ、さっきの下りロスやんけ!(短気)
……さて。
ロマンチックな感じはさっきのラジオでちょっと飛んじゃったけど、ちゃんとイベントやるよね………
「………………」
…………よね?(不安)
「ねぇ……やーくん――こっちにきて?」
ふぅー!(テンションマックス)
あー……良いシチュですよーこれこれ。
職員室は月明かり。乱雑になった室内に、初々しい二人の男女。お互いの心音すら聞こえるような静寂……。
――たまらんっ!
「――これ、あげる」
そうして渡されるのが――――“ゆきのぼうし”。
するりと脱いで、しゃらんと揺れる髪がセクシー、エロい……!潤んだ瞳とほのかに赤い頬がアクセントですねぇ!七兆点、優勝。
これはゆきちゃんの信頼イベント『離れたくない、貴方へ』を達成すると手に入るアイテム!
装備すると《主要キャラとの好感度が下がりづらく、上がりやすくなる》――好感度が重要なこのRTAには神アイテム!!
さっそくいそいそと装備しましょう。
「やーくん、似合ってる。……うれしいな」
まあ、でもそこまで希少ってほどでもありません(明け透け)。
ゆきちゃん幼馴染みルートだと大抵入手出来ます。それ以外にも入手自体はできるイベントはありますし。
難点は――ショタぐらいじゃないと、かぶっても似合わないってだけです。……普通の野郎が装備すると、ハンターハンターのゲーム編に出てくるドッジボールの人が使ってくる念獣みたいになりますねぇ!(うろ覚え)
「――やーくんは、
当たり前だよなぁ!?(ゆきちゃんガチ勢)
――
「……そっか。そっか!」
思いが通じあって嬉しそうなゆきちゃんをみると私も嬉しい……(幸せスパイラル)
「じゃあ――これからもずっといっしょだよ。やーくん」
わぁい!
ゆきちゃんの信頼イベント達成!
RTA成功に大きく一歩近づきましたね……。
ふふふのふ。
最初はマニュアルでとんでもないガバをやらかしてしまったと思いましたが――ラジオでのけーちゃん、そしてこの“おくりもの”。
かなりリカバーできましたね!これなら、他の部分の時間も短くなりますし……タイム短縮短縮ぅ!
………………。
――そうだ。アレも済ましてしまいましょうか。
ちょっと前に話題に出したと思いますが『校長室のワインを飲んだぐびねぇ』っていうイベントがありまして。
めぐねぇは、酒をかっくらうとストレスが減少して好感度も上がりますし、絡み酒で他の連中も巻き込んで行けます。
ついでです。
校長室にお邪魔して、ちょっくらワインを掻っ払っていきますか!
「……やーくん?」
……そういえば。
やけに――校長室への扉に机多くない?
職員室の机はランダム配置だけど、こんな塞ぐみたいな……まあ、ランダムだし。そういう配置もあるか。
「やーくん。戻ろっか」
ガバもリカバーもやったし――ほんの補完。
十数秒でめぐねぇの機嫌(+α)取れるなら儲けものよっ!
夜出歩いたのバレても「大好きなめぐねぇのためだもん……」って言えばむしろ好感度上がるし。
「めぐねぇたちも心配しちゃうよ。はやくいこ?」
ああ、ゆきちゃんちょっと待って。
そのめぐねぇの為に、校長室行ってくるから。
ワインをスッ……ってすり盗ってすぐ戻ります。
「駄目だよ。戻ろっ?もうめぐねぇに怒られたくないでしょ?」
むしろ喜ばれるんだよなぁ……。
……まあ、そんな事ゆきちゃんにはわからないだろうし。不安にさせとくのもアレだし――さっさと机を退かしちゃいましょう。
「やーくん。だめ、戻ろうよ。もう寝よう?くるみちゃんもりーさんも、たかえちゃんも待ってるよ?」
……どうやらゆきちゃんはめぐねぇに怒られるのが怖い様子。まあ、この中で唯一の大人ですしさもありなん。
でも、私は行きますぜ!非行は大人の始まりってはっきりわかんだね。
「だめ、だめだよ……やーくん」
――退かし終えました。
校長室のドアを開けましょう。校長室のワインは、部屋の隅の冷蔵庫の中に――
「ダメッ!――そのドアを……」
「――はいっ。みつけましたよ、やなぎくん」
げぇ!?めぐねぇ!?
ちっ……タイムアップですか。
まあ、かなりのリカバーもできました。“ゆきのぼうし”もあるし、ヨシッ!としましょうしましょう。
ガバは見えなぁい、しらなぁい。
ていうか。
めぐねぇにかぶってちゃったけど、ゆきちゃんなんか言ってませんでした?
………………。
…………。
……。
「――はいっ。みつけましたよ、やなぎくん」
笑え。笑え。笑え。
今の私は、ただ寝ている隙に夜遊びをしているこの子を注意しにきただけ。私は出歩いてるのを呆れながら注意しにきた先生だ。
それだけを意識しろ――ドアノブを握る手を抑えているのは、
――
さりげなく校長室を机で塞いでいれば、特に用もないから開けようともしないはず、と皆に結論付けた。
甘かった。油断した。――あの子が聡いことぐらい知っているのに。
「……めぐねぇ?」
突然、現れた私をぼんやりとした瞳で見上げるやなぎくんの頭には――ゆきちゃんの帽子がある。
きっと隠れた時に落ちた物が、職員室の机の陰とかにあったのだろう。
それをゆきちゃんから受け取った――と思う。やなぎくんが嬉しそうにゆきちゃんにお礼を言ってる――ように見えたから。
「もう、探しましたよ?おトイレかな?ってちょっと待ってても来ないんだから……くるみさんもちゃんと起こしてって言ってたでしょう」
「あはは、ごめんなさい。ちょっと……その、めぐねぇに喜んでもらいたくて」
「――っ。それでもっ、です」
この夜。この子の夢の中。
それを――私達は眺めていた。
――月明かりだけが差す部屋の中で。
――やなぎくんが笑って嬉しそうに話していた。
――誰にも見えない世界の中で、ゆきちゃんと一緒に。
想像できた事だ。覚悟もしていた。
昼間のあの子の様子を思えば、わかりきった事だった。
けれど――面と向かって見つめれば、胸の奥に重いものが込み上げる。息も出来ないほど苦しかった。
それは他のみんなも同じことだったろう。
……約一名はもう耐え切れずに夢の中だっただけども。
いっそ、ゆうりさんのように夢の中に行けば――私もゆきちゃんに会えるのかな、なんて。バカな考えが浮かんだ自分がおぞましい。
「――ああ、ごめんね。ゆきちゃん、見つかっちゃった」
「…………ゆきちゃんも。やなぎくんが出歩いてるならあぶないって言わないとだめでしょう?」
――きっと、あの場に飛び出すのが正解だったのかもしれない。
飛び出して、どこも見ていないあの子の頭をひっぱたいて、目を覚ましなさいって叫ぶ。
そうすれば、やなぎくんは目を覚ます。きっと。あの子はやさしくて強い子だから。
でも、出来なかった。
あんな幸せそうな笑顔を消すなんて……残酷なこと。
目を覚ましたところで、どうなのだ――
「あっ。それより見てよめぐねぇ!これこれ、ゆきちゃんからもらったんだ!……似合う?」
「ええ、とっても。頭の怪我も保護できるし、丁度良いかも。……ゆきちゃんにお礼は言った?」
「――もっちろん」
でも、今はそんな事はどうでもいい。
何故、あの子が職員用の緊急避難マニュアルを私達に隠れて読んでいたの?とか。
何故、突然豹変してラジオを地面に叩きつけたの?とか。
そんな疑問は今は瑣末な事でしかない。
――ここからすぐに離れよう。
「さっ。もう寝ますよ?明日もあるんですから」
「あっ……その、もうちょっと待ってもらっていい?」
「……どうして?」
「校長室の中にワインがあってね……ほら。めぐねぇ、疲れてるでしょ?お酒を飲めば元気になるかなって」
「それは……――」
『……ァ、アァ』
ああ……ああ……。
――きっと、
「……めぐねぇ?」
扉の奥――
やなぎくんにだけは聞こえないように、ぎゅう……と抱き締めた。
腕の中、胸の中に仕舞いこむ。苦い現実が――これ以上、この子を壊さないように。
「……そんな事。気にしなくていいんですよ」
「でも、めぐねぇ飲ん兵衛でしょ?」
「誰情報ですかそれは」
「かみやん」
「昭子ちゃん……。んんっ!確かにそうですけどっ――」
――とん、とん、とん。
扉を叩くか弱い音。ふとしてもわからないような弱弱しい音――何かを求めているような、そんな音。
その“何か”は――決して私の空想通りのはずはない。私には、やなぎくんの世界は見えない。苦い現実しか映らない。
ふと、視界の端で小さな光がちらついた。
気付かれないように視線を向けると、扉の陰でたかえさんと、眠っているゆうりさんを背負うくるみさんが見えた。
手に、月明かりを跳ね付けるバールとスコップを握り締めて。目に、決意があって。
――だめだ。
すぐに首を振る。たかえさん達もこの子も、あの子も。
もう血はたくさんだ。今日は……もういいでしょう……?
「――私は、貴方が笑っていてさえくれれば、もう幸せですよ」
甘い夢を汚す事は絶対にさせない。
「……そう?」
「ええ。さあさ、寝ますよ。ゆきちゃんも」
「うん、そだね。いこっかゆきちゃん」
気付かれないようにくるみさん達に先に行くように促す。
……夜の事をやなぎくんは知られたくないだろうから。
さあ、今日は一緒に寝よう。
たとえゆきちゃんがなんと言おうとも今日はこの子を抱きしめて、一緒の布団で眠ろう。
せめて、夢の中だけは――やなぎくんが見える世界が、甘い夢が見れることだけを信じて。
嗚呼、この子の笑顔はどうしてこんなにも痛々しくて――愛おしいんだろう。
苦い現実すら、閉じ込めているだけの私には、もうこれにすがる以外に――立つ勇気すらも湧かない。
―――――――
さて。寝室に戻ってきた訳ですが。
「すぴー……すぴー……」
「……っ……っ」
「ふぅ……ふーっ……」
約二名が汗かきながら息絶えてる件について。
これはぁ……アレだな?見たな?急いで戻ってきた口だなこれ。
「なっ……なっ……!!」
あーあー。ゆきちゃん顔真っ赤だよ。
「……えっと、そのアレです」
……めぐねぇが言い訳を考えてる……。
「――ごめんなさい二人とも。ちょっと無理ありましたね。ゆうりさんのせいで」
「くっ……!そうだよ、これもそれも全部りーさんが重いから悪い!主に一部が!」
「そーだ!そーだ!たゆんたゆんしてるのが悪い!……くっ!」
開き直りやがったぞこいつら!?
それも弁明できない爆睡してる奴押し付けたぞ、なんて奴らだぁ!?
「もーっ!乙女の秘めごとを隠し見るなんて!ぷんすこっ!!」
「すぴー……すぴー……」
にしても気持ち良さそうに寝てるな、りーさん。
……りーさんのこの寝顔って、安心できる何かが無いと見れないんだけど……アレか。学園生活部ができたからか。
正気度安定ひゃっほい!
――――
※解説
『ゆきのぼうし』
入手条件:ゆきの信頼イベントのクリア後・“Sweet Dream”イベント進行時・死亡時。
丈槍由紀からの“おくりもの”。
名状しがたい謎の耳の形をしている変な帽子。ゆきのトレードマーク。……薄く血がこびりついている。
装備すると、接触するキャラとの好感度が下がりづらく、上がりやすくなる。
これを贈ったのは、あなたと――離れたくないため。
強く想っているし、強く想っていて欲しい。ならば渡すのは自らを示す物……重さを物語る。
その“重さ”を――束縛を。要らないかどうかはあなたが考えるべきだろう。
これは、そういう“おくりもの”。……そのはずだ。