がっこうぐらし!ver2.0_RTA 『一人ぼっちの留年』ルート≪参考記録≫   作:ゆキチ

4 / 15
二日目・午前 Restore

主人公が戦力外通告とかいう前代未聞なイミフRTAはーじまーるよー!

 

 

 

「じゃあ、行ってくるからな。柳、頼むから大人しくしてろよ」

「心配してくれるのはわかります。ですけど、本当に危ないんです。……わかってね、万寿くん」

 

 

無常にも扉が閉まって行きます。

無事ゴリラとなっていたくるみちゃんと覚醒めぐねぇ(バール万引き犯)が行ってしまいました。

 

私(主人公)を残して。私(タイム)を残して……私(RTA)を、残して……!!

 

なーぜーなーのーくわぁぁぁ!!!

 

 

「うにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!」

 

 

なぁんでまた!?まぁたぁ!?

あれか、めぐねぇか!まためぐねぇのせいか!(責任転嫁)

うわぁぁぁぁぁ!!ぬわぁぁぁぁぁ!!またガバったぁぁぁぁぁ!!!

 

 

「うにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!」

「あの……柳くん?どうして、ほっぺ……」

 

 

八つ当たりだよぉ!やってれば正気度回復するから無駄のない効率的な八つ当たりなんだよぉ!!(RTA走者の鑑)

くそぉ……くそぅ……。

ゆきちゃんのほんわかボイスが私のハートに響くぜっ……!(癒し効果)

 

 

「うにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!」

 

 

……最高や。

やっぱりムカッ腹が立った時は、ゆきちゃんのほっぺをむにゅるに限るぜ。

 

はぁ……いますぐ職員室の書類だけ焼き尽くす隕石とか落ちねぇかな……。

ゾンビ化ウイルスとか、一振りで三人薙ぎ倒すシャベルゴリラがいるんだから、そういう隕石だってあってもいいだろ!(暴論)

落ちろ!(祈り)…………落ちたな(幻覚)。

 

 

「うにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ――ぷへっ」

 

 

ふぅ……(満足)。正気度回復はこのくらいでいいでしょう。

 

さて。これから本当にどうしましょうか。

正直、ここまでチャートが狂うと再走も考えねばなりません。

普通なら、気軽に「再走します!」って直ぐにリセットボタンを押します。

そして、アニメ版がっこうぐらしを三周して、一週間寝込んでから、再走します。実に気軽な再走です(お目々グルグル)。

 

ですが、ゆきちゃん幼馴染ルートでの、覚醒めぐねぇ・二日目万全ゴリラという、この立場は中々無いので手放したくないのが本当なとこです。

もう最初からしたぁない!リセットしたぁないんやワイは!(豹変)

 

それに――私は成長しました。

このまま茫然と続行を選ぶような以前の私は、ガバの海に流れて消えたのです。

 

 

「大丈夫?」

「……うん。今回も熱烈な愛でした……」

「あんな猛然とほっぺをぐにぐにするのが愛なのね……」

「ふふふ。愛が強いから、熱も良く分かるの」

「ほっぺが林檎みたいになってれば、そりゃあね」

 

 

幾つもの屍を晒してきた歴戦の私は、非戦闘者プレイもした事があるので――この時間がいかに暇かもわかります。

行動範囲がまだ屋上しかないので、出来る事は野菜の世話と会話だけ。

野菜の世話は、特に消費してないのでいらないですし、会話イベントもゆきちゃん幼馴染ルートのおかげで、今やる必要性はありません。後々、いっぱいありますし。

 

めぐねぇ達が帰ってくるのはリアルタイムで大体、五分程度。

今時走らない流行遅れの『かれら』に、余裕で帰ってくる事でしょう。

 

暇な上に、時間が良い感じに余る……実に良いものです。

 

ですので。

 

 

み な さ ま の た め に ~

 

 

これ以上のガバが起きないように――攻略WIKIを見ようと思います

(時間を無駄にしないのは)当たり前だよなぁ?情報戦が物を言うってそれ一番言われてるから。

 

形振り構っていられません。(ガバを)やるか、(ガバに)やられるか。それがRTAというものなのです。

 

私の全ての敗因は『覚醒めぐねぇ』です。めぐねぇのせいなのです(これをガバのなすり付けと言います)。

ですので、今の時間を利用して『覚醒めぐねぇ』の特性を完全に把握します。「こんなレアな事滅多に起こらねぇし、スルーで大丈夫大丈夫」という過去の私を全力でぶん殴って行きましょう。

それにこうなってしまった以上、前線で戦っているだけではもう無理なので、後方でのタイム短縮方法も予習しておきます。

 

元々のチャートを保全するような形でオリチャ―を混ぜ込んで行けば、もう何のガバもない素晴らしいRTAになるでしょう。

こういう時の為に、PCを側に置いといたんですね(例の構文)

 

すごいよぉ、かがくのしょうりだよぉ!(ゆきちゃん並感)

 

 

「そういえば、自己紹介してなかったわよね。私、若狭悠里っていうの。宜しくね、丈槍由紀さん」

「……私の事知ってるの?」

「ええ。柳くんといつも一緒にいる子猫みたいな子って有名よ?」

「そっ、そんな子猫みたいにかわいいなんて……照れるよぉ」

「……柳くんに近づく人に誰彼構わず威嚇するって意味だったんだけど……」

 

 

勿論、片手はコントローラーに。

ボタン連打して、会話イベントを飛ばしていきます。

こちらに話を振られる時がありますが、この会話イベントで好感度が増えはしても、減りはしません。それにゆきちゃん幼馴染ルートなので、たとえ下手な選択をしても滅多な事はありません。

 

適当に流して、チャート再構築に集中しましょう。

 

 

「やーくんはやーくんだよ!」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「そうね。柳くんとは良く話していたし……ねっ?柳くん」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「……そうなの?」

「ええ、たまに園芸部の仕事を手伝って貰ったりとか……ありがたかったわねぇ、私以外真面目にやる人居なくて……」

「……ふぅーん。やーくん、そんな事してたんだ。私がめぐねぇとの補習の時にやってたの?」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「私を置いて?若狭さんと?二人っきりで?」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「ふぅーん……」

「あっ……。そっ、それよりもっ!今の話をしましょう。少し、怖いけども……」

 

 

さて、攻略WIKIを立ち上げましょう。

ブックマークバーに登録してたので、キーボード打つよりもタイム短縮ですね。

 

あっ、『やさしいきょうしつ』エンドRTAがまた世界記録更新されてる。

まぁた、ゆきちゃん化めぐねぇが量産されたのか、(精神)壊れるなぁ……。五分切ってるし、これ終わったら見よ。

 

ええっと。『覚醒めぐねぇ』の項目を……。

≪『かれら』との戦闘参加・各種補正の強化・主要キャラの正気度減少抑制・レアイベント発生率アップ≫……?

やべぇ……これは確かに覚醒めぐねぇですねクォレハ。これでさらに万能ステータスなんでしょ?ゴリラに匹敵するなぁおい。

……伏せ字で『ゴリねぇ』と書かれているのは見なかった事にしましょう。人権尊重ムーブ、いいゾこれ(自画自賛)

 

なら、二日目にゴリラがいるのは納得です。

正直好感度が高くて、不安は残ってました。覚醒めぐねぇの効果が効いたと思うのが自然でしょう。

ありがとう、めぐねぇ……でも、バール盗ってったのは忘れないよ赦さないよ。

 

ふむぅ……でも、やはり突発的戦闘イベントの耐性は弱いのか……覚悟を決める時間がいるとかでしょうか、めぐねぇ的に。

それでもこの序盤に戦闘キャラが増えるのはいいですね。

じゃあ、ただのショタが弾かれるのは当然か……。

 

これからどうしましょうか。

 

 

「……すごい事になっちゃったね」

「ええ、恵飛須沢さんが……その、殺した時から、頭がどうにかなっちゃいそう」

「……やーくん」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「……やーくん?」

「……少しだけ、そっとしてあげましょ。だって、今二人がやろうとしてる事って――」

「……うん、そうだね。ぎゅー」

 

 

――……この状態では、三階制圧もダブルゴリラに頼らねばならないでしょう。三階は、数は居ないので問題無いとは思いますが。対策の為、非戦闘員にも武器を……あっ、枝切りバサミ。これはいいですね……――

 

 

「大丈夫だよ、やーくん。私はずっといるからね」

「………」

「どうかした?」

 

 

――……チョーカーさんも助けるには少し手間が要りますね。……うーん、夜はどうせ見張りはゴリラがやるだろうし、その時に何とかどうにか言い包めて……――

 

 

「二人は仲が良いわよね。幼馴染……だっけ」

「うん。あと許嫁なんだよ。前世も夫婦で、産まれ変わって夫婦なの。ねっ、やーくん」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「二人が羨ましいわ……」

「そう……?」

「ええ、そういうの家族みたいで……私には、そんな……」

 

 

――……減少抑制があるとはいえ、減少はするみたいなのでそこはしっかり調整すべきか。……サツマイモ。これで……くそぅ、なんでこういう時だけは運が良いんだ……――

 

 

「どうして、こんな事になったのかしら……私何か悪い事した……?いままで頑張って真面目にしてきたのに……今度は私から何を奪うって言うの……また、一人にするの……?」

「若狭さん……?」

 

 

――……他の三人はともかく、りーさんは本当に知らぬ間に狂ってる事が多いからなぁ。ギリギリまで非戦闘者で正気度回復を優先した方がいいか、いやでもな……――

 

 

「――どうしてっ!なんでこうなるのよっ!なんでっ!……なんでっ!?」

「あわわわ……どっ、どうしよやーくん!若狭さんが……」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「……えっと、えっと……そうだ!なればいいんだよ、若狭さん!」

「……なる?」

()()()()()()()()()()()なんだよ!……だって、そうじゃないと私とやーくんが家族になれないし」

 

 

――……だとすると“えんそく”も考える必要がありますね。戦闘員になれれば行けますが、このままの場合………――

 

 

「……か、ぞく」

「だからね。家族――その、ともだちに……なろ?一人じゃないよ、若狭さん。ねっ、やーくん!」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「……いいの?」

「うん!……あっ、でも私の家族はやーくんだけだよ心配しないでねやーくん、やーくんの家族は私だけだよわかったやーくん?」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「……()()()()()()()()()()()()。そうよね、なら私は……――」

「若狭さん……?」

 

 

――……ふむぅ。後は何か必要な事は……――

 

 

「ごめんなさい。丈槍さん。取り乱しちゃったりして。その……私でよければ友達になってくれない……?」

「うん!もちろんだよっ!よろしくね――りーさん!」

「りー、さん?」

「えっと、ね。若狭悠里さんだから、後ろを取ってりーさん!友達ならアダ名だよっ!」

「……――」

 

 

――……チョーカー救出、補強……物資……――

 

 

「……そうね。じゃあ、私はゆきちゃんって呼んでいいかしら?」

「――うん!」

 

「ありがとうゆきちゃん。ふふっ、友達とあだ名で呼び合うなんて初めて。嬉しいわ」

「……その、私もりーさんが、初めて」

「あら。じゃあ初めて同士ね。一緒」

「……!そうだね、一緒!」

 

 

――……ショッピングモール、駅は……どうしようか。タイム短縮にはどうしても頭数が……――

 

 

 

「それじゃあ、柳くんってのも変えたいわ。私もやーくんって――」

「それはダメ」

「……ダメ?」

「やーくんは私だけ。だからダメ」

「……じゃあ、なぎくん……だったらいい?友達として、友達の未来のお婿さんにあんまり他人行儀は嫌なの……」

「うっ……………うん、それなら、いいよ」

「ふふ、ありがとう。これからも宜しくね?なぎくん?」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「あっ、やーくんの事も忘れてないよっ!私はやーくんが一番大好きだからねっ!不安にしてごめんねっ!愛してる!」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

 

 

「……………でも、私の事も愛してるって言ってたわよね」

「ええー?もーっ、りーさんったら。やーくんがそんなこ――」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「――えっ?」

「昨日の夜だって抱き合って寝たものね」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「――ええっ!?」

「熱烈だったわ」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「……っ……っ!」

「――なーんて。ふふっ、冗談よ。こういうのって一回やってみたか……あの、ゆきちゃん?顔が……」

 

 

おっ、そうだな。

 

 

「いや、あのね?私も二人と仲良くなりたくてあの冗談だったのごめんな――」

「――やーくんの浮気者っっ!!」

 

 

――ふむ。

まあ、こんぐらい考えれば大丈夫でしょうか。

さて、会話イベントはどれだけ進――――ふんならばっ!?(ガード不能・中ダメージ・スタン付与)

 

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

 

 

屋上から、三階へ。

階段を下りる毎に、バールを握る手に力が入った。

 

「………」

 

遠くで聞こえる、人ならぬ呻き声。生徒()()()、『かれら』の声。

やらなくちゃいけない。教師である私には、守るべき生徒であるあの子達がいる。

 

「……めぐねぇ」

 

階段も終わる。

目の前には誰もいない。でも、曲がればいるだろう『かれら』が。

一緒に来てくれたくるみさんの顔は強張っていた。……その大きな瞳に映る私も、似たような顔だ。

 

「……取り敢えず、確認します。左は私、右はくるみさん。数が多ければ、一度引き返しましょう」

「ああ。わかった」

 

足音を経てず、静かに壁に背を当てる。聞こえる心音が、耳の奥でうるさい。

バールを見つめ、深呼吸。

大丈夫。あの子達の為なら、私は――出来る。

 

「――いくぞ」

 

くるみさんの言葉を合図に、意を決して、顔を覗かせて……

 

 

――拍子抜けした。

 

 

「……居ない?」

 

 

廊下には誰も居なかった。

まるで、あの悪夢が無かったかのように――直ぐに、廊下のあちらこちらに散らばる血が現実だと教えてくれたが。

 

「……どういう事?」

 

昨日を思い出す。

あの時、屋上まで戻る時は十数体の『かれら』がいた。教室にいたのも数えればもっといただろう。

なのに、今はとても閑散としていた。……移動したという事?

 

「めぐねぇ。教室には何人かいる。それでも二人、か……」

 

くるみさんが近くの教室を覗きこんでいる。

呟く言葉に嘘はないのが分かるほど、素直な驚きが見えた。

 

くるみさんへ手招きして、屋上への階段へと戻る。

ある意味、想定外の事態だった。

 

「あたし、リアル無双ゲーの気持ちだったんだけど……」

「……そのたとえはよくわかりませんが。沢山いる事は私も想像してました。……良い兆しなんでしょうか」

「……だと思う。罠……できると思わないしな」

 

茫然とよだれまみれで寄ってくる『かれら』。

そこに知性は見られなかったように思えた。そう考えれば、今は本当に運が良い時なのかもしれない。……罠だったら、おしまいだが。

 

「目的は変わりません。職員室へ」

「ああ」

 

とはいえ、このままびくついてる訳には行かない。

私達は廊下へと躍り出た。

 

ゆっくり進む中。

私達の現実だったものは崩れ去ったのを如実に教えられた。

割れた窓、血に塗れたハンカチ、跡、跡、跡――ひどい、匂い。

 

飲みこむ生唾に、その味が通るようで――吐き気がした。

 

 

 

 

職員室にいた『かれら』は三人ほどだった。

 

そしてその『かれら』は――私にとって、良き同僚たちだった人達。

あのジャージは、あの大きなお腹は、あの小さな背丈は――間違えようもなかった。

 

「………」

「めぐねぇ」

 

放心するのは一瞬。肩に乗せられた温もりが、我に返してくれた。

振り向く。強張りながらも――決心した瞳、光に反射するシャベルの金属。それが見えた。

 

「……あたしがやる。めぐねぇは、その……」

「いえ、ダメです。私も……」

 

そこで。

ひた……ひた……と、引き摺る足音が聞こえた。

 

 

「――っ!」

 

私達が覗いていた職員室の扉――その反対側。開いていたのだろうその扉から、一人の『かれら』が出てきた。

 

 

見た事のあるスーツだった――何故なら、私が一緒に選んだものだったから。

見た事のある姿だった――何故なら、私の同僚だったから。

見た事のある顔だった――何故なら、私の友人だったから。

 

 

「――神山先生……!」

 

の――『かれら』。

最後の、最期。私に警告してくれた――一番仲が良かった同僚。良き隣人、()()()もの。

 

ソレは、緩慢な動作で首をぐるりと動かすと、白く濁った目で私を捉えた。

小さな呻き声、求めるように手を伸ばして来る。それがどういう意味かは、口から延々と漏れ出る涎が教えてくれた。

 

「――っ、来やがった!」

 

先んじて動こうとするくるみさんを止める。

一歩前に出る。両手でバールを握り締め、ゆっくりと振り上げた。

 

誰もが見れば分かる。振り下ろす構え、攻撃する動き――それでも、『かれら』は向かって来た。

 

「……よかった」

 

これは神山先生――()()()『かれら』だ。

なら、私に出来るのは力を込めて、それを振り下ろすだけ。

 

 

「じゃあね、昭子ちゃん」

 

 

 

 

 

『かれら』についてわかった事。

動きが非常に緩慢。攻撃しようとしても避けようともしない――頭を潰せば、もう動かない。

職員室に立っているのが私とくるみさんだけになった時、それが良く分かった。同僚達が、未熟な私に教えてくれた最後の事だった。

 

 

職員室の扉を閉める。これで『かれら』は、こちらに気付かないだろう。

 

息を整えるくるみさんに努めて、落ち付いて声を掛けた。

 

「大丈夫?くるみさん」

「……大丈夫、だけど――大丈夫っ、じゃない……」

「……少し休んで。私が必要なものを集めてるから」

「それは、めぐねぇだって……」

「私は大丈夫です。ホラー映画とか大好きで良く見てましたから」

 

「――うそつけ。序盤に流れるBGMにすらビビりそうなくせに」

 

――なぜバレた。

とはいえ、くるみさんは休ませるべきだ。彼女を面談用のふかふかソファに座らせる。

勇気ある子。でも――彼女は私が守るべき生徒だ。

なら、任せるとこは任せる。気負うべきなものは気負う。そうしたメリハリは大切だ。

 

それに動いていた方が、気が紛れる。

 

集めるべきは先生達が持ち寄っていたもの。

暇な時に摘まむおやつ、宿直用の置いてあったカップ麺、私が持ってきていたダイエット用のカロリーメイト。

それを先生達の誰かのバッグに詰める。中身は捨てた。もう、使う人はいない。

 

集めるだけ集めた。バッグ二つに満載。これを切り詰めて行けば、三日は大丈夫なはず。

 

「ああ、でもカップ麺は……」

 

ポットはある。だが、お湯はどうしよう。

まさか直にバリボリ食べさせる訳にはいかない。屋上の太陽電池のおかげで電気は動いているし、ポットで沸かして持ってくのは……ああ、でも人数分は量が。往復するにしても『かれら』が潜んでる中は危険だ。誰かだけっても可哀そうだし、どうすれば――

 

「延長ケーブル」

 

ふと、くるみさんが声を掛けてきた。

ソファから立ち上がり、軽く屈伸している。

 

「あの丸くて、ケーブルがまとまってるやつだよ。どっかのコンセントに刺して、屋上まで持ってけば、あっちでもポットは使えるだろ。水はまだ出るだろうし」

 

……それは考えつかなかった。

それにしても。

 

「なっ、なぜ私がカップ麺で悩んでいるってわかったの……?」

 

やはりこの子は天才か。

頭も良く運動できるとか、心の中の若い私(今も!)が嫉妬僻みの嵐なんだが。

 

「いや、そりゃめぐねぇ――カップ麺両手にウロウロしてたら想像つくって」

「あっ……あー、これは恥ずかしいところを」

「ちょっと可愛かったよ、年の割に」

「もうっ、からかわな――今、なんて言いました?」

 

「さてっ、こーたいっ!今度は私が探すよ。めぐねぇは休んでな」

「今、なんて言いました?ねぇ、なんて言ったの?謝らないとバールがどこに飛ぶかわかりませんよ」

 

「――めーんごっ!」

 

くっ、かわいい。許す。

くるみさんは教えた用具棚を漁り始めた。あの中には、他にも使えそうなのがあったからきっといいのも見つけてくれるだろう。

 

その間に、私は――

 

「………」

 

生徒名簿を手に取った。

机に座り、綺麗な紙を取り出して、名簿を開く。

まず思い出すべきは――最初に殺した生徒の名前。

変わり果てた顔を思い出して、照らし合わせる――見つけた。その名前を書く。

次に書くのは、殺した同僚達の名前。一つ一つ、噛みしめるように書いた。

 

 

――『かれら』は生徒()()()。同僚()()()。良き隣人()()()

 

そう、()()()

 

だから――忘れる訳には行かない。

 

「………」

 

いつか、この罪が償える時。

忘れない為にも――殺した『かれら』の名前を書く。そう決めた。

 

書き終わり、ペンを置く。

少し、深呼吸をして、引き出しを開けた。

 

そこには――職員用緊急避難マニュアルと書かれた、仰々しい文書があった。部外秘と赤く書かれた表紙が、実にしかめっ面だ。

……赴任した際に渡されたこれ。埃をかぶるだけのものだと思っていたが、使う時が来るとは。

 

「――それが、マニュアル?すげぇこわい表紙」

 

気が付けば、くるみさんが肩越しからこちらの手元を見ていた。

背にはバッグの一つ。手には延長ケーブルとシャベル。あとは、腰に――縄?

 

「……それ、何に使うの?」

「ああ、この紐?まあまあ、気にしない気にしない」

 

そう言われると余計気になるんだが。

 

「で。そのマニュアル。今、読むのか?」

 

くるみさんに聞かれて、そうは思っていたが――彼女がもう準備万端なのに、悠々と読む訳には行かない。

 

「いいえ。()()()()()()()。大切なものですし、()()()()()()()()()()

「ああ、そう。まあ、情報の共有は必要だしな」

 

 

くるみさんに急かされるように、私はマニュアルをバッグを詰め、ポットとバールを持った。

……残った彼らの死体は、後で処理しよう。くるみさんのように。……ゲームみたいに自然と消えてくれればいいのに。

 

 

 

 

屋上までの道。

小さくカラカラとケーブルが延びる音だけが響いていた。

 

「――今がチャンスだと思う」

 

くるみちゃんが突然呟いた。

 

「このまま屋上にいたってダメだ。日除けは少ないし、雨でも降られれば風邪引いちまう」

 

それで、なんと言おうとしているかわかった。

 

「……どういう訳か、三階には数は居ないですもんね」

「ああ、階段にバリケードでも作って、三階にいるやつらを処理すれば――」

「――私達の安全地帯が手に入る」

「そゆこと。まあ、今は飯にしようぜ。あいつらも腹空かせてるだろうし」

 

まあ、私は腹空いてないからいらねぇけどな、とくるみさんは笑った。

……それは私もだ。あんなのを見た後に口に何か入れたら吐きそうだ。あの子達にも、あっちで済ませたと嘘をつこう。心配させないように。

 

 

階段を登る。

そこまで行けば、流石に緊張も解けてきた。

くるみさんと「なんとかなったね」と笑い合っていると、

 

 

――外で騒ぎ声が聞こえてきた。

 

 

「……っ!」

 

緩んだ緊張が、背筋に鋭く突き刺さる。

まさか、私達が居ない間に『かれら』が入って来た?それとも、噛まれた誰かが居て今襲ってきたのか?

 

直ぐに駆け出して、扉を開ける。

そこには――

 

 

「ぬぐぉぉぉ」

「やーくん大丈夫!?ごめんね、結構奥に入ったよねっ!」

「ごめんなさい、なぎくん!私が変な茶目っ気なんて出したから……!」

 

『かれら』よりもゾンビみたいな呻き声を上げながら蹲る万寿くんと、その周りでわたわたしている丈槍さんと若狭さんがいた。

 

特段、血の匂いはしなかった。

 

 

「なにやってんだあいつら……」

 

私も思う、くるみさん。

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

――持ってかれた!

ゆきちゃんのビンタで、HP半分が持ってかれた……!脳も揺らされた……!!

 

 

「やーくん大丈夫!?ごめんね、結構奥に入ったよねっ!」

 

 

入るどころかめり込んだ気がするんですが!?

痛恨の一撃と会心の一撃が、同時に入った気がするんですが!?

 

 

「ごめんなさい、なぎくん!私が変な茶目っ気なんて出したから……!」

 

 

茶目っ気って何言ったの!?

ゆきちゃんオークの腕力を獲得するほどの冗談っていったいどんな冗談なの!?

 

 

「――なにしてんだよお前ら。びっくりさせやがって……」

 

 

ああ、ゴリラが帰って来た。

……なに持ってきた……?

 

 

「んん?ああ、カップ麺」

 

 

ベネ。

回復量、高い。オデ、今ソレ、必要。

テ。オ湯ハ……?

 

 

「電気は使えるので、延長ケーブルを引いてきました。これで温かいものが食べれますよ」

 

 

なら、3分のを2分でお願い……そうすれば固めで美味しくタイムたんしゅ……ぐぅ。

 

 

「やーくぅぅぅん!」

 

 

 

 

 

 






―――
※解説
『やさしいきょうしつ』
達成条件:主要キャラが屋上で合流後、めぐねぇ以外が全滅する。

俗に言う、ゆきちゃん化めぐねぇエンド。
達成条件の容易さから、RTA走者(タイムのアクマ)に目を付けられた、色んな意味で悲惨なエンディング。

今日も日夜≪屋上で立て籠った後、わざと扉を開け放ち、『かれら』を招き入れてめぐねぇ以外を殺す≫という非人道的走法によって、世界記録更新(ゆきちゃん化めぐねぇ)が量産され続けている。
なお、良心の呵責に耐え切れず、ゆきちゃん化する走者も現れる。お前がやったんやろがいっ!



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。