がっこうぐらし!ver2.0_RTA 『一人ぼっちの留年』ルート≪参考記録≫ 作:ゆキチ
ちょっと長いけど、めーんごっ!
戦闘力皆無なはずのゆきちゃんにビンタされて、HP半分持ってかれたクソザコショタのRTA、はーじまーるよー!
……。
かなり叫んでみましょう。
元気でーーーーすっ!(やけくそ)
ゴリラズがカップ麺を持ってきてくれて助かりました。もし無ければ、私はリセットの向こう岸へと繰り出していたとこでしょう。
朝食兼早めの昼食の時間です。
皆で輪になって、カップ麺を食べましょう。
ポットと延長ケーブルを持ってきてくれているので、皆が食べる事ができます。これらが無ければ、お湯が足りず、あぶれた誰かがカップ麺をクッキーモンスター(動詞)しなければならなかったのでありがたいです。
こうした差を作ってしまうと、正気度増減の値が変化しやすいので注意。ラブ&ピース!平和で平等なのが一番!
「やーくん、りーさん、ごめん……」
「いいえ、ゆきちゃんは悪くないわ。ごめんなさい……なぎくん」
……私は赦そう。
だが――
RTA「赦そう」
だそうです。
ショタがイキかけましたが、結果的に回復しています。どのみち、飯は食うつもりだったので、RTA的にはロスらしいロスはしていませんので特に問題はありません。
チャートは補強できましたし。
……ビンタは、走ってる最中にWIKIを見るという暴挙をRTAの神がお赦してくれなかっただけなんでしょう。
……チャーメン……(走者の祈り)
「ん?なぎくん、りーさんって……アダ名か?」
「あっ、うん!これから一緒なら仲良く!だよ」
「へぇ、いいなそれ。あたしらも混ざっていいか?」
「もちろん!」
おっ、アダ名呼びイベントが始まりました。
このイベントは主要キャラが一堂に会し、好感度・正気度が著しく低くなければ大抵発生します。
アダ名で呼び合うようになれば、互いの好感度が下がりづらくなるので、ありがたくスルーしましょう。
ゆき、りーさん、くるみ。
あとは、めぐねぇですが、先生という立場を誇示するのでやんわりと拒―――
「めぐねぇはめぐねぇだねっ!」
「ああ、よろしくな。めぐねぇ」
「改めてよろしくお願いします。めぐねぇ」
「もう……はい、宜しくね。ゆきちゃん、くるみさん、ゆうりさん」
おやおやおやぁ?
……覚醒めぐねぇのせいか(直感)
まあ、特段メリットもデメリットも無いので気にしない方向で。
「やーくんはやーくん!」
「そうね、なぎくん」
「んー……まあ、あたしは普通にやなぎで」
「やなぎくんも宜しくね」
私にも、しっかりとイベントが来ました。
好感度が足りないとナチュラルにハブられたりするので、よかったです。ゆきちゃん様々ですね。
「――そういえば、二人は食べないの?」
おっ、その話題は。
「……あー、ごめんな。あたしら我慢できなくてあっちで済ませてきたんだよ。なっ、めぐねぇ」
「ええ。ですから、気にしなくて大丈夫ですよ」
「…………そう」
はい、嘘です。二人は何も口にしていません。
それはりーさんにも伝わってます。
これは、戦闘に参加するキャラの起こす現象ですね。
戦闘慣れしていない序盤は、食欲が減退しほんの軽いものしか食べなくなります。特に肉や赤色の食べ物はダメです。
……まあ、ついさっきまで知り合いだったのをフルスイングでぶっ潰しているのでさもありなん、ですけど。
ですが、それではダメです。
二人がお腹空いていないと思っていても、二人の空腹値は容赦なく減っており、ステータスに影響を及ぼしています。
……だいたい一日は食べていない事を考えると――今の状態が続くと行動が精彩を欠き始め、些細なミスが発生するようになっていくでしょう。
私が先頭に立って三階を制圧するのであれば放置でも構いませんが、この二人に任せるしかないこの現状。ガバを引き起こしかねない要因は排除せねばなりません。
……本当なら、一緒にカップ麺を食わせたいとこですが、それは諦めて菓子くらいは食べて貰いましょう。
とはいえ、特別なにかする必要はありません。
ズルズルズル。
ああ~、やっぱラーメンは醤油に限るんじゃあ~。
このサッパリ感が……たまらねぇぜ。
お前どう?……豚骨醤油?またヘビーなもんを……だからそんなデカいんですかね……(りーさんを見ながら)
ちらっ。
「…………」
「……っぐ」
もう一押しですね。
はい、ゆきちゃんあーん。メンマ食ぃ。えっ?チャーシューがいい?……もー、しょうがないなぁ。はいっ、あーん。おいしい?ああ、良かったねぇ。
そんな笑顔を見ると――
ちらっ。
「……ぽり、ぽり……」
「パリッ……」
――勝った。
決まり手、ゆきちゃんの笑顔――プライスレス。
めぐねぇとくるみちゃんが各々適当に菓子を摘まみ始めました。一度してしまえば、求めるのが人間です(意味深)。
合間合間に食べ始めるので空腹値を心配する必要はなくなります。
やったぜ。
「……やったわね、なぎくん」
りーさんが私の意図に気づいたらしく、好感度が上がった模様。
ダブルやったぜ。
では、食事をさっさと終わらせて三階制圧に移りましょう。
いやぁ、どうなるかと思ったけど意外に何とかなるもんですね。悩みの種である覚醒めぐねぇ(柿の種)が可愛く見え――
「そういえば、皆さん。良いものを持ってきましたよ」
ん?
「良いもの?なぁに、めぐねぇ」
「ふふふ……じゃーん」
「……職員用緊急避難マニュアル?随分、物騒な表紙ですね」
えっ?
「こういった非常時になったら見るように、と教員全員に配布されたものです。……あんまり期待はできませんが、今の事態に有用なものが書かれてるかもしれません」
「サバイバル術とか?そういうのだったら必要そう」
「でしょう?だから――」
……は?
「――皆さんと一緒に見ようと思って」
…………(思考停止)
なっ――
なんてもん持ってきてやがる、この≪
バカかバカなんだなバカじゃないとできねぇよ、この≪
だから、お前は万年≪
ぬわあああああああああ!!!
これもめぐねぇか!覚醒めぐねぇのせいか!?――そうだよっ!!!(断言)
どっ、どうする……!
ここでこんなもん見たら三階制圧以前に、RTAどころじゃなくなるぞ……!!
まず、めぐねぇがこっから飛び降りて、皆の正気度ストップ安!RTA株は紙切れ以下、価値ゼロになるぅぅぅ!!
ここは――!
「では――」
――多少不自然でも真っ向から誤魔化すしかねぇ!!
おっ、待てぃ(江戸っ子)。
こんなのいつでも見れるんだよなぁ。まずやる事があるってそれ一番言われてるから。
このまま屋上に居てもダメだゾ。なんか考え、あるんでしょ?(知将)
疾きこと風の如し、侵略すること火の如くってはっきりわかんだね(武田並感)
だからそれ仕舞って?あくしろよ……あくしろよぉ!
「…………そう、ですね。やなぎくんの言う通り、目先の事を済ませてからにしましょうか」
「そうだな。その方がいい。皆、聞いてくれ――これからの事だ」
勝った!RTA……完!(まだまだ続くんじゃ)
とはいえ、安心は出来ません。
なんとかできたのは、このマニュアルが『あってもなくても構わないもの』という認識であるからです。こんな事態が想定されてるなんて思ってもないですからね。だから正気度減少の値が死ぬほど多いのです。
ですので、何の気無しにこの悪魔の書を捲ろうとする愚か者が出るやも――いや、出ます(反語)。
まだ間に合います――焼きましょう。
職員室にある教員全員のもの。その後は、めぐねぇのものです。
……あっぶねぇ。
なんとか挽回できそうですね……。
「やなぎも気づいていたみたいだけど――」
という前置きと共に、ゴリラズは『このまま屋上にいても体力を消耗するだけ、三階に一通りの設備があるのでそこを一先ずの住処にしよう』と提案してきます。
その為には、三階にいるやつらを一掃する必要があるとも。
よし、これで三階制圧のフラグが立ちました。
ゆきちゃんとりーさんは渋りますが、このままでも意味ないというのは分かっているので、頷いてくれます。
皆、察しがよくて好きですが、そういうとこが嫌いです(ガバの要因)。
では。
この後、戦闘になります。
こちらにはシャベルゴリラとバール万引き犯がいるので、だいぶ戦力過多ですが、こちらも出来る事はやっておきましょう。
おう、りーさん!その恵体揺らして、ちょっくら園芸部の備品の枝切りバサミを持ってきてくれや!
「……武器に使う気?」
使うけど使わないから大丈夫だよ(適当)。
「…………」
渋々ですが、りーさんが枝切りバサミを持ってきてくれました。往年のシザーマンが持ってるデカいハサミの農業版ですね。
これを分解すると、ほど良い短さの槍として使う事が出来ます。しかも、二つになるというコスパの良さ!これは大きいですねぇ!(りーさんを見ながら)
攻撃箇所を絞れば即死が狙え、且つリーチが少しはある――ベストではありませんがベターな武器です。
期待を込めて、枝切りバサ槍さんと名付けましょうか。自分のネーミングセンスにクラクラしますね(照れ)
片方はりーさん。もう片方は私が持ちます。ゆきちゃんは戦闘力が皆無ですので、(持たせたところで)意味ないです。
……あのビンタは本当になんだったんだ……(戦慄)。
常に使えるようにすればゆきちゃんも戦闘員で行けますかね。これ走り終わったら検証してみましょうか(向上心の塊)
はい、りーさん。大切にしてね。
「……枝切りバサ槍さん……?」
私の苛烈なハイセンスについてこれないなんて遅れてますね(嘲笑)。
これで武器が手に入りました。……最強バールには劣るので不安は残りますが、これでゴリラズが討ち漏らしたやつを倒して、スキルポイント確保を狙いましょう。
運良ければ戦闘組昇格、本チャートに戻れるチャンスだぜ。
「はーい。脇からちょっと失礼するぞー」
むっ?ゴリラが抱きついてきました。
くるみちゃんは好感度が高い相手には積極的なスキンシップを取ってきます。
これは好感度足りてますねぇ!(歓喜)
「――むっ」
「ゆきちゃん。大丈夫よ、腰を見て」
「――むむっ」
「それもダメなのね」
はっ?腰?
腰に……紐?……これは、紐ルートぉ!?
私の腰に紐が巻き付いてあります!これは信頼されてない時に発生する行動が著しく阻害されてしまう魔のイベントです!
やっぱり好感度足りてないじゃないか!(憤怒)
「――ごめんな、やなぎ。りーさん」
「ええ、私が持ってる。絶対に離さないから安心して」
「たのむ」
「――むむむっ」
「……なんで、ゆきは膨れっ面してんだ。ていっ」
「――ぷひゅぃ。なにするのっ!」
なにするの、はこっちの台詞なんだよなぁ……。
えー……まあ、紐ルートは動きづらくなるだけなのでそこを考慮していれば戦闘行動自体可能です。クソザコショタはゴリラズとは違い、攻めるよりかは迎撃でカウンターを狙った方が効率が良いので。
最悪、枝切りバサ槍さんを使って脱出する事も考えときましょう。
が、紐ルートが発生しているという事は、ゴリラとの信頼度が足りてない事を示しています。これは後でゴリラに媚びを売っておかねばなりませんね……。バナナとかあげればいいんでしょうか。
「――やなぎくん」
おう、なんだ正気度テロリスト。着実に罪状増えてるからなお前な。
「どうか、気をしっかり持ってね。……私達が、付いてますから」
……?
なに言ってだこいつ。
「私とくるみさんがやります。三人は後ろから警戒していて下さい。かれらが近づいてきたのを知らせてください。……無理をする必要はありません」
めぐねぇの号令と共に、三階制圧が始まります。
ふふふ。太陽の光に照らされて、枝切りバサ槍さんが輝いています。これは行けます。期待できそうですね。
こちら現場です。
「はぁっ……!」
「……っ!」
ゴリラズが無双しています。大体一撃で仕留めてます。
こっちに『かれら』が来る気配がありません。……つうか、これ一部屋に2、3人しか居なくないか……?
一部屋に何人いるかはランダムで、少なくて2人・多くて30人というガバガバで選ばれます。
つまり、三階は――良い引きを連発しています。なんでこういう時だけ良い引きすんの!
自己ベが絶賛更新中なんですが!(複雑な思い)
いつもは死角やロッカーなどの隠れた所に、ひょっこり出現したりするのですが――それも無く。果敢な大進撃が続いています。もう半分くらいですね。
このままでは、『かれら』が完全に駆逐される……!こっちにお鉢すら回ってきません!
――くそっ、誰か……誰か居ないのか!スキルポイントがなくなっていく!
体裁など気にしてられません。ロッカーや教室、手当たり次第覗きに行きます。紐など知るか!
まだ誰か残ってるか?(本当に動かない)死体だけです。ぎゃっでむっ!
「やーくん……」
「なぎくん……離れましょ。もう、誰もいないわ」
いるねっ!絶対いるねっ!ロッカーとか低確率で!
私がいるって思えば、開けるまではそこにいるかもしれないだろ!(シュレディンガーの猫並感)
くそっ、先駆者兄貴達の時には大抵いるのに、どうして私の時はもぬけの殻なんですかねぇ!?
手頃な奴、その辺で適当してる奴とか!
早く……早くしないとスキルポイントが……!
「――このぐらいか」
「ええ、もうこの階に彼らは居ないみたいですね……」
――ジーザスッッ!!!!
戦闘終了!
被害ゼロ!私の獲得スキルポイントもゼロ!プラマイゼロ!!
自己べ更新!タイムも良き!私がやった時よりはやーいっ!
ちくせう。
…………。
私達いりましたかね、この戦闘!?
枝切りバサ槍さんが……意気揚々としてたのに出番が無かった枝切りバサ槍さんが見えないのか貴様らぁ!おいどんは恥ずかしかっ!
三階制圧した後は、急いでバリケードを設置します。ほっとくと、二階から補充要員がやってくるからです。
バリケードには机と椅子が大量に必要になり、本来なら一日は掛かる行程ですが――スタミナバーギリギリ酷使走法を会得している私の手にかかれば、夕方には形は出来上がります。
どうせ、終わったら特に重要な事もないので、惜しみ無く酷使していきましょう。
全身筋肉痛になるのはショタであって、私ではありません(無慈悲)。
「――やなぎくん。このぐらいでいいわ。後は私達がやるから大丈夫よ」
おっ、ストップが出ました。
では後は任せましょう。このショタにバリケードを作るスキルはないので邪魔にしかなりません。疲労がマックスなので参加すると音を盛大に立ててしまい、二階のかれらを引き寄せる結果が見える見える……(五敗)。
ああ……労働の後の夕日が眩しいぜ。
「ゆきちゃんもお疲れ様」
「……うん。やーくんと、屋上に行ってていい……?」
「ああ、いいぜ。これが終わったらあたしらも行くよ」
という訳で。
ゆきちゃんと行動開始、自由行動のお時間です。
ですが、三階が開放されたとはいえ、各種施設はまだ使用できないのでやる事はまたありません。
本チャート通りなら、屋上で適当に待ってればバリケードを設置し終えた三人と合流、就寝になり――二日目は終了になります。
三階が開放されたので、今日はおシャワーでお布団。こういった衛生的なものはあるのとないのとではダンチなので、さっさと制圧したんですね。
まっ、他にも理由はありますが(意味深)。
「………」
ゆきちゃんがアンニュイな感じです。
初めて、人の生き死にを直視するとこんな感じになります。この状態が続くと、他のキャラにも影響が出るので良くありません。本チャートであれば、屋上でのお話で和らげます。
ですが、ここは――。
ゆきちゃん。
「なぁに……?」
焼き芋、食おうぜ。
「えっ……?」
チャート補完、あーんど回収!
初日と二日目で、本来やるべきだった事を今やりましょう。
ただ待っているだけなど、RTA走者にあるまじき暴挙!こういう時は無駄の無い無駄じゃない動きをしましょう!
向かうべきは、職員室。
教員にはタバコを吸う奴もいるのでライターを余裕で見つけられますし、今は人目はゆきちゃんしかいません。隠蔽工作など容易い容易い。
紐ルートの事もあるので、皆の好感度をまとめて稼ぎに行きましょう!
あっ。職員室の死体がまだ消えてません。
……オブジェクトが消えるタイミングっていまいち把握されてないんですよねぇ。気が付けばもう無くなってるのが多くて。
まあ、居ても居なくても特に意味はないのでちゃっちゃと済ませてしまいましょうか。
―――――
――ぐしゃあ。
潰れて、はじけた。遠くから聞こえた、そんな音。
それが――耳に纏わり付いて離れない。
「……っ……っ」
「ゆうりさん……」
「すみません……もう少し……このままっ……」
りーさんがめぐねぇにすがりついている。震えた身体、冷たくなった手を温めるように、めぐねぇが静かに抱き締めていた。
気持ちはわかる。あたしだって、先輩の事がなければああなってた。
冷たさが伝わってくるように感じて、気付かれないように顔を背けた。
バリケードを作り終わった後。
あたしとめぐねぇ、りーさんがやったのは――後処理だ。
三階を住処にするなら綺麗にしとかなきゃいけない。血だなんだは気が滅入るし、よく知らないが病気になりそうだった。
それに――もう動かない『かれら』を放置しておく訳には行かなかった。
直ぐに済ませる部分はそれだった。
最初、りーさんにやらせるつもりはなかった。
やなぎとゆきの様子を見に行って欲しいってのもあったし、こんな事をやる人など増やしたくはなかった。
でも、りーさんは気丈にもやってくれた。
おかげで早く終わった。……りーさんの精神に傷を付けて。
「……ありがとうございます」
数分して、りーさんがめぐねぇから離れた。
顔色はマシにはなっていた。
「……今日は、もう休みましょうか。掃除は明日にしましょう」
その言葉に異論はない。
もう、気が参るような事なんてしたくなかった。
やらなくちゃいけない事をやった。そのはずなのに、誇れなかった。
血に濡れたシャベルが、ひどく虚しかった。
「………」
「………」
「………」
屋上までの道。
色んな疲れのせいか足が重くて、中々進んでないように感じてしまう。
「やなぎは」
ふと、口が滑った。
「やなぎは、軽蔑したかな」
「そんな事――」
「だって、あたしが殺したのは――あいつの友達だ」
やなぎは人気者だった。
なぜなら――
アイツがいるとこは、いつも明るかった。
そんなアイツの前で――友達だった奴を殺した。
肌は赤黒く、血と涎に塗れて、あたしには誰が誰なのか判別なんてもう付かなかったけど――アイツはきっと、気付いただろう。
「なぎくんは、言ってたわ。――『誰も居ないのか』って」
りーさんが呟いた。
「ロッカーとかトイレとか。誰かが隠れられそうなとこを何度も見てた。くるみが紐で結んでくれてなければ、飛び出していたかも。あれは良い判断だったわ」
「……そっか。そこだけは良かった」
「ええ」
沈黙が、少し流れた。
ちらりとめぐねぇを見ると、何を言おうか言うまいか悩んでいるようだった。
それでも、何も言わず――ただ、バールを強く握りしめた。
何を言えばいいのか。
あたしにも分からなかった。
ただただ沈んで行く空気が変わったのは、屋上への階段を登り切ろうとした時。
物理的に、空気が変わった。
「なんか煙たくないか」
「確かに」
「いったいなにが……?」
疑問のまま、扉を開けると――
「いいかね、ゆきちゃんくん。焼き芋はね、タイミングなんだ」
「タイミング?」
「焼きが短くても、長くてもダメ。じっくりコトコト、でも焦がさない……シチューのような心持ちでなくちゃいけないんだ」
「……にゃるほど?」
園芸部の畑――その端で、黒い煙を上げながら燃える火の側でしゃがみこむ、やなぎとゆきがいた。
枝切りバサミから作ってた槍で焚き火の灰をかき混ぜながら、やなぎは講釈を垂れていた。横のゆきは確実に良く分かっていない。
「おっ、皆。おつかれさん」
「なに……やってんだ?」
「なにって……焼き芋。あっ、ゆきちゃんくん。皆に例の物を配るように」
「はーいっ!くるみちゃん、りーさん、めぐねぇ!これどーぞ」
さっきよりも一段と明るくなったゆきが渡してきたのは――軍手だった。
「園芸部から勝手に使ったけど、大丈夫だった?」
「え、ええ。別にそれはいいのだけども」
「じゃあ、良し!焼き芋よぉーい!」
「焼き芋よぉーい!」
やなぎがそう言うと、ゆきがばたばたと焚き火に駆け寄る。
……さっきとは打って変わった明るい雰囲気に。あたし達はただぼんやりと見ているしかなかった
「やーくん!熱くて取れない!バサ槍さん貸して!」
「なぬ。オーライ、任せろ。このバサ槍さんにかかれば……!」
枯れ葉と紙カスに塗れた焼き芋を、枝切りバサミの槍で掻き出す。
その刃先で、ついっと突っつけば――湯気と一緒に、美味そうな黄色が見えた。
上手くいったようで、ニヤリと笑い合う二人の顔。
――何故かすごくほっとした。
「ん?」
安心したようにあたし達を見ていためぐねぇが、ふと焚き火をじっと見たと思ったら、ずずいっと近づいた。
ぎくり、とゆきとやなぎの肩が揺れる。
「ねぇ、やなぎくん……」
「な、ななななんでしょうか」
「今、焚き火から紙が見えたのだけど、あれは?」
「しょっ、職員室にあったのを使っただけ!適当に……適当に!」
「そう――今、ゆきちゃんの名前が書かれたテストが見えたわ」
「――貴女のような勘の良い教師は嫌いだよ」
「もーっ!なにどさくさに紛れて赤点燃やして、証拠隠滅してるの!」
――ぶふっ。
急な事で、あたしとりーさんは吹き出してしまった。
こんな状況で何してんだコイツは。
「はっはっは」
「誤魔化さない!」
「あっ、くるみの赤点もやっといたよ」
「おっ、サンキュー」
「――くるみさん!」
「りーさんのは無かったからしなかったよ」
「……ここで仲間外れはなんか嫌ね」
「――ゆうりさん!」
「因みにこの証拠隠滅の発案は、ゆきちゃんです」
「ええ!なんで言うのやーくん……あっ」
「――ゆ~き~ちゃ~ん~?」
「わっ、私にだけ当たりが強い!やーくんがやったのに!」
「焼けてる赤点の大半が貴女のなんですから当たり前でしょう!!」
ひぃやぁぁぁぁ!と叫びながらほっぺをむにゅられるゆき。
その間、やなぎは――ほっと息をついていた。……怒られる矛先を逸らすとは中々の知能犯だった。
やなぎは枝切りバサミの槍で器用に焼き芋を半分に切ると、それを誰かの赤点用紙に包んだ。
「さあ、食いねぇ食いねぇ。――おつかれさま」
焼き芋が手渡される。
じんわりと――手が温かさで包まれた。甘やかな湯気があたしの顔を撫でた。
ふと、目頭が熱くなった。
「――ありがとう」
自然とそれが口から出ていた。
「大事に食べるからな」
「……?まだいっぱいあるから遠慮しなくていいよ?」
「バカ。そういう事じゃねぇよ」
「……?……?」
分かって無さそうなやなぎの頭を、りーさんが静かに撫で始める。
「はい、りーさんもお上がりなさいな」
「ええ。……あら?手が塞がってるわ。食べさせて?」
「……頭撫でるのを止めるか、バサ槍さんを離せばよいのでは?」
「あーん」
「………」
「あーん」
「……あーん」
「ふふっ、ありがとう」
………。
温かな光景を見ながら、焼き芋を食べる。
じんわりとした熱と、ねっとりとした甘さが喉を通る。
冷たさを消すように。
「ふふっ」
不思議と、何かが軽くなったようが気がした。
――夜が更ける。
昨日とは違って、コンクリブルーシートは卒業だ。
三階中から集めた簡易布団を並べて、被害が無かった資料室を寝室に、そこで休む事になった。
その前で、あたしは――軽くシャベルを素ぶりする。見張りを買って出たからだ。
ガラガラと寝室の扉が空く。
振り向くと、めぐねぇが申し訳なさそうに顔を出していた。
……その後ろで、やなぎがゆきに襲われてるんだが、あれは大丈夫なのだろうか。
「見張りを、任せて大丈夫?」
「ああ、バリケードを作ったけど不安は残るだろ?」
「でも……」
「いいから寝なって。めぐねぇは今の今迄気張ってたんだから」
「でも……」
「はーい。でもでもだっては明日にしましょうね。おやすみなさーい」
そこに同じく見張りを志願したりーさんが有無も言わさず、めぐねぇを寝室に押しこむと扉を閉めた。
……少しして諦めたのか、もぞもぞと衣擦れの音が聞こえて――それは直ぐに止んだ。ぬわあああ、と吸い込まれるように消えた悲鳴は聞かなかった事にした。
「……りーさんも寝てても良かったんだぞ?」
「いいえ。くるみを一人にする訳にはいかないわ。それに、私にも武器はあるし」
「……でも枝切りバサミだろ?」
「枝切りバサ槍さんよ。きっと使えるわ」
「そうだな。さっき、焼き芋作る時に使われるぐらいだもんな」
まあ、そんぐらい平和な使い道の方が良いんだろうけど。
「さて。長丁場になるだろうし。コーヒーでも淹れましょうか。くるみもいる?」
「ああ、砂糖いっぱいな」
「あら、お子ちゃまね」
「……そう言うりーさんは?」
「……ミルクたっぷり」
「お子ちゃまめ」
「ぐぐっ……」
悔しそうにしながら、りーさんはコーヒーを淹れに生徒会室に向かって行った。
その背中を見ながら、あたしは静かに寝室の前に腰掛ける。
夜の廊下。惨劇を想像出来る血。割れた窓ガラスからは風が流れてくる。
でも――あまり冷たくなかった。
「また……焼き芋、食いたいな」
――――――――
「………」
「………」
…………(ゆきちゃんに筋力対抗フェイズに負けてショックです)。
「……ねぇ、めぐねぇ。起きてる?」
「まだ起きてますよ。貴方達が寝るまで起きててあげますからね」
…………(お母さんかお前は)。
「……焼き芋、美味しかったね」
「ええ、赤点で焼かれてなければもっと美味しかったと思います」
「………もくひします」
「折りを見て、再試験です」
「あ~う~」
…………(MEGE IS HUSIANA)。
「……これから、どうなっちゃうんだろうね」
「そうですね。でも、大丈夫ですよ」
「大丈夫?」
「ええ。だって――私が守ります。だから、安心して笑っていて下さいね。それが私達を救ってくれます」
「……そう?だって、やーくん」
…………(寝てますねぇ!)。
「……やなぎくんも疲れたんでしょう。さっ、ゆきちゃんも寝なさい」
「はーい。……おやすみ、めぐねぇ」
「はい。おやすみなさい」
…………。
「………」
「………」
…………。
「……すぅ……すぅ」
「……むにゃ」
――きゅぴーん(起床)
そのまま寝ると思ったかバカめ!
夜廻の時間だオラァ!チョーカーさん助けに行くんだよぉ!!
次回――SYOTA EATER作戦。