がっこうぐらし!ver2.0_RTA 『一人ぼっちの留年』ルート≪参考記録≫   作:ゆキチ

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(ノリを忘れたので、とりあえず勢いでぶっち抜いたので)初投稿です。





九日目“THE SHINING” of りーさん -PART2-

 

 

 

 

――はいッ!(いつもの気だるげな前口上は)キャンセルだッッ!

 

 

「ふふっ……鬼ごっこだもの。ちゃあんと十数えてから始めましょう?」

 

 

まずは四の五の言わずに、すぐに近場の教室に逃げ込みます!

とにかく視界から外れる事が肝要です!

 

 

「いっ~ち。にぃ~ぃ。さぁ~ん…………」

 

 

……りーさんにしては、妙に明るい声なのが背筋にゾクゾクきますね……!

 

教室の中は散乱した机椅子その他諸々に溢れています――適当なとこの陰に隠れて、暫く様子を窺いましょう。

 

……出入り口にバリケードでも設置した方がいいと思うかもしれませんが、倫理観終わりーさんに強行突破されてしまった際は、出口が無いという事。

秒でガメオベラです。ここは基本バレるという事を踏まえ、すぐに脱出できるようにします。

 

……慎重に……慎重に。

 

 

「よぉ~ん。ごぉ~お。……ふふ。ねぇ、なぎくん。こうしてると、よく近所の公園で二人きり遊んだのを思い出すわね?鬼ごっことかかくれんぼとか……でも、二人きりだとすぐ終わっちゃってつまんないから、結局は一緒にお手々繋いでのんびりしたり……なぎくん。覚えてる?覚えてるわよね。覚えてない訳ないわ」

 

 

…………………………………………(知らないですねぇ!知らない知らない……)

 

 

「あら?お返事が聞こえないわ?もしかして覚えてない?…………。…………ああ、必死に思い出そうとしてくれてるの?ふふふ、良い子。ほんとに良い子。大丈夫よなぎくん。思い出せないのは小さかった頃だからしょうがないわ。お姉ちゃん怒らないから。……これから、これからまた新しく思い出を作りましょう?だって、私達――家族だもの。ずっと。ずぅっと一緒。だから安心して?」

 

 

…………………………………………(その怪文書のどこに安心する要素が!?)

 

 

 

「ふふっ、ふふふ。…ろぉ~く。なぁ~な。…………」

 

 

 

(こわい)

 

えー、はい。

この絶望的な状況についてさくっと説明しましょうか。

 

今、現状は――バッドエンド一歩手前です。

それも特に狂っていて、そして理不尽なりーさんのエンディングの一つ――『偽物の家族』エンドです。

 

これは『ゆきちゃん化』してしまったりーさんが、主人公と自分が家族であると思い込み、それを主人公に強要するといった内容で。

恋仲でなければ、姉弟か兄妹か姉妹だと認識し、りーさんの本当の妹――るーちゃんと同一視し始めるのです。

 

これ自体は、このゲームでは良くある病み病みエンドなのですが――達成条件が超絶鬼でありまして。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――()()()()()()()()()()()()()()

 

 

……まあ、プレイに自信ニキなら「いや、なら同じ空間にいなきゃいいじゃんww逃げれば余裕wwぶぅ~んっww」とか言うかもしれません。

 

しかし、もうこのりーさんはただのりーさんではありません。

倫理観終わりーさん。ふぁみりーさん。

そして――空気強制汚染機RE=SANなのです!

 

先ほどのような現実と妄想が混じり合った妄言は、締まりの悪い穴(意味浅)のように常に垂れ流されています。

そして、操作キャラがそれを聞いていると――段々「……アレ?そういえば確かにりーさんはぼくのおねえちゃんなんじゃ……?(錯乱)」状態になり、こちらの操作が鈍くなったり、受け付けなくなる“スタン状態”になります。

この状態は、りーさんの妄想を聞いている時間と比例して、効果時間が増加していきます。つまり時間が経てば経つほど詰みやすくなります。

 

そうして動かなくなった状態で、りーさんが忍び寄ってまた妄言を垂れ流し、そのせいでまた動けなくなり……の無限ループでガメオベラ直行が、ふぁみりーさんの基本戦術です。

 

……この才能溢れる私が、数々の難事を潜り抜けた華麗なる“説得”も『私はお姉ちゃんである』という謎に確固とした信念によって効かず、そうこうしている内に、洗脳に嵌まり……と。

滅亡を止められぬ平家のように、ぽかんと諸行無常の祇園精舎の鐘の音ぐわんぐわん(教養の開示)。

 

極論、続行するなら“排除”が選択肢に挙がります。

が。

そもそも、あのりーさんはりーさん最強装備の包丁を持っている上、倫理観崩壊しているので遠慮も呵責もありません。

こちらが好感度高い状態の相手への攻撃という苦痛に対して精神対抗フェイズしている間に――

 

身体ズバズバ足の健スパーッ→これでもう鬼ごっこはおしまいね?→それでね。お姉ちゃん達はね(以下エンドレス洗脳)→あっそっかぁ(納得)。ワイらは姉弟やったんや!→ジ・エンドってね。

 

――です。

 

 

もうね。どうしろと。

 

 

「はぁ~ち。きゅ~ぅ――」

 

 

正直言います。

 

 

――もうこれ再走案件だろ

 

 

いやいや。いやいやいやいや。

これもう無理だってばさ。だってアレだぞ。

スキルでの防御とか“説得”無効で、尚且つ精神貫通させて洗脳してくるお姉ちゃんビームの使い手だぞ?さらには同じ空間にいるだけで即死付与とかもう無理ぃ!

流石の私でもこれはお手上げです。まずこれを突破する未来が見えない。

 

だって、唯一と言っていい回避方法が「世界が狂う(アウトブレイク)前の約束を果たす」ですよ?いや、そんなのあるわけないじゃないですかと。

プレイ時間で言えば、序盤15分くらいですよ?その間に、んな事不可能ですってばさ。

 

スイートポテト「やぁ、待たせたね諸君」

 

ぐぅ……このRTA……結構良かったと思うんですが……。

ぐだぐだのガバガバでしたが、奇跡的にタイムは良かったですし。

これをサイトに乗せればウケる上にバズってウェーイwウェーイwwと思っていたのですが…………やっぱり思い通りには行かないのがこのゲームですね。

 

スイートポテト「序盤から速攻で影薄くなっちゃって――」

 

まあ、教訓は得ました。

これをバネに今度はより洗練したRTAをやろうと思います。

これまでのプレイ映像は戒めと後続への期待と私の承認欲求の為にサイトにあげます。

 

スイートポテト「――存在すら忘れられていた遅れた救世主のぼくだよ」

 

それでは皆さん。

また次回。今度は完璧なRTA動画でお会、い……?

 

 

スイートポテト「ぼくだよ」

 

 

ん?

 

 

スイートポテト「ぼくだよ」

 

 

………………。

…………。

……。

そういえば、アウトブレイク前にプランターの作物を聞いた際に、スイートポテトの話をりーさんにしましたよね。

それで確か、良ければご馳走するって。りーさんは期待してるって…………。

これってぇ……約束に該当しません?

 

 

スイートポテト「端的に換言すれば、該当するよ」

 

 

ぞっ、続行!これは続行しますッ!

スイートポテト!スイートポテトぉおおおお!!(歓喜)

 

そういえば居たよお前が!いや、居ましたよねお前さまが!

これはひょっとすればひょっとするかもしれませんよ?

 

……正直、これはこれで突破確率は極低ですが、それでも――やる価値はあるってものです!

 

このふぁみりーさんを正気に変えさせると、凶行に対する負い目から滅多にこちらの言う事を拒まない故、何かと進んでこちらのフォローをしてくれるような有and能な恵体に早変わり!

これはリカバーの価値!時間は結構ロスりますが、後の安定にあって損はありません!RTAの危機にタァイムなんて言ってる場合ではぬぁい!

 

イクゾー!(てってってててん!)(カーン)

 

もうとっくにガバのガバです!

これで失敗してもいいという腹積もりで、やれるとこまで行きましょうか!

 

では、約束――『スイートポテトを御馳走する』をクリアする為に!

 

 

「――じゅ~ぅ!ふふっ……さぁ。私の愛しい弟くんはどこかしらぁ?」

 

 

さぁ!

では今すぐ適当なリュックを手にいれて、職員室で要らない紙を大量に詰め込んでから、屋上に行ってサツマイモを掘ってじっくりと焼いておいしい焼きいもにした上で、かれらを適当に狩ってスキルポイント獲得して《料理》スキルを覚え、部室のキッチンでスイートポテトに調理し、見つかれば遠慮無く攻撃してくるりーさんに食べさせましょう!!

 

ヨシっ!

 

 

 

出来る訳ねぇだろクソッタレがァああああ!!!!(豹変)

 

 

 

 

「――みぃ~つけたぁ」

 

 

――ひぃ!?はやっ!

恋人エンドを迎えても淑女の微笑みくらいしか笑顔を見せないりーさんが、ゆきちゃん並みの満面の笑みでにじり寄ってきた!

正直メッチャ好みですよ包丁さえ持ってなければね!

 

 

「……ふふ。どうしたの?そんなにびっくりしてぇ……あっ。もしかしてそこが良い隠れ場所だった?……ごめんね?お姉ちゃん――大好きななぎくんの事ならどこにいようとも見つけられる自信があるの。だから、安心して捕まって欲しいな……」

 

 

さっ……!(顔が青ざめる音)

散乱としている教室から、適当にリュックを引っ掴んで脱出します!

とにかくっ!とにかく、一つ一つトピックを消費していくしかありません!成り行き任せで突っ走ります!!

 

 

「きゃっ!……もう危ないわ、なぎくん」

 

 

ショタの足に向かって的確に包丁振ってきたお前の方がアブナイわっ!この天才の私でなければ、足の腿がクパァってなってたからな!?

なんで大好きとか言ってる側から殺意マシマシの攻撃してくんの!?……これが殺し愛ってかやかましいわ死ね!!

 

 

 

 

 

 

廊下に出ました。

ショタは頭の傷のせいで《負傷》状態なので、最高速度が出せず、りーさんに走られると秒で捕まります。

ですが、さっきの通り。

りーさんにとってはこれは“遊び”なので、一生懸命に遊ぶ弟を微笑ましく思いながらニコニコと歩いてくるので何とか逃げるという体を保つ事が出来るのです!(ひぇこわ)

 

手にいれたリュックの中身は今の内に床にばら蒔いて、まきびしにしますか。

数秒も足止め出来ませんが――ほんの一秒でも距離を離します!間合いに入れば刃物と洗脳光線が飛んできます!

 

向かうは、次の目的の職員室!

大量の紙ですが……今回は赤点用紙を狙うのではなく、コピー機を狙います。アレを調べれば適当な紙がたくさん入手出来ますからね。

 

 

「まあまあ、なぎくん?おうちの廊下を散らかしちゃダメでしょう?まったくもう、これが終わったらきちんとお片付けましょうね?……そういえばぁ……昔は良くこうして怒ってたわよね?そうでしょう?ふふっ、おっきくなっても変わらないのね。かわいい……」

 

 

あー!あー!きこえなーい!

はい、目に見えて走るスピードが遅くなったのは気のせいー!私の指が折れてるだけであって、疲労と洗脳が同時にショタに響いてる訳ではありませんー!(自己暗示)

 

 

職員室は今日もはっちゃかめっちゃかで……す?

アレ?またなんか配置変わってません?

なんで?いつから職員室は不思議なダンジョンになったの?

 

……まあ、コピー機の配置は変わってないから今はパス!

 

コピー機のカバーを外して、設置されている紙をリュックにありったけ詰め込みます!グシャグシャでも何でもとにかくみっちりと!

 

 

急がないとりーさんがやって……やって……?

 

 

 

…………?

 

 

 

……来ないですね。

ぬるっと職員室に入って、にやぁ……と昔話攻撃(妄想を根拠とした)を仕掛けてくると思ったんですが。

 

……あっ。

これ出待ちだ。狡猾な罠だ。

居ないのに困惑させた所で――ばぁ!!って出て来て、正気度とスタミナを根こそぎ奪うくっそイラつくやつ。

 

ふっ。

確かに今の私は焦ってる上、時間が惜しい。

こんな状態なら引っ掛かる可能性が高いだろう。だが――このゲームをどれだけやりこんだと思っているのだね!

 

さっき聞こえたぞ――()()()()()()()()()()()()()()()

 

今この三階にいるのはショタとりーさんだけ。つまりは!

りーさんは校長室側の入り口の陰で私を待ち構えてるの確定ぃ!なら、そこじゃないもう一つの扉から出ればいいのさ!

 

フハッハッハーッ!!

ここは年季の差が活きたなーッ?これで十分なリードを保ったまま屋じょ――

 

 

「――ばぁ!!」

 

 

――うううわああああなぁぁんでぇええええ!?!?(正気度・スタミナ減少の音)

 

 

「ふふ、びっくりした?びっくりした?あんまりもツレないからいじわるしちゃった」

 

 

どっ、どうしてこっち側にいるの!?

物音した側にいっつもいるじゃん!WIKIにもそう書いてあるじゃん!えっなに知らぬ間にアプデ!?それかFGORPG並みにうちのWIKIも信用ならなくなってきたの!?

 

いや、そんなはずは。

私が聞いたのは確かに校長室側だったはず。焦って聞き間違えた?えー?どゆことぉおお――っってってって!どうでもいい事考えてる場合じゃないのよぉ!

 

りーさんがぁ!包丁をぉ!振りかぶってるぅ!

 

 

「――ていっ」

 

 

うわ!かすった!

ショタの腕に包丁かすった!切れた制服の隙間から血が!血がぁ!

マジでキ印入ってるぞあの女ァ!?

 

 

「ああ……なぎくん……痛い?痛いわよね?可哀想に……ほら、お姉ちゃんの側においで。手当てするわ。いたいのいたいのとんでけーって」

 

 

やったお前の台詞じゃなくね!?

雑なマッチポンプやめてくださるっ!?

……ショタもショタでりーさんの側に行くって選択肢出してくんな、逃げるの一択決まってるだろ屋上行くぞごらぁ!!

 

 

「ああ、駄目よ。なぎくん早く……早く手当て……怪我、しっ死んじゃう……なぎくん……るーちゃ……なぎくんなぎくんなぎくん……!!」

 

 

もうほんとこのりーさん怖い嫌い!

倫理観帰ってきてぇ!

 

 

 

りーさんの悲痛な声に時々立ち止まってしまいましたが――十中八九!間違いなく!完璧に!

気のせいですがなにか!?(強硬)

 

なんとか屋上に着きました。扉を閉め、初日でやったロッカーバリケードを作った後――急いでいもを掘り出します。もうこの際手で構いません。身体中泥だらけになってでも手にいれます。

わっせわっせ……くっ、傷口に土が擦れて追加ダメが地味にきっつ……!

 

 

――てててってんっ(巡ヶ丘サツマイモ(品種魔改良)×1を入手しました)

 

 

ヨシ!

今度はリュックを開けて紙を……ああもう面倒です!リュックごと燃やします!これで少しは時短になるはず……!

サツマイモは紙に包んで、その中に!

 

後はこれで――ひぃ!?

割れたドアの窓から笑顔でこっち見てる人がいるぅ!

 

 

「――なぁぎくん。あけて?」ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

 

――いやです……。

 

「なんで?」ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

 

――こわいもん……。

 

「お姉ちゃんは怖くないわ?寧ろ、なぎくんが世界で一番安らげる所なのよ?」ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

 

――おねっ……!りーさんはお姉ちゃんじゃない!

 

「まあ、ひどい。でも、お姉ちゃんなの。ほら、今そっちに行くから一緒にお話しましょ?」ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

 

 

お話通じなぁい。

てか、意味も無くドアノブ回して精神ダメージ与えてくんの止めてくんない!?

 

 

こほんっ。

――では、耐久戦です。

 

焼きいもが出来上がるまではリアル時間で一分ほど。

つまり、この屋上で――この空間で、タイムアップまでの半分を耐えきった後、さらに半分が過ぎるまでに焼きいもを回収。屋上を脱出します。

わぁ、無理ゲー。

 

 

…………やったるぞこの野郎ぉ!

 

 

取り敢えず距離を取ります。

流石の倫理観終わりーさんでも、バリケードごと扉を開けるのはほんのちょびっとだけ時間が掛かるので。少しでも時間を稼ぐ要因は確保しておきましょう。

 

その数秒の間にぃ…………。

み な さ ま の た め に ぃ ~。

――ちょっと弱音吐いていいですか?

 

 

……《料理》スキル……どーしよ……

 

 

いや、スキルポイントを獲得の為に『かれら』倒すの無理くね……?ショタは負傷中で尚且つ武器も無いしぃ……。

あっ、つまりこれはめぐねぇのせいだなっ!おのれめぐねぇ……!(隙逆恨)

 

 

 

「なぎくん、なぎくん」

 

 

あっと、キの字りーさんがエントリー。

ここでやるのは、古き良き追跡者を撒く逃走術――障害物グルグルです!青鬼とかで良くやるやつです!

 

これを花壇でやりま……あっ!乗り越えてくんの反則だろお前!

ゲームの追跡者が一番やっちゃいけない事平気でやらないでよ!うわっ、一瞬で破綻したぁ!

 

ぐっ、また包丁がかすりました。

 

……なんとかギリギリ直撃は回避してますが、かするだけでもクソ雑魚ショタには致命的です。じわじわと体力が削られます。

体力が減るとその分動くスピードも落ちますので、さらにそこを狙われ、また体力が削られます。

うぅ……ジリ貧……!

 

 

「なぁぎくん」

 

 

――うひぃ!?

そんな思いやりの籠った言葉と一緒に包丁振り下ろすのマジ止めて精神が揺れるの!主に私自身が!

てか、直撃コースだったらふくらはぎパクって裂けてたと思うんですが!?姉弟として幸せになる前に死会わせでナムーでお仏壇の長谷川ー!(混乱)

 

 

「なぎくん――止まって?」

 

 

はッ!(嘲笑)止まれと言って止まるやつがどこに――って、止まるなショタマジで止める奴がいるかぁ!?

ぐおっおっおっ。

ゆっくり近寄ってくるりーさんマジキレイ…………目ぇガン開きで包丁持ってそこから血が滴ってなければね!

 

 

「なぎくん。私達は家族なの。一緒にいるべきなの。だからもう鬼ごっこはやめましょう?お姉ちゃん、大好きななぎくんがお遊びでも離れていくのを見るととても辛いの」

 

 

(家族じゃ)ないです。

 

 

「…………ん。お姉ちゃんは悲しい。イヤイヤ期なのは分かるけど……どうしたら素直になってくれるのかしら?」

 

 

えぇ……(ドン引き)。

 

さて――おいもはぁ、まだちょっと掛かりますか。

早くとりたいですが、ベストなタイミングじゃないと「焼きいも」じゃなくて「生焼きいも」になってしまって、スイートポテトになりませんからね。

その前に、ショタの命の蝋燭が焼き落ちそうですけどねぇ!?

 

 

「――あっ、そうだ!お姉ちゃん、良いこと思い付いちゃった」

 

 

ろくな事じゃないのだけはわか、うひゃああああ!?

なっ、舐めっ!いきなりショタの傷口舐めた!流石にちょっと今のはゾクっとしましたちょっと興奮する(性癖の開示)。

 

てぇ……えっ――なんでいきなり、包丁で自分の指でサクッって刺したんですの?

あっ、自分で指ペロしてる……えっ、イメージビデオみたいな事してどうしたの……?現役○K鮮血指ペロ動画なの……?

 

 

「私達は姉弟。血が繋がってるの。だから、ほら――お互いの血を舐め合ったら、きっとなぎくんは、心の底から素直になれると思うの――私達は姉弟だって!!本能で、身体で、心で。……ね?お姉ちゃん賢いっ!」

 

 

………?

 

…………????

 

???????????

 

 

Hey, Siri.

りーさんは何を言ってるの?

 

――すみません。よくわかりません――

 

だよなぁ?

こればっかりはSiriを責められん。

 

えっ、どゆこと?

アレか?血で感じろっていう事?いつからこのゲームはBloodborneになったんです?

 

あっ、もしかして血を飲み合えば混じって血が繋がる→つまり家族!

そういう理論……?

うわキツ好き。

 

 

「さぁ……なぎくん……」

 

 

さぁ……じゃないんだが。

てか、血の滴るりーさんの指は結構セクシー……エロい……!ってってそうじゃないそうじゃない。

にっ、逃げます!このショタはノーマルなんだよぉ!(私は一向に構わんッ)

 

おいもっ!おいもは……まだ掛かる……!

ええっと。ええっと。なんか、もうちょいなんか無いのか……!

 

 

「逃げないで」

 

 

ぐっ……!ぐぐっ……!

何とか回避出来てはいますが、それでも小さな傷は増える一方ですね。

てか、この傷の量じゃあ遅かれ早かれ処置せんとこのクソ雑魚ショタなら瀕死やぞええんか!お姉ちゃん!?…………じゃない!りーさん!?

 

 

「受け入れて?」

 

 

おいもぉ!(回避)

…………ヨシッ!もういいな!

 

では、さっさと入手します!あっちちっち……!(火傷)

手のひら全体が大火傷ですが、気にしません!その前に死とRTAの危機なんだよぉ!

 

三階に戻り、バリケードまで走りま――とぉ!?あかん!転んだ!くそっ、流石に病弱怪我人ショタには辛かったか!

傷でのダメージ蓄積もありますし、仕方ありませんが――早く起きないとお姉ちゃんがくるぅ!

 

ボタン連打で起こします!

――諦めんなよお前!どうしてそこで諦めんだよそこでぇ!(SYUZOU式ボタン連打術)

 

 

くっ!(疲労困憊)

流石にキツいですね……。このままだと普通に逃げ回っても捕まるビジョンが見える見える…………(戦慄)。

なんとか一つ、大きく時間を稼げるイベントでも起こせれば……!!

 

 

「……なぎくん。本当にそろそろお遊びはおしまいにしましょう?遊んでる時にお怪我したでしょう?早めに手当てしなきゃ、いたいいたいなのよ?」

 

 

…………()()()。――そうです!

 

私に良い考えがあるっ!

 

ここは強引にバリケードに向かいます!

いっそ捕まる一歩手前でもいいから、強引に!

 

 

「あら。なぎくんダメよ。そっちはお外よ。危ないわ」

 

 

今のお姉ちゃんに比べたら『かれら』の方がまだ可愛いですよーだっ!

 

 

 

 

 

 

バリケードに着きました!バリケードはぁ……ああ、やっぱり隙間が塞がれてる。きたない流石お姉ちゃんきたない。

 

では、後は――待ちの一手です。

 

 

「うふふっ……――もう鬼ごっこはおしまいね?」

 

 

ショタも限界なのか、バリケードにもたれ掛かって座り込んでしまいました。ううん…………ファインプレイ!

バリケードに血が擦れて、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「さぁ……お部屋に戻りましょう?そこでゆっくり過ごしましょうね?」

 

 

来い……来い来い来ぉい!

二分以内!二分以内来て……来て下さい!新鮮な良い匂いがするダルルォ!?

 

 

「お姉ちゃんがぎゅーってしてあげる。よしよしっていっぱい慰めてあげる――もう苦しむ必要なんてない。泣く必要なんてない。必死に取り繕って誤魔化す必要はないの。お姉ちゃんに全部委ねて……?そうすれば守ってあげる。どんなものからも――絶対。だって、私はなぎくんのお姉ちゃんだもの」

 

 

…………(白目)。

 

どっ、どうして来ないの!?いつもは「( ・∀・)ノ」とか「♪( ´∀`)人(´∀` )♪」とか「( ̄ー+ ̄)」とかみたいな感じで、呼んでもないのに湧いてくるくせに!

こういう時に限って来る気配ないとかほんと性格悪いよ君たち!?

 

 

「ふふふ、さあ……なぎくん。おいで……?」

 

 

うへわあ!

プレイ画面もドンドン暗くなって、お姉ちゃんの恍惚とした笑みが迫ってくるぅ!怖いけどエロい、エロいけど怖いお姉ちゃんがぁ!?

 

夢に出てきそう(率直)。

 

 

 

「これから――ずっと、お姉ちゃんが一緒よ。絶対に離さない」

 

 

 

あっ(過呼吸)

 

 

 

 

 

あっ……(酸欠)

 

 

 

 

 

あっ………………(窒息)

 

 

 

 

 

『……ァ……ィア……』

 

 

 

 

――キタァァァあァ!(蘇生)

 

 

 

 

「なっ……!」

 

 

おし!蕩けスマイルが離れた。

そうでしょうそうでしょう!なんたって――ショタの血に引き寄せられて、『かれら』がやってきましたからねぇ!

 

 

『……ァ……ァァ……!』

 

 

おおっ、バリケードの隙間から腕が――痛っ、いたた……!

ショタの肩が引っ張られてます。バリケードで口が届かないから、獲物を引き寄せようとしてるようですねぇ。

 

…………。

 

エンディングには……移行、しない!

……という事は!

 

 

「……っ、汚い手で私の弟に触れないで……ッッ!!」

 

 

よし!回避!はい、緊急回避ィ!

エンディング条件は()()()()だもんなぁ……?

ショタ、お姉ちゃん、『かれら』の一体――これで三人だから無効だって、はっきりわかんだね。

 

 

「――このッ!」

 

 

っとと。

お姉ちゃんの攻撃で『かれら』の手が離れました。……そのままやたら半狂乱で隙間から刺し続けてますね、こわっ。

……キレる十代や……現にショタ斬ってるしな、ってやかましいわ。

 

気が逸れている間に、この場を離れましょう。

これならしばらくの間、『かれら』に釘付け。この間に、部室のキッチンに向かいましょう。

 

 

 

 

部室に着きました。

扉を閉め、ついでに鍵を掛けてしまいましょう。

 

キッチンでは、お姉ちゃんが作った美味しそうなカレーがコトコトしています。んまそぉぉぉ!!(グルメスパイザー)。

 

…………クリアしていない諸々は一先ず置いといて。

――『スイートポテト』の材料を用意しましょう。 

 

ゲーム内で必要なのは、焼きいも・砂糖。後はコンロと鍋類です。

ええっとぉ……ああ、ありますあります。

 

 

でぇはぁ………………スキル。

どうしましょうか。いや、ここまで至ってはもうどうにもできないんですけどもね。

 

 

……無くても出来るかなぁ。

 

 

もしかしたらWIKIがスキル無いと出来ないって思ってるだけで、ほんとはできるかもしれないし。さっきの「――ばぁ!!」で信用ならないってのは確定してますからね。

 

よぅし……では――調理(クッキン)開始(オン)

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

・まずは焼きいもを潰します。

 

・砂糖をたくさん入れて混ぜ混ぜします。

 

・それをフライパンで油も引かずに焼きます。

 

・で き た ! (迫真)

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

………………。

 

………………。

 

これただのさつまいもの素焼き(砂糖味)じゃねぇか!!!

 

えっ、えっ、えっ。

それも焦げが付きまくって見映え最悪。ただ潰して丸めて焼いただけじゃん。えっ、スイートポテト?スイーツ(笑)ポテトの間違いでは?

これが高校三年男子の料理なんですか(苦笑)。幼稚園年長さんの間違いでは(微笑)。笑っちゃうぜ!(嘲笑)

 

あっはっはっははっはははははははあははh「なぎくん、開けて」あびばいおじがlでぃfさじlさkどj!!!

 

オワタ……オワタ……!(鳴き声)

 

 

「――怖いのはお姉ちゃんがやっつけたわ。怖がらせてごめんね?びっくりしちゃったよね。不安だよね。ほら、開けて?もう怖がらないで……?」

 

 

怖いのはお姉ちゃんなんですけどねぇ!

あっ、あっ。どっ、どうしよ――うもねぇ!?もう万策尽きたよ、

いまの今までのが全部、スイーツ(笑)ポテトのせいで全部おじゃんだよ!これならまだただの焼きいも渡した方が良かった気がする!

 

 

スイーツ(笑)ポテト「本当に申し訳ない。ぺこり。……でも、こういうのは被造物のぼくではなく制作者が責を負うべきだとぼくは――」

 

 

うっさい!散れ!

 

ああ……ドアが軋む。めっちゃ蹴られてるですけど……。

 

ああ。

 

 

もっ。

もう――これ食わせます!いやもうそれ以外できる事はありません!

他はお姉ちゃんの弟になるか、抵抗してからお姉ちゃんの弟になるかのどちらかしかありませんからね!

 

くっ、来るなら来《ドンガラガッシャーン》……やっぱり来ないで……!

 

 

「――ふぅ。あっ、いたぁ」

 

 

いなぁい(最後の抵抗)。

蹴破ったドアを踏み潰しながらやってくるお姉ちゃんが逞しいが過ぎる……!

 

 

「ふふっ、お腹がすい……?ああ、もしかしてお姉ちゃんの為にお料理してくれたの?嬉しいわ……でも。火は危ない。危ないのよ?これからはお姉ちゃんと一緒にやりましょうね?」

 

 

これだけ聞くとまるでお姉ちゃんみたいだぁ。

でも全身血まみれで包丁持って言われるとアレですね。貫禄というか…………殺人鬼感っていうか……(畏怖)。

 

びっ、ビビってる場合ではありません。

もうやるしか……ゴー!

GO IS GOD……つまり、行動する事(GO)とは(IS)神の一手(GOD)……!(こじつけ)

 

 

――こっ、これ!

 

 

「……?なあに?お姉ちゃ、ん………………――それは」

 

 

おっ、この反応は――真剣ゼミ(こうりゃくどうが)で見た奴だ!

押し通れェ!!(誉れ並感)

 

 

――これ、スイートポテト!あの日約束したでしょ!?お姉ちゃん!

 

 

それはスイートポテトそれはスイートポテトそれはスイートポテトさつまいもの素焼き(砂糖味)ではない違うあり得ない断じて違う――敵を騙すにはまず味方から!

でも、見た目自体はほんとにこのゲームの『スイートポテト』なんだ――焦げまみれで砂糖がそのまんまの、そのまんまサツママッシュポテトなんだけどさ。

スイートポテト……これはスイートポテトなんですよお姉ちゃん……!!

 

……てか、ショタもうお姉ちゃんって言ってる!?これもう洗脳されてんじゃん!失敗です!?

 

 

「………………」

 

 

……いっ、いやこれはぁ……もう一押し!

 

 

――()()()()()()()()()()()()()()でも、でも……()()()()()()()()()

 

 

どうだ。良い感じだろ!

月並みだからこそ刺さるものがあると信じてる!

 

通れ……通れ……!

通ってくれぇ……!!

 

 

 

 

「――あっ」

 

 

 

 

おっ?

 

 

「えっ?あれ、なにが……っ?………どうして血……ひっ……!?」

 

 

――からん、と落ちる包丁。

ガン開き血走り目はぁ――閉じられた。

 

 

…………っ!

 

 

() () () () ()

いけた!さつまいもの素焼き(砂糖味)で行けたぞ!えっ、マジでこれがスイートポテトだったりするこれ!?

それとも今までの技術点が功を奏したのか……!?

 

ともかく!

ともかくやりました!――バッドエンド回避FU~!!

 

 

あ゛あ゛あ゛……づがれだ。

 

タァイムはぁ…………ああ、かぁなぁり、ロス。

これは二日目の三階制圧の分とか、チョーカーさん救出の分とか全部帳消しでなおかつお釣りがドン!……とんでもねぇな、ふぁみお姉ちゃん。

でも、RTAのバトンが繋げられた事は喜びましょう!

……動画的に見せ場もできたって事で視聴数も爆上がり、コメントもいっぱいのはず……!(欲望の開示)

 

これからは正気度特級爆弾お姉ちゃんでは無くなるって事自体にも、目を向けましょうか。はぁ……なんか一生分のRTAやったような気がします。

 

 

……むむっ。視界が揺らぎました。

ショタの方も安心して、張りつめた糸が切れたみたいですね。

丁度いいです。このまま気絶して、めぐねぇ達が帰ってくるまでスキップしましょうかね。

 

はい、ばたんきゅー。

がっしゃん!――あっ、さつまいもの素焼き(砂糖味)が地面に落ちた、まあ残当かな。

 

 

 

 

――これでもう、おねっ……りーさんは大丈夫……だよね……?

 

 

 

おい、お姉ちゃんの事りーさんって言うのやめろよ。

 

…………。

 

…………?

 

…………!

 

あっ、やべっ素で間違えちった。私の方が洗脳されてる……!(戦々恐々)

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

――()()()()()()()()()()()()()

深く、ドロリと熱くて冷たい泥の中。そこから意識が這い出た。そうとしか表現出来なかった。

 

夢が覚めたきっかけは単純。

――私を見上げた弟の顔が、妹と噛み合わなくなった。それだけ。

 

 

 

 

「――あっ」

 

 

気がつけば、私は部室で呆然と立っていた。

 

 

「えっ?あれ、なにが……」

 

 

記憶がひどく曖昧だった。

どうして自分がここに立っているのか検討も付かない。鼻を撫でるカレーの香りが、辛うじて料理をしていたという事を思い出す。

そこでふと――嗅ぎ慣れない、鉄錆びの匂いが近くから濃密に漂っているのを感じた。

 

 

「っ?」

 

 

視線を辿ると――制服の前面が、血で真っ赤に染まっていた。

 

 

「………どうして血……ひっ……!?」

 

 

右手に握られた血まみれの包丁に気がついて、反射的に手放した。

からん――と落ちたその音は、これが現実だと、私に教えてくれた。

 

どういう事?私はいったい何をしていたというの……?

記憶を辿ろうにも浮かぶ思考はひどく焦燥として――()()()()()()()()()()()()()、という確信めいた強迫観念だけが心臓を強く叩く。

 

――がっしゃん。

 

そんな私の耳に響いた、お皿の割れた音。

突然脳裏に浮かんだのは――今はもう古ぼけた、お母さんに怒られた時の記憶だった。

 

振り向きたくない――と、誰かが呟いた。

振り向きなさい!――と、誰かが怒鳴った。

 

恐る恐る向けた視界に映ったのは――床に倒れ伏したなぎくんだった。

 

 

「――なぎくん……っ!!」

 

 

慌てて駆け寄ると、彼はひどい姿だった。

全身は血と土に汚れて。顔は青白く、力無く投げ出された腕は制服の外から切り傷だらけで、手のひらは赤く水ぶくれが出来ていた。

溢れる吐息は痛みに揺れて、か細くて。

 

「いったいなにが――「やっと――二人きりになれたわね?」…………あっ」

 

 

耳の奥から聞こえてきたのは、熱く蕩けた――気色悪い自分の声。

 

「ふふっ……鬼ごっこだもの。ちゃあんと十数えてから始めましょう?」

 

「逃げないで――受け入れて?」

 

「ふふふ、さあ……なぎくん。おいで……?」

 

「これから――ずっと、お姉ちゃんが一緒よ。絶対に離さない」

 

 

弾かれるように、床に落ちた包丁を見た。

皆を助けていたはずソレは、血脂で濁っていて。

刃に写ったのは――そんな大切な友達を、身勝手なイカレた妄想で傷つけたどうしようもない女の姿。

 

 

「ち、ちがっ……!」

 

 

誰かに言われるまでもない。

 

 

「いやっ、いやぁ……!」

 

 

私がやったんだ。

 

 

「いやあああああ!!!!」

 

 

くしゃりと歪んだ顔。

泣きたいのは、きっとこんな私じゃなくて――なぎくんのはずなのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

応急手当の本と救急箱があって助かった。きっと、よりひどくなる前に処置ができたと思う。

 

……でも、なぎくんの傷を一つ一つ見ていく内に、それをやった時の私のほの暗い悦びを思い出す度に。

そして――()()()()()()()()()使()()()()()()()……使わなければいけないほどだったという事実が。

 

私を苛んだ。

 

 

「…………」

 

 

部室の床の上。

幾分か落ち着いた顔で、私の膝で眠っているなぎくんを眺める。

 

 

私は全て思い出した。

 

私は羨ましかったのだ。

家族を失った私の側で、互いを唯一無二と笑い合うなぎくんとゆきちゃんが。

 

 

そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と想像し始めた事が全ての始まり。

 

それから現状が悪くなる度に、頭が痛くなる度に。

空想に逃げた。呼び掛けられるまでぼんやりしてしまうほど、深く。

 

なぎくんの優しさに触れる内に――いつのまにか、その相手がなぎくんにすげ替わって。

 

 

そしてあの、雨の日に。

私達を守ろうと飛び出したなぎくんが――亡くなった私の妹……るーちゃんと被ったように見えた。

それから……恐怖で。

 

なぎくんとるーちゃんが混じって……――あの子は私の(いもうと)。そう思うようになった。

 

それから今の今まで、なぎくんは私の家族だった。私の中だけで。

膨れ上がった妄想を抑えられなくなって、いつしかそれが現実だと思い込んだ。るーちゃんとの思い出はなぎくんとの思い出になって。

辻褄合わせを繰り返して――――

 

誰にも気がつかれる事の無かった私の狂気は、二人きりになってしまった事で――鎌首もたげて、彼に襲いかかった。

 

 

「……なぎくん」

 

 

ほんの少し前まで助け合う友達だったはずの女が――突然己の姉を名乗り出し、刃物片手に襲いかかったのだ。

どれほど、どれほど……!

怖かっただろう。辛かっただろう。気持ち、悪いと。思った事だろう。

 

無意識になぎくんの手を握ろうとして――火傷の水ぶくれが目に入って、やめる。

 

私は彼の手を握る事も出来ない。その資格もない。

傷つけて、追い詰めて、こんなにもボロボロにして。

 

なのに――()()()()()()

 

 

「なんで……」

 

 

思い出すのは――なぎくんとの“鬼ごっこ”。

あれは恐怖から逃げているのだと思っていた。でも違う。

彼は恐怖から逃げていなかった――私を、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「なんで……私は……!」

 

 

職員室、屋上、部室。

駆け巡ったそれは全部――なんてことのない“約束”を果たす為だった。

私が気づくであろう、友達であった時の記憶。そうすれば、きっと元に戻ってくれるはずだって信じて。

 

私を、助けようとしてくれた。

あんな狂って狂って狂いきった気持ち悪い女を……彼は……!

 

 

なぎくんは、自分もおかしくなっていても――助けてくれた。救いだしてくれた。

 

それが――

 

 

「どうして――()()()()()()()()()……!?」

 

 

傷つけたくせに。

追い詰めたくせに。

こんなにもボロボロにしたくせに。

 

――私は、なぎくんに対してほの暗い悦びを覚えていてしまっていた。

 

 

「――んっ……?」

 

ふと、膝から小さな音が聞こえてくる。

下を見ると――うつらうつらと目を瞬かせたなぎくんが、こっちをぼんやりと見つめていた。

そうして、私が膝枕をしている事に気づくと――びくりっと身体を震わせる。

 

 

「おっ……おねえちゃん?」

 

怯えるような。すがるような。

そんな小さな声に、私はせめて安心させるように首を振った。

 

 

「ううん。――私は、()()()()()

「……そっか。うん、そうだ……そうだった……うん」

 

 

ふぅ……と深く息を吐いた彼の頭を静かに撫でる。

震えが返ってくる事が、私の罪を自覚させてくれる。

 

 

「ねぇ、なぎくん」

「なっ……なに……?おねっ……じゃないちがう――んんっ!りーさん?」

 

「私は――まだ、友達かしら?」

 

 

自分でも心底虫の良い事を言っているのを理解していた。

そして――この後言ってくれる優しい言葉も。

 

 

「うん?勿論――りーさんは大事な友達だよ」

『――お姉ちゃんは家族じゃないっ!でも、でも……大切な友達なんだよ!』

 

 

ああ……ああ……。

 

 

「ありがとう」

 

私はそう呟いて、額にキスをした――歪んでいる口許が元に戻るまで。

 

 

「本当に大好きよ。私の大、切な…………わ、たしの……」

 

 

ふと、呟きそうになった言葉を抑えた。

なんだ。つまり私は――()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ねぇ、ねぇ……なぎくん」

「えっ、は……えがおこわい……なんで、しょうか……?」

「これね。一生のお願いなのだけれど……」

「…………」

 

 

「もう一度だけ――お姉ちゃん、って呼んでほしいの」

 

 

「…………」

「…………」

「………おっ――」

「……っ!おっ?」

 

 

 

「――おとこわりですよーだ!この○姦魔!!」

 

 

 

 

あっ。

 

 

強○魔は流石にお姉ちゃんグサッときた。

いっ、いやそれは流石にひどくないかしら!?

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

「――ふぅ。さあって。ようやっと到着だぞぉ……皆お疲れさん」

「あああああ、つかれた。荷物はぁ……どうする?まだ大半は車の中だけど……」

「折を見て、次の夜に回収しましょ?皆日持ちするものだし。ふぅ……美紀さんも圭さんも手伝ってくれてありがとうね?……太郎丸もおつかれさま」

 

 

「いっ、いえいえ!あんな大ピンチを助けてくれて、尚且つ学校にまで連れて来てくれて……それに、大の親友とも再会させてくれて……寧ろもっと好き勝手使ってくれて大丈夫ですよっ!」

「圭、言い方。……私も改めてありがとうございます。あのままだったら……きっと」

「わんっ!」

 

「ああ、いいのいいの。気にすんな気にすんな。こういうのは……ほら、“旅は道連れ”……だろ?」

「そーそ。一番先頭に立って無双しまくった胡桃本人が言ってんだし、そう気負らなくていいって」

「ええ、そうですよ。それに…………」

 

「……?」

「それに?」

「わぅん?」

 

 

「――もし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「そーだなぁ、やなぎなら助けるな絶対」「寧ろどんな大ピンチでも行ってたな、柳なら」

「……結果的に今回は連れてこなくて正解だったな」「んだなぁー」

 

「――そう、ですか」

「…………。えっとぉ、万寿先輩は、若狭先輩とお留守番してるんでしたっけ。佐倉先生」

 

「ふふっ、別にめぐねぇでもいいわよ圭さん。ええ、ちょっと……ね。まだ説明が思い付かなくてごめんなさい」

 

「いえいえ!別に……他にも助かってる人がいるなら嬉しい限りですよ!ねっ、美紀!」

「……そうだね、圭」

「わん!わん!」

 

 

「まあ、そんなこんなでおつかいは大成功な訳だが…………」

「……そうだな。だが、二人が心配だ」

「梯子が片付けられている。バリケードは通る隙間を塞がれている。……なにかあったと見ていいかもしれません」

 

 

「……連中の死体も血の跡も無い。だから、大丈夫……だろ?」

「だと、いいんだが」

「……!声が……!」

 

「あっ、おい!めぐねぇ!危ないかもしれないって!」

「あー。とりあえず二人とも。それと犬っころも。着いてきてくれ」

 

「はぁーい!」「はい」「わぁん!」

 

 

 

 

「やなぎくん!大丈夫で――」

「めぐねぇ!前に出過ぎて、またなん――」

 

 

「――ふしゃぁああ!!」

「落ち着いて?ねっ、落ち着いてなぎくん!ほっ、ほら一回だけ!一回だけでいいの!それだけで私頑張れる気がするの!だから包丁持って威嚇しないで!」

「――ふしゃぁああ!!」

 

 

「…………えっ、これどういう状況です?」

「……けんか?」

 

 

「先っちょ!先っちょだけでいいから!」

「ぅぅぅ……うるさい!最初は皆そういう言うって結局ズルズルなし崩しって相場が決まってるの!」

「えっとえっと……ともかく!一回!お願い!これで最後だから!」

「そんな、別れたいのに身体の相性だけは良すぎて結局惜しくなって別れられない爛れたカップルみたいな事言わないで!」

 

 

「えっとぉ……色々気になる事があるけどとりあえず止めましょうか。くるみちゃん」

「……そうだな。特に――やなぎが傷だらけの件とか」

 

 

 

「ゆきちゃんたすけてぇぇぇぇえ!!!」

 

 

 

 

 

 





ーーーーーーーー
※解説byWiki


『りーさんの包丁』

入手条件:りーさんの信頼イベントクリア後・“YOU MAY CALL ME SISTER”イベント回避時・殺害時。


若狭悠里がいつしか使っていた包丁。
その用途は物を斬る事であれば何でも出来る。
――ようは使い方次第で、これはその意味合いを変える。

だが、ナニカの脂で光が鈍った刃を見れば、これを食用に使う者は少ないだろう。


装備すると、攻撃力が中程度アップし、カウンター成功時に高確率で相手が即死する。


これは彼女の罪の証。
見る度に彼女は決意を新たにするはずだ。

彼女は、もう二度、あなたを、傷つけない。
あなたを決して否定しない――たとえどんな事を行おうとも、彼女は微笑んであなたを肯定する。

彼女は、もう二度と、あなたを、決して裏切らない。
その――狂気のような正気を以て。


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